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情報誌『アシスト』

2009 Summer 2009/06/01
コラム 【USA NOW】

カリフォルニアから最新の米国IT事情をお届けします

最強のローカル
「日本ITにチャンスあり」

杉田成彦




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   ライター 杉田成彦 ● text by Naruhiko Sugita
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  米国カリフォルニア州、サンフランシスコ・ベイエリ
  アに在住。テクノロジー企業から地域マーケティング
  ファームまで、幅広いカスタマーの多様な媒体に、日
  本語ローカリゼーションやコンサルティング・サービ
  スを提供。

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最強のローカル

「日本ITにチャンスあり」
 




科学技術、大衆文化、経済、そして軍事を世界規模で展開する力を持った20世紀のアメリカ。物事を地球規模で広げるグローバル化のエンジンは、このアメリカが築いた「パワー構造」である。これまでのわずか十数年間で驚異的な完遂を見せたITのグローバル化も、このアメリカのパワー構造に司られ、英語とともに世界を包み込んできた。

アメリカのITを他国市場向けに仕立て直すことをローカリゼーション(Localization=特定地域化)と呼ぶ。逆に、ある国の特異性をアメリカ化することをインターナショナリゼーション(Internationalization=国際標準化)と称すことは、このパワー構造を如実に示す。パワー構造は、世界ステージでのIT展開を考える時、好悪を超えた絶対条件になる。




最強のローカル vs.インターナショナル標準


アメリカ文化のルーツが色濃いヨーロッパ諸国などは、このパワー構造への同列化が容易であり、また発展途上の国々では、経済や社会の変革をパワー構造への同化に深く委ねることが多い。しかし、独自文明を根幹として先進経済の一角を占めた日本は、この対極にある最たる例だ。

日本において、英語は今でも他文化の吸収手段であって、日常での必要性が乏しいように、日本のITシーンも、アメリカを始めとするグローバルITが、日本化された技術や仕組み、製品に進化してから日本国内で成熟を見せる。日本は、世界で最も洗練されたローカリゼーションを実現していながら、ローカルであるが故に、インターナショナル標準の枠組みにインパクトを与えないことが多いのである。ITインフラでは世界トップを自認する日本が、パワー構造の側からは、IT競争力で世界17位だと見られる(※1)ことの理由はここにある。

日本のITを、世界をリードする標準へと発展させるには、世界最強の日本のITシーンを、パワー構造の中に押し戻し、世界の様相に再対応させるインターナショナリゼーションを推し進めることが必定となる。それは、性急な英語化を希求することや、パワー構造への同化を試みることではない。


この春、一攫千金メカニズムというインターナショナル標準を、パワー構造の枠内で巧みに体現したイギリス映画「スラムドッグ$ミリオネア」がアカデミー賞を席巻した。それとは対照的に、日本独自のユニークな文化コンテンツで外国語映画賞を受賞した「おくりびと」は、洗練されたローカルがインターナショナリゼーションを遂げた好例である。日本のITの発展と強化も、日本で成熟させた最高レベルの技術を、確実に世界標準につなぐ、高度で多面的な努力によることが理にかなう。




社会インフラとITのセットで標準をリード


日本のITがパワー構造の内部に骨格を築き、世界標準をリードしている分野は、自動車、家電、ビジネス機器などの製造業や、映画、音楽など世界のレーベルを確立したエンターテインメント・ブランドなどに見られるように、長い時間をかけて市場を開拓し、アメリカと世界に根を張ることに成功した産業が後から行ったIT化であった。これらが実証したものは、製品、ブランド、技術、システムなどを支持するユーザが量的に大きく広がることが、標準化をリードする上でのポイントになる。

経済の融解に翻弄されるアメリカは目下、大々的な社会インフラ投資に乗り出しているが、大勢の市民を一気にユーザにできる先端社会インフラと、それに付随するIT技術こそが、世界不況の今、日本が短時間で世界をリードできる分野に他ならない。例えば、日本の鉄道技術は、運行や安全面だけでなく、顧客を最先端のITユーザ集団へと進化させる高度な情報、販売、通信技術の一大集積であるが、このITが結合したインフラは、多くの社会に将来を提示でき、インターナショナリゼーションに向けて強固な足場を築くことができる。

アメリカは、全米10エリアでの高速鉄道建設計画を発表したが、オバマ大統領は、カリフォルニア州のサンフランシスコとロサンゼルスを2時間半で結ぶ高速鉄道路線をまず実現して、「どんな可能性をもたらすことができるのかを国民に示したい」と語った(※2)。社会インフラとITをセットにした日本の技術が、移動手段としての先進性だけでなく、ハードを利用した通信インフラ、多機能ICカードなど、多面展開の先進ITとしてこのチャンスを掴み、パワー構造にインパクトを与えることができるかどうか、注目される。


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※写真: カリフォルニア内陸部とサンフランシスコとの鉄道結節点として重要性を増すアムトラックのオークランド駅。施設整備は徐々に進むが、IT化は遅れ、システムは前世代のまま。高速鉄道が最先端ITインフラの可能性を示すことが期待される。

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【本文の注釈解説】

(※1)
“The Networked Readiness Index 2008-2009 rankings.”『世界経済フォーラム』2009年3月26日。


(※2)
ABC 7 News『KGO-TV』2009年4月17日ほか