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情報誌『アシスト』

2010 Spring 2010/03/01
コラム 【「プチ社内研修」のススメ】 (全2回 - 前編)

お金も時間もかけずに社員の能力が飛躍的に向上する「プチ社内研修」。仕事の能率を上げるには人財育成が肝心。「まずは、簡単なことから始めてみませんか」というご提案です。


「プチ社内研修」のススメ (前編)

鈴木 康宏 様
株式会社日本公文教育研究会
IT戦略室 室長
鈴木 康宏

部署内で毎週1回20分間の「仕事のやり方研修」の講師をしている。これを始める1年半ほど前から、やはり20分程度で情報処理技術者試験問題を3問やっては解説を行うというプチ研修を週2回ずつ行っていたが(連続80回!)、この結果、嬉しいことに受験者5人全員が合格した。これに味をしめて、今度は総合職の社員を対象に「仕事のやり方」に的を絞った研修を始めたというわけである。

記憶は短時間の積み重ねが大切である。覚えたことはすぐに忘れるが、忘れそうな頃にもう一度記憶するという作業を繰り返すことで脳に記憶が定着するのだそうだ。年を取って「もの忘れ」がひどくなったと思っている人も多いが、実は一回聞いて「よし、覚えた」と勝手に思い込んでいるだけで、記憶のための繰り返しが足りないということらしい。現に子供の学習の様子を見ていると、かなりの回数を繰り返すことで記憶を定着させているように見える。寝る前に小学1年生の娘と「ことわざカード」を使って遊んでいるのだが、記憶するのが面白いようで何度も繰り返してはすべてを記憶しようとする。記憶の基本はゲーム感覚で繰り返すということなのだろう。

就業時間中にこのようなプチ研修を行っている会社は少ないと思うが、毎週チーム・ミーティングを行うのと同様に20分くらいの時間をとることはそれほど難しいことではない。簡単にできる上、飛躍的にメンバーの知識が向上するのでオススメである。

社内で異動してきた社員はもともとITについては「ど素人」。こういう人を戦力にするには外部研修も必要だが、何と言っても社内でちょこちょこと研修をするのが費用もかからず、良いのではないかと思う。


IT部門の「仕事のやり方」

ということで、調子に乗って始めた「仕事のやり方研修」であるが、この研修を始めたきっかけはあまりにも皆の仕事の「着地点」がしっかりしていなかったからである。仕事やプロジェクトだけでなく、今流行りの「婚活」などでも同じだと思うが、何を目標としてどこへ着地させるのかということを決めずに右往左往しているケースが多い。システム開発の失敗例の一番が「ユーザの要望を聞き過ぎる」ということだが、これも結局は聞き手が「着地点」を持たずに話を聞いているのが失敗の原因である。落としどころをしっかりと見極められるかどうかがIT担当者の腕の見せ所なのだ。

IT部門抜きのプロジェクトも存在するが、そういうプロジェクトはたいてい構想段階で失敗している。これも原因は同じで「着地点」を見極められないからである。「あれもあったらいいな、これもできたらいいな」というのを詰め込みすぎて、目的がわからなくなってしまい、長い時間をかけたわりには絵に描いた餅ばかりをついてしまう。飛行機でいえば着陸場所がはっきりしない長距離飛行のようなものである。いつまでたっても着陸できずに、挙句の果てには燃料切れで、海の真ん中に墜落してしまうのだ。



どこへ着陸するかの方向性さえ決まれば、どのくらいの費用と時間がかかり、いつ着陸するかということが明確になってくる。しかしぼんやりしていると、このことも不明確になるおそれはある。着地点を決めたはいいが、「マイルストーンの設定」や「業務のブレイクダウン」がしっかりできていないケースである。

プロジェクト・マネジメントの基本は大 きなスケジュールを引き、それを業務レベ ルにブレイクダウンすることだ。何ヵ月もかかるプロジェクトを月、週、日、時間単位にどんどん細かくブレイクダウンしていけるかどうかが計画時に重要なことである。特にその際に節目のマイルストーンの日付をきちんと決めることが大事だ。「3月頃」というのではなく、「3月8日」のように具体的な日付をスケジュールの中に書き込まなければならない。日付を明確にするだけで随分違いが出てくる。

文章にすると大した話ではないのだが、初回の講義でこのような話を図解や具体例で説明しただけで、それからのメンバーの仕事ぶりが見違えるように変わってきた。特にスケジュールに日付が書き込まれるようになったことは大きい。

ビジネス・スキルを学ぶ研修は数多くある。しかし、壮大な人材育成を目論のではなく、仕事のちょっとしたポイントをこのように少しずつ伝授していく「プチ社内研修」というスタイルもなかなか良いのではないかと実感している今日この頃である。


プロフィール
株式会社日本公文教育研究会
IT戦略室 室長
鈴木 康宏
1988年(株)三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。営業職経験後、各種システム開発、システム統合などを経験。2001年東海銀行との合併準備のため(株)UFITに出向。2003年(株)日本公文教育研究会に転職。IT戦略室システム開発チームリーダー、次長経験後、2009年現職の室長に就任。研修のエッセンスをブログ「簡単!仕事術」で公開中
(http://easy-workstyle.com/)