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情報誌『アシスト』

2007 2007/03/01
農芸プロジェクト

「安くて豊富な石油時代は終わる」、いわゆるピーク・オイルによって日本の低いエネルギー自給率、そして食料自給率の危機について警鐘をならしてきたトッテンが、自宅で自然農法による菜園を手がけるようになり、2006年8月、アシスト社内に「農芸プロジェクト」を発足しました。将来的にはアシストの各支社、営業所のそばに農園を借り、社員が自給自足に近い農作物を作れるようになるという壮大な目標に向かって、まずは兵庫県加古川の農園にて作業が始まっています。本日の対談は、農芸プロジェクトのリーダーとしてトッテンが、家庭菜園を手がけておられる株式会社カネカ 佐藤雅孝様にお話を伺いました。

菜園の楽しみ - 美しい里山にて

佐藤 雅孝 様
株式会社カネカ
情報システム部
佐藤 雅孝 様
ビル・トッテン 
アシスト
ビル・トッテン 

【トッテン】 カネカさんとのお付き合いは30年近くになります。佐藤様とはFOCUSを通して長いお付き合いをさせていただいており、有難うございます。社名が変わったのはいつでしたか。


【佐藤】 ロゴは以前からローマ字でKANEKAでしたが、社名は平成16年、創立記念日に合わせて鐘淵化学工業株式会社から株式会社カネカになりました。トッテンさんと最初にお会いしたのは確か昭和62年頃、FOCUSのユーザ会でした。






■農芸との出会い

【トッテン】 システムのことも伺いたいのですが、今日は昨年8月、アシストが社内で発足させた「農芸プロジェクト」のリーダーとしてお話を聞かせてください。日本を含む先進国が今のような生活を享受できるのも安い石油が豊富にあるからで、その石油が減耗すれば我々は生活をもっとシンプルに変えていかないといけない。特に石油に大きく依存している今の農業は大打撃を受けるでしょう。そんなことから、商売のために農産物を作るのではなく、園芸程度でいいからまずはアシストの社員に農芸に慣れ親しんでもらいたいという思いから、社員のクラブ活動のような形で始めました。そのプレスリリースをホームページに掲載した時に、最初に励ましの電子メールをくださったのが佐藤さんでした。


【佐藤】 思わず「ガンバレ」のメールを送ってしまったのですが、それが今日の対談につながるとは(笑)。


【トッテン】 とても嬉しかったです。そして佐藤さんも家庭菜園をされていると伺い、昨年10月には社員と見学に行かせていただきました。その節は本当に有難うございました。家庭菜園を始めたきっかけをお聞かせください。


■狩猟から農耕へ

【佐藤】 カネカに勤めていて、当初はスキー、テニス、そしてゴルフと様々な趣味をやってきました。最後は釣りをしていましたが、近場で釣れる場所がなくなってきたこともあり、そろそろ狩猟民族から農耕民族かなという感じで家庭菜園を始めて8年になります。冬を除いて、常に変化があるので飽きませんね。


【トッテン】 そう、変化があります。先日は、棄てた生ごみから生えてきたトマトが大きくなっていました。植物の成長を見るのは本当に楽しいです。この前お訪ねした大阪府茨木市の農園についてお聞かせいただけますか。


【佐藤】 茨木市の忍頂寺というところで、市が景観農業振興地域に指定していて棚田を美しく維持するようにという通達がくる場所です。東南に生駒山、南に葛城山系が見え、市の中心から10キロほどのまさに里山です。最初は別のグループで活動していましたが、退会して2年前から今の「楽農の会」に参加しました。8名で運営しており、楽しく農業のまねごとをしましょう、というのが会の名称の由来です。


  ■美しい日本の里山

【トッテン】 秋にお訪ねした時、紅葉はまだでしたが柿の実がなっていたり、焼き芋をいただいたり、豊かな自然に抱かれた美しい眺望で本当にうらやましく思いました。南カリフォルニアで生まれ育ったので、四季の移り変わりは日本に来て初めて体験しましたが、本当に素晴らしい。カリフォルニアは砂漠です。飲み水は隣の州から持ってくるし、すべて人工の緑です。100年ほど前まではカリフォルニアの山の雪解け水で足りていましたが、今は人口が増え過ぎてしまいました。もともとアメリカの人口分布は北部がほとんどで南部の人口が急増したのはここ数十年です。石油、天然ガスが豊富にあってこそ、それが可能でした。でも天然資源がなくなったら今のようなエネルギーをたくさん消費する生活は成り立たないでしょう。あのような美しい里山が自然な形で作られている日本の良さをもっと多くの日本人が気づくべきだと思います。しかし、農芸プロジェクトを始めて土地を探しましたが、なかなか簡単に土地が見つからないのが現実でした。


【佐藤】 そうかもしれません。専業農家になるというなら話は別ですが。農業従事者は高齢化が進んでいて、特に近郊農家の場合は、世代交代者はほとんどがサラリーマンで農業を継ぐ人は少ないようです。私の借りている畑周辺の農業従事者の場合は山も持っていますので、下草刈りなど年をとってからの重労働は厳しいものがあります。そこで、そうした農業従事者と私たちは「お見合い」を行い、農地法に触れない範囲で里山ボランティア活動として山村農営活動を支援するとともに菜園実習で農作物を作ることにしました。こうして始まったのが「楽農の会」です。


■ボランティアとしての農芸

【トッテン】 農地法の関係というと、会則などもあるのですか。


【佐藤】 農地を耕作目的で売買あるいは貸し借りするには農業委員会または府知事(市外居住者)の許可が必要です。ですから楽農の会も市役所へ行き、山村農営活動を里山ボランティア活動として支援するとともに、都市住民の余暇活動として菜園実習で農作物を育成するといった目的を説明しました。会の基本的な考え方は、農業/農村の持つ多面的な機能を保全/整備すること、自然の摂理に沿い自分の手で土と水と光と親しみ、季節や自然を感じながら、里山の管理と農園作業を通じて農業の知識や技術を取得し、地元山村との交流を図りましょう、ということ。自然の摂理というのは、農薬を使わないで作りましょうということです。


■自然との共存

【トッテン】 年間活動計画なども立てられていますか。


【佐藤】 当初は、何をいつ植えるか、そのためにいつ頃畑を耕すのかとか、畝に番号をつけてExcelで書いて運営していましたが、今はほぼ頭に入っています。それに細かい計画表を作ってもうまくいきません。計画には雨の日が考慮されていませんから(笑)。


【トッテン】 自然には逆らえませんね。それ以外にご苦労されている点はありますか。


【佐藤】 夏場の草刈と、やはり8月に行う冬野菜用の畝作りは暑くて大変です。気温は町より3度くらい低いけれど、炎天下は同じです。農薬を使わないので虫が多く、長袖、長ズボンで、ベールのような網をかぶって。あと、あの辺りはイノシシやアライグマも出ます。アライグマにも一度遭遇しました。とうもろこしを100本植えてカラスやアライグマに90本やられてしまったこともあります。

もう1つは連作障害対応です。これはなかなか難しい。例えばナスは家庭菜園での人気野菜ですが、ナスはもちろん、同じナス科のトマトやじゃがいもは、ナスの後に作付けすると病気を起こしやすくなったり、生育が妨げられたりします。初めて借りた農園でこれらの作物が突然病気になったら、前の所有者がナスを育てていたのかもしれません。


【トッテン】 知りませんでした。あとでもっと詳しく教えてください。対策はあるのですか。


【佐藤】 私は輪作を心がけ、連作になっても障害が出ないようにするために昨年夏から工夫をしています。研究成果が出たらまたお知らせします。


【トッテン】 ぜひお願いします。勉強することがたくさんあります。今後、新たにやろうとされていることなどありますか。


【佐藤】 できたらいいなと思っているのは、家庭菜園をしたい人と後継者のいない農業従事者の出会いの場を作るようなWebサイトを作ることですね。またそこにはノウハウを提供するコンサルタントも必要でしょう。この三者の連携がとれれば1つのビジネス・モデルとなる。N:Nの出会い(マッチング)がWeb2.0の考え方かなと思います。そんなサイトがあれば農機具や種苗屋さんがバナー広告でも出してくれて、維持運営費が助かるかなと(笑)。


【トッテン】 おもしろいですね。アシストの農芸プロジェクトの次はそんな仕組みを作ろうかな。


【佐藤】 そして農地を提供する農家のことも考える必要があると思います。その地域にどんな産業を提供できるかと。そこで考えたのは「つまものビジネス」で、例えば笹、ヒノキの葉っぱや秋の紅葉といった「つま」をWebサイトで宣伝して料理屋さんなどに販売するビジネスはどうかと思ったのですが、インターネットで調べたら「つま」を商品化しているビジネスは、すでに徳島県でやっていました。


■野菜への愛

【トッテン】 農業を中心にしたコミュニテイ、いいですね。こういうことを国が本気で取り組めば、日本の自給率は簡単に直せると思います。やりたい人はたくさんいると思います。


【佐藤】 そうですね。見学を希望する若者もいます。基本的に野菜は、土と水(雨)、光が育ててくれます。私たちはそれに対して若干のお手伝いをするだけです。テニスのようにサーティラブやフォーティラブではなく、野菜に対する本当のラブ(純粋な愛)です。真心を込めて作った新鮮野菜を私はご近所に配り歩いていますが「おいしいね」と言われると、もっともっと色々な野菜を作ろうと思いますね。


【トッテン】 佐藤さん、福岡正信(※)みたいです。今日は良いお話を本当に有難うございました。



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 ※ 福岡正信氏
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自然農法を生み出した人物。愛媛県伊予市に生まれる。岐阜高等農林学校(現岐阜大学応用生物科学部)卒。自然農法は、日本よりも海外で実践している例が多い。「自然農法」の提唱者として知られる。愛媛県に住み、自然に逆らわない無の哲学のもとに農業を営む。国内の農業関係者はあまり注目していないが、『わら一本の革命』が各国語に翻訳されたあと、海外での信頼度は絶大である。