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オープンソース移行プロジェクト責任者

[掲載媒体]INSIGHT NOW!
[日付]2010年9月10日


2007年3月、アシストは社内の標準オフィス・ツールをMicrosoft OfficeからオープンソースのOpenOffice.orgへ全面移行した。その背景と導入時の苦悩を、アシスト公開ソフトウェア推進室神谷昌直が語った。

※OpenOffice.orgはワープロや表計算などの機能を持つオープンソースの統合オフィス・ツール。Microsoft Officeと互換性があるだけでなく、無償で自由に利用することができる。

オープンソース移行プロジェクト責任者

株式会社アシスト
公開ソフトウェア推進室
室長 神谷 昌直

1983年、アシストに入社。オンラインソフトウェア製品のサポート業務に従事、その後、システム運用、セキュリティ製品の営業を経て、中日本支社を担当。2006年5月より現職。




移行予定台数700台!


アシストがOpenOffice.orgへ移行したきっかけは、ビル・トッテンが、親しくしているお客様からオープンソース、フリーソフトと呼ばれる無料のソフトがあるので調べて欲しいと言われたのが始まり。その時は、有償のソフトウェアを売っているのに無料ソフトなんてとんでもない、とトッテンは思ったが、その後別のお客様からも言われるようになると、これは調べないとまずい、ということになり、そこで調査を命じられ、社内に設置されたのが公開ソフトウェア事業推進室だ。そしてオープンソースが必須となれば、お客様のIT化を支援するために、まずはアシストの社員がオープンソースを理解し、使いこなさなければいけないというトッテンの鶴の一声で、Microsoft Officeが社員のパソコンからアンインストールされることになった。

移行予定のパソコンの台数は約700台。アシスト社内には約1,000台のパソコンがあり、うち約300台は製品サポート、営業、販売支援、共通業務用である。この300台は商売上必要だとして、残る約700台のパソコンからMicrosoft Officeをアンインストールし、OpenOffice.orgをインストールしていくこととなった。

オープンソース・ソフトウェアとは、その設計図にあたるソースコードが無償で公開され、誰でも改良や再配布が行えるようになっているソフトウェアのことである。商用のソフトウェアは自社が開発したソースコードを非公開とし、それを供与することで使用料を取るのに対して、オープンソースは基本的に無償で使うことができる。日本の地方自治体でも導入が進んでいるが、世界でも欧州などではドイツをはじめチェコ、ポーランドでシェアは20%を超す。

実はこれ以前からトッテンは、オープンソースのオフィス・ソフトであるOpenOffice.orgの社内利用を社員に促していた。この理由の1つとして、毎日利用しているオフィス・ソフトであればアシストの営業マンが実際に体験したことや利用方法をお客様に直接伝えることができる。しかし、使い慣れたMicrosoft OfficeからOpenOffice.orgへ率先して変えようという者は一人もいなかった。

これについてトッテンは、「たとえ自宅では無料のオープンソースを使っていても、会社は有料ソフトが当たり前、という先入観があるからだ」と言い、「仕事用のボールペンは会社が支給するけれど、ブランドの万年筆を使いたければ自分のお金で買わなければならないように、有料のオフィス・ソフトを使いたければこれからは自分で買うこと」と全社員に通達する。

社長命令でなければ誰も移行したがらないOpenOffice.org。社内の当初の冷ややかな反応をみると、トッテンの言うとおり、「オープンソースの浸透を妨げているのは技術の問題ではなく、変化への抵抗と新しいことを覚えるのは面倒といった気持ちの問題だ」と神谷は言う。

プロジェクトチーム発足と浮かび上がった課題


こうして2006年5月、社内に公開ソフト事業推進室が作られ、神谷が責任者としてアサインされた。メンバーは神谷を含めて4人。BI製品部門から簑輪哲彦と石倉務、データベース部門から小川知高、その後サポートセンターから本田益之、そしてOpenOffice.orgに詳しい谷列樹が中途でメンバーに加わる。

2006年9月~10月に OpenOffice.orgのテスト導入と事前調査を行った。テスト利用することで問題点を洗い出し、事前に解決策を見出していくことを目的としたものだ。オープンソースは誰もが自由に利用することができる反面、自らが利用方法について工夫し、自らが問題解決を行うことが前提となるからである。

OpenOffice.orgの展開において、ダウンロードやインストールは社員各自に任せることにした。社内イントラからダウンロードするようにし、インストールは手順書を用意してイントラに掲載した。同時にMicrosoft Officeの利用状況の調査や、社外と社内における移行時の課題を調査するためのアンケートを実施。それらのアンケート結果を移行可能性判断やコスト削減効果の試算を行うための材料とし、その際の判断基準をチェックシートとしてまとめた。

これによって明らかになった移行時の課題は次の3つ。

  1.社外とのファイル交換(顧客を含め、他社のほとんどはMS-Officeを使っている)
  2.社内の既存システムとの連携
  3.Excelの一部の操作手順を自動化するためのマクロ機能の変換

1.についてはセキュリティのこともあり、基本はPDFでやり取りし、Microsoft形式が必要な場合はOpenOffice.orgの Microsoft Officeファイル変換機能を利用し、社外へ送信する前に、MS Viewer(MS Officeのファイルを閲覧、印刷するための機能で無償で提供されている)にて確認した。2.はExcelとAccessを使ったシステムだったので ExcelはOpenOffice.orgのCalcに、Accessは無償のAccessランタイム版を使用。3.は経理部が利用していたが、マクロ変換の準備が整い次第、移行することにした。

洗い出された課題の解決策はすべてめどがつき、あとは実行に移すばかりとなった。

移行開始と思わぬ落とし穴・・・そして


2006年12月末、全社員に向けて標準オフィス・ツールをOpenOffice.orgとする告知を行い、既存ファイルの変換作業が始まる。ファイルは全社共通、部門共通、個人使用の3段階に分け、作業はアサインされた各部門の担当者が行うことになった。変換時の問い合わせはヘルプデスクが対応することとし、変換期限は2007年1 月31日、同日をMicrosoft Officeの削除期限とした。

社員からインストール方法や使い方についての問い合わせが集中することを想定して、社内にOpenOffice.org専任のヘルプデスクを設置。ここでは、メール、電話による問い合わせ対応を行い、また、よくある質問に関してはFAQも用意した。

約1ヵ月の移行期間があったにもかかわらず社員の多くはぎりぎりになるまで移行作業を行わなかったとみえ、問い合わせが集中したのは1月末から2月はじめの2週間。その間約200件以上の質問がメールや電話で寄せられた、と神谷。そして問い合わせのほとんどはやり方を、知らない、わからない、というもので、機能がなく対応できないケースはほとんどなかったと言う。

移行後、全社員にOpenOffice.orgの利用調査のためにアンケートを実施、回答は600件、回答率は80%を超えた。多く寄せられた「事前に教育をして欲しかった」という要望に対しては、eラーニングでの教育や、教育センターが移行研修コースを提供するなどして対処し、また製品に対する要望はOpenOffice.orgのコミュニティへ還元することにした。

コスト削減については、アシストではMicrosoft Officeを3年契約で購入しており、バージョン・アップなどの権利が2007年時点で約2年間残っていた。Microsoft Officeの集約を進めることで2009年の更新時に、3年間で約1,700万円のコスト削減が実現した。Microsoft Officeのライセンスを多く持つ企業ほどコスト削減が期待できるだろう。

そして、現在


2010年9月。いまアシスト社内における標準オフィス・ツールはOpenOffice.orgであり、社内業務においてはほぼ100%がOpenOffice.orgである。例えば、全社共通の各種申請書などは社内イントラにて公開しているが、すべてMicrosoft OfficeではなくOpenOffice.orgのファイルで公開している。

既存ファイルの変換はどうしたのかというと、全社共通、部門共通の定型的なものや、契約書などの雛型のファイルのみ(それでも約1,500種類)OpenOffice.orgに変換した。それ以外の既存のMicrosoft Officeファイルは閲覧だけのケースが多いため、Microsoft OfficeのViewerを利用したり、必要に応じて都度変換するようにしている。

社外とのファイル交換はPDFで良い場合はOpenOffice.orgのPDF変換機能を利用し、Microsoft Officeファイルが必要な場合はOpenOffice.orgが持つ変換機能を利用している。変換によって体裁に問題がないか事前にMS Viewerで確認をして対応している。

最後にもう一度、なぜオープンソースなのか。ビル・トッテンはこう言う。

「利益を独占するための知的所有権の行使には以前から私は反対だった。そして世の中が大きく変化し、従来1つの企業または個人が独占的に所有してきた知的財産そのものが、公開され、共有化されることにより、その価値が薄れていく時代がくるだろうし、くるべきだ。ソフトウェアの世界においてはそれがオープンソースだ。先進ユーザである顧客企業から無料のソフトウェアがあると聞いたときは、そんなばかなことがあるだろうかと思ったが、実際に無料で使えるOpenOffice.orgを全社に導入し、何の支障もなかったことがその証だろう。オープンソースという波に乗り遅れれば、アシストの(商用のソフトウェア・ライセンスを販売するという)商売は成り立たなくなる」

移行プロジェクトはこのように無事に終わった。大きなトラブルもなく、また社員からの不満は今ではほとんどないと神谷は言い、自分たちで実際に使ってみて、有料ソフトと何の遜色もないことは明らかになったし、メリット、デメリットも体験から伝えられるようになった。顧客にOpenOffice.orgでファイルを送り、開かないという苦情がきても相手に無料ソフトを使っているという事情を話し、開き方を説明すると逆に興味を持ってもらえたため積極的に利用を勧めた例もあるという。

アシストがOpenOffice.orgを標準にしてから4年、以来入社した新入社員は約160名。彼らにとって標準のオフィス・ソフト製品はOpenOffice.orgである。変化の早いIT業界では新技術によって突然これまでの技術が陳腐化することがある。それとは逆にオフィス・ソフトのように成熟しコモディティ化している製品は、無料のソフトを使わない手はない。オープンソースの時代の敗者にならないためにも。

(文責: 株式会社アシスト 広報部 喜田 真弓)


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