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情報活用の浸透を妨げる壁

2013.03.01

株式会社アシスト
支社統括事業部 中日本支社
沖 冠吾


 2012年10月3日のITmediaエンタープライズの記事「ビッグデータ市場は年率40%で拡大へ――IDC予測」によれば、「IT調査会社のIDC Japanは10月3日、国内のビッグデータテクノロジー/サービス市場予測を発表した。2011年の市場規模は142億5000万円で、2012年は前年比38.2%の197億円になると予測。2011年から2016年に年平均39.9%で拡大し、2016年には765億円に達するとしている」と記載されています。年率約40%のペースで、市場が拡大していくとの予測です。

 この調査結果からも、昨今のビッグデータに関する企業の関心の高さが伺えます。企業がビッグデータに関心が高いのは、企業の中で増え続ける膨大な量のデータをなんとか企業戦略に活かせるよう情報活用したいという側面があります。では企業の情報活用に対する取り組みは、どのようになっているのでしょうか。今回は、企業における情報活用の取り組みに焦点を当てて解説します。

出典:「ITmedia エンタープライズ」
 http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1210/03/news047.html
 (「ITmediaより許可を得て引用」)

1.企業における情報活用の現状

様々な形で存在する企業データを活かすための情報活用の現状はどうなっているのか?「情報・ナレッジの共有/再利用環境の整備」の実施率推移を見てみましょう(図1)。企業は情報活用に取り組む意欲はあるものの、実態としてIT投資を行っていないことが判ります。つまり、現実的に情報活用できるレベルに達している企業は、未だに少ないといった現実が伺えます。

2.膨大なデータを情報へ変える


 コンピュータ技術の進化に伴い、様々なデータの取得ができるようになったにも関らず、肝心の情報活用がうまくいっていないということは、膨大なデータがあっても、企業の競争戦略立案に役立てる情報活用ができていないと言えます。ここで、「データ」と「情報」について意味を取り違えることがないようにおさらいしておきます。「データ」は事実そのものであり、「情報」はアクションが伴うものです。大雑把に言えば、コンピュータ・システムに格納されているものはデータであり、様々なデータを見て「人」はアクションを行います。このアクションを伴ったデータの塊が「情報」なのです。

 例えば、新商品を出した直後に、各販売店からの注文が殺到しました。データ(事実)としては、日々注文データが更新されます。現場は在庫不足に陥り、ラインの増設など早急な対応を経営層に要望します。こうして、注文と在庫の情報から(注文と在庫に関わるデータの塊)、ラインの増強というアクションがとられるのです。

 膨大なデータを情報へ変えるには、膨大なデータの「収集」、「蓄積」、「活用(分析)」を行う必要があります。「収集」、「蓄積」は、コンピュータ・システムで可能ですが、「活用」は、「人」が行わなければなりません。この重要な行為をなおざりにして、情報活用を行うことはできません。データ量が膨大になればなるほどアクションをとるべき「人」が、明確なアクションを想定する必要があります。アクションがない情報活用基盤の構築に莫大な投資をしても、企業に対するリターンは望めません。

3.情報活用投資へ二の足を踏む理由


 企業競争戦略立案のために情報活用は行いたい、しかし投資はしないという現状は、なぜ起こるのでしょうか。

 一般的に、情報活用は「意思決定の短縮化」、「在庫の見える化」、「原価の見える化」などの名目で導入が検討されます。経営者は、こうした名目のシステム構築により何が変わるのか、納得のいく説明をもらえないため、投資に対し二の足を踏まざるを得ないというのが、本音なのではないでしょうか。

 情報活用基盤の構築によって、例えば生産活動や販売活動がどう変わり、その変化が経営目標の達成にどう貢献するのか、そのような観点からの説明がなければ経営者はシステム構築の価値を見い出せません。つまり、経営者には、業務活動まで踏み込んだ情報活用の価値を伝えないと投資判断ができないのです。

4.情報活用基盤のあるべき姿


 情報活用基盤を構築する際に、IT部門が現場や経営者へヒアリングをすると、現場は自分が必要なレポートだけあればよいと言うし、経営者にヒアリングしても何も出てこないといった悩みがあるのも事実です。こうした状況下で、業務活動を考えてリターンのある企画と言われてもどうすればよいかわからないということになります。

 このような問題を打開するためには、現場や経営者へヒアリングを行う前に、情報活用のあるべき姿を考える必要があります。情報活用のあるべき姿とは、必要なデータが蓄積されており、必要なタイミングで参照でき、現場や経営者がアクションを起こせる環境です。

 つまり、トップから現場までのアクションが情報を介して有機的に繋がっている状態です。

 経営者は、情報を検知して部下である事業部長にアクションを指示します。事業部長は、同じ情報を見て問題の原因究明をするなど関連部門に対してアクションを指示します。各部門も同じ情報を見て、さらに情報を掘り下げ、取るべき措置を決定し実施します。ここで重要なのは経験や勘で指示をするのではなく情報から判断していることと、情報の連鎖が起きていることです。このように、情報でモノを語る文化の醸成を行うための基盤が、情報活用基盤になります。これは、業務活動と密接に関連したシステムとなります。アクションは、業務活動であり、情報活用基盤は、業務活動を支援していく基盤ということです。

 もう1つ考慮しなければならないのは、情報は常に変化するということです。そのため、変化を前提にした情報活用基盤を構築しなければなりません。変化とは、企業の方向性が変わる、目的が変わるといった業務活動を軸とした変化もあれば、今まで利用していた情報の見方が変わるといった変化もあります。情報活用基盤では、こうした変化を捉えて継続的に維持していく仕組みが必要となります。

 情報活用基盤のあるべき姿とは、企業として、情報を活用する文化があり、情報の変化に対して、企画→実施→評価→改善のサイクルを繰り返し行える体制づくりを構築している状態です。

5.情報活用の現状調査


 では、このあるべき姿の情報活用基盤をどのくらいの企業が、実践できているのでしょうか。アシストでは、2012年9月18日に情報活用診断サービスの実施を開始しました。このサービスでは、6つの視点から、情報活用の現状を診断するものとなっています。

(1)企業目標と情報活用目的の一致
  投資目的、利益貢献目標、情報活用推進体制が明確になっているなど。

(2)利用者が使いこなせる仕組み
  情報活用環境として、利用しやすい環境となっている、共有すべき情報が共有されているなど。

(3)データ整備
  複数のシステムのデータを横串で見ることができる、データ鮮度が高いなど。

(4)情報セキュリティ
  アクセス・コントロール定義、アクセス・ログの取得など。

(5)最適な仕組み
  レポート提供スピード、レスポンス・タイムなど。

(6)継続した評価/改善
  情報活用の改善活動、継続的に利用するためのユーザとのコミュニケーション体制など。

 上記の6つの視点から、数十社の診断を行いました。その結果から、企業における情報活用の現状が浮き彫りになりました。各社で、実施した結果の平均点をグラフにしたのが、図2となります。


 データ整備などシステム・インフラの部分に関しては、比較的どの企業も整備されています。一方課題となったのは「企業目標と情報活用目的の一致度」、「継続した評価/改善」です。あるべき姿と対比した場合、企業における情報活用の位置付け、継続的な改善体制といった部分については不足していると考えられます。

6.ユーザ部門とIT部門のコミュニケーション


 こうした課題を解決するためには、情報活用の主体である現場とIT部門のコミュニケーションを円滑にすることが重要です。コミュニケーションが円滑であれば、IT部門はユーザ部門のアクションを正しく理解して最適なツールを導入し、ユーザ部門が継続的に改善活動を行える環境を提供することができます。そのために、IT部門とユーザ部門の間で業務活動とレポートを紐づけるワークシートを作成し、お互いが共通認識を持てるように整理しなければなりません。

 ワークシートでは「誰が」、「何を」、「いつ」、「なぜ」、「どんなアクションのために」といった5W1Hを用いて業務活動と情報の関係性を整理、可視化します。これにより、IT部門がユーザの利用イメージを理解できるようになります。

 またシステム的には、各レポートの利用状況ログを取得して分析を行い必要なタイミングで必要なレポートが、参照されているかを監視します。監視を行うことで、同じ営業部でもA支店では参照されているがB支店では利用されていないといったことが検知できます。

 ワークシートで定義したアクションに基づいた情報活用ができているかどうかもログから判断することができます。こうしたワークシートの活用により、IT部門とユーザ部門とのコミュニケーション方法を確立できるようになります。

7.情報活用の浸透を妨げる壁


 あるべき情報活用の姿を阻害する要因には、経営層、ユーザ部門、IT部門の意識の壁があります。

 三者がそれぞれ主張し合いコミュニケーションが円滑ではない、また、情報活用のあるべき姿(目指すべき姿)が提示されていないといった、取り組みに対する意識の問題が大きな原因です。コンピュータ・システムとして情報の可視化を行うのではなく、企業としての情報活用のあり方を経営層、IT部門、ユーザ部門とが一体となって構築をしていくプロセスを踏むことが企業に情報活用を浸透させる第一歩となります。

 情報は企業の最も大きな資産で、価値があるものだという信念を持って、根気よく、企業に根付かせていく活動の取り組みをお勧めします。

株式会社アシスト ソフトウェア・リサーチ・センターについて

ソフトウェア・リサーチ・センターはアシストの組織を横断するメンバーから構成され、アシストの特徴を活かした中立的な立場でのソフトウェア製品や市場動向の調査を行っています。



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