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運用管理のトレンド予測~クラウドの波はくるか~

クロストーク 運用管理のトレンド予測


幕田 範之様

株式会社テクノ・システム・リサーチ
幕田 範之 氏

サービスマネジメント・ソフトウェアやストレージ分野の市場を中心に調査分析を担当。メーカー、SI/VAR、ユーザ、業務/ビジネス部門の四方向から調査を行い、その分析結果を基に提言およびアドバイスを行う。カメラの腕前はプロ級。ポートレート写真が必要な方は撮ります。



株式会社アシスト 
蝦名 裕史

1990年アシスト入社。ジョブ管理/監視/サービスデスクなどの運用管理ソフトウェアの技術責任者としてお客様の声をフィードバック。年に数回のゴルフに一喜一憂する平均よりちょい下(自称)のゴルファー。

蝦名 裕史


運用管理分野でアナリストとして活躍中の株式会社テクノ・システム・リサーチ 幕田範之様と運用管理一筋の株式会社アシスト 蝦名裕史が、運用管理分野における顧客企業の課題やニーズのトレンドから、オープンソースやクラウドの現状/今後、そして運用管理に携わる技術の方への提言などを語り合いました。

これからはプライベート・クラウドか?


幕田(以下敬称略): 先日、あるSIerの方が「これからはプライベート・クラウドだ、大手金融もその方向を目指し始めた」と言うのです。そのSIerが提供するクラウド基盤上に「他とは接続せずセキュリティ性の高い顧客専用のプライベート・クラウド空間を作り、運用管理を含めたサービスを開始する」のだそうで、これまで仮想化したインフラとプライベート・クラウドの違いがよくわからなかったのですが、これがプライベート・クラウドなのか、と納得しました。しかし、日本のクラウド事業者がパブリック・クラウド・サービス提供のために利用しているストレージ容量は国内ストレージ出荷全体のわずか3~4%程度。アマゾンウェブサービス(AWS)に比べたら規模が違いますし、国内ですぐにクラウドに向けた動きになるとは思えませんが、大手金融がプライベート・クラウドを目指し始めたことは大きいと思います。パブリック・クラウドは低価格とは言え、セキュリティ面が心配です。信頼のおける日本のクラウド事業者がプライベート・クラウド空間を提供し、それに運用管理サービスがついてくるとなると、将来的にはこの方向に進むのではないでしょうか。

蝦名: プライベート・クラウドは、情報子会社がグループ企業間で使える共有基盤を提供する形態が主流かと思っていました。グループ企業とは言え、ある程度環境を分けなければいけないようで、そのようなお客様からはマルチテナンシーに関するお問い合わせや要望をいただきます。最近AWSの話題が多いので市場全体がクラウドに移行しているようなイメージがありますが、弊社のお客様の状況を見るとまだまだです。

幕田: SIerが提供する「プライベート・クラウド空間」のお話を聞いた時に思ったことなのですが、これで大きく変わることは、クラウド空間に設置するシステムはクラウド事業者が選定するようになる、つまり、これまでメーカーの販売先はユーザ企業だけでしたが、ここにクラウド事業者イコールSIerが加わるということです。

蝦名: メーカーの販売先が変わるというのは確かにありますね。AWSでもソフトウェアを購入できる仕組みがあるので、ベンダーが介在しない販売形態、ライセンス利用形態になっています。クラウドの登場によって、プレーヤーやビジネスのやり方に変化が出てきています。また、幕田さんが先ほどお話しされたように、クラウドはセキュリティが課題と言われていますが、提供する側も商売なので、普通の企業では考えられない投資金額で高いセキュリティ・レベルを維持しているはずで、でもそこに「個人情報を置きますか?」というところかと思います。

幕田: そこですね。調査でも「クラウドへの移行はしない」が50%、「個人情報はやめておこう」が25%、残り25%は「影響のないものは置く」と3分割されます。

蝦名: 弊社の場合、「クラウド」と言っても、それは「クラウド管理」をどうするかをお客様にソリューションとして提供していくことです。提供先や提案方法は変わるかもしれませんが、 運用管理の主体が変わっても管理自体は変わりません。先日幕田さんに弊社のセミナーでご講演いただいた際、今日はAクラウド事業者、明日はBクラウド事業者というような時代がくるかもしれないとおっしゃっていましたが、それに運用管理ツールは追随していけない。追随するための何かを提案しなければなりません。Amazon CloudWatchをはじめクラウドそれぞれに管理ツールがあり、複数のクラウドを管理するには、GUIの乱立、機能の違いなど多くの課題があり、連携を含めた提案の全体像、構成が難しいのが現状です。またAクラウド事業者からBクラウド事業者への引越しはできないので作り直しになります。ここに対応する提案は難しい。それができればクラウドはどこでもいい状況になりますね。

幕田 範之氏


運用管理ニーズのトレンドは?


蝦名: ここ1年ほど弊社開催の運用管理セミナーでは、推移を見るために課題やニーズのアンケート調査をしています。結果、トップは仮想化/クラウドの管理強化、2番目は運用の自動化ですね。

幕田: なるほど。私の調査だと、仮想化/クラウド対応もした上で、自動化、構成変更、サービスデスクの3つがトレンドです。

蝦名: サービスデスクに関しては、どの企業でも何かしらの仕組みでインシデント管理を行っています。他に良い仕組みがあるなら採用したいがすぐに投資できないといった状況もあるので、安価なSaaS形態での提供であったり、コアな機能から順次拡張していけるようなソリューションを提案していきたいです。

幕田: インシデント管理ですが、ある企業でメンバーそれぞれがヘルプデスク対応していたのをITILに則ってサービスデスク担当をもうけ、その担当者だけ別の部屋で集中作業したところ、問い合わせ件数は減りノウハウは貯まり、他の管理作業も効率良く進んだという話でした。ツールだけではなく、そういう仕組みも併せないと効果が出ないのでは?

蝦名: 弊社が昨年から提供開始したHP製のSaaS版サービスデスクは、インシデント管理等の基本機能に加え、これまで混沌としていたインシデント/変更/構成管理をルール化し統制がとれた形にしてプロセスを改善します。でも、どんなにプロセスを改善しても量が増えると対応が難しくなる。これまではノウハウを貯めて回答をスピーディにしたり、FAQとして公開することが改善策でしたが、このサービスでは一歩進んで、ユーザが質問を書いているそばから回答を出す「自動アンサー機能」で問い合わせ自体を減らします。例えば「PCが壊れた・・」と入力していくと回答が次々に表示されるので選ぶだけ。ヒットすれば問い合わせしないうちに終了します。エンドユーザにとっては知りたいことがすぐにわかるし、ヘルプデスク側も問い合わせを削減できるので双方にとってメリットがある。でもノウハウが貯まってないとだめです。ドキュメントや過去のやり取りなどあらゆるソースから最適なものを使う。仕組みの裏ではHadoopのようなビッグデータ・プラットフォームがエンジンとなっているので「凄い!新しい!」と思うのですが、この凄さをなかなかお客様にアピールできていないのです。

幕田: 国内でサービスデスクのSaaS版はSenju(開発元:株式会社野村総合研究所(NRI))が先行しており、HPのほかに日立ソリューションズが米国で導入が進んでいるServiceNow(開発元:米ServiceNow社)を扱い始めています。NRIではハンズオンセミナーが好調なようで、さわってみると「試してみよう」という気になりますよね。SaaS版のメリットはやはり導入しやすく、試してみて効果が出なければすぐにやめられるというところでしょうか。オンプレミスの場合「はい、やめます」とはいきませんからね。また、お試しならSaaS版ですが、全社展開となるとやはりオンプレミスかと。

蝦名: 弊社がSaaS版を扱い始めた理由は、大きな投資がすぐにできないお客様に今すぐ使っていただきたいからです。サービスデスクはそこそこ投資しなくてはいけないのでまずはSaaS版で試し、良かったらオンプレミス版で構築してもらう。HP製のSaaS版は新しいアーキテクチャを採用しており機能的にオンプレミス版と別物ですが、良いものは色々と採り入れていくのではないでしょうか。

幕田: ところでアシストでは運用業務の自動化ツールとして「HP Operations Orchestration software(OO)」を扱い始めましたね。毎年、調査項目の中で、「運用管理で今後対応したい分野」についても尋ねていますが、2013年度はモバイル・デバイス管理(MDM)が圧倒的に高く、自動化という回答はほとんどありませんでした。ところが2014年度の調査ではそれが逆転し、運用の自動化に対するニーズが急速に高まったことに驚いています。

蝦名: 「運用業務の自動化」が、弊社のアンケートでも高い結果となっていることは先ほどもお話ししましたが、その背景として、これまで「インシデント管理」「ジョブ管理」と管理項目ごとに対応してきた運用改善対策が「統合化」から「標準化」へ、さらに「高度化」へと発展してきていることが挙げられます。また、手作業で行っていた運用オペレーションを自動化して作業品質の均一化や作業統制に取り組む企業が増えてきています。しかし、一番大きな理由は「IT環境の変化」と見ています。ここ数年で仮想化、クラウド化が進みつつあるため、これまでのIT環境の維持管理に加えて、デプロイやプロビジョニング、環境変更などの業務要求が増えたことや、スピード感がより求められているということです。仮想環境やクラウドを最大限利活用するためのバックボーンとしての自動化推進は、量と時間、質の対応において今後の必須機能になってくると思われます。OOに関しては昨年夏から取り扱いを開始しましたが、まだエンジン部分の自動化テンプレートを提供している段階です。次のステップとしてサーバ、ネットワーク、クラウド管理なども自動化対象のラインナップとして拡充していきます。

蝦名 裕史


OSSと標準化の関係?


幕田: オープンソース・ソフトウェア(OSS)の統合運用管理ソフト「Zabbix」(開発元:Zabbix SIA)のサポートを開始し、セミナーが大盛況と聞いて「アシストの力はすごい」と思いました。顧客にとってOSSでの一番の不安材料はサポート。アシストが支援するという安心感のでしょうね。

蝦名: お蔭様でデモやサービス紹介でフル稼働です。運用管理分野のOSS利用について何か変化の兆しはありますか?

幕田: 実はOSSで運用管理をやってみたいという回答が2013年度の20%から2014年度は3%に減ってしまいました。しかも差分の17%の人たちは実際にOSSを試したわけではなく、既存の運用管理ツールとの連携を作り込まねばならないのが面倒、統一ベンダーで揃えたほうがいいという話なんです。またユーザの声に呼応する形でOSSの構築支援を始めたSIerでも、カスタマイズは手間がかかるがさほど儲からないと言っています。OSSが広がらないのはSIerが日本市場に提案しないからではないかと思っています。また、OSSで提供される機能が監視だけに限定されフルにカバーされるわけではないことも理由の1つではないでしょうか。ここ数年「Hinemos」(開発元:株式会社NTTデータ)の動きが活発で関連セミナーも盛況、市場的な伸びもあるのですが、日本の運用管理分野でOSSは伸びていない。米国も同じ状況です。米国で盛り上がらない理由は「標準化」の問題かもしれません。米国では標準化が進み、日本では広まらないと言われていますがなぜだと思いますか。

蝦名: 業務の標準化やマニュアル化は進んでいると思いますが。

幕田: そこはそうなんですけど、米国は多民族かつ26の英字を駆使して相互理解しなければならないから標準化や自動化が進む。日本は単一民族でひらがな、カタカナ、漢字を使って幼い頃から阿吽の呼吸を学んでいくので暗黙知が通用し属人化しやすい環境になる。また、日本は同じ会社にずっといてカスタマイズを好む傾向がありますが、米国では転職が多く、転職先で使い勝手が変わると仕事ができなくなるからデファクト・スタンダードを好む。想像ですが、米国で運用管理分野のOSSが盛り上がらないのはOSSは作り込みが入るのでIBMとかHPのツールを使ったほうが良いという結論になるのではないかと。

蝦名: 日本もデファクト・スタンダードを好みますが、スタンダードの中から選択する傾向があるのではないでしょうか。運用管理の例で言うとITILを全部採用するのではなくその中から選ぶ。だから派生がたくさんできあがる。しかし、カスタマイズを好む日本でもOSSに関しては手を入れたがっていませんね。日本で運用管理ツールと言うと弊社が取り扱っている「JP1」(開発元:株式会社 日立製作所)をはじめジャパニーズ・ブランドが圧倒的。先ほどお話ししたHP製の自動化ツールOOはエンジン部分なので使い勝手は関係ありませんが、ジョブ管理とか統合管理になると製品に一長一短が出てきます。使い勝手なのかカスタマイズなのか、グローバルで採用されている海外製品を日本に持ち込む際には工夫が必要なようです。

幕田: カスタマイズの良さも独自性の良さもわかりますが、一般的にカスタマイズしてしまうとそれを継続しなければならないし、リニューアルがすぐにできない。お金もかかります。ビジネスだと差別化しなければなりませんが、運用管理は差別化しなければいけない領域なのか、ここが微妙ですね。日本の運用管理、独自路線だと大変です。どこかで標準にしないと。

蝦名: だから、メーカーさんにはそれを標準機能にしろというプレッシャーがかけられるんじゃないですか?

IT部門の価値は「機会損失」で訴求


幕田: IT部門の人は本当に大変です。システムは24時間365日稼働して当たり前。動かなければ利用部門からは「使えない」、経営層からは「投資しているのに」と言われモチベーションが上がらない。でもバックエンドではやるべきことがたくさんあり、ビジネスに追随するには新しいシステムも必要。でも既存のものがなくなるわけではない。つまり、面倒をみなければならないものが増えるのです。日々の業務で手が回らないので、投資した価値を訴求することができないのはもちろんのこと、次を考える余裕がないんですよ。負の連鎖なんです。どこかでこの連鎖を絶ち切らねばなりません。

蝦名: 「コスト削減」がIT部門の命題と言われていますが、経営層の満足度を向上させるものがコスト削減だけだとIT部門はやりがいを感じないので、お客様の中でも、コスト削減以外でIT部門の存在価値をどう示すかが大きな課題となっています。幕田さんがよく言われる「エンドユーザ部門に足を運んでエンドユーザの満足度を高める」というのはお客様も実施し始めていますが、経営層へのアピールが難しいと言う。障害発生件数の低さやダウンタイムが10分から5分になったということがどれほど凄いことなのか理解してもらえない。IT部門の存在価値はどのように可視化すればいいでしょうか?

幕田: ファースト・ステップは、「ITがどれほどビジネスに影響があるのかを徹底して数値化する」ことです。簡単な例だと、IT化することで現場の人件費や残業時間をどのぐらい削減する効果があるかを調べてみることです。まずは数値化しないと経営層に提言できないし、何よりも数値化する過程で「これをするべきだった」、「これがビジネスとのギャップだ」とIT部門の方自身が見えてくるのです。しかし、数値化で果たして経営者が投資へと向かうのかは「経営者次第」ですね。ITのビジネスにおける重要性を理解している経営者ならば数値を見ることで投資は変わります。また、数十年先には、現在のITに馴染みが薄い経営層からITの良さをよく理解している「デジタル・ネィティブ」世代が経営者になっていくでしょう。そうなれば確実に変わります。まあ将来の話はさておき、まずは数値化することです。そして、IT部門の大きな課題である負の連鎖を根本的に断ち切るためには、「IT化できなかった場合、または運用業務が滞りなく行われなかった場合、どれだけのデメリットがあるか」を訴求することも大切。つまり「機会損失」をしっかり出すことがポイントです。

蝦名: 数値化って怖いですね。いい成績じゃないと出したくないです。

(取材日:2014年12月)

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