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情報誌『アシスト』

2009 Summer 2009/06/01
コラム 【特別寄稿】


~ 差別化とコスト優位 ~
顧客価値視点の事業戦略

玉井 健一
小樽商科大学大学院アントレプレナーシップ専攻准教授
玉井 健一



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◆◇◆ 玉井 健一 プロフィール ◆◇◆

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  愛媛県出身、広島大学社会科学研究科博士後期課程を経て、
  現在、小樽商科大学大学院アントレプレナーシップ専攻准教授。
  大学では経営戦略とイノベーション、ケーススタディの講義を
  担当。研究領域は戦略論、イノベーション論で、現在、中小製
  造業の競争力に関する研究を行っている。

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顧客価値視点の事業戦略
~ 差別化とコスト優位 ~




理想的なビジネスの状態とは、顧客が企業の製品やサービスに満足を感じるとともに、企業が十分な利益を得ている状態だと言えます。本コラムでは、この顧客満足と企業の利益につながる事業戦略について考えてみます。
<図参照>





顧客価値を高める


顧客が商品を購入する1つの理由は、その商品が顧客のニーズを満たしていることです。この状況は、図に示した顧客価値、単位コスト(商品1個当たりのコスト)、価格の3要素から説明することができます。

競争戦略論で有名なマイケル・ポーターは、顧客価値を「企業が提供する商品に対して顧客が支払ってもよいと考える金額」と定義していますが、たとえ高価格でも顧客価値がそれを上回っていれば顧客は購入に踏み切ります。つまり、顧客価値を高めることで価格設定の上限(最高価格)が上がるため、顧客価値を高めることが第1の戦略的方向性になるのです。



コストを下げる


商品が「バリュー・プライス」と呼ばれるような安い価格で提供される時も、顧客は商品の価値を感じて購入します。この場合の商品価値は、顧客価値と価格の差の広がりからもたらされます。この部分が顧客ベネフィットと呼ばれる、価格以上に顧客が獲得できる顧客価値です。価格を下げれば下げるほど顧客ベネフィットは大きくなり、顧客は商品価値が高いと判断します。しかし、価格が単位コストを下回ると企業は利益確保ができなくなり生存が難しくなるため、商品の単位コストを下げる必要があります。単位コストを下げれば価格の下限(最低価格)が下がるため、これが第2の戦略的方向性になるわけです。

このように、顧客がある製品/サービスを良いと感じて購入するという観点から、2つの事業戦略の方向性が導かれます。どちらも顧客と分け合う利益(図の事業戦略が生み出す利益獲得領域)を増やし、顧客の満足と企業の利益確保の可能性を高めるのです。



差別化戦略


2つの事業戦略のうち、顧客価値を高める手段が差別化戦略です。具体的には、新技術の採用による新機能の付加や、品質、性能向上といった製品そのものの差別化に加え、スピーディーな配送やアフター・サービスの充実といった周辺活動レベルの差別化があります。顧客が感じる差別的特性は様々であるという点を考慮しながら、多面的に顧客価値を高めることができる活動を考え、組み合わせることが必要です。また、顧客価値は顧客が認めて初めて成立するわけですから、企業の独断的視点からではなく顧客の視点から考えていくことも必要でしょう。



コスト優位戦略


もう1つの単位コストを低下させる手段が、コスト優位の戦略です。具体的には、開発、生産、販売における効率的な方法の考案や、製品の原材料や事業で利用する資源を安く購入するルートの開拓等があります。また、これらの試みによって低コスト化が達成され、顧客に低価格商品を訴求することができれば、販売量の増大が見込め、規模の経済による低コスト化も期待できるでしょう。コスト優位の戦略を考えるに当たっては、顧客価値を生んでいない活動を明確にし、それらを取り除くことも必要です。


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事業戦略は、顧客と企業がともに繁栄するための手段に関わっています。具体的な戦略の策定は、業種や企業規模によって異なりますが考え方は同じです。現在は景気低迷の厳しい時期ではありますが、新しい顧客価値を見出すチャンスであるとも言えます。顧客ニーズの変化に注目すれば、新しい顧客価値の提供方法が見えてくるかもしれません。