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グローバルなビジネスをITで支える
~日本の強みと世界標準をハイブリッドで~

対談×トップ・インタビュー:株式会社三菱ケミカルホールディングス 板野則弘 様


傘下の化学系事業会社、三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンが2017年4月に統合し、新会社「三菱ケミカル」として発足するなど、構造改革を進める三菱ケミカルホールディングス。イノベーションに立脚し、化学、ヘルスケア、産業ガスなどの分野で製品・サービスを提供する同社は、グローバルに事業を展開し、地球環境と人間社会の持続可能な発展を意味する「KAITEKI」の実現を目指し、「THE KAITEKI COMPANY」をコーポレートブランドに掲げています。同社の情報システム室長 板野則弘様をお訪ねし、大塚辰男がお話を伺いました。

板野 則弘様 プロフィール

板野 則弘 様
株式会社三菱ケミカルホールディングス 情報システム室長

1989年三菱化成(現三菱ケミカル)入社。生産技術グループ(水島事業所)を経て、生産技術拠点立ち上げのため米国駐在。2000年本社情報システム部へ異動。2012年同情報システム部長、2015年より現職。


KAITEKI COMPANY


大塚(以下色文字):「三菱ケミカル」が発足し、大変革期を迎えられた三菱ケミカルホールディングスの概要をお聞かせください。

板野様(以下略):三菱ケミカルホールディングス(MCHC)は2005年に設立された持株会社です。本年4月に化学系事業会社である三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンが統合し、「三菱ケミカル」としてスタートしました。MCHCグループの従業員は国内外約7万人、業種業態は多岐にわたり、企業活動を通じてKAITEKI(快適)の実現を目指しています。コーポレートブランドは「THE KAITEKI COMPANY」。収益の向上や技術革新のみに集中するのではなく、環境・資源の持続可能性や、健康、快適を活動の判断基準としてグローバルに事業展開を行います。

──板野様のご経歴をお聞かせください。

三菱化成(現三菱ケミカル)入社後、生産技術グループに所属し、水島事業所でハードディスク製造プラントの自動化に携わりました。水島では高度制御やエネルギー最適化など、現在のIoTやAIに相当する活動に、世界最先端の生産技術者15名と共に取り組み、ダイバーシティを実感しました。また1996年から生産技術の米国拠点を立ち上げるためにシリコンバレーに3年間駐在しましたが、当時はインターネットを活用したビジネスの勃興期で大きな刺激を受けました。

──90年代後半といえば、今ITの雄といわれる様々な企業が立ち上がり始めた頃ですね。

当時は全米の投資の約3分の1がサンフランシスコ・ベイエリアに集中し、ベンチャー企業群の急成長を肌で感じました。帰国後、本社情報システム部で欧米の大手化学企業19社と共にEハブを立ち上げ、また同業他社と一緒に、石油化学工業協会を基盤に標準EDIの日本での普及推進を行うなど、ビジネスへのIT活用推進を担いました。情報システム部長を経て、2015年よりMCHCの情報システム室長を務めています。

グローバルITの成功はチームワーク


──日経BP社のIT Japan Award 2015で、貴社のプライベートクラウドが、社内ITインフラのサービス仕様統一を図り、世界450社のグループ企業が同一サービスを受けられる体制を整備されたとしてグランプリを受賞されました。成功の秘訣をお聞かせください。

紹介記事に「グローバルでは同じ釜の飯を食べてこそ成功する」とあったように、成功の秘訣はチームワークだと思います。プライベートクラウドはクラウドじゃないとする議論もありますが、日本で求められるサービスはグローバル標準の採用だけでは動かず、その上に様々な仕掛けを作る必要があります。一方米国はパブリッククラウドで十分対応可能で、ユーザーも満足しています。こうした違いから、日本ではプライベートクラウドがパブリッククラウドに駆逐されることはないと思っています。

──同じ基準では語れないということですね。

まずは違いを認識する必要があります。欧米企業とEDIを立ち上げた時も、彼らは次々にフレームワークを活用し、すごいスピードで仕事を進めるのですが、内容を見ると、各市場で異なる仕様の製品が求められているにもかかわらず、同じEDIフォーマットを使っていました。同じ製品でも各市場によりグレード数、ロット量等の違いがあり、その伝票の取扱数や業務プロセスも異なることが意外と考慮されていません

ある自動車メーカーによれば、同じ車種であるのに、オプションが米国では100~200種類であるのに対し、日本では1億種類にもなるそうです。そのため日本では、素材、部品の種類が多岐に渡ります。グローバルITを検討する上で、こうした実情を考慮せず、一つのアプリケーションパッケージソフトで世界を統一すると、市場によっては、日本企業の競争力を損ねることになりかねません。グランプリをいただいたプライベートクラウドはITインフラだったので統一してもあまり問題にならなかったといえます。

板野様


──ITインフラの次の取り組みについてお聞かせいただけますか。

世の中の流れからも最も取り組まなければならないのはセキュリティです。インターネット利用が始まって以来、セキュリティは時代ごとに進化し、入口対策、エンドポイント対策、そして出口対策を行ってきましたが、増大するサイバー攻撃の脅威には新たな対策をし続ける必要があります。化学産業は国の重要インフラの一つに指定され、情報系だけではなくプラント周りの制御系システムも対象となります。これまでインシデントは起きていませんが、侵入、感染防止とともにインシデント発生時の減災対策も強化していきます。やるべきことは刻々と変わるので、最新動向や経産省が出しているサイバーセキュリティガイドライン、また同業他社との情報交換なども大事ですね。

ITグローバルはハイブリッドで


──顧客中心というのは、日本特有のことなのでしょうか。

日本市場は「超高品質社会」だと思います。品質が高く、価格はむしろ安い。米国では概ね買い手と売り手は対等ですが、日本は「買い手」の力が強いと思います。これが日本で多くの職人や匠の技が育まれた要因の一つかもしれません。ただし、今後どうなるかはわかりません。顧客中心は変わらないと思いますが、5 ~10年後には米国型になるという見方も少なくありません。

これは労働環境にも影響します。日米同じ業務でも、米国では「ここまででいい」というものを、日本は買い手の要求に応えようとして多くの労力をかけます。日本人の働き方は効率が悪い、生産性が低いと長年指摘されていますが、この超高品質社会の影響も多分にあると思います。日本企業はより多くの付加価値を付けるがゆえに労働時間が長くなり、また、買い手が強いので、それに対する正当な対価が徴収しづらいという実情はあると思います。だから日本企業の営業利益は米国に比べて低いと言われている要因の一つになっているのかもしれませんね。

情報システムも同様で、日本の化学業界は欧米の標準パッケージを約20年以上導入してきましたが、アドオンなしで利用しているところは皆無のはずです。アドオンは業務量の多い日本企業と日本の商習慣対応からすると避けられないものが相当あり、グローバルIT構築においては、日本特有の対応は分けなければいけないでしょう。したがって当社のプライベートクラウドと同じく、ベースはグローバルに統一するも、その上で稼働させるものは市場毎に分けるといったハイブリッド的な仕掛けが必要です。それらを一つずつ作っていたらとてもペイできないので、真ん中に大きな共通のプラットフォームを作り、その上に共存できる個別の世界を載せる、というのが最終的なグローバルITシステムの形ではないかと思っています。

加速する変革


──4月にCIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)に米国人のマイクスナー様が就任されました。変化が加速しそうですね。

水島時代やシリコンバレー時代のデジャブのような感覚を覚えています。グローバルな視点を持つCIOと元日本IBM基礎研究所長でITスペシャリストの岩野CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)の下で、当社におけるAI/IoTのビジネス、現場への適用が広がり、ITと生産技術の活用レベルは間違いなくブレークスルーすると思います。

──業務効率化のためのIT適用例があればお聞かせください。

大塚辰男


当社はモバイル環境が先行していて15年前でも在宅勤務ができる環境を整備しており、数年前からリモートワークの制度や規程が整い、正式に運用が始まっています。IT施策としてはWeb会議やテレビ会議、ワイヤレス化も早く、いつでもどこでも同じ仕事ができる分、エンドポイントの施策をしていたので、他社に比べてセキュリティ費用が高いとよく言われました。ちょうど統合新社、三菱ケミカルが発足したところで、新たな業務効率化に向けて、会議の半減や作成資料削減といった施策とともにIT活用の検討を開始したところです。例えばITの適用として、データを探すといった検索作業を短縮するだけでも、大きな業務効率化につながるのではないかと思います。

──「健康経営」にも取り組んでいますね。

健康経営とは、従来の福利厚生的な健康管理ではなく、戦略的な健康投資を行うことで、従業員の健康増進と職場の生産性向上、創造性の活性化を果たし、それが「KAITEKI経営」につながるという考えです。AIなどの導入が進めば、個人に創造性や活力がより強く求められる時代になります。技術がいくら進歩しても中心は人です。ではどうすればもっとパフォーマンスが上がるのか。研修などでスキルを磨くことはもちろんですが、私はやる気が大切になると思います。スキル×やる気をいかに大きくするかが健康経営の真髄です。部下をやる気にさせるには色々な手がありますが、重要なのは日々の「承認ボタン」だと思います。部下を信頼し、承認し、存在を認めてあげる。部下のレポートに全部答えるなど、そういう地味なことを管理者がきちんと行えば組織のパフォーマンスはものすごく上がります。

──アシストへご意見・ご要望がございましたらお聞かせください。

MCHCグループにはIT要員が約1,600人います。まさに貴重な財産であり、宝物です。この大切な仲間とともに最高のパフォーマンスを生み出す最強のグローバルITチームとなるべく切磋琢磨して、グループの経営/事業に貢献することが私の目標です。ITについては欧米礼賛の論調が多い中、ユーザー会で御社会長のビルさんは、日本には日本の良さがあるという独自のメッセージを発信していらっしゃると思いました。ほとんどのITツールは米国が標準のようになり、日本独自のものは少なくなって、これをどうバランス維持させるかが現在の悩みです。ですから欧米の技術が標準になっても、それは日本が遅れているという問題ではなく、欧米のこういう技術をこんな形で日本に適合させたらどうですか、というような提案を期待しています。これからも日本人が気づいていない日本の特長・強みを語っていただき、日本のITの水先案内人となっていただきたいと思います。

──これからも精一杯ご支援をさせていただきます。ありがとうございました。

(対談日:2017年4月)


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