TOP>企業情報>コラム>特集>日本の大動脈を支える技術者集団~ICTの進歩が実現した定時運行~

日本の大動脈を支える技術者集団
~ICTの進歩が実現した定時運行~

対談×トップ・インタビュー:ジェイアール東海情報システム株式会社 山本芳裕 様


日本の大動脈である東京~名古屋~大阪の新幹線輸送と、名古屋・静岡を中心とした東海地域の在来線輸送を担うJR東海は、鉄道事業と相乗効果のある分野での関連事業の展開や中央新幹線計画など、常に挑戦を続けながら世の中に貢献しています。JR東海100%子会社として、グループ各社の情報システムの計画、構築、運用業務を担うジェイアール東海情報システム株式会社(JTIS)の代表取締役社長 山本芳裕様をお訪ねし、大塚辰男がお話を伺いました。

山本 芳裕 様 プロフィール

ジェイアール東海情報システム株式会社 代表取締役社長

1979年4月、日本国有鉄道入社。1987年鉄道通信株式会社へ入社、2002年にJR東海へ戻り、技術企画部担当部長、東海鉄道事業本部工務部長などを歴任し、2012年執行役員総合企画副本部長・情報システム部長に就任。2016年ジェイアール東海情報システム株式会社 代表取締役に就任し、現在に至る。


鉄道の運行、インフラから切符予約まで


大塚(以下色文字):貴社の概要をお教えください。

山本様(以下略):当社(以下、JTIS)はJR東海100%出資の子会社で1999年2月に設立され、来年2月に20周年を迎えます。JR東海は2017年に30周年を迎えましたので、JTISはそれより10年遅れで、親会社の情報システム機能の分社化により、鉄道をICTで支えるJR東海グループ唯一の情報技術者集団として設立されました。具体的には東海道・山陽新幹線の運転管理システムや、在来線の運行管理システム、東海道・山陽新幹線のエクスプレス予約システムや鉄道系ICカードTOICAなどの営業システムもJTISで担っています。その他にも線路や構造物など鉄道のインフラを管理するシステム、福利厚生を含めてJR東海やグループ各社の業務を支える様々な情報システムの計画・構築・運用に携わっています。

──鉄道の運行からバックオフィスのシステムに加え、インターネットを使ったエクスプレス予約などのシステムも含めると相当な数になりますね。

管理しているシステムの総数は約200です。JTISの社員は約500名でシステム開発の上流工程を担い、メーカーやベンダーさんなどの協力を得て情報システムの安定稼働を実現しています。

鉄道を支える通信技術


──山本様のご経歴をお聞かせいただけますか。

1979年に国鉄に入社し、鉄道を動かす電気設備管理の仕事に携わりました。1987年に国鉄が分割民営化されると、国鉄で使われていた鉄道電話システムなどを承継してJRグループに電話網などを提供するために作られた「鉄道通信」に入社しました。現在のソフトバンクです。国鉄は電電公社よりも早く、全国の駅との業務連絡に独自の業務用電話網を張り巡らせていました。国鉄は通信の自由化に伴い、1984年に日本テレコムを設立し新幹線沿いに光ファイバーケーブルを敷いてきましたが、国鉄の中に通信会社が2つあることになるため、1989年、鉄道通信が日本テレコムを合併し、社名は日本テレコム株式会社となりました。その日本テレコムを2004年に買収したのがソフトバンクでした。

──通信の自由化で電話会社の吸収合併、そして携帯電話が爆発的に普及し始めた時代に通信業界におられたのですね。

電電公社とは3公社ということで国鉄時代にスポーツ大会などで交流がありましたが、電電公社は国鉄より2年早い1985年に民営化されてNTTとなりました。長距離電話が3分400円、それを日本テレコムは320円にしましたが、電話をかけるのに10円玉がたくさん必要で10円玉の奪い合いをするような時代でした。2002年にJR東海へ戻り、在来線の地上設備の保守管理全般を担当し、2012年に情報システム担当になりました。アシストとのお付き合いはその頃からで、2016年、JTISの社長に就任しました。

定時運行を支えるコンピュータ


──日本の鉄道、特に新幹線や都市鉄道は、サービスの良さや安全性、信頼性、定時運行、清潔さなどから世界トップクラスと評価されていますが、それを支えるご苦労についてお聞かせいただけますか。

鉄道は、土木施設、電気施設や車両といったハードとソフトが一体となった総合システムです。これらを決められたルール(運転のルール、ダイヤなど)で運用することにより、安全、安定、快適な列車運行を確保しています。列車の衝突や脱線等を防ぎ、列車の運転を安全かつ効率的にサポートするために、列車集中制御装置(CTC)などの信号保安設備があります。信号保安設備は、装置の一部が故障した場合にも装置を常に安全に機能させるという「フェールセーフ」の仕組みで設計されています。信号保安設備だけでなく鉄道を支える情報システムは「常に動いて当たり前、正しく動いて当たり前」となっています。この当たり前を日々維持していくために大変苦労しています。

例えば、開発時の品質指標値に試験密度やバグ摘出率がありますが、JTISが担当する情報システムでは一般的な情報システムに比べて一桁上の品質が要求されます。日々の運用業務においても、監視機能や体制の強化、運用マニュアルの整備、障害復旧訓練や障害発生時の関係者への速報の徹底など愚直に取り組んでいます。

──「定時運行」は「当たり前」なのですね。

鉄道の安全・安定輸送のために、列車を衝突させないための技術開発には特に注力してきました。新幹線の場合、50年以上前に信号保安装置(ATC)が開発されました。これは簡単にいえば先行列車との間隔や線路の状況に応じてその時点における制限速度を列車へ指示し、それを超えるとブレーキを作動させるものです。当初のATCは停車駅に接近した際に、制限速度を段階的に指示するもので、列車はそのたびにブレーキをかけたり緩めたりしながら減速し、前の列車との衝突を回避していました。今ではより滑らかにスピードを落とすことを可能にする、デジタルタイプの高機能なATCが導入されています。

山本様


昔は単線でしたから、列車がA駅からB駅に発車するたびに連絡をとっていました。これは閉塞という、鉄道の衝突を防ぐための信号保安システムです。それが複線になると、駅間だけでなく列車ごとに閉塞区間を決めなければいけません。列車が少ない時はよいのですが、現在、新幹線はピーク時には1時間に15本も走っています。これだけ多く走っていても制御できるのはコンピュータの処理能力が高くなったおかげです。処理能力や通信速度が格段に上がった結果、伝送量が増え、それが現在の新幹線の運行を支えているのです。もちろんルールに従うという人的な教育の徹底も不可欠ですが、技術革新によるところが大きいですね。

──スマートEXによるネット予約サービスなど、利用者側のコンピュータ利活用も進んでいますが、それに合わせてセキュリティ強化も必要ですね。

最近はテレビ、冷蔵庫やエアコン等々、様々な家電製品までインタ―ネットに接続して便利に使えるようになっています。また今後スマホを利用したキャッシュレス決済のサービスも急速に広がっていくと思います。IPAが発表した「情報セキュリティ10大脅威2018」には、インターネットバンキングやクレジットカード情報などの不正利用、スマホやスマホアプリを狙った攻撃、IoT機器の不適切な管理が入っています。これらの便利なサービスを安心して使えるようにするためには、利用者とサービス事業者の双方の取り組みが大切だと思います。

鉄道事業を支えるICTにおいても情報セキュリティ対策は最重要課題の一つであり、組織的対策、物理的対策、技術的対策、人的対策の四つの対策を組み合わせ、多層防御的に情報セキュリティ対策に取り組んでいます。最新の技術を取り入れて物理的対策と技術的対策を講じ、情報セキュリティの高度なレベルを確保する一方、組織的対策と人的対策にも特に力を入れています。またJTISでは社員一人一人の高い意識が情報セキュリティの「要」であるとの考えから、「セキュリティ確保のネットワーク設計10か条」や「情報セキュリティ10か条」を発行して日頃から社員が情報システムの計画、構築、運用業務で意識できるよう指導しています。

新技術は慎重に検証


──アシストとのお付き合いは、民営化直後のJR東海様にNEC ACOS版のEASYTRIEVE PLUSをご導入いただいたところから始まっています。鉄道の運用はコンピュータなしにはありえませんが、昨今話題になっているIoTやAIのような新技術の採用計画はおありですか。

大塚辰男


親会社の鉄道事業は安全、安定輸送の確保が最優先であり、新しい技術をすぐに採用して取り入れることはありません。安全、利便性向上やコストダウンに資する技術なのか、JTISが目利き役になって取り入れるようにしています。一方でICTの技術進歩には目を見張るものがあり、お客様のニーズも高度化、多様化しています。このため近い将来に主流となる候補技術を、まずはJTIS内でPoCとしてフィールド検証する取り組みも始めています。また現在、RPAによる社内業務の効率化(自動化)やiPhoneやiPadといったモバイル端末の活用のPoCにも取り組んでいます。これからのデジタル時代を先導するのは若手社員ですので、若手社員の技術力向上にも力を入れ、今年度の新入社員研修では、IBM WatsonやAmazon Alexaなどを活用したシステムの企画、構築を行う演習も行います。さらに、若手社員がクラウドやAIなどを自発的に自由に使って技術検証できる環境(デジタル砂場)の整備も行っていく予定です。

──超電導リニアによる中央新幹線の実現により、東京~大阪間は最速67分と、大幅に短縮されます。リニア中央新幹線の今後の展望などお聞かせください。

超伝導リニアによる中央新幹線の運行管理システムをはじめとする各種システムに、JTISの技術を活かしていくことになります。日本の大動脈輸送を二重化する中央新幹線の建設により、「三世代の鉄道」を運営することをICTの側面から支えられるよう、日々研鑽を重ねて技術レベルの不断の向上に取り組んでいきます。

──キヨスクでアシスト取扱製品、QlikViewをお使いいただいています。弊社へのご意見、ご要望など、お願いいたします。

現状では、BIツールで定型的な過去実績の確認やExcel出力を行うところまでで、高度な統計手法を駆使してデータ分析を行い、ビジネスの改善に貢献するようなレベルには至っていませんが、今後はIoTデバイスなどから様々なデータを収集、蓄積することが可能となり、ビッグデータやアナリティクスをうまく活用することで、ビジネス革新の種を見い出すことができると思います。

アシストには様々な業界の情報分析に関する先行事例や、どのようなテクノロジーが大規模データ分析において利用可能であるかなどの情報を提供していただけることを期待しています。

──本日はどうもありがとうございました。

(対談日:2018年5月)

ページの先頭へ戻る