前回のコラムでは、「営業報告」を「顧客との接点情報」の蓄積と意味付けました。効果的な報告システムの実装とは、単に商談報告の登録・通知機能を実装するだけではなく、営業活動全体を支援するシステムとして検討する必要があります。また、訪問前の事前準備が商談の主導権を左右することも忘れてはなりません。
今回のコラムでは、「顧客」に着目して営業活動と報告内容の全体像を検討してみましょう。
下図は、顧客接点と報告の仕組みを図式化したものです。営業の報告すべき情報(システムの視点ではトランザクションと言います)は、(1)予定、(2)商談、(3)案件の3つに大別できます。

この3つの情報について、その意味と関係性を説明しましょう。
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(1)予定を登録する
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前回のコラムでご説明したとおり、営業スキルを向上させるためには、訪問の事前準備が重要なポイントです。そして顧客との面談予定は、「WHEN,WHO,WHERE,WHAT」の4つの事実で管理し、利用ツールとしてはスケジューラが有効です。
システムの視点では、営業担当者の入力負荷を軽減するために、スケジューラと顧客マスター(WHERE)の連携や、展示会フォローやクレーム対応などの営業アクション(WHAT)をあらかじめ標準化しておき、選択式(プルダウン等)にするなどの工夫が必要です。また、営業スタイルによっては、同行者や、複数日予定の一括登録などの便利機能も合わせて検討しましょう。
またルート型の営業活動では、予定の派生(オプション)として訪問計画の実装を検討します。計画段階では、顧客の重要度、案件の進捗情報、訪問先の場所などの視点で、営業特性に応じた最適な計画を立案できる仕組みが必要になります。当然、計画情報(WHEN,WHO,WHERE)は、予定(スケジューラ)へ自動的に引き継がれることは言うまでもありません。

※「計画」から「予定」へは、“いつ”、“誰に”といった確定情報ではなく、“いつ頃”、“どこに”といった不確定情報が引き継がれ、「予定」段階で確定情報へと変化します。
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(2)活動報告を記述する
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顧客訪問後の商談記録が活動報告になります。すでにスケジュール登録(予定)段階で、4つの事実(WHEN,WHO,WHERE,WHAT)が入力されていますので、予定変更がない限りスケジュール情報が引き継がれることが重要です(入力負荷軽減を目的として)。さらに商品マスターとの連携や報告内容を選択式にするなどの工夫も検討しましょう。
ここで登録される活動報告は、上位管理者に対しては業務報告となり、営業マネージャーや技術職などの他職種に対しては報連相の基本情報となります。したがって、‘報連相’を円滑に実施するためには、活動報告を適宜通知する(必要に応じてコメントやアドバイスを返信する)機能が必要になります。仮に電話にてコミュニケーションを行う場合においても、事前に商談内容を通知しておくことで円滑なコミュニケーションが期待できます。
さらに活動報告は、顧客をキーとした商談履歴(コンタクト履歴)として一元管理されることで、営業担当者の移動や退職に伴う引継ぎを簡素化したり、営業担当者個人の備忘録としての役割を果たします。
活動報告は、“その時点の商談内容”として確認・通知・蓄積され、顧客商談履歴として再利用されますが、活動報告の派生(オプション)として、「顧客ナレッジ」と「顧客の声」という利用方法もあります。

「顧客ナレッジ」とは、商談中に知り得た“顧客に関する定性情報”(提出提案書、顧客組織の役割、担当者の趣味嗜好、学歴・派閥など)を、活動報告から独立させ「別の器」で管理することを意味します。
もう1つのオプションは、「顧客の声(VOC:Voice Of Customer)」で、顧客の戦略やテーマ、クレームなどの情報を、これも「別の器」で管理し、是正状況を把握したり来たるべき時期に提案を行うための基礎情報(案件の卵)として活用します。
“(2)商談”における営業現場から収集される「商談履歴」、「顧客ナレッジ」、「顧客の声」といった定性情報は、「お客様カルテ」として一元的に管理することで、「営業活動におけるCRM(顧客との関係管理)」を実現可能にします。
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(3)案件の進捗を更新する
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(2)の商談において、提案期間が中長期にわたる、商談規模が大きい、新規の取引を開拓したいなどの理由から、案件管理を個別に行う必要がある場合には、(2)の商談から案件を独立させます。
案件管理の必要性は営業スタイルによって異なりますし、(1)の予定と(2)の商談は時間軸で運用できますが、(3)の案件はイベント主導なので、営業システムを構築する際には、それぞれの関係性に関する考慮が必要です。
案件とは、その発生から状態(受注確度やステップ、受注予定金額など)の変化を経て、終了(獲得や失注)に至るまでの、すなわちトランザクション(サイクルのない)管理を意味します。案件を報告する目的は、当該案件の関係者に最新の進捗状況を「見える化」することによりチーム・セリングを促し、案件のリード・タイム短縮と受注確度を向上させることを期待します。さらに、確度別や進度(ステージ)別に金額を集計することで、リアル・タイムの業績予測を可能とし、迅速な経営判断や意思決定を促進することにあります。
案件情報が更新されるのは、基本的に(2)の商談結果によって案件に状態変化が起こった時です。そして、商談と案件には以下のように双方向の関係が存在します。

商談から案件を見た場合には、商談(訪問)先企業にて複数案件を並行提案している場合(商談先はA社、案件もA社で複数)や、商談先はパートナー企業だが商談内容はエンドユーザの案件が複数存在する(商談先はA、案件はB社とC社)といったように、その間には1対nの関係があります。
逆に案件から商談を見た場合には、当該案件の商談はエンドユーザや販売代理店など複数の商談が紐付く(案件はA社、商談先はA社とB社とC社)といったように、これも1対nの関係にあります。

つまり商談と案件の間にはn対nの関係性がありますので、各々が独立しつつ双方向の関係性を保つ運用が必要になります。
また案件にはその派生(オプション)として決着が存在します。決着とは案件が最終的に獲得できたのか失注したのかといった結果および結果理由(集計を意識して選択式にすることが望ましい)、案件のリード・タイム、獲得・失注金額などが管理されます。
案件決着の履歴からは、営業担当者の案件に費やす平均期間(リード・タイム)、案件毎の活動量(商談との紐付け)、獲得・失注の傾向(結果理由)などが導き出され、これら情報を分析することで営業現場や組織の課題や改善項目が明確化されます。
最後に(1)予定、(2)商談、(3)案件の3つの報告情報(トランザクション)と、その派生(オプション)を図式化したのは次の図です。

このように実際に営業活動の流れに沿った仕組みを構築することで、前述の通りすべての営業活動(顧客接点)情報は、「お客様カルテ」として一元管理されます。さらに「お客様カルテ」は、短期的には次の計画へのインプットとして戦略的に再利用が可能で、中長期的には企業の資産として蓄積されます。この思想は、過去のSFAやCRMとは異なり、「営業活動におけるCRM(顧客との関係管理)」という新たな営業支援システムのご提案となります。
本コラムは、組織営業力強化を目指した「営業報告の活用法」として連載してまいりましたが、営業報告を単なる報告システム(結果管理)として実装するのではなく、計画へのフィードバックや情報の再利用といった効果を意識してまとめました。
本連載は、今回にて一旦終了とさせていただきますが、これまで説明してまいりました仕組み構築(情報技術)は、あくまでも道具でしかありません。当然のことながら、道具を使いこなすのは人(営業担当者)です。機会がありましたら、「人」の側面から見た営業力強化を話題として取り上げてみたいと思います。
本コラムに関する忌憚のないご意見を頂戴できれば幸いです。
(※これまでのコラムについては以下をご参照ください。)
「効果的な報告システムの実装方法【その1】」
「効果的な報告システムの実装方法【その2】」
「効果的な報告システムの実装方法【その3】」
「効果的な報告システムの実装方法【その4】」
「効果的な報告システムの実装方法【その5】」
「効果的な報告システムの実装方法【その6】」
「効果的な報告システムの実装方法【その7】」
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