NO.31 クラシエホールディングス
ボディ・ソープ、シャンプー、コンディショナー、基礎化粧品などの生活に密着した日用品をはじめ、漢方薬を中心とした医療用医薬品から一般用医薬品、そしてお菓子やアイスクリームといった食品まで、常に新しい商品と価値を提供し続けているクラシエ・グループ。同グループではERPを導入することで基幹システムを刷新し、「ベスト・プラクティス」企業を目指して業務改革を遂行している。社内において「ビッグバン」と呼ばれる程、大胆で大規模なERPの導入を、2年半という短期間で実現した経緯と、乗り越えなければならなかった課題について、お話を伺った。 |
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Guest Speaker
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もくじ
1. 繊細に細やかに暮らしをサポートするクラシエ・グループ
クラシエ・グループの成り立ちを教えてください。
クラシエ・グループは、旧カネボウ株式会社の事業のうち、日用品、医薬品、食品という3つの事業を引き継ぎ誕生した企業グループです。「クラシエホールディングス株式会社」は、当初は「カネボウ・トリニティ・ホールディングス株式会社」という社名でしたが、2007年7月1日に現在の社名に変更し、グループ経営戦略の策定や推進、経営管理を担うこととなりました。日用品関係は「クラシエホームプロダクツ株式会社」と「クラシエホームプロダクツ販売株式会社」が、薬品関係は「クラシエ製薬株式会社」と「クラシエ薬品株式会社」が、食品関係は「クラシエフーズ株式会社」と「クラシエフーズ販売株式会社」が中心となって事業を展開しています。
カネボウというと120年以上の歴史があり、繊維や化粧品のイメージも強いのですが、現在、これらの事業はどうなっているのでしょうか。
確かにカネボウというと、1887年の創業から営んでいた繊維事業、そして化粧品事業などを思い浮かべる方も多いかもしれません。
繊維事業は、2004年から2005年の事業再編の中で売却しました。また、化粧品事業に関しては、花王グループの「株式会社カネボウ化粧品」が、「Kanebo(カネボウ)」という商標権とともに事業を引き継いでいます。クラシエ・グループとカネボウ化粧品との間には、現在、資本関係はありません。
それでは、改めてクラシエ・グループの事業領域について教えてください。
クラシエ・グループでは、「ホームプロダクツ」、「薬品」、「食品」という3つの事業分野を柱に、生活に密着した様々な製品を提供しています。
ホームプロダクツ事業は、ボディ・ソープ、シャンプー、コンディショナー、基礎化粧品など、生活に密着した日用品や化粧品を提供しています。また、これらの一般生活者向けの商品に加え、ヘアサロン、ホテル、ゴルフ場、都市型温浴施設といった業務用の分野でも幅広い商品を展開しています。
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薬品事業は、漢方薬を中心に、医療用医薬品から一般用医薬品まで、健康を総合的に守るための商品を幅広く提供しています。その歴史の中で培ってきた高い技術力と開発力は、薬品、ホームプロダクツ、食品という3事業において相乗効果を発揮し、新しい市場を開拓する上でとても重要な役割を果たしています。 |
「クラシエ」の名前の由来について教えてください。
「クラシエ(Kracie)」という名前には、「人を想い続ける。そんな私たちの志をもっと暮らしの深いところまで。もっとあなたの暮らしの中へ。暮らしのすみずみまで繊細に思いやり、四季の変化や生活の細部にいつも敏感であり続ける。そうすることで新しい気づきがあり、使う人にとって優しい商品やサービスを提案したい」という全社員の願いが込められています。お客様に向き合う姿勢をより「明確化」「鮮明化」したもので、2007年7月1日から新しい社名およびコーポレート商標として使用しています。
「クラシエ」らしさということに関して、例を挙げるとしたらどのようなことがありますか。
商品ラベルや取扱説明書の文字を大きくしたり、手の小さな女性でも持ちやすい詰め替え商品のデザインを開発するなど、「使う人にとっても、地球にとっても優しい商品」にするための様々な工夫を行っています。
例えば、2009年にリニューアル発売された、桃の葉やアロエでおなじみの「ナイーブ」は、手間のかかりがちな詰め替え作業をより快適にするために、様々なモニター・テストを実施したり、専門家のアドバイスをいただいたりしながら、詰め替えパッケージをより使いやすいデザインに改良しました。新しいボトルは従来に比べてプラスチックの量の3分の1を削減することで、ゴミの減量化、省資源化、地球環境保護といった点にも配慮した商品となっています。
2. 「連邦制」のグループ経営の基盤としてERPを導入
クラシエ・グループにおけるIT の活用方針について教えていただけますか。
ホームプロダクツ、薬品、食品という3つの事業領域は、それぞれ商習慣や市場の特性が異なります。さらに、それぞれの事業が自立した組織であるべきであるという考え方から、独立して事業を展開してきました。その結果、各事業会社は独自にシステムを構築し、ITを活用してきたという経緯があります。しかし、これからはグループとしてより結束を強め、事業を展開していくことでクラシエ・グループとしての強みを発揮していくことが必要となります。
グループとしての結束とは具体的にどのようなことでしょうか。
クラシエ・グループが取り組んでいる市場は、成熟している市場ばかりです。そのため、一気通貫した体制で取り組んでいかなければ、タイムリーに課題を解決し、競争に勝つことはできません。 |
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それを可能にするための基盤作りとしてグループ全体で取り組んでいるのが、ERPによるグループ経営基盤の構築です。基盤となる部分を各事業会社間で統一するために、可能な限りERPというシステム基盤上で業務を展開しようと考えました。販売管理から管理会計までのモジュールを一括で導入する「ビッグバン」方式とすることで、導入後の業務変革につながることを期待しました。
なぜERPの導入なのでしょうか。
各事業会社の中だけで閉じたITを活用していてもグループ全体への波及効果は限られてしまいます。グループとして経営システムの見直しや事業運営の効率化を推進するためには、グループにとって最適なITとはどのようなものかという視点からシステムを見直す必要がありました。
その点ERPを導入すれば、企業の基幹業務全体が1箇所に集約された「データベース」を介して一元的に統合管理されます。すなわち、受注、販売、生産などの各業務における個別処理での情報が、入力時点で即時に会計情報として全体に反映され、要約して参照できるようになります。逆に要約された会計情報から詳細を深掘りしていくことで、各業務情報のそれぞれに辿りつくこともできます。
一般的にERPの導入は、システム開発期間の短縮や導入コストの削減、そして内部統制への対応というメリットがあると言われていますが、そのような狙いはありましたか。
もちろん、ERP を採用することで、システムの導入にかかる時間とコストを省いてしまおうという考えはありました。そして、それ以上に重要視したのは、まさに内部統制への対応です。ERPは、データの入出力やシステム内でデータの処理が正しく実行される点が確保されているので、財務諸表の信頼性を担保する手段ともなります。すなわち、ERPを導入すること自体が、内部統制がコントロールされていることを証明する手段となるわけです。
ERPを導入する前はどのような状況だったのでしょうか。
もちろんERPを導入する前も、各事業会社から上がってきた情報をグループとして取りまとめていました。しかし、例えば「純売上高」という言葉1つにしても、基本的な内容は変わらないのですが、事業会社やシステムごとに微妙に考え方や定義、集計のタイミングなどに違いがありました。
そのため、各事業会社がリアルタイムに正確な数字を上げてきてくれても、グループとして連結して数字をまとめた時に、微調整が必要であったり、正しい結果が出てくるまでに時間がかかったりしていました。
しかも、グループとして情報の共有ができていないため、当時は、生産現場の人に特定の商品がどれくらい儲かっているか聞いても、「結構有名な商品だし、儲かっているんじゃない?」という程度の認識でした。
当然、このような環境では、グループとして迅速かつ的確な経営判断を下すことはできませんでした。グループとしてリアルタイムに経営状態を可視化し、経営判断のスピードアップを図るために、グループ全体でERP を活用することは急務でした。
ERPの導入スケジュールを教えていただけますか。
色々と準備はしていましたが、導入の検討を本格的に開始したのは、2007年3月頃です。その後ソフトウェアなどを選定し、2008年1月からシステム設計と開発作業を開始しました。
ただし、予定していたすべてのモジュールを一斉に導入するパワーがなかったので、まずは、2008年11月に第1フェーズとして、「販売管理」「財務会計」「物流管理」「在庫購買管理の一部」をカットオーバーしました。続いて2008年12月からは第2フェーズということで、「生産計画/管理」「品質管理」「管理会計」に着手し、第2フェーズのカットオーバーは2009年9月を予定しています(取材は2009年5月)。
これだけのモジュールが一気に導入されると、基幹業務が完全に刷新されますね。
まさに「ビックバン」なのですが、ERPを利用すると業務効率が上がり、スピーディな財務会計、管理会計が実現できるわけですから、可能な限りの業務をERPに載せる必要があるだろうと考えました。
3. ERPを導入したことで、これまでの業務手順が間違っていなかったことを再確認
クラシエ・グループのような大規模な企業グループにおいて、このような短期間でERPをグループ全体に導入するのは容易なことではないと思います。また国内では、大規模なERPの導入に失敗した例もあると聞いています。御社においてはERPを導入して、業務を変革することに対し、抵抗や反対などはなかったのでしょうか。
すべての関係者が賛成していたかどうかはわかりませんが、ちょうどERPの導入検討をしていた2007 年は、社名とコーポレートの商標が「カネボウ」から「クラシエ」へと変わるタイミングでもありました。
そのため、保守的にこれまでのやり方を踏襲したり伝統に固執するよりも、新しいことに挑戦して新たな飛躍や変化を目指していこうという意気込みが強く、むしろこのくらいの業務改革は当たり前という雰囲気がありました。
ERPには、優れていると考えられる業務プロセスやあるべき統制の姿、すなわち「ベスト・プラクティス」が反映されている一方で、業務プロセスをERPに合わせる必要があり、逆に独自の競争力が削がれてしまうという考え方もあるようです。
グループ内でもそういった議論がなかったわけではありません。しかし、「クラシエを、他社がモデル企業として真似したくなる会社、いわゆる『ベスト・プラクティス』企業まで磨き上げ、企業価値の最大化を図る」ことは、当社の方針でもあります。
そのため、ERPに反映する通常業務に関しては、独自性に拘らず、むしろ、統制が厳格だと言われているSAP 社のSAP ERP Central Component(SAP ECC)を採用しようということになりました。
「統制が厳格」ということですが、実際に導入されていかがでしょうか。
おもしろいことに、実際にERPを導入してみると、導入前の業務プロセスと導入後の業務プロセスの考え方に大きな差異がないことがわかりました。もちろん、細かな言葉の定義や若干の手順の違いなどはあります。しかし、自社内であるべき姿として考え、実践してきた業務プロセスやデータの取り扱い方法が、ベスト・プラクティスと言われる手法と、基本的な部分では変わらないということが確認できたのは大きな収穫でした。
このことにより、利用するツールが変わっても、基本的にはこれまで実践してきたことを継続していけば、企業としての「ベスト・プラクティス」も実現できるはずだと、自信を深めました。
ERPの導入を進める上で、苦労したことはなかったのでしょうか。
もちろん、ERPで定義された手法に従って細かなルールや手順の変更が必要だったり、3つの事業領域の情報を常に一元化しなければならない、という点については、現在も苦労しています。しかし、それ程の混乱はありません。むしろ、今回のERP導入では、これまでの手作りのシステム構築とは全く異なる体験をしており、それをとても新鮮に感じています。
「苦労はあるが、新鮮に感じている」というのはどういった点についてですか。
パッケージの導入ではなく自社開発の場合、通常、システムを導入する時は、実際にシステムを利用するユーザが要望を挙げ、情報システム部門がその要望に沿ったシステムを開発していきます。
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その時に情報システム部門に求められるのは、業務内容の理解よりも、システムの品質や性能を上げるためのノウハウや知識です。もちろん、業務を全く理解しないままではシステムを構築することはできませんので、業務に関する知識がないわけではありませんが、ある程度、要求通りにシステムを構築してしまえばそれで済んでしまうことも少なくありません。 |
さらに、パッケージの場合は、内部でどのような仕組みになっているのかわかりづらいことも多いので、その仕組みを調べたり、ERP導入をサポートしてもらっているコンサルタントに聞いたりしなければなりませんでした。
その分、これまでとは比べものにならない程、業務への深い理解が必要となります。また、利用者とシステム担当者だけでなく、時にはこれまでつながりのなかった利用者同士も、密接にコミュニケーションを取りながら、システムの導入に取り組まなければなりません。
このような取り組みは、手間がかかり大変なことですが、新鮮な体験であると同時に、時間が経つにつれて社員間に同じグループで働いているという一体感も生まれ、とてもやりがいのある仕事でもあります。
4. サテライト・データベースを設け、ERPと既存システムを連携
その他に、ERPの導入に際して乗り越えなければならなかった課題などはありましたでしょうか。
単にERPを導入するだけでなく、各事業会社が利用している既存システムとERPをどう連携するのか、また、その運用をどう効率化していくかという点も、乗り越えなければならない大きな課題でした。SAP ECCを中心に据えた構成としながら、営業最前線が活用しているITインフラを含め、外部顧客との接点に位置づけるシステムは既存システムを残すことにしました。
理想的には、各事業会社で使用している既存のシステムからERP のマスター・データベースへ直接アクセスしてもらえればいいのですが、ERP 側に複数システムと連携するためのアドオンなどを追加するとなると手間もかかり、運用も混乱しかねません。
一方、各事業会社が競争力を維持し、さらに強化していくためには個別に開発してきた既存システム側にも大幅な変更は加えたくありません。そのため、橋渡しをする連携用のサテライト・データベースを設け、データを連携するようにしました。
すなわち、各事業会社はこのサテライト・データベースにアクセスして情報をやり取りし、それとは別にサテライト・データベースとマスター・データベースが同期をとるようにして、情報を一元的に管理しています。
アシストが提供するデータ連携ミドルウェア「
DataSpider Servista
」をご利用いただいているのは、このデータ連携の仕組みの部分でしょうか。
その通りです。各事業会社の既存システムからサテライト・データベースへのアクセスは「DataSpider Servista
」で実現しています。
色々なデータ連携ツールがある中で、DataSpider Servista
を選択された理由をお聞かせください。
当グループのように様々なシステムとERPのデータを連携するためには、汎用性が高いもの、すなわち対応しているアダプタ製品が多いものを選ばなければなりませんでした。その点、DataSpider Servista
は、非常に豊富なアダプタを備えており、既存のシステムだけではなく、将来的なデータ連携ニーズにも対応できると思えました。
また、システムの構築期間も短く、人員に余裕もなかったので、簡単で使いやすいという点も重視しました。実際、習得が容易で、連携部分を手作業で作り込んだ場合と比較し、工数、コストも大幅に削減できたと感じています。
DataSpider Servista
のようなツールがなければ、データ連携が必要になるたびに、そのつなぎ部分のシステムを外部などに委託して開発しなければなりません。しかしDataSpider Servista
を使えば、システム間のデータ連携を簡単な操作で設定できるので、コストも手間も省け、スピーディな対応が可能となります。
DataSpider Servistaのどのようなところが使いやすいのでしょうか。
DataSpider Servista
は、使っている時に「ここはこうなるな」とか、「こうすればこうなるはず」と納得しながら使えるので、ストレスを感じることはほとんどありません。GUIベースのインターフェースが、理解しやすいのだと思います。
アシストの対応やサポートはいかがでしたか。
パッケージ・ソフトだけではカバーできない部分にも柔軟に対応してくれました。例えば、薬品事業では漢方薬を取り扱っている関係で、数多くの外字を使用しています。商品名の例でいえば、のどの痛み用の漢方薬「銀翹散(ギンギョウサン)」のように、使われている薬草の名前を商品名に使用しています。DataSpider Servista
の標準機能だけでは、このような漢方薬名に対応するのが難しかったのですが、アシストと開発会社の緊密な連携により、迅速に、当社向けの文字コード変換コンバータを提供していただきました。このようなきめ細やかなサポートは本当に助かります。
ERPのマスター・データベースとサテライト・データベースの同期はどのように実現されているのでしょうか。
「DataSpider Servista
」とは別のデータ連携ツールを使用しています。「DataSpider Servista
」にもERPに接続するためのSAPアダプタがオプションで用意されていますが、それを使いこなすためにはERPに関する知識や経験、開発力が必要となります。そこで、SAP接続に特化したツールを導入し、ERPデータ連携の経験豊富な外部ベンダーに開発を委託しました。
図1:ERPと各事業会社のデータ連携イメージ |
5. 蓄積されたデータをどれだけ活用していくかがこれからの課題
これだけの規模のシステムになると運用の負荷も大きくなると思いますが、運用の効率化については、どう対応されているのでしょうか。
確かに、このように複数の大規模なシステムを稼働させながら、データを連携していくことは容易ではありません。もちろん、人手をかけ、時間的な余裕もあればそれなりにできないこともないと思いますが、迅速かつ確実にデータを連携していくためには、運用を自動化せざるを得ません。
そのため、運用管理ソフトウェアの「JP1
」を利用して、ERP全般のバッチ処理を運用するようにしています。
なぜJP1を採用されたのでしょうか。
すでにグループ内で導入していたということもありましたが、社内にノウハウも少ないことから、汎用性が高く、マーケットシェアも高い製品をということでJP1
を採用しました。
稼働状況はいかがですか。
概ね順調に稼働していますが、このように大規模で複数のシステムと連携しながら運用した経験はなく、情報やノウハウも少ないので、手探りの状態で対応している部分もあります。今後も改善を重ね、きれいでわかりやすい仕組みにしていきたいと思っています。
今後、ERPの拡張予定などあれば教えてください。
データをどう可視化していくのか、どう経営に活用していくのかということが、これから取り組んでいかなければならないテーマです。もちろん現段階でも、ERPのデータをすでに活用していますが、ERPにどういう情報が蓄積され、そこからどういう数字をはじき出すことができるのかということに関して、もっと精査することが大切だと思っています。
今後は、事業単位や部門単位でのITの新規導入は減ってくると思います。ERPを経営基盤のコアとして捉え、運営、拡張していきたいと考えているからです。それを担うERP推進部の役割の重要性はますます高まってくると考えています。
6. セミナーやフォーラムでの情報をきっかけに様々な製品を導入
それでは、アシストとの取引が始まったきっかけを教えてください。
2007年にクラシエフーズで、Webレポーティング・ツール「WebFOCUS
」を導入したのが、アシストとのお付き合いの始まりでした。
クラシエフーズでは、2005年から2006年にかけ、業務内容に応じパッケージ・ソフトウェアとシステム開発を組み合わせ、全国7拠点に分散していた基幹系システムを刷新しました(グループ全体の基幹システムとは別の、クラシエフーズ内の基幹システム)。
そして2007年には、ビジネスの透明性を高めるための「データの見える化」を目標に掲げ、異なるデータソースに格納された業務システム・データを活用するために、データ・ウェアハウスの構築を進める一方、クラシエフーズ全体への迅速な情報開示に向けた体制整備に着手しました。
当然、データを集めただけでは意味がないので、そのデータを最大限に活用するための仕組みも構築しなければなりません。しかし、業務担当者のニーズに細かく対応したデータ検索システムでは開発にコストと時間がかかってしまいます。そこで、データベースに深く精通していなくても検索システムを簡単に構築でき、さらには、利用者自身がある程度自由にデータ加工まで行えるようなツールを探し始めたのです。
そこでWebFOCUSに出会ったというわけですね。
ちょうどツールを探していた時にアシストからメール・マガジンを受け取り、それがきっかけで閲覧したアシストのWebページで、WebFOCUS
の体験セミナーがあることを知りました。もしかしたらエンドユーザ自身がデータを加工できるツールかもしれないと思い、体験セミナーに参加申し込みをしたのです。
体験セミナーでサンプルを自分で作ってみて、予想通り、視覚的にわかりやすく、簡単な検索ならすぐに構築できることを実感しました。また、セミナーを通じて出てきた疑問に対してもアシストは的確に答えてくれました。さらに深い要求にどこまで対応できるか、とことん可能性を追求してみたくなりました。
結果として、その体験セミナーを受けた後、アシストから支援サービスを受け、実稼働環境でのプロトタイプの構築を経て、正式に導入を決定しました。そこでの検証を通じて、WebFOCUS
の可能性を確信しました。評価した理由は、守備範囲の広さ、そして社内標準ツールとして利用可能な汎用性でした。
WebFOCUSを選定した理由をお聞かせいただけますか。
データベースの種類を問わず、直接データの読み込みができ、リアルタイムに分析ができること。豊富なグラフ作成機能。そして、プロセッサ・ライセンス体系となっているために低コストで展開できるといった点が決め手となりました。
今では、WebFOCUS
はクラシエフーズにとって欠かせないツールとなっています。というのも、以前、夜間にちょっとしたメンテナンスのため、利用者へ予告せずにWebFOCUSのシステムを止めてしまったことがあったのですが、利用者からの問い合わせが殺到し、大変な思いをしました。
それだけWebFOCUS
が利用されているということだと思います。
では、DataSpider Servistaに関して、導入した経緯を教えていただけますか。
DataSpider Servista
は、「アシストフォーラム2007」で導入事例のセミナーを受けた時に初めてその存在を知りました。ERPの導入事例ではなかったのですが、異なるアプリケーション間で情報を共有するシステムの紹介で、DataSpiderServista
の良さについては十分理解できました。
その後、DataSpiderServista
の導入に関して相談したところ、導入実績も豊富で、開発元ともパイプが太く、導入支援から保守、教育までトータルでサポートしていただけるということで、アシストにお願いすることにしました。
JP1に関しては、どういう経緯だったのでしょうか。
JP1
に関しては、先程もお話しした通り、以前から別の用途で導入していたのですが、ERPの全社導入に伴ってさらに積極的に活用したいと考え、アシストのJP1
に関する教育セミナーを社内で開催してもらいました。
それからERP全般に利用するため、アシストから追加で購入することになりまし た。
7. アシストはとてもユニークな会社
アシストに対するイメージをお聞かせいただけますか。
以前、アシストの名刺に印刷されていた「支援魂」という言葉の印象が強いのですが、様々なベンダーやシステム・インテグレータとお付き合いさせていただいている中で、アシストはとてもユニークな会社だと思っています。
具体的に、どのようなところがユニークなのでしょうか。
WebFOCUSのユーザ会に参加した時のことです。その際には普段会う機会のない、サポート・センターの職場風景を写真で紹介していただきました。チームとしての結びつきが強く、アットホームな感じで仕事をしている様子が伝わってきたのと同時に、サポート担当者の顔や人柄が垣間見られて安心した記憶があります。
また、打合せをする時には、たくさんの技術者の方に来ていただき、問い合わせや要望にも迅速かつ丁寧に応えていただけるので感謝しています。
このような温かみのあるコミュニケーションは、人と人との関わりを大事にしているアシストならではの姿勢のあらわれでもあると思いますので、安心してお付き合いすることができます。
最後に、アシストへの要望や期待などがあればお聞かせください。
これまではERP とその関連システムの構築に注力してきましたが、次はERPの運用やデータの活用へと、力を入れていくポイントはシフトします。
引き続きアシストには、様々な点でサポートをお願いしなければなりません。特にアフター・サポートだけでなく、データ活用に関するソリューションやトラブルを事前に回避するためのコツといった、先を見越したサポートを期待しています。
また、JP1の運用、DataSpiderServistaのSAPアダプタに関して言うと、SAPとの連携部分の支援についてアシストの知識が不足していると感じました。アシストとしての立場は、SAPに限定した製品、サービスではなく、より汎用的なものを提供することにあることは理解していますが、そうであればなおさらのこと、アシストならではの視点から、今後も積極的なサポートをお願いできればと思います。
取材日時:2009年5月
クラシエホールディングスWebサイト
現在、クラシエホールディングス様でご利用いただいている製品、サービス
・Webレポーティング・ツール/WebFOCUS
・データ連携ツール/DataSpider Servista
・統合運用管理ツール/JP1
・各種プロダクト・サポート