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「結ぶ 見まもる 創りだす」ありたい姿からのバックキャストで新時代へ

対談×トップ・インタビュー:通研電気工業株式会社 竹原 秀臣 様


通研電気工業株式会社(通研)は、東北帝国大学電気通信研究所の3名が太平洋戦争から復員し、戦後の復興に技術で貢献したいとの願いから創業された、大学発ベンチャーの先駆けです。研究成果を製品化して世に送り出し、社会の発展に貢献することをモットーに、電力設備の自動化に関わる製品を数多く生産し、現在は東北電力グループとして機器の開発から設計、製造、工事、保守まで一貫した体制でICTソリューションを提供、電力の安定供給に貢献しています。


竹原 秀臣 様 プロフィール

通研電気工業株式会社 取締役社長

東北電力に入社。一貫して情報通信関連業務に従事し、情報通信部長、執行役員を経て、2019年7月より現職。北海道函館市出身。


研究所の成果を製品化することから始まった


大塚(以下色文字):東北電力グループということで、電力関係の機器の開発や保守をされている企業と伺っていましたが、テープレコーダーの開発もされていたのですね。

竹原様(以下略):当社は1946年、東北帝国大学電気通信研究所の永井健三教授に、「研究所の成果を世に送り出し、役立ててみては」と助言されて誕生しました。テープレコーダーの原型となるマグノフォンや、ファクシミリ技術の先駆けとなる音片発振器なども製造しています。インターネットがなかった時代から、通信線路の障害点を検知する測定器などを主力製品として、情報通信技術を確立してきたのが当社です。1956年に東北電力の関連会社となり、今は主に電力会社向けの通信機器や制御システム関連機器の製造、設置工事、保守サービスを提供しています。


マグノフォン

音片発振器

静電誘導型トランジスタの応用製品

私は東北電力に入社し、一貫して情報通信の関連業務に従事してきました。2019年7月、当社の社長に就任しましたが、実は20代の頃に当社との共同研究に参画し、将来の電力通信網の利用を創造(妄想)するというテーマに取り組みました。その新しいことにチャレンジするマインドやスキルがその後の私のキャリアを決定づけることにもなり、その会社の社長に就任したことに不思議な縁を感じます。


いかに安全に人手をかけずに業務を行えるようにするか


── 近年、電力業界は大きな変化の中にあります。

東日本大震災前までは電気の需要は堅調に伸びてきましたが、技術革新や効率化により電気料金は下がり続けてきました。当社は、変電所などの遠隔制御や大規模な集中制御など、電力の安定供給や業務効率化に欠かせない通信ネットワークや制御システムの構築・保守で貢献してきました。震災後は省エネや環境対策により電力需要が頭打ちになり、太陽光発電などが大量に導入されてきたことで新たな投資が必要になってきています。これに加えて電気供給の強靭さ、いわゆるレジリエンスを高める議論 ※1 も始まっています。また中長期的には、急激な人口減少や労働者不足などによる電力需要や労働環境への影響が予想される中で、「いかに安全に人手をかけずに業務を行えるようにするか」をキーワードに、継続的な効率化や生産性の向上に取り組んでいます。

※1
豪雨や地震により電力の供給に大きな被害がもたらされたため、2018年に経済産業省が「電力レジリエンスワーキンググループ」を新設。災害に強い電力の供給体制の構築について議論している。


── 人口減少の問題はこれまでのやり方が通用しなくなるわけですから、あらゆる産業で取り組まなければならない課題ですね。

電気事業をめぐっては、自由化と送配電事業の法的分離、環境問題、電源の分散化などの変化も進んでいます。技術そのものは、ここでの問題解決の主語ではありません。技術を育て活かすのは、ここでいうところの関係者、あくまで人間です。これまでは労働人口が増えていたので、「人」がそれを担うことに疑いはありませんでしたが、急速な人口減少と高齢化が進み労働力が激減していく中で、技術を担う人間の量と質の問題が最も深刻な問題だと思います。

この問題に拍車をかけているのが、皮肉にも世界中に普及したインターネットやスマホの情報通信のデジタル技術ではないかと私は見ています。便利を通り越して“流される”という病が、急速に世界中に蔓延しています。WHOがゲーム中毒を病気に認定しました ※2 。SNSにはまり、すぐに平均的な答えを出してくれるググる行為を続けていると、人間は自分の頭で深く考え抜くことができず、実行もできない、いわゆる“流される”状態になります。この質の低下の問題は深刻で、日本ではさらにそれに人口減少が加わると言えるのではないでしょうか。

※2
2019年5月、世界保健機関(WHO)はゲームのやり過ぎで日常生活が困難になる「ゲーム障害」を国際疾病として正式に認定。ギャンブル依存症などと同じ精神疾患と位置付け、治療研究や世界の患者数の把握を後押しする。


ワクワクしながら仕事をしているか


── 自分の頭で考えることの大切さは、竹原様が通研との共同研究で実感されたことでもありますね。

ワクワクしながらプロジェクトに参画した経験は貴重でした。アナログからデジタルに通信網が変わる時で、デジタル化されたら何に使うか、何ができるのかを「妄想する」共同研究でした。これが今まさに求められていることだと思います。つまり人口減少という未来におけるありたい姿を描き、そこを起点とし、現在を振り返り、何をすべきかを「バックキャスティング」するのです。過去のデータや実績に基づくフォアキャスティング的思考では思いつかないアイデアを、バックキャスティングで自ら妄想していくのです。

── 妄想は具体的にはどうやってやるのでしょうか。

まず、アイデアの材料として、幅広い情報を集めインプットする必要があります。そこから妄想するわけですが、前例にとらわれずに、かつ現実性のあるものとするため、いわゆる鳥の眼、人の眼、蟻の眼で多面的に考え抜くしかありません。このことについて、最近読んだ本で感銘を受けたのが、岡田光信さんの『愚直に、考え抜く』 ※3 でした。スペースデブリ(宇宙のごみ)を回収する会社を興した方なんですが、岡田さんのやり方は、答えが出るまで考え抜く、そして行動してみる、というスタンスです。この本ではその手法が、「夢想力」、「孤考力」、「広動力」と独自の3つのキーワードでまとめられていてとても参考になりました。

当社の場合、目指すものは「いかに安全に人手をかけずにやるか」ですから、まずはそれを徹底的に考えていきます。アイデアが出てきたら、実現するためにいろんな人を動かさなければなりません。その気にさせる必要があります。ここでポイントになるのが「ワクワクするかどうか」だと思うのですが、その点アシストは「社員もお客様もワクワクする」というビジョンを掲げられていて、良いですね。着実に、効率的に、は仕事の重要な目標ですが、私は人が育たない仕事は仕事じゃないと思います。自ら工夫をしながらお客様のために働くことが、成長をもたらします。そのとき、自分もお客様もワクワクするのではないでしょうか。

※3
『愚直に、考え抜く。世界一厄介な問題を解決する思考法』(岡田光信 著/ダイヤモンド社)東京大学、大蔵省、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ITベンチャー、輝かしいキャリアから一転、ゼロから世界一の難問に挑む、宇宙ベンチャーCEOによる「自分を超える」ための思考法。


── アシストではワクワク仕事をするためにも、お客様と友達になることを奨励しています。信頼関係が築けるし、友達は裏切らない。

よく分かります。社長に就任してから支社を回りましたが、当社の人間はお客様からニックネームで呼ばれ、現場を任されている。お客様から信頼され、現場に密着していることを肌で感じました。だからこそお客様と一緒に考えることができる、これが通研の強みだと思いました。これまでも変電所などの無人化に貢献してきましたが、労働人口が減少する中、人がやらないといけない工事をどうするか、現場でいろんなものを見聞きしている当社の人間だからこそ、ありたい姿からバックキャストの視点で、ぶっ飛んだことを発想することも可能だと思います。

私が入社した頃には既に、「技術の東北電力」という言葉が浸透していました。組織的に大きな仕事を、安全安心に効率よく完遂する。そして、職能別階層型組織の縦の強さだけでなく、各個人の自由な発想を職場内でぶつけ合い新しい技術の応用などに結び付ける横のつながりの強さも併せ持つ(バイモーダルな)風土が東北電力グループにはあります。当社は、課題解決の有力な手段である情報通信に携わり、巨大な電力システムの神経に相当する制御技術やネットワークに精通していますし、なによりもベンチャー企業の社風を持っているので、重要な役割を果たしていけるものと自負しています。

デジタル化はそれらを実現する上で有効ですが、所詮手段、HOWにすぎません。まずWHY、WHATがスタートです。それを考えられる自律的な個人をいかに増やし、自由に考え抜いて行動できる環境をいかに整えるかが大事です。

── アシストも「安全に人手をかけずに業務を行う」お手伝いをぜひさせていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。


(対談日:2019年8月)

  • 掲載内容は取材当時のものです。

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