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デスクトップ仮想化の誤解を解く

2012.07.02

本コラムの執筆者

斎藤

15年前のクライアント仮想化の草創期から一貫してこの分野に関わり続けてきたクライアント仮想化の第一人者。現在はエバンジェリスト、コンサルタントとして主に活動。年間20件近いセミナー講演も行っている。
週中はフィットネスクラブ通い、週末は愛車のBMWでドライブが趣味のアクティブな50代。


 かつて企業のIT資産は、長くコンピュータ・ルームの中だけに存在していました。ハードウェアやネットワークの性能の限界が、それ以外の方法を許さなかったからです。1990年代に入り、パーソナル・コンピュータの性能向上による分散化の波が一気に押し寄せ、企業IT資産は各ユーザの手元に分散保持されることになりました。この流れは業務効率の大幅な向上というメリットを提供するとともに、管理工数の増大や情報漏洩など多くの困難な問題をも生み出す結果をもたらしたと言えます。昨今、注目度が高まっているデスクトップ仮想化ソリューションは、急速に発達/普及し続けているブロードバンドとハードウェアの性能単価の低下を利用して、この分散化した企業IT資産を再度集約し管理工数やセキュリティなどの問題を解決した上で、今まで以上の業務効率を提供しようとするものです。ただ、「仮想化」という言葉が先行するあまり、一部にはこのソリューションに対する大きな誤解も存在しているように感じます。

 本稿ではこのソリューションに対する誤解を解き、導入のための最初の考慮ポイントについて考察します。

そもそも「デスクトップ仮想化」とは?


 現在、Web上で見られるIT情報サイトやIT系雑誌などにおいて、「デスクトップ仮想化」についての論述が盛んに行われています。しかしながらこれらの文章では、「デスクトップ仮想化」=「クライアントOSを仮想化(仮想マシン化)して、そのデスクトップを配信する」という説明がなされているものが多く見受けられます。そして多くの企業が、この方式を採用した場合に必要な膨大なハードウェア・コストを想像し、結果としてこのソリューションの採用を断念、または二の足を踏んでいる実状があるようです。

 しかし、そもそもデスクトップ仮想化は、10数年前から存在する「シンクライアント・ソリューション」を基本としていることを忘れてはなりません。当時はまだ仮想PC(クライアントOSを仮想化)などという発想は存在せず、多くの企業がターミナル・サービスを使ったサーバベース・コンピューティングによるデスクトップやアプリケーションの仮想化を実現し、大きな効果を得ていました。この方式であれば、仮想PC方式の数分の1のハードウェア・コストで構築が可能です。したがってこのサーバベース方式を基本として仮想デスクトップ環境の構築を検討していけば、コストの壁に阻まれることは少ないと言えます

デスクトップ仮想化の目的と実現のための必要条件


 デスクトップ仮想化の方法や採用技術を論議する前に、このソリューションが本来目指している目的について考えたいと思います。

 「デスクトップ」とは、直訳すれば「机上」という意味で、すなわち仕事をするための場です。つまりこのソリューションの目的は「業務を遂行するための場(デスクトップ)をデリバリーすること」です。ただ一言で業務と言っても、ユーザによって、またその場面によって様々な状況が考えられます。したがってこのソリューションを実現するには、「あらゆる場所、様々なデバイス、様々なネットワークを利用してアクセスしてくるユーザに業務環境を安全にデリバリーできる」という条件を満たすことが必要です。

 これらの条件を満たすために必要なポイントを以下にまとめてみました。

  1.クライアント側の環境に依存しない
    Windows、MAC、Linux、iPhone、iPad、Android端末などのサポート

  2.快適なレスポンスや使用感
    あらゆるネットワーク環境でも快適なレスポンス

  3.あらゆるアプリケーションに対応
    オフィス・ツール、伝票入力、文書閲覧、画像、音声、動画、エンジニアリング・ツール etc.

  4.クライアント側の接続デバイスのサポート
    プリンタ、ドライブ(読み書き、または読み込みのみ)、バーコード・リーダ、デジタル・カメラ、
    スキャナ、その他特殊なデバイス

  5.セキュリティの確保
    情報漏洩防止、ウィルス感染防止、不正アクセスの防止 等

  6.TCOの削減の実現
    IT資産集約によるTCOの削減効果

 仮想デスクトップ環境の導入を検討する上では、上記のような条件をクリアできる、またはクリアする見込みのあるソリューションを選択することが重要です。

一般的なデスクトップ仮想化の仕組み


 下の図は、Webなどで一般的に紹介されている仮想デスクトップ環境の構築に使用される仕組みを、アシストがまとめたものです。

desktop


 デスクトップ仮想化(Windowsデスクトップを配信する)を実現する方法として代表的なのは、以下の3つです。

  ・サーバベース方式によるデスクトップ配信
  ・仮想PC方式(クライアントOSを仮想化)によるデスクトップ配信
  ・Peer to Peer方式(物理PC)によるデスクトップ配信

 さらに、管理工数の削減やサーバ投資コストの削減のために、以下の「アプリケーション仮想化」の考え方を組み合わせて検討することもできます。

  ・サーバベース方式によるアプリケーション画面の配信
  ・アプリケーション・ストリーミングによるアプリケーション配信

 上記のサーバベース方式によるアプリケーション仮想化方式は単独で利用されることもあります。例えばiPhoneなどのスマートフォンでの利用です。これらのデバイス上では、使用したいアプリケーションの画面だけが表示されるほうが、デスクトップの画面そのものが表示されるよりも使いやすいのはご想像いただけると思います。ただ、上記2つ目のアプリケーション・ストリーミング方式を単独で利用することは、アシストではあまりお勧めしていません。図1でもおわかりのとおり、この方式はクライアント環境に大きく依存し、またセキュリティ面での対策も別途考慮が必要です。つまり、このソリューション本来の目的である「あらゆる場所、様々なデバイス、様々なネットワークを利用してアクセスしてくるユーザに業務環境を安全にデリバリーすること」から逸脱してしまう可能性が高いということがご理解いただけると思います。

各方式を選定する基準


 3つのデスクトップ仮想化方式とアプリケーション仮想化の組み合わせに、画一的な判断基準は存在しません。以下の図のような情報を基に判断をしていく必要があります。

図2 デスクトップ仮想化の分類と適合ユーザ
(クリックで拡大します)

 サーバベース方式は前述の通り、他の方式に比べて圧倒的にユーザ集約率が高く、ハードウェア・コストを数分の1に縮小することが可能です。ただこの仕組みは、クライアントPCからの移行におけるアプリケーション非互換の問題が内在しており、すべての業務を移行することは困難であると言えます。もちろん、様々な技術の応用により、現在ではほとんどのアプリケーションが移植可能になってはいますが、すべてではありません。この課題の解決のために仮想PC方式が考案されたと考えるのが妥当です。

 仮想PC方式は、ユーザごとに使用するクライアントOSを仮想化して保持する方式ですので、サーバベース方式のようなアプリケーションの非互換はほとんど存在しません。また各ユーザに完全に独立したデスクトップ環境を提供できるため、従来のクライアントPCの環境とほとんど変わらない使用感を提供できるというメリットもあります。ただし、仮想PC方式でも現段階では未だ不向きと言えるアプリケーションも存在します。例えば、エンジニアやデザイナーが使用する3D CADなどの高度な画像処理を必要とするアプリケーションがそれに当たります。これらは通常GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット、通称:グラフィック・ボード)を搭載した高性能な物理PC上での使用が前提となっており、それは仮想デスクトップ環境においても未だ例外とは言えません。

 以上のように、単一の方式ですべての業務を網羅することは困難であり、また適正なコストで構築することもできません。これらの方式をうまく組み合わせて、ユーザそれぞれに最適なデスクトップ環境を適正なコストで提供すること。この考え方を仮想デスクトップ環境検討のスタートラインにするべきであると思います。

最後に


 デスクトップ仮想化ソリューションは、従来よりTCOの削減効果や強固な情報漏洩対策の方法としては注目されていましたが、VPNとの組み合わせによるテレワーク環境は、災害発生時やパンデミック発生時のBCP対策、オフィス・スペースの効率的利用や移動交通費の削減、営業効率の向上などといった様々な効果も生み出します。また、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)への対応や交通網の混雑緩和によるCO2排出量削減効果など、社会的にも非常に注目されているソリューションです。さらにこのソリューションによって、ユーザの手元にあるデバイスにも新たな役割が担わされたのではないかと私は考えています。iPadの出現に象徴されるように、新たなパーソナル・デバイスの登場は企業や市場に全く新しいビジネス・シーンをもたらす可能性を秘めていると言えます。今後出現してくるであろうそれらの様々なデバイスも、このソリューションと組み合わせることで、次々と企業活動の一部に組み込まれていくであろうと、私は確信しています。

株式会社アシスト ソフトウェア・リサーチ・センターについて

ソフトウェア・リサーチ・センターはアシストの組織を横断するメンバーから構成され、アシストの特徴を活かした中立的な立場でのソフトウェア製品や市場動向の調査を行っています。


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