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ソリューション研究会

鹿児島銀行の営業施策におけるBSCへの落とし込み

アシストのユーザ会 ソリューション研究会主催の講演会において、バランス・スコアカード(BSC)を実践されている先進事例として、鹿児島銀行 海ヶ倉浩文様より、ご講演を賜りました。本稿は当日のご講演内容の抄録です。

講師:鹿児島銀行 営業開発グループ 主任調査役 海ヶ倉 浩文 様



鹿児島銀行は九州最南端に位置し、三方を海に囲まれた市場を対象に、地域密着型の金融サービスを提供させていただいている。業務プロセスにバランス・スコアカード(以下、BSC)を用いて3年目になるが、本日は当行におけるBSCの活用事例についてお話しさせていただきたい。

新しいビジネス・モデル構築にいたる背景


2005年3月期の収益目標を下回るという予測がなされる状況下にあった2004年3月に、当行ではBSCの検討を開始、施行した。様々な経費節減策をすでに実施しており、これ以上経費を削ることは困難な中で、2006年3月期の業務純益目標を確保するということに焦点を当てるべく、まずは資金収益の改善に取り組むことを命題に掲げ、着手した。我々にとっての「資金収益の源泉」とは「事業先の営業利益」である。つまり、営業収益を増やすためには、取引先企業の営業利益が増加しなければ、当行の資金収益の増加はありえないのである。このようにして「本業の資金収益を上げる」というビジネス・モデルを策定するとともに、BSCの4つの視点である“財務の視点”、“顧客の視点”、“内部プロセスの視点”、“学習と成長の視点”および各視点間の戦略を関連付ける戦略マップを作り上げた。


戦略を実現させるための重要成功要因策定


我々の戦略は、お客様をより深く知り、営業利益を上げる支援をすることで、結果的に貸出増大につなげるというものである。ここでまず、重要成功要因となる先行指標並びに結果指標を設定した。お客様の収益増加がまさに結果指標であり、お客様の営業利益が増える支援をする実額を先行指標として評価対象に入れた。例えば、500万円の機械をお客様に紹介して契約が成立したという実績に対しては、500万円に対するポイントの点数の評価がつく、という形である。これはお客様の営業利益が増えるようにビジネス・マッチングを成功させたという先行指標であり、その結果指標はそれぞれのお客様の決算時点の営業利益がどれだけ改善したかということを評価している。

また鹿児島銀行では2000年度からすべての業務プロセスをパソコンで完結できるペーパーレス化に取り組んできた。現在、評価指標が自動的に集計できるマクロを組み、先行指標、結果指標の集計に人手を介さずに、月次ベースで1,500名すべての営業担当者の実績が集計できるようなインフラを整備し終えている。これを利用して、先行指標、結果指標を5項目、KPIとして設定し、お客様の定量定性の情報を入力すると点数が出る仕組みにした。当初は時間もコストもかかり大変だということで、経営陣からの理解が得られなかった。しかし、地方ではメガバンクの低金利の攻勢が非常に強く、金利の泥試合をしても勝ち目はない。地域金融機関として目先の儲けではなく、長い目でお客様との関係強化を図らないと勝ち組になることはできない。そこで、この価値観を共有させることが実効性を高める上で非常に重要であった。

数字の上で貸出金が増えたというだけではなく、途中の先行指標の状況もきちんと見えるような仕組みが必要であり、この部分でIT化を進めなければバックヤードの作業が非常に大変になる。また、貸出を増やすプロセスを定量的に示せなければ、いくらBSCを組んでいても長続きしない。しかし、これまで金融の世界ではこうした結果指標だけが業績評価の対象になりがちで、結果につながる先行指標がなかった。そこでBSCの中でKPIをしっかり設定しながら、それぞれの目標になる結果を出すための先行指標、結果指標をKPIとして設定した。またBSCの4つのプロセスを経ながら結果を出す過程で、現場力をつけることができれば、いわゆる人材の育成手段としても適用できるのではないかと考えている。

BSC実践の結果


BSCに取り組んだ2004年から2006年、営業日誌で営業情報の登録を結果指標に加えたところ、1日あたりの有益な営業情報の登録件数が大幅に増えた。行内で営業情報すべてを閲覧できる環境になっており、他者の仕事の良い点、悪い点が見えるようになっている。有益な情報はアクセス件数が高く、登録情報へのコメント件数も増え、結果的に、訪問件数や有益な情報入手といった営業状況も改善された。これによって全体的な営業情報の登録件数、情報量の増加をもたらし、ビジネス・チャンスが増大して貸出残高の増加に繋がった。

鹿児島銀行が目指すところは、お客様の業務を支援し成功させることによって、メガバンクによる金利のダンピング合戦に巻き込まれない強固な商売ができるビジネスを作り上げることである。こうして、お客様の営業利益改善を目指してBSCの取り組みを始めて5期目に入り、2007年3月期の決算で目標にしていた数字に到達することができた。業務純益は目標を大幅に上回り、当行にとって史上最高の業務純益を上げることができた。もちろんBSCの手法だけが理由ではないが、少なくとも現状のままでは利益拡大は困難な状況下で、地域金融機関として、お客様との関係を強化し、まずはお客様が儲かる仕組みを作ろうというビジネス・モデルを実現しながら、このような実績が達成できたということを是非ここで強調しておきたい。

まとめ


BSCを1つの手段として活用しながら、貸出を増やすプロセスも含めて定型化するとともに、先行指標と結果指標という考え方を導入した。BSCの実効性を高めるためには、業務プロセスの見直し(BPR)とそれに伴うIT化を推し進めること、先行指標、結果指標が評価にリンクする仕組みが重要である。またPDCAサイクルを回すことで、結果的に現場力が高まり、安定的な収益を確保できる体力、体質が醸成された。この取り組みはまだ緒についたばかりだが、BSCという手法は、従来のビジネス哲学(仕事の進め方)とは大きく視点が異なり、現場の人たちが小さな成功体験を積み上げることによって、はじめて本質が理解してもらえるものではないかと考えている。本日は、いくつもの手法がある中、鹿児島銀行でうまく行きつつあるこのBSCという手法の導入事例をお話しさせていただいた。皆様のご参考になれば幸いである。

鹿児島銀行

創業:明治12年10月6日
資本金:181億30百万円
店舗数:169ヵ店(本支店・出張所・代理店)、上記のほか無人店舗(店舗外現金自動設備)158ヵ店
従業員数:2,264名
預金:2兆6,674億円
貸出金:1兆9,792億円

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