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NO.15 富士通テン

ITの活用によるクルマの高度化と人に優しいヒューマン・インターフェースの革新によって、社会とクルマをシームレスに融合させることを目指す大手自動車機器メーカー、富士通テン。業界初の製品を生み出す同社の開発プロセスにおいてもまた、ITの積極的な活用は欠かせない。約20年にわたるシステム化の取り組みの歴史、そして現在、未来について話を聞いた。

Guest Speaker
富士通テン株式会社
開発本部 技術管理統括部長 兼
技術支援部長
磯川雅人氏

開発本部 技術管理統括部 技術支援部
情報システムチーム チームリーダ
山口和隆氏

開発本部 技術管理統括部 企画チーム
中村隆行氏


1. 富士通テンの「テン」は最高、至上を意味する「天」から


以前から一度伺いたいと思っていたのですが、富士通テンのテンというのは、どういう意味なのですか。

これは、最高、至上を意味する「天」のことです。中国古典の「中庸」に「誠は天の道なり。これを誠にするは人の道なり」という一節があり、当社は「誠」を企業経営の基本理念として、常に大切にしています。前身の「神戸工業」「川西機械製作所」の頃から、「天」「テン」「TEN」は商標として使ってきました。

その前身の神戸工業といえば、ノーベル物理学賞受賞の江崎玲於奈氏が在籍されていたことで有名ですね。

当社の事業の源流は、川西機械製作所、神戸工業でのラジオ生産です。その後、富士通と合併したんですが、ラジオ部門および自動車関連電子機器を専業化して強化するため、1972(昭和47)年に分離設立しました。

富士通テンはカーナビゲーション・システムやカーオーディオ・システムの大手メーカーとして広く知られています。今日はシステム化に対するお取り組みについて、伺っていきたいと思います。

その前に、我々が今日お話しする領域について説明しておきましょう。当社には富士通テン情報システム株式会社という情報子会社があり、人事、経理、生産、購買、営業、物流、製造などの基幹システムの構築については、基本的に富士通テン情報システムが担当しています。我々の所属している開発本部では、CADを含めて設計から量産まで、製品開発でのQCD(Quality-Cost-Delivery)改善を目的とした情報システム開発を担当しています。

2. 業界初の製品を出すことにこだわる企業風土


ではまず、システム化のお話を理解する前提として、御社を取り巻く事業環境についてお聞かせいただけますか。

当社には大きく、資本関係があるトヨタ自動車を中心とした自動車メーカーへ供給するライン商品と一般の市場向け商品の2種類があり、一般の市場向け商品でも、個人向けと法人向けがあります。商品分野別にいえば、カーナビやカーオーディオといったインフォテインメント機器と呼ばれるものと、エンジンやエアバックの制御を行う自動車電子機器、クルマが衝突したときの記録を取るドライブ・レコーダー、それにタクシー無線などの情報通信機器があります。売上が大きいのはインフォテインメント機器で、当社全体の売上の約3分の2を占めています。最近は、これらのグローバル市場を広げていくことに加え、安全、安心をコンセプトにした電子制御機器の開発に特に力を入れています。

当社の得意技は、一つの製品の中に、CDやカセット、DVDなど、いろいろなものを集約する高機能化であり、業界初の製品を出すことにもこだわりを持っています。見る方向によって違う画像が見えるデュアルAVNなどはその一例です。

また、音響系に優れた技術者がいて、クルマのような狭い空間の中でいかに音をうまく響かせるかといったテクノロジーにも長けています。最近ではクルマの天井素材のメーカーと協力して、天井全体をスピーカーにしたカーオーディオがあります。

3. 製品開発の前に立ちはだかる課題


このような御社ならではの製品を開発される上での課題は何ですか。

一番はコスト削減です。自動車業界そのものの競争の中で生き残っていかなければなりません。自動車メーカーが勝ち抜くために、その陰には熾烈なコスト競争があります。ビジネスは真剣勝負ですから、3年で30%といった具合に、具体的な数値を挙げてコスト抑制を強く求められます。

もう一つは、いかに消費者のニーズを掴むかです。当社にはライン製品と市販製品があり、前者は自動車メーカーさんと直接相談して仕様を決めていきます。その時、市販製品の世界で先行して新しいものを作っていれば、メーカーに提案することができる。デュアルAVNなどは自動車メーカーが『ぜひうちから出してくれ』ということで成功した例です。このように、エンドユーザ、メーカーのニーズにマッチしたものを提案し続けなければいけないという厳しさがあります。それも品質を上げながらです。クルマは世界各国で生産されていますが、どこで作っても同じ品質のものに仕上げなければなりません。当社も最近は、アメリカ、メキシコ、フィリピンなど海外に7つの生産拠点を展開していて、そういう中でちゃんと品質を確保する必要があります。品質こそ最大のコスト影響因子です。変なものを作るとそれをカバーするのにまたコストがかかりますから。

その他にも、自動車用機器というのは利用期間が長いので、10年、15年と補給部品を供給保証する必要があります。また利用環境も悪条件です。激しい温度差、振動などにあっても正確に作動しなければなりませんから。最近では世界各地で環境問題が取りざたされ、わかりやすい例では鉛が使用禁止になりました。しかし、自動車内の悪条件下で鉛を使わずにハンダづけをして、それまでと同一の強度を保証するには、技術的に大きなブレークスルーが必要です。こうした中で我々はモノ作りをしているわけです。

4. この20年、4つのステップのIT化で支援


新しいものをどんどん考え出さなくてはいけない、その中でもコストを下げ、品質も向上させなくてはいけない、規制はどんどん厳しくなる。そういう製品開発環境の中で、どうITを役立ててきたか。ここにちょうど「システム開発の経緯」という資料がありますが、これのSTEP1~4までを順に解説していただけますか。

システム開発の経緯

STEP1のPDM(Product Data Management)はゼロからの取り組みでした。これは、工業製品開発における、設計や開発に関わるすべての情報を総合的に管理することで、製品を構成する部品のデータ管理や、CADデータなどの図面データ、および、仕様書などの文書データや設計に関するデータなどを統一的に管理します。製造業の製品開発においてITといえばCADとPDMということになると思います。図面管理、構成管理、設計変更管理、いずれも自社開発で行いました。

市販のものではあきたらず、ということでしょうか。

最初はパッケージも検討しましたが、よくよく考えると製品開発というのはその会社のノウハウの結集で、そこにはいろいろ文化もあれば音響製品ならではの特長もあります。それを無理やり合わせるのはどうかということで、自社開発を決断しました。

図面管理はCADデータの管理ですね。構成管理というのは。

部品表、部品構成のことです。設計変更管理は文字どおりの意味で、たとえば、自動車メーカーが設計変更すれば、対応してこちらも設計変更して、そうすると在庫償却や切り替え時期など、いろいろ影響するものが出てきます。設計変更は1箇所だけど適応機種は20機種あったりすると、手作業ではとても管理できません。そこをIT化したわけです。システム開発はうまくいったと思いますが、今考えれば、データを取り出すことに主眼を置いてしまったために、データを入れる立場の設計者にはちょっと配慮が足らなかったと反省しています。

御社は1999年と非常に早い時期からPDMに着目され、次のSTEP2、設計プロセス管理では設計者の方を楽にしてあげようという試みだったのですか。

心意気はそうです。オーソリティ・エンジニアの仕事の進め方をある程度標準化して…。

オーソリティ・エンジニアとは何ですか。

ベテランの設計者です。設計手順が頭の中に入っている人。経験が浅いと、必要な工程を飛ばしてしまうので、誰がやってもベテランの設計者と同じ手順が踏めるようにしたわけです。

ベスト・プラクティスのシステム化ですね。

ベテランの仕事をなぞるようにして、プロセスの品質=成果の品質に繋げようという発想でした。ただ、これには悩ましい面があって、完全な新製品には適用できないんですね。新製品にはプロセスなんて確立していないわけですから。「似たようなものを作るのであれば有効」という但し書きがつきます。それでも、製品の高機能化により分業が基本となっている現在においては、全体像の把握のためにこういう仕組みが必要になってきます。今後は、中国やフィリピンなどでも設計していくので、いろいろなスキルが入り交じった状態で仕事を一定レベルに保たねばなりません。そういうケースにも非常に有効だと考えています。

Step2の出図日程管理とはどういうものですか。

これは出図の計画と実績管理です。図面が納期どおり出てくるかどうかは、その後の生産準備業務を左右するぐらい大きな影響因子です。図面管理だけでは、嬉しさが足らないということで当初から取り組みました。

昔は設計者が図面を完全に描き終えたら、次の工程に進んでいました。ところが、今はそれでは短納期要求に応えられないため、コンカレント(並行)開発といって、とりあえず基盤設計が終わったら金型作りを始めるといった具合に、設計の切りのいいところでどんどん次の工程へ渡す方法をとっています。そこで、図面単位で納期を管理できるものが必要になり、それをPDMの中に仕込んでいったという感じですね。これによって管理者が個々の設計者の負荷のかかり方も把握できるようになりました。

それでは、初期流動管理というのは。

新製品を開発すると量産体制に入るまでに試作をします。部品調達から組み立てまでのプロセスの中でチェック・ポイントを設けて、この段階でどういうものが揃っていないといけないか、品質的にどういうところを押さえていないといけないか、また環境基準を満たしているかなどを見ていきます。その管理を支援するのがこの仕組みです。現在では、品質の作りこみは上流からということで、新製品開発の企画段階から初期流動活動と呼んでいます。

5. 取り組み範囲が次第に上流工程に


2003年から始まったSTEP3の品質情報管理、これは具体的には。

当社において、かつて品質情報というのは修理記録が大半でした。市場情報も同じで、改善依頼の記録でした。両者とも、事実の記録、対処すべきものをどう処理したかという記録としてはいいのですが、再発防止という観点で考えると、これでは足りないんですよ。これらが起こった結果、どのように原因究明をして、どのように設計変更したかというところへ繋ぎたいと思って取り組んだのが、この品質情報管理です。

お客様の言葉はいろいろで、音が鳴らないと言う方もいれば、スイッチが効かないという方もおられる。しかし、我々が再発防止の視点でこれらを捉えるといずれも同じ原因を指していることも多いんです。それらを製造現場や市場の単位でまとめて、それに対するフォローをきっちりやっていこうと。実は、工場からの現象報告も結構あるんです。海外の工場からもです。ただ、『言うは言ったけれども、あれはどうなっているんだ』と。検討しているけど連絡できないのか、無視されているのか、すでに対処が終わっているのか。そういう情報を一元的に見られる仕組みが欲しいとの要望が多かったので、現象が何で、原因はこれで、この原因に対してはいつ誰がどういう風に対処したのか、関係者が見られる仕組みを作りました。しかし、データの粒度が違っていたため、なかなかの難作業になりました。試作段階から製造工程、市場まで全部門が繋がったのは、つい最近のことです。

そしてそのようなリカバリーを確実にしていこうという試みと同時並行で進められたのが、STEP4のコスト管理だったわけですね。

一般的な原価管理は昔からやってきたんですが、ここで立ち向かおうとしたのは予測の方です。原価見積もりとか、損益予測とか。

ここは我々の担当領域からかなり外れたところなんですよ。最初は、PDMの部品表を使った製品価格管理から始まっているんですが、設計者が設計段階でコストを作りこめるようになるね、とか、早い段階で損益分岐点がわかったらいいね、といった感じでどんどん広げていったところ、いろいろな条件が複雑に絡み合うことがわかり、我々の部門だけでシステム化するにはなかなか難しい面が出てきたのです。単なる営業本部や調達本部の希望ではなく、社長や役員の視点に立って全社視野で考えないといけないからです。

6. 増え続けた情報インフラを全社規模で統一


こういう垂直分野でのシステム開発を進められる一方で、製品開発部門で利用する情報システムも技術支援部で用意されてきたと伺っています。今やグローバルに拠点を持たれている御社ではどのように管理されているのでしょうか。まず、どれくらいのサーバ数、端末数なのか教えてください。

パソコン端末は国内全体で6000台ぐらい。グローバルでの正確な数はちょっと分かりかねます。サーバは技術系サーバだけでも180台ぐらいあります。あっという間に増えました。

以前は、それぞれの課単位で、ハードウェア、ソフトウェア、運用、すべての面倒を見ていました。しかし、サーバが180台ともなってくるととても管理ができないので、専門を分けてやろうということで、ソフトウェア、ハードウェア、運用、と担当要員を専門部隊化させていきました。

そのように専門部隊化しても、サーバのスペックなどは搭載するシステムによってまったく異なるので、管理がやりにくかったのは確かです。活動がグローバルで広がってきて、おかげさまで売上も右肩上がりで伸びていたので、サーバ環境を強化しないといけない、バラバラの体制をまとめようと、去年インフラに一気に投資することにしたんです。

アシストから導入されたCitrix Presentation Server(以下CPS、旧MetaFrame) なども、その試みの一環だったのでしょうか。

最初の導入はその2年前でしたが、適用規模を広げたのはインフラ統一の流れの中でやりました。

つまり、そもそもはクライアント/サーバ(C/S)型でシステム構築していたのが、グローバルに利用環境が広がり、C/S型では展開が難しいということでWebシステムに移行したものの、Webシステムでの業務システム構築の限界に突き当たり、何かソリューションはないかということで、CPSを見つけられたということでしょうか。

はい、そうです。残念ながら、Webシステムだけでは大したことはできません。そうでなかったらリッチクライアントなんて出てこないはず。やっぱりC/Sシステムの方が、表現力は高いし、データのインプットなどの効率は全然違います。我々はSTEP1の頃から、システムは実現力の高さと、開発スピードの早さというところで勝負してきましたから、いつでもユーザが使いたいときにシステムを利用できる環境を提供しようと思うと、アクセスインフラにCPSを選択する構成になったのです。また、CPS は一般にはWAN環境で使うのが常でしょうが、我々はLANの中もこれでやってしまおうと。当社の場合、建屋が違うと多いところではルータを3つ経由しなければならないとか、クライアントPCは全社で配布している低スペックな事務用PC、といった利用条件の最適解がこれだったわけです。

最近ではリッチクライアント製品も多く市場に出ています。もし今、選択し直すことができたとすればどうですか。

どのユーザにシステムを作るかで違ってくるでしょうね。一般市場向けだったら、リッチクライアント製品もありだと思いますが、社内向けならCPS のような、ある意味シンクライアントの方がいいと思います。我々の間でもその話題は出て、トータルで考えたら、すでに投資済みであるCPSの方が分があるかなという話になりました。

操作性、表現力を考えるとC/Sシステムに近いものができるという点が大きいのでしょうか。

そうですね。我々の技術系部門では毎週システムをバージョンアップしていますから。毎週火曜日がモジュールの更新日なのです。

そのように週次で進化していくことを考えたら、今の環境がベストだと。

Webシステムでも同じようにやってできないことはないと思いますが、リッチクライアントが出る前の段階では比べようがなかったですね。まず、テーブル・エディットができませんでしたから、Webシステムは。画面スクロールしながら入力できない状況で、200行ある部品データを入れてくれとは、ユーザに言えません。

業務効率が激減してしまうからですね。

週に一回のモジュール更新というのは、昔は無理でした。C/S型システムでは普通無理ですよね。CPS だからできる。業務効率を考え、いつでもどこでもC/S環境と変わらない使用感がCPSで実現できたのです。まさに社内情報システムへのアクセスインフラですね。

7. マニアックなユーザにはアシストが向いている


最後にアシストとのお付き合いについてお伺いしたいと思います。今までのやりとりで感じていただいているところを教えてください。

いきなり深いところから入ったような気がします。普通はパッケージの導入から始まると思うんですが、当社の場合はCPS を全社規模の基盤に使うという、OSに近いところでしたから。また、我々も自分たちでいうのも何ですが、マニアックで、勝手に調べてある程度わかった時点で、これはどういうことなのかと、それもCPSではなくて、もっとOS寄りのところの質問をするので、アシストさんは大変だろうなと思います(笑)。でも、非常によく対応していただいています。

御社は、自社で何とかしようという、自立心がすごく強くていらっしゃるんですね。

最終的には我々の手元ですぐ直して、すぐユーザさんに提供したいという気持ちがあるので、すべてを把握していたい。来てもらって直してもらうのでは遅いんですよ。そこがマニアックの部類に入る所以かもしれません。

囲い込まれたり、うまくあしらわれたり、という状況も避けたいと思っています。急成長したグーグルは毎日どこかでシステムが壊れているそうですが、それでもサービスが止まらないのが自慢だと聞いています。それは勝敗を分けるコアコンピタンスを、自社でやってるからこそできる強さであり、我々もそうありたいと思っています。

今後アシストに期待することは。

これまでもいろいろ施策を用意していただいていますが、CPS に限らず、Oracle でも同様のサービスを期待します。Oracleはまだ未知なところがたくさんあり、ぜひ今後協力していただければと思います。

データベースの増強計画がおありなんですね。

そうです。Oracleもあまり普通に使うつもりはなくて、マニアックに使おうと思っているんです。

ミドルウェア的なロジックをOracleに埋め込めると思っているんですよ。言語に左右されずに。それをするといろいろ負荷のかかり方が変わってくるため、未知な領域が出てくると思います。そのあたりをぜひ、Oracleに精通したアシストさんに助けてほしいですね。




取材日時:2007年6月

現在、富士通テン様でご利用いただいている製品、サービス
  ・アクセス・インフラ:Citrix Presentation Server
  ・リレーショナルDB:Oracle
  ・統合運用管理ツール:JP1
  ・各種保守サポート

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