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情報誌『アシスト』

2009 Summer 2009/06/01
【トップ・インタビュー】 ダイコク電機株式会社

日本の娯楽、パチンコ。ダイコク電機はパチンコ業界において、常にファンを第一に考え、コンピュータ技術をもとにホールや遊技機メーカーの経営に役立つ製品を提案し、着実な成長を遂げている企業です。今回は、代表取締役社長 栢森雅勝様をアシスト市ヶ谷オフィスにお迎えして、ビル・トッテンがお話を伺いました。

変化の時代に柔軟に対応
成長とは、常に変わりゆくこと

栢森  雅勝 様
ダイコク電機株式会社 代表取締役社長
栢森 雅勝 様
ビル・トッテン
アシスト
ビル・トッテン




変化の時代に柔軟に対応

◆ 成長とは、常に変わりゆくこと ◆
 




パチンコは不況に強いか?


【トッテン】 私はパチンコをしないので、今日は色々教えていただきたいのですが、まず景気についてのお話を伺えますか。パチンコ業界は景気が悪くなるほど活況する、という印象があるのですが。


【栢森様(以下、敬称略)】 そんなことはありません。レジャー産業ですからやはり影響を受けます。かつてバブルが崩壊した時、パチンコ業界は好調でした。それで不況に強い業種と見直され、銀行やリース会社といった第三者資本が入るようになりました。しかし振り返ってみると、それは“CR機”という、新しいパチンコ台が登場し、もてはやされた一過性のブームでした。


【トッテン】 それでも現在、御社は業績が好調です。


【栢森】 2008年夏から輸出企業の業績が落ち込み、年末には小売が不振と言われていましたが、業界では2009年1月までパチンコ台の1台当たりの粗利は、まだ前年を下回っていません。そういう意味でパチンコは、ブランド品や旅行のような非日常ではなく、日常に近い、気晴らし的な産業で、不況の影響は受けにくいと言えるかもしれません。


【トッテン】 パチンコ業界では粗利というのは何を指すのでしょうか。


【栢森】 一般小売だと製品を販売し、売上がお店に残ります。しかし、パチンコでは、顧客への還元があります。ですからパチンコ店舗に残るのは売上と還元の差額である営業粗利です。ちなみに、今年1月の顧客1人当たりの時間粗利は890円でした。


【トッテン】 ゴルフや買い物中毒と比べると、ずっと安いレジャーではないでしょうか。だから景気が悪くなっても影響を受けないのですね。


【栢森】 時間当たりの消費金額で言うと安い遊びです。今は、当たりが大きいが負けも大きい、というパチンコ台が人気があるので、時間当たりの消費金額が上がって、時間粗利は890円となっていますが、普通は、大体700円から800円程度です。


【トッテン】 パチンコと言えば土井たか子氏が好きでしたね。一般庶民の娯楽のはずです(笑)。では改めて、ダイコク電機の会社概要について教えてください。


【栢森】 パチンコ・ホール向けにコンピュータ・システムを提供する情報システム事業と、パチンコやパチスロ遊技機メーカーに各種ユニットを供給する制御システム事業を柱としています。ダイコク電機の事業基盤を作ったのは、「ホールコンピュータ」という装置です。それはパチンコ台の売上集計装置で、お客様の遊ぶ楽しさを殺さないようにしながら、お店が利益を維持できるようにする管理手法を提供する装置です。パチンコ台はそれぞれ違った面白さがありますので、それを損ねないように管理するにはいくつか微妙なポイントがあります。それを指標として提示するのがホールコンピュータで、パチンコ台の活用に重要な役割を果たします。


【トッテン】 パチンコ・ホールに1台必ず必要なシステムというわけですね。


【栢森】 はい。当社は、ホールコンピュータで事業基盤を築き、今でもシェアは約4割あります。しかし、現在、ホールコンピュータが自社の売上に占める割合は10%にしかなりません。もしいつまでもホールコンピュータだけに依存していたら、当社の規模は今の10分の1になっていたと思います。




市場開拓は提案型
ダイコク電機にしかない情報サービスを提供


【トッテン】 それでは、御社の成長を支えてきたのは?


【栢森】 積極的な市場開拓です。80年代末に「DK-SIS」というパチンコ・ホール向けの会員制情報提供サービスを開始しました。契約していただいたお店から日次営業データを集めて、会員に集計データを提供しています。現在では全国のパチンコ台の18%の情報が集まってきています。要するに小売のPOSデータですね。ですから、今、人気のパチンコ台はどれで、全体としてこういう動きがあるということがリアルタイムでわかります。「DK-SIS」のような情報サービスは、業界ではダイコク電機だけしか提供していません。



【トッテン】 18%とはすごいですね。テレビなどはわずか数千件のデータで視聴率を出しているのに。どんな台が人気があるといった情報は、確かにPOSデータですね。これからはハードよりもそうした情報の売上の方が大きくなるとお考えですか。


【栢森】 売上で言うと桁が3つくらい違いますから、それはありません。情報サービスは価格を高くすると普及せず、下げると普及して情報量も増える新聞のようなものだと見ています。先ほど市場開拓と言いましたが、パチンコ業界の市場規模は2005年の4.7兆円のピークから減少して2008年は4.4兆円で、大体はこのぐらいの規模があります。しかしその一方で、パチンコ・ホールは大型化とチェーン店化が進み、店舗数は減少し続けています。当社は、この10年、成熟産業の中でいかに成長路線を描くか、ということを大きなテーマとして取り組んできました。主力商品であるホールコンピュータは店舗に1台で、店舗数は減少している。ならば店舗からパチンコ台へビジネス・ユニットを持っていこうと、台周りのビジネスに集中してきました。




パチンコ・ファンが喜ぶ製品を開発すれば、市場に定着させることができる。


【トッテン】 台周りのサービス…。それはパチンコ台に付加価値を付けるということですか。


【栢森】 当社の直接の顧客は設備機器の販売先であるパチンコ・ホールと、基板の設計、製造およびソフトの開発を請け負うパチンコ遊技機メーカーですが、常にパチンコ・ファンを念頭に置いて製品を開発しています。ファンが喜ぶことを店舗も台メーカーも望んでいますから、常にファンにとって良いものを開発して、ファンに受け入れられたものが市場に定着します。現在、ファン向けの情報公開端末はどこの店舗にも入っていますが、当社が最初にそれを開発し、市場に投入しました。それは今“台ランプ”という形になって、パチンコ台の上に付いています。元々は、常連客しか勝てないというような不信感をなくすために開発されましたが、台の出玉推移や大当たり回数が表示されるので、どの台を選ぶのかという選択の楽しみをもファンに提供しています。また台の横につく個別のサービス端末は、見たいデータを手元でチェックしたり、お茶の注文を受け付けたり、といったサービスを提供します。このサービス端末のシェアは9割はあると考えています。


【トッテン】 利用者の立場に立ってサービスを創造していったということなのですね。


【栢森】 はい。でも今は、次の新サービスを打ち出しています。それは「MIRAIGATE」(ミライゲート)と呼ばれるコンセプトで、ここで従来のビジネスの形を変え、設備販売から脱却し、販売後も継続するビジネスを作っていこうとしています。その要素は“システム”と“ネットワーク”と“人”です。“システム”というのは機能によって顧客に利便性を提供します。“ネットワーク”は柔軟性を提供します。店舗では毎月パチンコ台が入れ替わりますので、ファンにもっと楽しんでもらうために、機種の紹介や画像などを柔軟にネットワークで提供します。そして最後の“人”というのは、どんな機能があっても製品が店舗で活用されなければ意味がありませんので、価値の実現を果たすために当社の社員によって店舗で活用してもらうよう働きかけます。これからはこの3要素の組み合わせによる事業へ変えていこうとしています。




固執してはいけない。変化こそが将来へつながる道を見つける術になる。


【トッテン】 常に新しい切り口を模索する姿勢、とても刺激になります。社長自らがこのような戦略企画を立案されるのですか。


【栢森】 戦略企画はもちろん社内でよく議論します。会社作り、という意味では、会社は個人と組織によって成り立っていますから、個人の能力を成長させることで会社も成長し、組織の仕事のやり方を変えることで組織も成長します。会社は、個人と組織の両方が成長することで強くなり、その成果がこういう製品になって出てきているのだと思います。


【トッテン】 環境や状況は常に変化しているから、それに合わせて組織も変化しないといけないということですね。


【栢森】 環境変化に合わせて仕事のやり方が変わらなければ、組織の能力が向上したとは言えないでしょう。変化させ続けることも業務だと思っています。変わる時の望ましいアプローチは、最初に意識を変えることだと思っています。望ましい変化は何か、解決すべき課題の認識、これを全社で共有し、そして仕事や組織、製品を変えていきます。


【トッテン】 今まさに大きな変化の中にあります。そんな中で、率先して変化を未来へつなげようとしている御社の活動はとても勉強になりました。


【栢森】 世の中が大きく変わる時には、社会の価値観や行動が変わります。企業が経済活動の中で利益を得ることができるのは、「払っても良い」と思ってもらえるような付加価値を提供しているからです。ですから社会の価値観が変わって、付加価値を感じさせることができなくなったビジネスは衰退していきます。付加価値が認められなくなった時に、従来の活動に固執し続けるのは「労多く益少ない」行為です。もはや付加価値を生み出せなくなったものは、大胆に、計画的に切り捨てなければなりません。世の中が大きく変わる時には、変化こそが将来へとつながる道だと思います。


【トッテン】 本日はお忙しいところ有難うございました。




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 ◆◇◆ 栢森 雅勝(かやもりまさかつ)様 プロフィール ◆◇◆

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  大学院でコンピュータ情報系を学び、1987年にダイコク
  電機株式会社へ入社。2005年に代表取締役社長に就任。
  趣味は仕事を兼ねて、コンピュータ・ゲームと旅行。

                  取材日:2009年2月

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