創立60周年を迎えた天龍工業株式会社は、岐阜県各務原市に本社を置き、バス、電車、船舶、航空機など乗物用座席(シート)のトップ・メーカーである。特にバス用シートでは95%のシェアを誇り、日本の輸送産業に大きく貢献している。全国に5工場10営業所/事務所を構え、「お客様第一」、「一流の品質」、「まず協調」を社訓とし、6カンパニー制で、売上の40.6%を占めるシート事業を中心に、ハイブリッド事業(複合材加工、太陽熱温水器など)、航空機事業(部品製造/機体組立など)、環境緑化事業(緑化資材、緑化工法など)の4事業を展開している。
今回、同社で経営情報システムの見直しが行われた背景には、次のような差し迫った課題があったという。
■人手による管理資料作成:企業全体の活動を数値化するのに、各基幹系システムからの原価情報(紙ベース)、財務情報(CSVデータ)を基に、人手による転記、再入力をExcelで行い、部門別経費集計、損益集計、さらに月次、年度決算までの管理資料を作成していた。集計方法は、高度に複雑化したマクロを駆使したExcelで処理されており、部門別損益の結果が財務情報と一致しないことがしばしば発生していた。作成の手間や時間だけでなく、精度的にも問題があり、かつ処理マクロについての仕様書は残っていなかった。
■管理資料の利用水準向上:それまで提供されていた経営管理資料は、過年度の比較さえ容易にできず、単なる月次決算の結果確認にしか利用されていなかった。そのため、「意思決定」を的確に行うための情報を迅速に提供できるシステムが求められていた。
■管理情報の部門重複所有:部門長などの管理責任者は部門データを基に、独自に管理情報を作成し、業績判断を行っていた。各部の主張や部門の業績判断が個別データに基づいており、全社共通の一元化されたデータが必要とされていた。
■基幹システムの連携:基幹システムである生産管理システム、原価計算システム、人事/給与システム、財務会計システムが、これまでの開発経緯から、システム間の連携も、データベース統合もされていない状態だった。
このような課題を克服するために、天龍工業では企画課と情報システム課を統合した「情報企画部」が設立され、システム化が部門目標に掲げられた。また、次の3つのポイントを満たす経営情報システムが求められた。
まず経営者から、従来提出までに7営業日かかっていた経営管理資料を3営業日目で提出するよう、業務改善が求められた。2つ目のポイントとして、使用するデータや資料は、すべて同一情報源から作成、共有できる環境を用意し、部門独自の情報に基づく判断をさせないことが挙げられた。最後に担当者に依存するExcelベースの管理資料作成ではなく、人に依存しないシステムを用意し、情報提供の自動化を図ることが要求された。ただし、補正が可能な仕組み(千円単位の丸め誤差など)として、手入力のデータは残るため、手入力は必要最小限で対応可能なシステムとすることが求められた。
天龍工業が目標としたことは、具体的には、迅速な情報提供を実現するために、各基幹系システムからのデータを自動的に抽出する仕組みを作成し、経営管理レポート用のDWHを構築し、人手を介さないレポーティング・システムを開発することであった。
迅速な情報提供とエンドユーザのPC環境設定の負荷を軽減するために、Webブラウザの利用を前提にし、導入/展開を容易にするために、Web上で提供されるレポートは操作が簡単で、部門長など管理者の利用に際しては、教育の負荷がかからない仕組みが求められた。また、Excelのように複数のシートを使い分けるのではなく、利用者が自分で必要な情報をドリルダウンで適宜参照、把握できるよう柔軟なレポート・システムを目指した。
さらに、システム開発に当たっては、開発工数の短縮化と今後のレポート・システムの運用/維持管理の負荷軽減化を図るために、パッケージ・ツールを採用することにした。また同社には開発要員がおらず、DWH構築ノウハウがないことから、ツールのメリットを最大限生かし、開発経験とノウハウのある開発会社を利用することにした。
以上の要件を満たすツールとして、天龍工業が採用したのは、アシストが提供するWebFOCUSであった。また開発はWebFOCUSでの開発経験のあるSIer、ピーアイシステム株式会社に依頼することにした。
天龍工業がWebFOCUSを選択した理由は、まず、WebFOCUSの開発デモを見て、GUIによるレポート開発、Webブラウザでの使い易さが満足のいくものであったからだという。レポートの作成だけではなく、各基幹システムからデータを抽出/集約し、効率的なレポート作成と早いレスポンスを確保するためにDWHを用意する必要があり、DWH構築のためのWebFOCUSのETL Option(現製品名:iWay DataMigrator)も導入することにした。さらに重要な選択理由として、複数のツールに対してアシストから一貫した技術支援を受けられることの安心感を高く評価いただいた。またアシストが紹介したピーアイシステムのSEが、システム開発の受注前の約3ヵ月間、天龍工業に常駐し、同社の業務内容の理解と信頼関係が構築された中での開発体制となったことから、意思疎通という点からも極めて良い結果がもたらされたという。
天龍工業では、WebFOCUSで構築された経営情報システムの導入効果として、すでに次のような結果が出ている。管理資料作成が、ワンクリックの操作となった。これまで経理課による財務集計後、専任者が1日以上費やしていたのが、人に依存することなく、たったの5分で作成できるようになった。また、5営業日目に管理資料一式を作成できるようになり、2日間の期間短縮を実現することができた。必要な管理資料が、Webブラウザ上のメニュー一覧で表示されるようになったため、利用者はワンクリックで必要な詳細情報を入手できるようになった。さらにドリルダウンを活用することで、利用者自身で詳細情報の確認もでき、不明な原因の絞込みが容易になった。そのため従来は業務担当者に依頼をしなければならなかった調査負荷が大幅に軽減された。
経営者から要求された3営業日目に提出という課題は、今回のシステム開発では未達成となっている。これは他の基幹系システム、特に財務システムの集計終了のタイミングに依存するため、他部門を巻き込んだ改善が必須である。またデータの月末集中入力の軽減化、およびWebブラウザを利用することの印刷上の制約(一覧性、見栄え)の改善も求められている。現在は必要に応じてExcelへデータをダウンロードして印刷しているが、Webからそのまま印刷できるようにしたい、という。これらの課題解決により、同社はさらなる情報活用の改善を目指す。
(2006年「アシストフォーラム名古屋」における天龍工業株式会社様の事例発表内容をまとめたものです。)
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