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情報誌『アシスト』

2008 MAY/JUN 2008/05/01
公開ソフトウェア


OpenOffice.org情報交換会 ~開催報告~


アシストではOpenOffice.orgに関する情報交換会(東京3回目、大阪1回目)を開催し、50社80名の企業の皆様にご参加をいただきました。当日はアシストより「現場からの報告」と題して、昨年から開始しているOpenOffice.org支援サービスにおけるアセスメント・サービスの実施報告ならびにマクロ書き換えの検証作業結果を、書き換え事例とともに報告させていただきました。その後、Mozilla Japanの瀧田佐登子様、日本アイ・ビー・エムの森島秀明様(大阪)、西孝治様(東京)にご講演をいただきました。以下、講演内容の抜粋です。



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 ■講演:『企業・大学で利用が進む
           Firefox & Thunderbird』

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     Mozilla Japan 代表理事 瀧田 佐登子様


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有限責任中間法人 Mozilla Japan は、オープンソース・ソフトウェアプロジェクトを支援するために2004年に設立された非営利法人である。本日は、Mozilla社が提供するオープンソース・ソフトウェアであるブラウザ「Firefox」と、メール・ソフト「Thunderbird」についてお話しする。


【ブラウザの歴史

ブラウザと言えば、MicrosoftのInternet Explorer(以下IE)、過去にはNetscapeがあるが、Mozillaが提供するFirefoxはNetscapeが開発したNetscape Communicatorのソースコードを基にしたオープンソース製品であり、現在、全世界でアクティブ・ユーザは約1億5千万人、ダウンロード数は5億回を超えている。ブラウザの歴史を振り返ると、現在はIEが標準だがNetscapeがシェアを誇った時代があった。それが変わったのは1998年、NetscapeがCommunicatorというソフトを無償配布し始めた時だ。この背景にはMicrosoftとのシェア争いをする中で、企業内で作る技術の行き詰まりなどから、外からの知恵を入れようということでオープンソース化するという決断があった。オープンソース化することで資産を公共化し、標準をベースにした次世代ブラウザを作っていこうという思想だったのである。しかしオープンソースをベースにした進化したブラウザ上で、昔の機能が動かないという現象が起きてしまい、企業のNetscape離れが起きた。1999年頃はネットワークが普及し、企業がWebベースでイントラを作ろうとしていた時代である。こうして多くの企業が選択したのがIEだった。しかし、Netscapeを基にしたMozillaはその後もオープンソースの世界でブラウザの研究を地道に続け、2004年にFirefoxを完成させた。

当初オープンソースは技術者向けのイメージがあったため、一般の人にも安心して使ってもらえるようにするには受け皿になる場所が必要と考え、Mozilla Japanを立ち上げた。その頃企業を訪問すると、「今さらなぜブラウザの組織を立ち上げるのか」、「IEを使っているから必要ない」とよく言われた。しかしFirefoxをリリースして状況が徐々に変わってきた。1つはインターネットの世界が激変し、一般の人が気軽にネットで買い物をするようになり、ブラウザが身近なものとなったことだ。そしてここにきてアシストのように、企業が安心してFirefoxを利用するために不可欠なサポートを提供する企業も出始めた。このためMozilla Japanは、改めてWebやオープン・スタンダードの意義というものを皆さんに問いかける時期に来ていると思っている。


【今、選択の時】

なぜ今ブラウザ選択の時なのか。それはIE7の互換性の問題のために、Netscapeが経験したことを今Microsoftが経験しているからである。またVista問題もある。その根底にはベンダー依存の仕様でよいのかということが挙げられる。OSやアプリケーションのバージョンアップにどう対応するか、独自仕様の弊害やいつまでサポートがあるかといったことを考慮してユーザは今後の計画を立てるべきだ。オープンソースで無償だからというだけでなくFirefoxを選択肢の1つに検討する企業が増えているのはこのためである。

その選択肢のFirefoxだが、Mozilla Japanは125名の社員がマーケティングやコミュニティをサポートし、世界でソースコード貢献者1,600人、開発途上版のテスターが2万人、ベータ版ユーザが50万人いる。この他にもローカライズ貢献者、テクニカル・ライター、拡張機能作者などがオープンソース・コミュニティと呼ばれるボランティア・ベースの組織を通して参画している。製品の開発プロセスでは段階ごとに設計レビュー、脅威のモデル化、侵入テストなどのセキュリティ・チェックが行われている。何よりオープンソースはガラス張りであり、セキュリティ・ホールについて隠されていることは何もない。シマンテックが「Firefoxは安全か」というレポートを出し、IEと比較してセキュリティ・ホールが多いと報告していたが、Firefoxは隠していないため、それ以上ないという数字であり、逆にIEは公にされていないものもあるということをご承知おきいただきたい。


【導入状況】

現在Firefoxは、地方自治体などではオープンソース・ソフトのデスクトップ導入により徐々に普及している。また企業では大手SIベンダーなど、推奨ブラウザとして使用しているところも出てきた。社内イントラでIEを使っているが、外部は安全を考慮してFirefoxを使うようにしているという企業も出てきている。メール・ソフトThunderbirdは、大手グローバル企業などで導入が進んでいる。カスタマイズ性を評価されて社内展開されるケースが多い。大学での導入状況は2007年、国立大学の半数以上がFirefoxを推奨しているが、公立、私立の導入はまだ1割程度しかなく、もともとNetscapeを使用していたところが、NetscapeがなくなったためにFirefoxへ移行したということのようである。

Firefoxへ移行する場合はMozillaのサイトにFAQが用意されているし、またサポートが必要という企業はアシストに相談するなど、是非この機会にFirefox、Thunderbirdをご検討いただきたいと思う。
 




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■講演:『自社内で始まった
     Open Document Formatの利用と今後の展開』

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     日本アイ・ビー・エム株式会社 
     ソフトウェア事業
     ロータス事業部

     森島秀明様(写真上▲)




     日本アイ・ビー・エム株式会社 
     ソフトウェア事業
     マーケティング&ストラテジー

     西 孝治様(写真上 ご講演の模様▲)


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日本アイ・ビー・エム(以下IBM)は、Lotus Notesに象徴されるクライアント側のソフトウェアを提供していることからMicrosoftと比較されることが多い。現実としても、IBMはODFの社内利用、そしてベンダーとしてオープン・プラットフォームの普及/啓蒙に取り組んでいる。


【クライアント:2つの道】

クライアント分野でわれわれは20年Microsoft製品と付き合っているが、ここに来て2つの道が出てきた。1つはWindows VistaとOffice2007という世界、もう1つはLinux、Windows、Mac等OSに選択肢があり、それらを吸収するクライアント・ミドルウェア、その上にLotus NotesやOpenOffice.orgなどオープン系のアプリケーションを載せて使用するという世界である。IBMはベンダーとして後者の道を提供していこうという方針である。このようなオープン性を重視する選択肢の多様化はサーバ側では以前から行われており、クライアント側もこれからはこのようにレイヤーに分けて互換性の違いを吸収していく方法がとられるべきだと考える。オフィス・ツールの市場規模を見ると、Microsoftは昨年世界においてオフィス・ソフト関係で1兆2千億円の売上があった。日本市場は約1割、1,000億円程度だと推定されるが、果たしてわれわれはユーザとしてそれに見合ったサポートの付加価値を受けているのであろうか。この費用を別の業務アプリケーションの開発などビジネスに役立つプロジェクトに投資すべきではないか、というのがIBMの提案である。


【市場の動き】

オープン・クライアントの市場動向を見ると、ガートナー・レポートによればオーストラリアでは77%の企業がVista、Office2007へ移行せず他の選択肢を検討すると回答している。またPCベンダーでは「HP社はLinux系に移行しているユーザが増えているためプリインストールの段階からLinuxOSを入れることを計画している」、「Dellは中国においてNovellのSUSE Linuxを搭載したシステムを販売開始する」という。また、ユーザ側での大きな事例を見ると、プジョーでは75,000台のWindowsクライアントを使用していたが、コスト削減のためにLinux系クライアントOSへ移行するプロジェクトが進行中とのことである。

IBM社内では、現時点の標準環境としてWindowsXPと2000、そしてOpen Client for Linuxという3つの選択肢がある。IBMにおけるOpen Clientの定義は、マルチOSの混在環境とJavaによるオープンなアプリケーション環境である。ブラウザはIE6までで、IE7へのアップグレードは禁止されている。オフィス・ソフトの分野では、買収したLotus製品以外にOffice2003についてもコーポレート契約を締結していたが、Office2007については契約を更新しないという決断をした。その背景にあるのがOpen Client for Linuxであり、Firefoxもブラウザの社内標準に加わっている。


【無償ソフト配布】

ベンダーとしてのIBMの取り組みとしては、昨年9月よりMS Officeファイルにも対応するODF用オフィス・ソフトLotus Symphonyの無償配布を開始している。40万人のIBM社員がオープンソース・ソフトを利用することでMS Officeのライセンス・コストを削減するという狙いと同時に、販売するものを自ら使うという方針に沿ったものである。同時に標準化への貢献ということでOpenOffice.orgにも正式加入し、技術面でも協力していく意向を表明した。Lotus Symphonyはこれまでベータ版を4回出すとともに、同等の機能がすでにLotus Notes8の機能として標準搭載されている。Lotus Symphonyとして単独の利用においても、無償配布開始後2週間で10万ダウンロードという予想外の大きな反響があり、MS Officeライセンスに対するユーザの悩みの深さに驚いている。

お客様の中には、IBMというとメインフレームに象徴される「顧客囲い込み」を連想される方もおられるかも知れないが、ソフトウェアに関しては非常に強くオープン性を重視している。Eclipseをはじめオープンソースのコミュニティに貢献し、クライアント系の開発ツールにも注力している。その理由はソフトウェアは日々進化しており、IBMといえども自社ですべての技術革新を担うことは不可能であるからだ。最先端の高付加価値の技術開発に自社のリソースを集中しながら、すでにメンテナンス・フェーズになった分野はオープンソースやコミュニティに委ねてもよいのではないか、というのがIBMの基本的な考えである。そのためOpenOffice.orgなどはすでにコモディティ化している技術だというのがIBMの見解である。

OpenOffice.orgへ移行というと、常にすべてのユーザやPCを1台残らず移行しなければならないという固定観念が特に運用管理を行っている方にはあるようだが、すべてを移行する必要はないと考える。ユーザには様々なレベルがあり、パワー・ユーザと一般オフィス・ユーザでは必要な機能は異なる。特にマクロを無理やり移行させるという考え方もあるが、Excelのレガシー・アプリケーションを移行してまでクライアント側で保有し続けることは、内部統制への対応などを考慮するとベストな選択肢とは限らないのではないかとIBMは考える。例えば経営データを分析加工したファイルについてはメールで転送すること自体、情報漏洩という面で内部統制に抵触しかねない。IBMでは基本的にマクロを使ったりAccessを使ったデータはサーバ・アプリケーションに移行して、できるだけクライアント側に業務用データを保有しないという考え方を選択肢の1つとしてご提案している。

以上、IBMの社内の動向、ならびにベンダーとしての動向も踏まえてオープンソース・ソフトウェア関係の取り組みをご紹介させていただいた。今後のオープンソース戦略立案のご参考になれば幸いである。
 




アシスト 支援統括部 公開ソフト推進部

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