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情報誌『アシスト』

2006 2006/07/01
ウェブハロー


組織営業力強化のための「営業報告の活用法」
~効果的な報告システムの実装方法~ 【その1】

新本 幸司
株式会社アシスト
ウェブハロー推進室 室長
新本 幸司

営業報告を正しく運用している企業は、営業部隊が活性化し、報連相(コミュニケーション)が促進され、また次の戦略を策定する意思決定の材料として再利用されています。

営業報告は、営業活動における“PLAN-DO-SEE”の“DO”情報が蓄積され、それを見れば企業の営業実態が把握できます。また組織変更や退職に伴う顧客担当者の交代時に、過去の営業状況を理解する上でなくてはならない情報です。いわば営業報告とは、顧客との関係構築における企業の資産であり、情報の宝庫だと言っても過言ではありません。

しかし多くの企業は、営業担当者が報告を嫌い、上司は報告を提出させる明確な理由付けを持っていないのも現実です。現場では「日報を書いてないじゃないか」「書けばどのようなメリットがあるのですか」といったやり取りが日々行われています。

また別の観点では、営業報告はデジタル(数値)情報だけで良いのか、アナログ(文字)情報も必要なのかといった議論にも結論が導き出せていません。

本稿では「営業報告のあるべき姿」と「コンピュータ・システムを活用した報告システムの効果的な実装方法」の観点から、営業報告の活用法について述べています。ルート型営業と提案型営業といった営業スタイルの相違により、報告すべき内容や活用方法は異なりますが、できる限りその違いを本文中にて吸収しつつ説明します。本稿の前提として、“営業担当者が報告する内容は、業績向上を目的とするもので、決して管理目的ではない”ことを明確にご理解いただいた上で、読み進めていただければ幸いです。(※営業日報と営業活動報告の違いについては後述いたします。)


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 1. 営業は日報を書きたくないもの
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営業担当者が日報を書きたくない理由は多数ありますが、集約すると後述の3点が大きな要素だと言えます。当然、営業活動の効率化には、営業担当者の事務作業を軽減し顧客との面談時間を増加する必要があるので、日報提出に強制力を持たせるのは二律背反を意味するかも知れません。しかし“事務作業軽減”と“顧客面談時間増加”を達成するには、既存の営業活動を見直し、無駄を省くための改良を継続しなければなりません。この点をなおざりにすると、営業担当者からの“書かない言い訳”を許す原因につながるのです。


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* 理由:報告内容が多すぎて書く時間が取れない
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一般的に営業担当者が作成する報告書を挙げると、中期(月間)訪問計画表、短期(翌週)訪問予定表、売上/利益計画表(顧客別、商品別など)、営業日報、商談進捗管理表、受注管理表など多岐にわたります。利用するツールもカレンダー(紙)、Excelシート、スケジューラ、携帯電話、電子メール、営業支援システム(SFA:Sales Force Automation)など数多く存在します。




実際の営業活動において、営業担当者はシステム手帳やノートなどを利用するため、これら多数の報告書を多数のツールを使用して転記する必要が出てきます。

さらに上司が代わり、新しい手法やソフトウェアが導入されるたびに、営業担当者の報告すべきテーマが追加される場合も見受けられます。その結果、報告を作成するために、営業担当者の残業時間が増加し、顧客面談の時間を圧迫するといった悪循環になっています。

このようなケースでは、営業報告の運用を改善し報告内容を整理すること(真の目的と再利用)で、質を落とさず負荷を軽減する取組みが必要です。この状態を放っておくと営業組織は疲弊するばかりです。


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* 理由:日報を書いても上司に見てもらえない
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営業日報は上司のマネジメント能力を測る指標にもなります。昨今は上司もプレイング・マネージャーである場合が多く、フェイスtoフェイスでのコーチングが困難になっています。報告を提出することで、上司は顔を見なくても営業担当者の状況を理解することができ、的確なアドバイスを可能にします。コーチングが充実することで、営業担当者は一人では解決できない困難な商談に自信を持って挑戦できるのです。つまり営業日報とは、報告者と被報告者間における“情報の経路”(双方向コミュニケーション)と“情報の単位と質”(報告内容とコーチング)、および“伝達と蓄積”(スピードと活用)が重要なポイントとなります。

逆に日報を通じてコミュニケーションを円滑に図ることのできない、または提出率だけを気にして内容を軽視する管理者は、営業担当者に足元を見透かされ、営業日報は形式的な内容になるか即座に入力率が低下してしまうのです。


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* 理由:日報を書いても直接売上につながらない
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緊急な意思決定を必要とする場面では、営業日報ではなく携帯電話や電子メールを活用します。電子メールを活用して報告、連絡を行う機会が増加するに伴い、営業現場からは「報告はメールで十分。日報を書いても売上には結びつかないよ」という声が聞こえてきます。

では営業日報を運用する目的とは何でしょう? 営業日報の目的は主に次の3点にあります。1点目は「報/連/相の基盤」、次は「顧客との関係データベース構築」、そして最後に「顧客鮮度の維持」です。


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 (1) 報/連/相の基盤として
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先にも述べましたが、営業マネージャーはプレイング・マネージャーである場合が多く、また営業担当者自身も客先へ訪問すると直行/直帰がつきものです。このような環境の中では、営業日報がコミュニケーションの架け橋となり、情報の共有/疎通を円滑にします。

また営業担当者には、単なる物売り営業から、顧客の課題解決を支援するコンサルティング・セリングのスキルが要求されています。このような環境において、もはや一人の営業担当者では解決できない多様な局面に対応しなければなりません。

こうなると、上司/部下といった縦の報告にとどまらず、チーム、技術者、企画担当、他地区の営業担当者といった横の報/連/相が必要になります。この基盤となるのが営業日報なのです。

顧客の課題解決に向けた営業担当者の役割は、3KGNP(感/経験/根性に加えてガマン/ネマワシ/プレゼントを強いられる)といった昔ながらの営業スタイルを脱却して、オーケストラの指揮者のような適材適所の人員手配が要求されています。





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 (2) 顧客との関係データベース構築
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報/連/相が営業活動における“現在”の情報を共有し、商談や提案を一歩先に進めることが目的であるのに対し、“過去”の蓄積も大切な目的となります。

例えば、営業日報の要素を時系列に並べると“営業担当者別の活動履歴”になり、顧客別にすると“顧客コンタクト履歴”、さらに案件で振り分けると“顧客/案件別の商談履歴”、案件の結果を加えて“顧客別の獲得/失注(WIN-LOSS)履歴”、数年間運用すれば“顧客別の営業担当者履歴”など、取引情報(基幹システム)では計り知れない、現場における顧客との関係を蓄積できます。これはいわば企業の情報資産です。




これらの情報は、組織変更や退職時における営業担当者の引継ぎに大きな効果を発揮するのみならず、次の対顧客戦略立案にも役立てることができます。


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 (3) 顧客鮮度の維持
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顧客情報の鮮度は年平均20%の割合で陳腐化すると言われています。単純計算すると、3年間で約50%の情報が劣化していることになります。

取引先マスターとしての顧客情報は、外部データベースを活用することで、定期的なクレンジングを実施することが可能です。しかし、顧客の最新取組テーマや戦略、また組織変更や人事異動といった顧客の近況は、営業現場のみが知り得る情報です。

“報/連/相”や“顧客との関係データベース”は、その基礎となる顧客情報が新鮮な状態で運用されていなければ無用の長物になりかねません。顧客情報の鮮度維持は、ある意味、営業担当者の義務として定着させる必要があります。

営業日報が直接的に売上貢献しないと言われる理由は、その運用に問題があるからです。例えば提案営業局面において“報/連/相”を活用することで、案件のリードタイムは確実に短縮されますし、提案の質は間違いなく向上します。また“顧客との関係データベース”が上手く運用されると、顧客を認知する時間的ロスを防ぎ、計画的な営業活動による機会の拡大につながります。さらに“顧客情報の鮮度”を保つことで、的を得た提案活動が可能になるのです。


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 2. 営業報告の運用形態
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普段何気なく使っている“日報”という言葉ですが、その運用方法は企業によって全く異なります。営業報告は、“誰に対する報告なのか”、“誰のための報告なのか”という2つの観点から検討すると、(1) 日報、(2) 営業日報、(3) (営業)活動報告の3パターンに分類されます。これらは似たような意味で使用されますが、その効果には驚くほどの差が出るのです。


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* 日報とは
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日報は、営業担当者から上司への“日次の業務報告”として運用されます。その内容には、顧客との面談、社内会議、移動、展示会への参加など業務内容が時系列に記述されます。多くの場合、報告用シート(紙)が用意され、一旦会社に戻り日報を提出してから帰宅するといったケースとなります。

上司は日報に一通り目を通し(上司が見ないと日報を書かない理由になります)、赤ペン・チェックやアドバイスを記入して担当者に戻し、最後はバインダーにファイルされます。また必要に応じて、さらに上位の役職者へ報告されることもあります。日報の運用は、主に上司/部下の縦ラインの報告に限定され、残念ながらこの情報を再利用したり二次加工して活用したりといった運用は考慮されていません。

結局のところ、日報とは“上司に対する報告”であり“上司のための報告”であると言えます。

現在でも“日報”として営業報告を運用している企業は意外と多いのですが、仮に日報の仕組みをシステム化しても、入力作業が便利になるだけで、営業担当者にとってのメリットは少なく入力率は向上しません。


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* 営業日報とは
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営業日報は“日報”と異なり、顧客との面談内容、提案書作成のための会議など、“顧客に関連する業務のみ”を記載し、報告先は“日報”と同様に直属の上司となります。

また上司への報告のみならず、Excelシートなどを活用して、“1日当たりの訪問件数”や“1訪問当たりの商談時間”を集計、さらには訪問目的(新規訪問、クレーム対応、定期訪問等)の比率を分析などすることで、営業担当者の傾向(クセ)を発見し営業活動の改良につなげることを目的とします。営業日報には、“上司に対する報告”と“上司のための報告”に加え、“営業担当者のための報告”という目的が加わります。

電子データとして営業日報を運用されている企業は、営業担当者の活動改良に加え、もう一歩進んで、蓄積データを多目的に再利用する仕組みを考慮されてはいかがでしょう。特に、営業活動(量)の効率化が業績を大きく左右するルート型営業においては、報告された数値情報を集計し、多次元から分析することで、仮説検証型の営業サイクルを構築でき、その結果、個人から組織へと営業活動の最適化が広がります。


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* (営業)活動報告とは
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活動報告は、“顧客別の報告”を意味し、上司(基本の報告先)に加えて、個別の案件に関係する技術者や、他地区の営業担当者などが報告対象に加わります。例えば案件獲得に向けて、技術者や企画担当から支援やアドバイスを享受したり、同じ顧客を担当する他地区の営業と情報を共有することで、組織的な提案活動(チーム・セリング)を実施することが可能になります。

さらにシステム化を推進し、携帯電話やモバイル端末を活用することで、タイムリーな情報共有を実施でき、案件のリードタイム短縮を可能にします。

チーム・セリングは、提案型営業を実践する企業にとって大きな効果を発揮します。各分野におけるプロフェッショナルの知恵を借りることで、個人の営業スキルを超えた、質の高い提案活動を行うことが可能になるのです。

またモバイル対応の活動報告システムを構築することで、営業担当者は移動時間や空き時間を有効に活用でき、さらに直行/直帰型の営業スタイルを可能にし、その先にはオフィス・スペースの縮小やサテライト・オフィス化といった二次効果につながります。


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* 営業活動における事実と多重入力
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企業によって営業報告の運用はまちまちですが、冒頭で説明したとおり、多重入力を発生させる仕組みは営業担当者のモチベーション低下に直結し、報告の入力率は瞬く間に低下します。ここでは報告の多重入力が発生する原因を考えてみましょう。

営業報告とは“事実”と“思い”を報告するもので、営業現場における事実(FACT)は、5W2Hで整理することができます。5W2Hの報告とはおおよそ以下の内容で、これらの項目が網羅できないのは、踏み込んだ商談に至っていない、ヒアリングが不足しているといったことを疑わなければなりません。また管理者にとっては5W2Hの観点から部下の報告を整理させ、不足する内容を次のヒアリング課題にしたり、報告内容から次のアクションをコーチングするなどの手だてが必要になります。


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● WHEN  : 何月何日の何時から

● HOW   : どのような話(提案)を

● WHERE  : 何処(企業・場所)の

● HOW MUCH: 価格はいくらで

● WHO   : どの部署の誰と

● WHAT  : 何の商談を

● WHY   : それは何の理由で

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これら“事実”(FACT)に対して“思い”とは、受注確度の変化や面談時の感触、勝因/敗因などがあり、これらを総合すると営業報告になります。

では、代表的な営業報告システム(紙を含む)に、事実(FACT)がどのくらい登場するかを見てみましょう。

営業報告
システム
使用するツール 入力のサイクル 登場する事実(FACT:5W2H)
訪問前 訪問計画 紙、Excel 四半期、月次 WHEN, WHERE, (WHO)
訪問予定表 紙、スケジューラ 週次 WHEN, WHERE, WHO, WHAT
訪問後 日報 紙、eメール、SFA 日次、週次 WHEN, WHERE, WHO, WHAT, WHY, HOW, HOW MUCH
案件進捗管理 Excel、SFA 随時 WHEN, WHERE, WHO, HOW, HOW MUCH
WIN-LOSS管理 Excel、SFA 随時 WHEN, WHERE, WHO, HOW, HOW MUCH
ナレッジ管理 SFA 随時 WHEN, WHERE, WHY, HOW


ご覧いただいたように、若干の相違はあるにせよ1つの事実(FACT)が多くの営業システムに登場(重複)しているのがご理解いただけたと思います。この例は極端にしても、少なからずこのような状況を目にします。報告者にとっては苦痛かもしれませんが、管理者にとってはいずれも重要な情報なのです。

多重入力が発生する原因を考えてみると、概ね機能別にシステムを検討/構築する場合がほとんどです。

例えば、全社共通の情報基盤としてグループウェアを導入し、これを利用してスケジュール共有の運用を開始します。そして数年後に日報システムを構築する場合、システムの開発担当者は日報システムの機能面(報告のフォーマットや承認経路、コメントの返信方法など)を重視するあまり、スケジューラで入力している現場の事実(WHEN, WHERE, WHO, WHAT)を忘れてしまうのです。このようなシステム開発が繰り返されると、営業担当者にとって負荷を増大させる(と感じる)報告システム群になってしまいます。


(※ 次号は、「効果的な報告システムの実装方法【その2】:多重入力を排除した報告システム」について解説します。)



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