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ソリューション研究会 定例会
「大谷流:心の元気の作り方」
~吉本興業から学んだマネジメント術~

ソリューション研究会 定例会


アシストのユーザ会、ソリューション研究会「定例会」では、(有)志縁塾(しえんじゅく)人材活性プロデューサーの大谷由里子氏を講師にお招きし、「感じて、興味を持って、動く」人づくりのためのモチベーション・マネジメントに焦点を当てた「自分と人を幸せにする技術」をテーマにお話しいただきました。

ソリューション研究会とは

大谷 由里子様 Otani Yuriko 有限会社志縁塾 人材活性プロデューサー

大谷由里子様

1963年 奈良県生まれ。京都ノートルダム女子大学卒業後、吉本興業に入社。故、横山やすし氏のマネージャを務め、宮川大助・花子などを売り出し注目を集める。88年に退社、フリーのプロデューサーとして独立。2003年3月、(有)志縁塾を設立。また「笑いと幸せ研究所」を立ち上げ、人材活性プロデューサーとして全国で講演、研修を行う。「笑い」を用いたユニークな人材育成法は、NHKスペシャルなど、多くのメディアで取り上げられ話題となっている。

主な著書
『 元気セラピー(KKロングセラーズ)』、『「出会い力」の磨き方』(PHP研究所)、『 仕事で大事なルールは吉本興業で学んだ』(こう書房) 、『吉本興業女マネージャー奮戦記「そんなアホな!」』(朝日新聞社) 、『はじめて講師を頼まれたら読む本』(中経出版)、『話し上手な人のアドリブの技術』(中経出版) 他。


吉本で叩き込まれた「戦略」と「戦術」


私は昭和60年に吉本興業(以下、吉本)に入社しました。ちょうど漫才ブームが終わり、これから東京進出という時で、売上げが30億、50億、70億というペースで伸びていた時代でした。社員100人、マネージャ40人で400人のタレントを動かしていました。当時の社長が言いました。「吉本は興行会社や。優秀な人間は要らん。とにかく打たれ強そうなのを2~3人とっとけ」と。その一言で選ばれたのが私と男性2名でした。ここで皆さんに伝えたいことがあります。どこに就職したか、どんな仕事に就いたか、なんて重要じゃない。そこで何をするか、そこでどう生きていくかがもっともっと大事なんだ、ということです。 

私は吉本に入社して本当に良かったし、そこで学んだことや教えてもらったことが沢山あります。吉本では入社すると、必ず売れているタレントのマネージャの仕事から始まります。私が吉本で何を叩き込まれたか。「マネージャーの仕事はタレントのお世話やスケジュール管理だけやない。お前らが一生忘れたらあかん仕事は『戦略』と『戦術』を立てるということや。『戦略』と『戦術』さえ立てられる人間になったら、どこに行っても通用するからな」と。でも22歳の女の子に何がわかるでしょうか。

そして徹底的に叩き込まれた考え方は「WANT」と「HOW」の2つでした。この2つがどれだけ大事か。「何をしたいか」、「どんな番組を作りたいか」、「どんな人生を歩みたいか」。実は、これがなければ心の元気は作れません。これがないのにモチベーションなんて上がりません。よく、「大谷さん、売れるタレントと売れないタレントはどう違いますか?」と聞かれますがはっきり言えます。「売れたい」と思っているタレントしか売れません。誰かが何とかしてくれる、誰かが売ってくれると思って売れる人間なんていないのです。自ら「WANT」と「HOW」で考えることが大切なのです。ですから幸せになりたい、自分の会社を元気にしたい、自分の国を元気にしたいという思い(WANT)、さらにどうしたら人は動いてくれるだろう、どうしたら人を巻き込めるか(HOW)、この2つでとことん考える。その癖をつけてくれたのが吉本でした。

「WANT」で生きている人は元気


そんな吉本を私は25歳で結婚退職し、2年ほど専業主婦でしたが、すぐに私には向いてないと気づきました。世の中はちょうどバブルの時代。よっしゃ!と自分で企画会社を立ち上げるも、世間の厳しさを嫌というほど思い知らされました。それでも吉本で培った「戦略」と「戦術」のもと、どうしたらお客様に喜んでいただけるかと試行錯誤する内に徐々にお客様も増え、お陰様で順調に業績も上がっていきました。吉本の若手芸人を売り出すプロジェクトのお手伝いも大成功。しかし私はその頃、ただただ仕事に追われていました。あんなことや、こんなことをしたいと思って始めた会社だったのに、気づいたら、あれせなあかん、これしてもらわなあかん、と「MUST」の固まりになっていました。「WANT」で生きている人は元気ですが、「MUST」に追われ出したら、心の元気は簡単になくなります。だって心の余裕がなくなるのですから。一所懸命育てたスタッフに辞められたり、根も葉もない噂を立てられたり・・・。ある出来事が起きなければ私は潰れる寸前でした。何が起こったか。それは1995年1月17日の阪神大震災です。この時私は31歳でした。

使命:自分の命を何に使うか


震災によって「昨日というのが今日を保証するものではないし、今日は明日を保証するものなんかじゃないんだ」ということを身をもって体験しました。倍々で売上げが伸びていた会社でしたが、突然売上げの95%を失い、それでも社員の給料も事務所代も払わなければなりません。そんな中、仕事が何もなく、お客様と連絡すらつかない。とにかく神戸のお客様の元まで歩いて行きました。この時目にしたのは、わずか1~2mの道を挟んだ向こう側は全壊で住んでいた人は亡くなり、一方こちら側は何とか残っていてそのまま生活されている光景でした。これを見た時、初めて私の思考が働き始めました。私が今なぜこの仕事をしているのか、何を伝えたくて仕事をしているのか。私達が何気なく生きている今日1日、何気なく過ごしているこの数時間。これって誰かが生きたかった1日かもしれない、誰かが過ごしたかった数時間かもしれない。そう思い始めた時から、人生と時間の意味が変わり出しました。そして生まれて初めて「使命」という言葉に向かい合いました。「自分の命を何に使って生きていくのだろう?」と。今日何かあっても後悔しない生き方って何なんだろう。

その時から私がこだわっているのは、「心の元気」であり、モチベーション・マネジメントです。なぜかというと自分の心が元気でないのに、本気で人の幸せなんて祈れないからです。自分の心が元気でないのに、会社のこと、地域のこと、国のことなんて考えられないです。人間、元気がなくなった時にどういう考え方をするか…。時間がない、お金がない、興味がない、つまらない、~ない、~ないを言い出すわけです。あいつが悪い、会社が悪い、世の中が悪い、自分を正当化することにエネルギーを使い出します。もちろん、落ち込んでいる時は落ち込んでもいいのです。そこで無理をする必要はありません。大事なのは、その時に行動を変えるということです。アプローチを変えられるんじゃないだろうか、別の新しいやり方に変えられるんじゃないか。この切り替えができるかどうかがポイントです。

震災時、「笑い」が私を救ってくれた


こうして震災でお金も仕事もなかった私ですが、神戸のお客様やメンバーなど、行った先々で励まされ、笑わせてもらったお陰で気持ちを切り替えることができました。笑っている内にちょっとだけ元気になってきたのです。東日本大震災後、吉本の社長が真っ先に声明文を出しています。「今回、吉本は動きます。僕たちは阪神大震災の時に自粛しました。自粛からは何も生まれなかった。吉本は笑いの会社です。『笑い』のないところに『希望』はない。そう信じているから僕たちは動きます」と発信されました。

「笑わせる」と「笑われる」は違いますよ。「笑われる」のは恥ずかしいことかもしれませんが、「笑わせる」というのは相手を「笑顔にさせる」、「元気にさせる」ということなのです。上司、部下、お客様を笑顔にさせていますか。それがどんなに大事なことか。私も「笑い」のお陰で、初めて考え方を変えられました。今の私にあるのは何だろう。仕事もない、お金もない。でも時間は山ほどある。時間があったら自分がしたいことってなんだったかな、と思った時、“部下に伝えたかったことがあったな、本気で働くってことは悪いことではないんだよ、皆で何かに打ち込むってことは悪いことではないんだよ、仕事って誰のためにあるかというと自分のためにあるんだよ。”こういうことを伝えたくて書きとめていたことが、1年後『吉本興業 女マネージャ 奮戦記』という1冊の本になり、色々な出会いとチャンスをいただきました。ですから、皆さんにもお伝えしたいのです。どん底の時、うまくいかない時、人のせいにして愚痴愚痴言っているか、目の前に起こっていることは事実として受け止め、いかに次の行動を起こせるかということがどれほど大事か、ということを。この本が出た時、沢山の方々から手紙やメールをいただきました。日本人は、皆真面目です。皆さん、自分の会社を元気にしたいと思っています。皆さん、活き活き元気に働きたいと思っているのです。

モチベーションアップの秘訣とは


会社を元気にするために不可欠なのはコミュニケーションです。コミュニケーションは、他人ととるだけのものではありません。自分とは24時間一緒ですから、自分と良いコミュニケーションをとることも大事です。“自分が言われて嬉しい言葉は何ですか?”自分が「言われて嬉しい言葉」は、「自分を元気にしてくれる言葉」です。自分のモチベーションを上げてくれる言葉です。これがはっきりしたら、「誰がどんな時に言ってくれるか」、「どうすればもっと言ってもらえるか」を考えて戦略と戦術を練るのです。そうすれば、自分が元気になる状況を作ることができます。人がご機嫌をとってくれるのは25歳まで。残りの人生は自分で自分がご機嫌に生きていける環境を作れるかどうかです。そして相手の「言われて嬉しい言葉」がわかったら、それを言って人のモチベーションを上げてあげることもできます。「人が嬉しい言葉を言う」というのはヨイショすることではなく、相手の心を汲むということです。企業が求めているのは「相手の心を汲める人」。そんな人が大勢いれば組織も個人もモチベーションが上がります。人の心を汲めるかどうかは、相手の立場を思いやれるかどうかなのです。

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コーチングに出会い、自分を取り戻す


企画会社を立ち上げてから色々あって自分が壊れそうになった私でしたが「コーチング」という考え方に出会って自分を取り戻しました。自分に色々なことを問いかけて自分のやりたいことを明確にして、自分の夢と目標に向かって行動できる自分を作る。これがコーチングです。コーチングは相手(コーチを受ける対象者)に考えてもらい、自身で戦略と戦術を立ててもらうというもの。君はどうしたい、そしたらどうしてみる、そしたらどうなった、今度はどうする、と答えを当人に出してもらいます。逆にティーチは、教える側に答えがあって、ああせいこうせいというものです。「相手を認めて、引き出して、応援する」。この3つの技術をとことん磨くのがコーチング研修です。人を認め、引き出して応援しようと思ったら、ここでもコミュニケーションが重要になります。コミュニケーションがとれていないのに人を認め、引き出して応援はできません。コミュニケーションが充分にとれて、お互いわかり合えたらモチベーションも上がります。事実、コーチングを勉強して会社で一生懸命実践していたら、会社が良くなったのです。

このコーチングに出会ったことがきっかけになり、あんなに苦労して作った企画会社でしたが、10年前にそれを後輩に譲って、「日本一、楽しくて、ためになって、元気になる研修」を作りたくて、私はこの志縁塾という会社を作りました。40歳の時でした。志のある人間を作っていこう、志のある人間をサポートし、応援していこう、ということで研修を通して色々な人材育成や地域活性をさせていただいています。

比べるのは他人ではなく「昨日の自分」


人として生まれた以上、誰でも必ず死ぬ。これだけは避けて通れません。ならばどう生きて、何を残すか、これが永遠のテーマです。だからこそ「何をしていたら幸せか、何をしていると心が安らかか、後悔しない生き方とは何なのか」を、お互いに考えたいものです。阪神大震災、東日本大震災によって私たちは多くの方の突然の死に直面しました。あの日を境に、意味のある生き方がしたい、自分に恥ずかしくない生き方をしたいということに強くこだわっています。

 最後にお伝えしたいことがあります。それは人の命はどれだけ果かないか、ということです。父親も弟も医者ですので、私は常にそれを目の当りにしてきました。寿命と健康は全く別物です。80歳、90歳の方で「わしゃ、あちこち悪くてもうすぐお迎えがくるんや」と毎日言いながら一向にお迎えのこない老人たちがいる一方、若くていい子があっけなく、というケースも数多く見てきました。人生の縦の長さは神様が決めているとしか思えません。しかし人生の幅は、自分で何とでもできるのです。まずは自ら「心を元気にしてハッピーになって、楽しい人生を送るんだ」と思うことが大切です。意識をすれば、少しずつでも元気が増えて、気づいたら楽しい人生を生きていた、ということになるのです。「そうだ!自分はまだまだやってないことがあったよな。まだまだやれることあったよな。そうだ、比べなくちゃいけないのは他人じゃなくて、昨日の自分だった。昨日より感じているかな、昨日より興味を持っているかな、昨日より動いているかな、成長しているかな」。そういうことを考えていただけるきっかけになれば幸いです。

ソリューション研究会とは

株式会社アシストでは、お客様主体のユーザ会である「ソリューション研究会」を運営しています。ソリューション研究会は、アシストの提供するソフトウェアおよび各種サービスをご利用いただいているお客様相互の交流を育む場として、日頃お客様が抱えておられる課題や疑問をお客様同士で討議し、意見交換を行っていただくことを目的に活動しています。ソリューション研究会は、定例会・情報交流会・分科会の3つの活動で成り立っています。

<定例会とは・・・>
年に一度、最新のIT戦略や経営、人材育成をテーマに講師をお招きし、全会員を対象とした講演会を開催しています。また、合わせて昨年度の分科会で優秀賞を受賞した分科会より、一年間の研究成果を発表いただきます。最新の情報技術トレンドや、来年度の分科会への参加をご検討している方、ぜひご参加ください。

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