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情報誌『アシスト』

2009 Spring 2009/03/01
アメリカ通信 【USA NOW】

カリフォルニアから最新の米国IT事情をお届けします

新時代を模索するアメリカIT

杉田成彦




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   ライター 杉田成彦 ● text by Naruhiko Sugita

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  米国カリフォルニア州、サンフランシスコ・ベイエリ
  アに在住。テクノロジー企業から地域マーケティング
  ファームまで、幅広いカスタマーの多様な媒体に、日
  本語ローカリゼーションやコンサルティング・サービ
  スを提供。

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新時代を模索するアメリカIT
 



オンライン上で人を繋ぐソーシャル・ネットワーキング会社の経営陣に、日本ではアメリカとは異なるソーシャル・ネットワーキングのサービスが発展していることの理由を尋ねられた。

洗いざらい自身を公開し、単刀直入に自己紹介をぶつけ合ってドライに出会うアメリカ型の繋がり方。片や、媒体として架空のキャラクターまで登場させ、微妙な距離の匙加減を求める日本型のウェットなコミュニケーション。「セキュリティ対策やケータイへの展開といった技術や運用面の違いも大きいが、決定的な理由は、ユーザが所属する文化の違いに他ならない」そう答える私に、インド系の風貌を持つ若い経営チームの面々は腕を組む。

同じ衣装をまとったサービスが画一的に世界に広まるこれまでのITのグローバルな汎用性に、ユーザ文化の独自性が背反する時代を迎えている。


■背反の時代のIT考察

ITの汎用性とユーザの独自性が距離をとる兆候は、アメリカのビジネス界の「IT利用常識」にも現れている。企業の情報処理は、今や情報サービス提供者のサーバで行われ、独自のデータや機能をサービス提供者に預けてしまう形が一般的だが、このいわゆる「クラウド・コンピューティング」と呼ばれる運用を問い直すトレンドの出現が指摘されている(※1)。例えば、電子メール・サービスでは、クラウド(Cloud=雲)であるサービス提供者に自社の情報資産を預けているが、資産を守るために、クラウドから自己の手中に取り戻そうとする企業が出てきているのである。企業文化と資産を守る城郭化の出現が、企業の枠を超えたネットワーク内での協働の必要性に、微妙な背反を突きつける。


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これまでのグローバルなIT汎用の流れをシフトさせる「背反の時代」は、既存のアイディアが問い直される試行錯誤の時代でもある。このことは、最新のITガジェット(小型機器)の傾向にも色濃く見て取れる。大容量の音楽プレーヤー、めがね型ディスプレー、多機能のネット端末、新スタイルのカーナビ、ロープのない電子縄跳び、スーパーのカートに取り付ける品目メモ器…。この春の多くの新製品が無用な機能の追加によって、今まで以上の手間を強い、機器の従順な学習者からIT利用の主導者へと変化するユーザの志向を取りこぼす試行錯誤に陥っている。

しかも、目下の経済大不況が背反の時代に悩めるITにさらなる試練を強いている。『USNews & World Report』誌は、年頭に、大不況に萎縮する2009年の生活を少しでも好転させる50の方法をアメリカの人びとに紹介しているが、そのほとんどは健康習慣や食品、住環境などの変更に関するものであり、IT関連は、わずか数点に過ぎない。しかも、そのうちの1つは、用のないITガジェットを捨てて気分を一新するという、なんとも皮肉な提案だ。


■ユーザが主導のスマートなIT

こんな中、アメリカのITに希望の光を与えるものもいくつかある。まずは、音楽のビデオ・ゲーム。人が主役の歌や踊りは不況時でも消滅しない。そして、オンラインの映画配信やウェブ・テレビなど、ユーザがスケジュールとテーマを手中に収めるメディア・サービスが堅調だ。技術面では、異なるITサービスを融合して、有益性を引き出す「マッシュアップ・ソフト」と呼ばれるものが注目されている。例えば、買い物や不動産などの有力サイトの情報と、地図やコミュニティのサイトなどをユーザの操作なしにマッシュし、利用価値の高い1つのアイテムに練り上げる技術などである。

そして、もう1つ。経済を瀕死の危篤状態から救い出す役目を背負うオバマ大統領の経済戦略の柱の1つは「環境ビジネス」であるが、公共投資による省エネ装置の導入促進ムードにより、脱石油の新エネルギー・ビジネスは、すでに底堅さを見せ始めている。この傾向と手を取り合うITの活用には、エネルギーの需要と供給を最適化する次世代メーターの普及促進などが挙げられる。電気、ガス、水など、各家庭のユーザが快適性を損なわずに手間なく省エネを達成でき、エネルギー生産の飛躍的な効率化が期待されている。




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※写真: サンフランシスコ・ベイエリア北部、リッチモンド市にある民間の太陽光発電ファーム。脱石油の新ソースから得るエネルギーを、ITによってスマートに使用することで需給を最適化し、環境面とコスト面にさらなる恩恵を与えることができる。

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注釈※1

Harvard Business School のAndrew McAfee教授などのITスペシャリストによる指摘。