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自由なインターネットの終焉?

[掲載媒体]INSIGHT NOW!
[日付]2012年3月19日

世界のインターネット利用者数は急増しており、情報の収集、発信メディアとしてなくてはならない存在となったが、そんな自由なインターネットの世界もさまざまな検閲がかかるようになってきた。


株式会社アシスト 代表取締役会長
ビル・トッテン

総務省の調査によると、日本のインターネット利用者数は平成22年末に9,462万人、人口普及率では78.2%と、国民の10人に8人近くの人がインターネットを使っていることになる。パソコンと携帯電話の両方を使う人もいるだろうから、実際の利用者数はこれほどではないにしても、もはやインターネットはなによりも最大の情報の収集、発信メディアとなっている。しかし利用者数が増えるにつれて、そんな自由なインターネットの世界もさまざまな検閲がかかるようになってきた。

インターネット検閲についてよくいわれるのは中国である。“サイバー・ポリス”が中国インターネット・ユーザーのオンライン活動を監視していて反体制派を逮捕する、または政府の好まない情報を発信するWebサイトを閉鎖する、といったものだ。これをアメリカ政府などは言論の自由を侮辱するものだと非難してきた。

またソーシャルネットワークが後押ししたアラブの春では、インターネットアクセスを遮断したエジプトを非難したオバマ大統領だが、アメリカや日本政府は、いま同じようにこのインターネットの自由を検閲・規制する方向へ動いている。

検閲ということでよく知られているのがGoogleがアメリカ国家安全保障局(NSA)に協力して諜報活動を行っていることだ。アメリカではこれまでもテロとの戦いを理由にFBIが盗聴や個人情報収集に関して違法行為を行ってきたが、インフラとなったインターネットもその対象になったのである。

そしてもうひとつが、日本政府が昨年署名した「偽造品の取引の防止に関する協定(Anti-Counterfeiting Trade Agreement:以下ACTA)」である。模倣品や海賊版を取り締まる協定のようだが、これは広範囲にわたる力を外国の政府や版権所有者に与える国際条約であり、テレビや新聞は、日本政府がこのような条約を推進してきたことも、その詳しい内容も、そして昨年10月には署名もしてしまったことも、私の知る限り報じなかった。私がACTAについて知ったのはアメリカの友人からの電子メールであったし、情報はすべてインターネットで集めた。

昨年から、ちょうどTPP:環太平洋戦略的経済連携協定が話題にのぼっており、TPPについても大手メディア、財界はこぞって後押しをしていたが、同じようにインターネットでははやくからその問題が指摘されていた協定である。

TPPも協定の内容は秘密だがACTAも秘密だらけの条約である。ACTAの詳細はTPP同様明らかにされていなくて、もともとWikileaksで素案がリークされたくらいである。内容も秘密にして日本政府が署名するくらいだから、内容が国民に不利益なものであることは明らかだ。もしそれが国民にメリットのある内容なら隠す必要などないはずなのだ。

ACTAで懸念されることのひとつは「著作権」という名の下にインターネットのプロバイダーは自社が管理しているサイトが著作権を侵害していないかを常時監視するようになるということだ。そして問題がありそうならプロバイダーはすぐにサイトを閉鎖することができる。ACTAは著作権侵害を告発する原告側が、相手に違法性があるかどうかを司法審査にかけずに告発することができるという著作権所有者に有利な法律だからだ。つまり自由にアクセスできるインターネットが大きく変わることがあり得る。

10年ほど前、「IT革命」ということが盛んに言われた。それはコンピュータと電話回線がつながることで革命的なことが実現されるという予測と、それによって経済が活性化され景気が浮揚することへの期待からだった。しかし実際、ITは単なる生産性向上のツールであり、日本経済の起動力となることもなかった。

革命的な力を発揮したのはインターネットだった。インターネットを使って国民がデモを動員し、チュニジアでは23年続いた独裁政権が倒されたのだ。インターネットは民主化活動に大きな力を発揮した。このような状況になれば、非民主主義国家の政府がそれを規制しようという動きにでてくるのも当然であろう。

だが、本来民主主義であるはずの日本やアメリカ政府までも、このインターネットの力を抑えようとし始めているのである。それがACTAやTPPといった国際条約の推進なのだろう。参加国政府は、政府や大企業が国民に知られたくないことを、多くの国民に効率よく知らせることができる仕組みであるインターネットをコントロールするために「知的財産権」という言葉を使い、国際的な規律を作ろうとしているのである。

そして究極は、情報やナレッジを人々が自由に共有すること、それ自体が禁じられるようになるかもしれない。すでにアメリカは、ジョージ・オーウェルの描いた『1984年』にでてくる大国にきわめて酷似した国になっている。そのアメリカの属国である日本も、そのあとを追うようにいま、政府民主党は「秘密保全法案」を作ろうとしている。これは防衛、外交、公共の安全・秩序の維持の3分野を対象に「秘密」を決めて公務員などが漏洩した場合に刑罰を与えるというものである。この法律で、政府が国民に秘密にしたいことは、TPPでもACTAでも知らせる必要がなくなるというわけだ。

また処罰対象は公務員だけでなく、第三者が「不正な手段で」入手した情報を公開しても同様である。例えばWikileaksのように「不正」な方法で国民の不利益になる政府が秘密にしたい情報をインターネットで公開すれば処罰の対象となるのだ。われわれはこの政府の動きを止める行動をとるべきではないだろうか。インターネットの利益を享受し続けるためにも。


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