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鴨川だより~菜園家族~

株式会社アシスト 代表取締役会長
ビル・トッテン

家庭菜園を始めて色々な方に教えを請いながら野菜や果物作りをしています。その中で、私が師と仰ぐお一人が、京都の嵐山で「アイトワ」という名のエコライフガーデンを営む森孝之さんです。森さんは、電気も水道も通っていなかった土地に50数年前から居を構え、関西初のソーラーシステムを利用し、風呂や暖房は薪を使い、生ごみや落ち葉は堆肥にして菜園では常時何十種類もの野菜を作っています。

ビジネスマンや大学教授として活躍している時から、約3,000平方メートルのエコロジカルな生活空間で太陽エネルギーを使って生きることを実践されている森さんからは、技術的なことだけでなく哲学や人の生きる道について教えていただいています。先日も京都で小さな集まりがあり素晴らしい方々とのご縁をいただきました。

お一人は京都大学名誉教授の新宮秀夫先生で、エネルギー工学を専門とされています。『倹約と幸福』(小学館新書)というご著書では、現代のエネルギー浪費社会は人々を幸福にはしていない、むしろエネルギー節約による真の持続的社会を実現すること、つまり倹約をしてこそ贅沢が楽しいのだという人間の本性を様々な観点から言及されています。

もうお一人は滋賀県立大学名誉教授の小貫雅男先生で、ご専門はモンゴル近現代史、遊牧地域研究で、2001年から「里山研究庵Nomad」を主宰されています。ご著書に『菜園家族21』(コモンズ)、『静かなるレボリューション』(御茶ノ水書房)等があり、モンゴルのような辺境からの視点で現代を見つめ、未来社会論の構築に取り組まれています。現代の資本主義社会では賃金の格差や職階制による待遇の違いで階層分化が進み、多くの賃金労働者が不安定な状態に置かれており、小貫先生はこの原因を農地や山林という生産手段と切り離されたためだとして、解決策に「菜園家族」を提言されています。

倹約と幸福

菜園家族21

静かなるレボリューション


「菜園家族」構想は、土地と賃金労働者を週休5日制のワークシェアリングにより再結合させるというものです。週のうち2日間、企業や公的機関の職場に勤務し、残りの5日は生活の基盤である菜園や手作り加工の仕事、あるいは商業や手工業、サービス部門など自営業を営みます。これにより家族と共に土地に根ざした暮らしを行い、豊かな創造的活動にも携わることができるでしょう。週休5日制「菜園型ワークシェアリング」が実現すれば、勤務日数は従来の5分の2に短縮され、それにより社会全体で雇用は2.5倍増加します。また「菜園家族」構想の「家族」の概念には、血縁だけでなく自由な意志に基づいて結ばれる様々な形態の擬似家族も含まれています。

2009年、私は『「年収6割でも週休4日」という生き方』(小学館)で、消費中毒を治せば年収6割でも幸せに暮らしていけるという提言をしました。これは現実不可能のように思われる方も多いと思いますが、市場競争至上主義のアメリカ型拡大経済が続けば、資源やエネルギーの限界性からみても持続可能な自然循環型共生社会への転換はいつか必ずくると私は信じています。

また、京都大学の新宮先生は、モノが大量にあれば、それを1割増にするには多くの数量が必要であるが、持てる数量が少なければわずかな数量で1割増になる、幸福は数量そのものではなく、割増率で感じる、と言われましたが、その通りだと思いました。そしてお金やモノをたくさん所有し贅沢をし続けるよりも、仕事で悩んだり、菜園で果物の出来や野菜の収穫に一喜一憂したり、または家族や友人たちと未来や希望について悩んだり語りあったりする時間を持つことのほうが、より多くの幸福を感じるのが人間の本性だと思うのです。またモノや資源を大切にすることは、命を大切にすることにもつながります。

滋賀県立大学の小貫先生は滋賀県犬上郡において菜園家族構想を研究し、地域に根ざしながら助け合い、分かち合うことで修復していく新しい暮らしのあり方を提言されています。終わりなき市場競争で格差を広げるグローバリゼーションに対抗することは容易ではありませんが、理想を持ち、活動を続ける先生方のお話にとても感動しました。私にできることをこれからもやり続けていこうと思います。


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