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NO.12 日立金属工具鋼

工具鋼の商社、日立金属工具鋼株式会社の対象市場は中小製造業を中心とする全国30,000社。この「ロングテール&義理人情」の市場へのアナログ営業を、どう管理、計測、可視化していったかを経営企画室のみなさんに詳しく聞いた。

Guest Speaker
日立金属工具鋼株式会社
経営企画室 副室長
正路英一郎氏(写真左)

経営企画室 情報戦略グループ
情報通信チーム
高橋みゆき氏(写真中央)

経営企画室 営業企画グループ
立川由紀子氏(写真右)


1. 工具鋼販売のプロ集団。日立金属工具鋼


日立金属工具鋼の業態について教えてください。

日立金属工具鋼という名称は製造業のように聞こえますが、親会社である日立金属の工具鋼をベースに 付加価値機能を併せ持った市場密着型の販売会社です。映画『もののけ姫』で紹介された「たたら製鉄」の伝統を持つ島根県の安来工場で製造されたヤスキハガネ(工具鋼)をコアに、金型、切削工具等の材料や前工程の加工・熱処理等のサービスをお客さまに提供する「ものづくり貢献企業」です。

かつて、日立金属の特約店として、日栄鋼材、日吉鋼材、日立金属商事の三社がありましたが、工具鋼営業に特化するため、親会社のメーカー営業機能と流通営業を垂直統合する事業計画に基づき、四社から工具鋼を販売する部門だけを抜き出し、一つにまとめて、新会社、日立金属工具鋼が発足しました。2004年10月のことです。

そして翌2005年に、営業力を強化するための総合システムを構築しました。アシストさんから導入したウェブハローはその一部です。システムの概要は以下の通りです。

名称 役割 目的
FUIGO※1(ウェブハロー) 顧客データベース お客様からの目線での営業コンテクスト管理
WEBA※2 予算、売上、利益、工場完成高、文書 営業メニュー統合管理システム
NIX 収益管理(経理・業務等)の基幹系システム 利益が出ているかどうかの管理
HISPEED 手配管理 工場(日立金属)から商品をスムーズに手配する


※1 Future Intelligence Gaia Over Office ? 未来に向かって仕事場に広がる知の空間
※2 ウィーバ WeBa 私たちの場 Web BA ビジネスをアシストするWeb

ウェブハローは社内ではFUIGOという名前にしました。FUIGOとは鍛冶屋さんが使う、あの「ふいご」です。「たたら」では足踏みふいごは鋼つくりに欠かせません。営業の皆さんの汗と生気を仕事場に吹き込もうと意図してこの名前にしました。

FUIGO(ウェブハロー)の社内での浸透度はいかがですか。

社内での利用率はほぼ100%です。弊社社員の平均年齢は43歳であり、ITは基本的には苦手とする社風です。その条件下でこの利用率は上出来だと考えます。FUIGOは経営層にも浸透しています。62歳の社長も66歳の専務も、FUIGOは毎日必ず見ています。

2. 工具鋼とはどういう性質の商品か


全社員が使う営業システム・・・その全容に迫るにあたり、まず御社の営業環境について、商商品、市場(顧客)、社内の順番にお聞きしたいと思います。はじめに商品ですが、工具鋼とはどういう性質の商品ですか。

同じ鉄鋼でも、普通鋼と工具鋼では製品としての性格が全く違います。理解の簡便のために話を単純化すれば、その違いは下表のようにまとめられます。

工具鋼 普通鋼
用途 金型材など
(高温、高圧力を伴う特殊環境で使用)
車や建築材など
(一般的な環境で使用)
出荷単位 キロ単位
(小口出荷あり)
トン単位
(大口出荷のみ)
単価目安 キロ1,000円
(さらに製品1個あたりの単価に進化)
キロ100円


また、納品様態も大きく異なります。普通鋼ならば出荷単位がトンなので、船舶輸送、トレーラー輸送が主流です。一方、特殊鋼の場合、単位はキロであり、例えば10キログラムの小口注文もありえます。10キログラムということは、納品は営業車に載せて営業マンが手渡しすることが日常茶飯事ということです。

3. 工具鋼の市場は、「ロングテール & 義理人情」そして、ハガネ屋の精神で!


次に工具鋼の「市場(顧客)」について教えてください。

工具鋼の市場は、小口主体のカスタムメイド製品であって、今はやりのロングテール市場です。しかし一方では義理人情も大変重要です。

まず営業対象のエリアと数ですが、これまで取引歴のある会社が約1万社。その他の見込み客リストが2万社。つまり営業対象は日本全国に散在する約3万社。その内訳は、いくつかの大手企業を除けば、ほとんどが中小企業であり、いわゆる「町工場」も少なくありません。基本的には、都度違う寸法・仕様の製品が要求される完全な一品一様のロングテール市場です。

ロングテール市場と呼ぶといかにも現代的、デジタル的ですが、営業手法としては、アナログの義理人情が必須です。特に町工場の経営者を相手とする場合、重要なのは、とにかく顔を出すこと。茶飲み話をしながら最後に商品の話をするというアナログな営業スタイルも、今なお有効です。

町工場で工具鋼のニーズが発生するのはどういう場合ですか。

一つの例として描写してみます。金型メーカーは多くの場合、零細であり、ほとんどが大手メーカーの協力会社です。そんな工場の経営者から、ある日、弊社の営業に電話が入る。『○○自動車に、今月中に、○○の金型を作れって言われちゃったんだ。その金型を作るには○○と△△と□□の金属が必要なんで、明日までに持ってきてくれよ』。このように工具鋼においては、ニーズは「突然」発生します。

この場合、在庫の鋼材を切断して、表面加工をするわけですが、実際に弊社の在庫センターで、お客様の要望通りのキロ数を、鋼の固まりから切り出しています。時には、最初から表面加工を施した鋼を納品してほしいと要望されることもあり、これにも応えています。

弊社は、日立金属とメーカーと町工場の間に位置する「ハガネ屋」として、様々な工具鋼それぞれについて、ほとんどのニーズに対応できる在庫を持つ日本最大の工具鋼専業の販売会社です。突発的なニーズだけでなく、お客様の技術的な相談にも対応できるプロの営業集団でありたいと思っています。お客さまをよく知ってノウハウも提供できるホームドクター型のビジネスを目指しています。そして、なによりも、お客さまの目線にあった実践と現場感覚を大事にするハガネ屋でなくてはありません。

突発ニーズへの即応性、納品形態の融通性、そして用途に即した工具鋼選定のノウハウ。この三つが、工具鋼の流通ラインにおける弊社の存在価値と言えるでしょう。

4. どんな課題を抱えていたのか


今回、日立金属工具鋼では、営業力を強化するためのSFAとしてFUIGO(ウェブハロー)を構築しました。FUIGOを通じて克服したかった、御社の営業上の課題、問題は何だったのでしょうか。

大まかには、SFAがないことによる、「とりこぼし」、「(同じことの)繰り返し」、「フォロー不足」という問題がありました。また個別には以下のような課題がありました。

  • 寄り合い所帯の会社だったので、社内の「見えない化」が進んだ。これを「見える化」に反転する必要があった。
  • 経営トップの業務を効率化し、本来の経営能力を発揮できる時間を創造する必要があった。
  • 親会社の日立金属と同レベルのインフラが必要だった。
  • 新会社発足に伴い、営業マンの仕事範囲が増えた。ITでゲタを履かせて、業務処理能力を底上げする必要があった。
  • 人間系、コンテクスト系の営業の「でたらめ化、野放図化」を防ぐ必要があった。

5. 社長や専務は日々、大量の報告書を「読書」しつつ、正確でタイムリーな情報を探していた。


では順々にお聞きします。「寄り合い所帯の会社だったので、社内の『見えない化』が進んだ。これを『見える化』に反転する必要があった。」とは具体的には。

先にも述べたとおり、日立金属工具鋼は、日栄鋼材、日吉鋼材、日立金属商事及び日立金属の四社の工具鋼営業セグメントが合併してできた会社です。異なる文化の会社が一緒になった場合、仕事の手順や社風の違いのせいで、社内の「見えない化」が進みがちです。これは良くないことなので、無理にでも「見える状態」に反転させる必要がありました。

次の課題、「経営トップの業務を効率化する必要があった」については。

経営者には、社内全体を空から一望するような「鳥の視野」が必要ですが、弊社の澤村社長は、「鳥の視野」だけでなく、営業現場のニュアンス、コンテクスト、熱気などを知るための「地べたの視点、虫の視野」も重要視しています。この姿勢は、弊社が営業会社であること、工具鋼の市場がロングテール&義理人情の市場であることに起因していると思います。社長と専務はハガネ屋としての「こだわり」を特に重要視していましたので、何とか、経営トップの思いと現場の思いを直結させる道具を提供したいと考えました。

FUIGOが導入されるより前から、澤村社長は、全国100人の営業マンから寄せられる営業日報や報告書をすべて印刷して、毎日読み込んでいました。それは「読書」と呼んでもよいほどの膨大な量の読み込みでした。社長の机の横には報告書印刷専用のレーザープリンタが備えられているほどでした。

しかし、いくら現場の知識を得るためとはいえ、毎日、100人分もの報告書を読み込む作業は過酷です。効率化が必要でした。現場の実務能力と顧客対応力がしっかりしているから、支店長は問題の本質を考え抜くことができ、経営トップは戦略を考える余裕を獲得できるのだと思います。

6. 営業マンは、「自分も儲けて工場も儲けさせる」ことが求められていた


3つめの課題、「親会社の日立金属と同レベルのインフラが必要だった」については。

日立金属と日立金属工具鋼は、製造親会社と販売子会社の関係にあります。販売子会社は、売上報告や、在庫補充の依頼など、さまざまな報告、連絡、依頼を親会社に対し行います。その際に、親会社と同レベルの情報インフラが必要になります。以前は、Excelで報告していましたが、やはり報告の確度、強度の点で難点がありました。

4つめの課題「営業マン全員にITでゲタを履かせて、業務処理能力を底上げする必要があった」とは具体的には。

四社の工具鋼部門が統合されて一社ができたことで、営業マンの業務範囲が増えました。以前は、顧客から「注文を取ってくる人」と、その注文に基づいて「工場(日立金属)に商品を手配する人」が分かれていました。「ボク売る人」、「ワタシ手配する人」という分業です。しかし日立金属工具鋼の発足を契機に、販売と工具鋼材料手配のどちらも営業マンが行うように、業務体制が変わりました。

以前の営業マンは、「たくさん注文をとって日立金属鋼の売上を上げること」だけ考えていれば良かったのが、今後は「工場(日立金属)の都合も考えながら売る。工場も儲けさせながら、自分も儲ける」という高度な思考を求められることになりました。

この体制は、全体最適を求める上では良いと思いますが、営業マンへの局所負荷は明らかに増えています。その結果、新しい業務体制の開始後しばらくは、営業マンが外に営業しに行かずに、ひたすら社内で資料や報告書を作っているという、販売会社として倒錯した状況に陥っていました。

FUIGO(ウェブハロー)や販売管理システム、利益管理システム、工場手配システムなどを総合的に構築したのは、このような局所負荷を、全体的な基盤の拡充で解消することが目的でした。ITで営業マンにゲタを履かせて、業務処理能力を底上げしようと考えたのです。

7. 営業コンテクストの管理とは、つまりどういうことか


最後のポイント「人間系、コンテクスト系営業の『でたらめ化、野放図化』を防ぐ必要があった」とは。

「でたらめ」という表現は大げさすぎるので、訂正してくださいね(笑い)・・。弊社の営業は、体育会系の組織文化で育った人がほとんどです。それ自体は、大変すばらしいことなのですが、営業現場に周りが見えるような観察力やせっかく体に染み込んでいるノウハウを引き出すような場を形成して、「知的体育会系の営業」に改質したいという思いが経営トップにありました。

先ほども述べたとおり、ロングテール市場である工具鋼の世界において、顧客の大半は「町工場の経営者」に象徴される属性を持つ皆様です。日々の営業において義理人情とは明らかに有効であり、妙に格好良いことをやってはいけません。ですから顧客の前でITを自慢するなどもっての他です。

先ほど、ホームドクター型ビジネスだと申し上げました。例えが、適切でないかもしれせんが、医療の現場では、文字情報の共有が昔から行われてきました。

弊社の営業マンを地域の医療スタッフとした場合、回診する地域の患者さんのカルテを作成し、患者さんが困っているときに、患者さん以上に患者さんのことを理解していることが重要です。カルテを作成しておけば、担当医が不在であるときも役に立ちますし、過去の履歴をみて治療が効果的であったかわかります。お客さまの立場にたって、営業をするということは、お客さまの声を謙虚に聞くと同時に、お客さま以上にお客さまのことをよく知らねばなりません。それが、個人のレベルから組織のレベルで対応できて初めて日立金属工具鋼という会社の価値をお客さまに認めていただけると考えます。

しかし、理屈を言うのと実際に実行するのとでは、困難のレベルには雲泥の差があります。人間系、コンテクスト系の営業は、時として、野放図や、狭い視野での行動に陥りがちです。活動内容があまりにも定性的で、経営を鳥瞰する上で必要な定量性、可視性に欠けます。

このように管理が難しいコンテクスト営業を管理、分析、可視化すること。それがFUIGO(ウェブハロー)を導入したねらいでした。

8. 営業コンテクストの管理・分析、可視化とは


「営業コンテクストの管理・分析、可視化」とは具体的には。

人間系、コンテクスト系の営業で、営業マンがどこに対して「人間的」であり、どことの関わりで「コンテクスト」を生じせしめているのかといえば、それは「お客様」に他なりません。したがって、人間系、コンテクスト系の営業を管理すること、すなわち「あるお客様に営業マンが接触している、その量と質とを、記録、管理、改善するシステム」といえます。このように顧客を起点としたシステムなので、SFAでもありCRMでもあるシステムと考えてもよいでしょう。

この「コンテクスト管理システム」の内容、役割、システムを通じて解決したい課題などを列挙すると、以下のようになります。

こうした課題を念頭に、具体的なシステム選定をはじめました。2005年6月のことです。

9. 狩猟型SFA vs 農耕型SFA


SFA製品はどのような基準で選定したのですか。

最初はSIEBELを基準に考えていました。というのも、私は元は日立金属に勤務していたのですが、アメリカ駐在時にSIEBELを導入し成功を収めた経験があったので、じゃあ今回もSIEBELが良いかなと当初は考えました。

しかし、日立金属工具鋼の営業スタイルには、SIEBELのような欧米SFAよりも、もう少し日本的なスタイルの製品の方が合うのではないかとの社内の声もあり、それではと広い視野で調査を続けたところ、見つかったのがウェブハローでした。

ウェブハローはどういう点がよかったのでしょうか。

次の3点が高く評価できました。

以上、3つの理由に基づき、2005年8月、弊社SFA FUIGOに用いるシステムとして、ウェブハローの採用を決めました。

10. 新システムを、どうやって社内に浸透させたか


FUIGO(ウェブハロー)は、2005年の導入以来、現在の利用率はほぼ100%。62歳の社長、66歳の専務も日々活用なさっていると聞きました。どうやって、そこまで社内に浸透させたのですか?

日立金属工具鋼のような平均年齢43歳の会社で、SFAのようなシステムを普及させるのが難しいとは、最初から認識していました。社長としては、「会社の方針により新システムを導入したので、皆使うように」とトップダウンの指示で一気に普及させたかったようですが、それは絶対に上手くいかないと分かっていたので止めました。代わりに以下のようなやり方で段階的に普及させました。

11. 利用部門からの要望に「代替案」を出してはならない


大変、興味深い浸透手順なので、順々に詳しくお聞きしたいと思います。まず「パイロット段階」とは具体的には。

FUIGO(ウェブハロー)のパイロット運用を企図していた2005年の9月頃に、ちょうどタイミング良く、北関東のある支店で、ローラー営業のプロジェクトがありました。そこは比較的、若い人が多くITにも抵抗がありませんでした。また支店の下の営業所の数が多く、全体の状況把握がやりづらいエリアでした。そういう前提もあったので、支店長としても、業務が効率化できるのならありがたいということで、パイロット導入を快諾してくれました。

システム導入は最初が肝心です。その支店でのFUIGO活用は何が何でも成功させたいと考えました。当時、私がシステム担当に出した指示は、「カスタマイズ要望には徹底的に応えろ。代替案は出すな。ムダであることがわかっていても、まず言われたとおりに対応し、営業現場の声を優先させろ」でした。

「代替案は出すな」というのはどういう意図による指示ですか。

現場から、○○してほしいという要望が出たとします。その時、頭の良いシステム担当であれば、「そこは○○ではなく、□□の方式でやっておけば、将来△△の事態が起きたときでもダンドリ良く対応できますよ。最初はちょっと使いにくい気もするかもしれませんが、それは慣れの問題です。ここは□□方式で実装しましょう」などとスマートな提案をしてしまいます。

しかし、これをやったら現場は気を悪くします。何だか言いくるめられた気がする。そして使わなくなる。人間の感情とはそういうものです。もっと大事なことは、システム屋の知らない知恵が、営業現場が示唆する非効率な画面設計に隠されているかもしれないのです。

だから部下には「代替案は出すな。要望があったとおりに実装しろ。こんなの実装してもどうせ将来は使わなくなるんだけどなと思ったとしても、それでも言われたとおりに対応しろ」と指示しました。

このように献身的に尽くした甲斐もあって、北関東支店でのパイロット導入は成功しました。次は第二段階、「クチコミ戦術」です。

12. 「タバコ室でつぶやいてくれ…」


「クチコミ戦術」とは具体的には。

北関東支店の支店長に「FUIGOのクチコミを頼む。特にタバコ室あたりでつぶやいてくれ」と頼みました。

例えば支店長会議の休憩時間のタバコ室で、北関東支店の支店長が「今度のシステム、あれ良いよ」と誰かに話しかけたとします。そういう場合、話しかけられた人もさることながら、周囲の人も、けっこう聞き耳を立てているものなのですね。何気ないコトバの伝播によるクチコミ効果を狙いました。

クチコミ戦術の甲斐もあったのか、東日本の支店にはFUIGOはだいぶ浸透してきました。しかし西日本の支店は反応が鈍い。なかなか大井川を越えないイメージでした。

FUIGOは便利なツールで、北関東支店でもすでに成功した実績がある。なのに、なぜ導入しない支店があるのでしょうか。

「新しいことは嫌い」、「昔通りに自分流にやりたい」。組織の中には、このような守旧的な価値観を持つ人が必ずいます。しかし、守旧かどうかはわからないし、それが、いい意味での営業の「こだわり力」です。いくら他の支店で実績ができていても、「今、忙しくてシステム導入なんてとてもできない」といって導入を拒否する支店は必ずあります。

当時、澤村社長はこの状況を見て、相当いらだっておられ、強権発動してでもFUIGOを早期浸透させたい様子でした。しかし、強権発動はまだ早い。ちょっと待ってくださいと止めていました。

4月から9月ぐらいまでは、「新システムFUIGOです。便利ですよ。成果を挙げた支店もありますよ。みなさん導入しましょう。使い方が分からないのなら、出張サポートにもいきますよ」と平和的に呼びかけていました。

そして8月には普及率がついに8割を超えました。よし、そろそろだなと思い、強権発動に出ることにしました。といっても、別に経営企画室に強権があるわけではないので、社長に対して「ちょっと待ってください」というのをやめただけです。つっかえ棒を取ると、社長は一気に動き始めました。

13. つっかえ棒が取れた社長が、ついに…


澤村社長はどう動き始めたのですか。

まず、FUIGOにデータを入力しない支店に「データが登録されていないぞ。本当に新規開拓に行っているのか」と電話で問うようになりました。そこの支店長は「行っています。行っているけど入力していないだけです」と返事してその場を繕うわけですが、何だか社長が本気になってきたぞということは伝わります。

そして、9月に全国の支店長が集まる総予算会議を行うに際し、「新規開拓顧客の登録に関しては、FUIGOの登録データを基準にします。登録データの量は場合によっては人事査定の材料ともなります」と通達が下りました。

こうなると、いやいやでも何でもデータを登録せざるをえません。ついに全支店がFUIGOを活用するようになりました。

この時、今までFUIGOへのデータ登録を怠っていた支店は、溜まりに溜まっていた新規顧客データをひたすら入力します。100顧客のデータがあれば100回入力します。すると、よくしたもので、その100回の入力の間に操作法を自然と覚えるわけですね。

もともとFUIGO(ウェブハロー)はインターフェースが分かりやすいシステムです。それに加えて北関東支店のカスタマイズ要求に徹底的に応えぬいています。だから使いにくいわけはないのです。やってみれば使えます。

こうして普及率はほぼ100%になったわけですね。

はい、おかげさまで。今は、社員がパソコンに向かっているときにはメーラーと、WEBA(FUIGO)が必ず起動しているような状況です。そこまで浸透したことには感慨深いものがあります。しかし、営業の本質は、あくまで顧客訪問であり、データを入力することではありません。訪問をして、お客様の要望という活きた知恵や情報を皆で共有できる道具がFUIGOです。この点は、今後も粘り強く実践しながら、ITに魂を入れる作業を継続しなければなりません。暗黙知と形式知はたえず、連動させて攪拌していないとドレッシングのように水と油に分離してしまうのだと思います。

14. アシストへの評価


会社としてのアシストへの評価をお聞かせください。

第一に、アシストは「人間系の話がわかる会社」だと思います。ソフトウェア商社として、ソフトウェアを販売していながらも、一方でソフトウェアの限界を認識している会社。ソフトウェアの機能以外の、運用、活用、教育など人間的な要素の重要性を理解している会社だと思います。日立金属工具鋼の気質に合った会社です。

第二に、「よく顔を出す」のも良い点です。事あるごとに弊社に来てくださいます。我々の営業スタイルに似た農耕型営業をよく実践していらっしゃる。他の会社は、もう少し官僚的。呼んでもあまり来ません。

第三に、「すり合わせ能力が高い」ことも評価に値します。ソフトウェア開発メーカーの都合、私たち経営企画室の都合、利用部門である各支店の都合。いろいろ乱れてややこしくなった時に、現場でいっしょに考えて、うまく間を取って、まとまりをつけて、三方の利害の最大公約数を実現する。そういう仕事センスに長けた会社だと思います。
つまりアシストは、「日本の組織文化に合ったITサポートを提供してくれる会社」と評価できるでしょう。

15. プロジェクトの総括


最後に、今回のプロジェクトの総括をお聞かせください。

実は、日立金属工具鋼には、いわゆる「情報システム部門」はありません。会社が発足した後の2006年に、「情報システム部」の機能および人員を、経営企画室に統合しました。これは、情報システム部門の存在意義を、「情報システムの開発と運営」という「手段」に求めるのではなく、「(情報システムを通じて)会社を変える。良くする」という「目的」に求めようというねらいに基づいてのことです。

それは同時に、経営企画室という、「理論や計画だけ作って終わり」になりがちの部署に、情報システムという「強力な手段」を持ち込もうとするねらいでもありました。経営とは、組織の力でモノゴトをうまく達成することですから、会社で働くかぎり一人では何もできません。個人は皆と一緒になって初めて仕事ができるのであり、本来、ひとりひとりが主役なのです。

経営企画室の役割は、経営者のみならず現場も含めた全部門のサポートです。ナレッジ・マネジメントとか何とか言って大上段の理論から入ると、利用部門はアレルギーを起こします。そこで今回のプロジェクトでは、毎日使う道具から改革しようと思いました。頭に思想を訴えるよりは、手が使う道具を変えることの方が、実効性があると考えました。

今回のWEBA(FUIGO)の構築は、その「情報システム開発機能つき経営企画室」が取り組んだ初めての本格プロジェクトです。目線を下げた取り組み姿勢として、営業、倉庫、工場の各現場になるべく こちらから出かけることを心がけました。結果として関係者のご協力と理解が得られ、良い成果を収めたと自負しています。社内でも功績が認められて経営企画室には社長賞をいただけました。現場と一緒に汗をかきながら会社を変えていこうとするスタッフの努力と、アシストなどベンダー各社の支援のおかげであると考えています。ここにその感謝の意を述べることにより、今回のプロジェクトの中間総括に代えさせていただきたく思います。

アシストから一言

アシストでは2004年に、「情報活用のアシスト」ロゴを作成しました。

「経営者」「システム担当者」「利用者」を3つの矢印で表し、3者が 同じ目標を理解・共有し、それぞれの役割・責任を果たすことによって、企業の情報活用が成功することを象徴しています。

我々は、情報活用を経営に貢献させるためには、3者それぞれのベクトルを合わせることが重要だと考え、そのことをお客様にもお伝えしたいと名刺などに刷ってご紹介をしていたのですが、今回、日立金属工具鋼様のお話から、実際に3者それぞれがシステムの導入目的を理解し、そして「経営者」の旗振りが後押しすることの重要さを実感しました。我々のメッセージも間違っていなかったのだと、大変うれしく思います。




※ 日立金属工具鋼のWebサイト
※ 取材日時 2006年11月


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