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~残るために変わり続ける~
持続可能な情報システムの条件

新しい技術が次々と誕生するITの世界では、それが新たなビジネスを創造する起動力ともなっています。そんな中で、オージス総研が『百年アーキテクチャ ~持続可能な情報システムの条件~』という本を上梓されました。変化の激しいシステムだからこそ、いかにして持続可能な「長く使える」アーキテクチャにしていくのかという視点からの提言について、著者のお1人で同社の代表取締役社長である平山輝様をお訪ねし、大塚辰男がお話を伺いました。

株式会社オージス総研
代表取締役社長
平山 輝 様

株式会社アシスト
取締役社長
大塚 辰男

SOA、ESB そしてクラウド


大塚
ご著書「百年アーキテクチャ」を拝読させていただきました。どのようなことがきっかけでこの本ができたのですか。

平山様
オージス総研の親会社は大阪ガスです。近年、地球環境やエネルギー資源が問題となってきており、エネルギー会社として持続可能な社会の実現や再生可能エネルギーの推進などが大きな課題となっています。私は2008年に大阪ガスからオージス総研にきましたが、ではITサービス産業はどうだろう、と考えた時、ソフトウェア技術の進化は目まぐるしく、「ドッグイヤー」などと言われ、その速いテンポがあたかも良いことであるかのようにシステムが次々と新しいものに置き換えられていく。それにかかるお金やエネルギーは莫大なものです。そこで、ITサービス産業もできるだけ再生可能、持続可能なシステムを提案すべきではないかということから社内で議論をするようになり、それが百年アーキテクチャ構想になりました。

大塚
100年アーキテクチャの例として、本ではニューヨークのプラザホテルを挙げていらっしゃいますね。

平山様
建造物でも百年たてば老朽化は避けられません。でも躯体がしっかりしていて、内装や水周りなどを改装することができれば使い続けることは可能です。つまり持続可能というのは老朽化を前提に、環境やニーズの変化に対応できることであり、企業情報システムの場合、それはしっかりとしたシンプルな基本構造を持ち、変化に合わせて機能を容易に追加変更できる適応性を備えることによって長期間持続させることができるはずだというのがこのコンセプトです。

大塚
その適応力の部分をサービス指向アーキテクチャ(SOA)を利用して取り組もうということですか。

平山様
システムには共通機能がたくさんあり、それをサービスの単位に分けて作れば次のシステムにも使うことができます。プログラムの再利用やモジュール化などと、以前から言われていますがなかなか実現されなかったものをSOAを利用して実現しようということです。そしてSOAのシステム基盤として重要な役割を果たすのが今の技術でいうと、エンタープライズ・サービス・バス(ESB)だと思っています。ESBとは、SOAの考え方をベースとした、企業全体のアプリケーションを統合するための技術であり、ESBを介すことで共通機能があたかもシステムに含まれているように使えるようになるわけです。また持続可能な基本構造を作るためには、オージスでも以前からオブジェクト指向のソフトウェア開発における、プログラム設計図の統一表記法である、UML(Unified Modeling Language)などを活用していますがモデリング技術がさらに重要になってくると思います。

大塚
クラウドを採用する企業も増えていますが、変化に適応する百年アーキテクチャでも、やはり有効な手段となっていきますか。

平山様
コストやリスクといった面から基幹システムはなかなかクラウドには行きません。ガス会社の料金システムといった勘定系は、データセンターに残るでしょう。ですから今後、企業システムはパブリック・クラウドに移行するものとオンプレミスのシステムというように組み合わせて使うようになり、その時に社内システムとクラウドを結びつける、「クラウド・インテグレーション」が不可欠になってくると思います。

持続可能に欠かせないOSS


大塚
アシストもオープンソース・ソフトウェア(OSS)を積極的に推進しているところですが、御社もOSSを幅広く活用されています。

平山様
百年アーキテクチャとして耐久性を持たせるにはOSSは欠かせません。なぜかというとソースコードが公開されているからです。メーカーの都合でこの製品サポートは終了です、ということもないし、新しいハードウェアや環境に移行してもいざとなればソースさえあればコンパイルして使えばいいわけですから。これは非常に大きな強みです。LinuxのようなOSは広く使われるようになりましたが、ミドルウェアやデータベース、さらにはアプリケーションなど成熟したOSSで企業ユースに耐えるレベルのものが色々出てきています。ただ問題はコードをさわれる技術者が必ずいるとは限りません。ですからOSSを選択する時はそれが標準になっているか、開発コミュニティがしっかりしているか、そして有償サポートが受けられるか、といったことが重要な条件となってきます。

大塚
おっしゃるとおりだと思います。アシストでもそのために有償サポートの拡充に力を入れているところです。また大阪ガス様で大規模適用の事例をご発表いただくことも、OSSへの不安感の払拭になると思います。

平山様
大阪ガスでは積極的にOSSを推進しており、ID管理や承認システム、社内向けポータルなどOSSで作っています。使用しているデータベースもPostgreSQL、MySQLで広範囲に利用しています。ライセンス体系が商用パッケージと違い、大幅なコストダウンが実現できます。一例を挙げると、大阪ガス本体の社員6,000人用では商用ソフトを使ってID管理を行っていました。ところが利用をグループ会社25,000人に広げるとライセンス料が増大します。また同じ仕組みをWebサイトを介して、社外にも適用し、一時的に会員になっていただくお客様のID管理にも使おうとするとライセンス数が膨大になります。ですのでOSSで構築しようということになり、結果的に利用者は6,000人から25,000人、さらにお客様を追加しても以前よりコストが半分になりました。

ビジョンを打ち出す


大塚
大阪ガス様では情報通信部長としてIT部門を牽引されてきた平山様に、CIOが果たすべき役割についてお伺いしたいと思います。

平山様
大阪ガス時代によく思ったのは、一番大事なのはビジョンを打ち出すことだということです。ビジネスに直結し、メリットがあり、誰でもわかるように具体的にゴールのイメージがわかるものを提示する。それから達成するための手段を順番に打ち出し、PDCAサイクルに落とし込み、自社のITガバナンスを高めていくことではないでしょうか。しかしそれを1人で対応するのは実質不可能で、CIO 1人が業務やITのハード、ソフト、ネットワークなどすべてを理解している必要はないと思います。その代わりにブレインを集めて、いわゆるCIOチームを作ってビジョンを作っていくことが重要だと思います。そうすれば間違いがないと思います。

大塚
それではオージス総研の経営トップとしてはどのようなビジョンをお持ちでいらっしゃいますか。

平山様
大阪ガスをはじめ大手企業のシステム構築を手がける当社は、常にお客様の立場に立ち、最良のソリューションを提供するという目標を掲げています。もう1つは先ほどお話しした百年アーキテクチャを目指すということです。そして3つ目が、お客様にOGIS:オープン・グローバル・インフォメーション・サービスを提供することです。オープンというのは、特定のベンダーや製品に偏らないということで、OSSの推進もその一環です。グローバルというのは、近年は海外へ進出する日本企業も増えていますので、それら海外進出されている企業もサポートしていこうと。その先にはグローバル・マーケットということも視野に入れています。そしてOGISのSはサービスです。お客様が求めているのはシステムではなく、効果であったり実際に使えるといったサービスですから。

大塚
そういった時、この『百年アーキテクチャ』のような書籍に会社の目指すビジョンが明確になっているので、社員の皆さんもぶれることなく仕事にあたれますね。

平山様
まずこの本を書く時に百年アーキテクチャというコンセプトで、各部署が自主的に、自分たちの部署や仕事でそれを実現するというのはどういうことかと、徹底的に議論してくれました。そういった現場から上がってきたアイデアを逆にまとめて1冊の本にしたわけです。「事件は現場で起きているんだ!」という名セリフがありますが、ビジネスで一番大切なのは現場です。ですから私が社員に約束しているのはMBWA(マネジメント・バイ・ウォーキング・アラウンド)、歩き回る経営管理です。お客様先に常駐しているメンバーもたくさんいますので全部は回れませんが、できるだけ動き回って、顔を出すようにしています。

もう1つ、当社が百年アーキテクチャを目指す上で力を入れているのがアジャイル開発です。アジャイル開発では、プロセスやツールよりも人と人同士の相互作用を重視し、また計画に従うよりも変化に対応することを重視します。チームを組んで1つのものを早く作り上げるというイメージです。日本では海外ほど広まっていないのは、IT業界が多重下請け構造になっているため、きっちり設計して仕様書を作る上下関係になっているからだと思います。またアジャイルではドキュメントより動作するソフトウェアを重視するとなっていますから、プログラムを書けないとだめなんです。
当社ではこのアジャイルをシステム開発だけでなく間接業務も含めて会社の仕事そのものをアジャイルでやっていこうという取り組みをしているところで、今年は全社員にアジャイル教育をします。レベルはそれぞれ違うので、すでに教育を受けている人にはさらに高度で技術的なことを、営業マンにはアジャイルの良さや適用範囲をお客様にお薦めできるような教育をするし、また間接部門にはアジャイルの考え方を仕事にどのように活かせるか、といった教育を全社員にしていきます。オージス総研自体がアジャイル・カンパニーになろう、というわけです。

大塚
百年アーキテクチャと言うと悠久のような会社をイメージしますが、実はアジャイル・カンパニーですか。しかし考えてみると変化に対応していく柔軟性はアジャイル、ということになりますね。

平山様
そうですね。基本構造は変わりませんが、建造物でも内装や設備はニーズに合わせて柔軟に短期間に変更できる、それが百年持つことにつながるのだと思います。

OSSの採用についてもそうですが、オージス総研の社風として非常にチャレンジ精神に富んでいると言うことができます。商用パッケージでもOSSでも、導入当初は問題が色々発生しますが、問題が発生して一方的に怒られるというのと、その問題を一緒になって解決してくれようとするのとでは、気持ち的にも違いますし、協力があるとないとでは作業量も大きく変わってきます。こういった社風があるからこそ、百年アーキテクチャやアジャイル開発といったチャレンジをしていこうという方向性に向かうのだと思います。

大塚
先進的な取り組みの基本には、現場主義やチームワークがあるのですね。とても参考になるお話を伺いました。本日は誠に有難うございました。

平山 輝 様(ひらやま ひかる)様 プロフィール

1977 年早稲田大学理工学部卒、大阪ガス入社。カリフォルニア大学修士。米国MIT、SRI Internationalなどで人工知能を中心としたソフトウェア研究開発に従事。大阪ガス情報通信部長などを経て2009年より現職。

取材日:2012年4月


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