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ソリューション研究会

無印人間集団が業界の雄になった
~どうすれば1人ひとりのパワーを引き出せるか~

アシストのユーザ会、ソリューション研究会「定例会」では、お好み焼きチェーン「千房」の代表取締役 中井政嗣氏を講師にお招きし、経営者も従業員も共に育つことで「千房」を大きくしてきた中井氏の人材育成術についてお話しいただきました。

「千房」代表取締役 中井 政嗣 様


外食産業は共育産業


お好み焼き屋を始めた当初は、従業員を募集しても人が来ず苦労しました。お店が忙しくなると良い人材が欲しいと思うのですが、残念ながら良い人材は一流企業に取られてしまいます。であれば、この手で良い人材を育てるしかありません。人手不足で、どんな人間でも採用しようと思いました。学歴はもちろんのこと、学業成績、身元保証人等、一切問いませんでした。気付いてみたら、たくさんの非行少年/少女を採用し、少年院や鑑別所上がり、教護院、養護施設出身者なども入社していました。

せっかく入ってもらっても、何度言っても言うことを聞いてくれない、これだったら辞めた方が良いのに、と思ったこともありました。でも諦めてはいけない。比べず、焦らず、諦めず、この3つを信条にしながら、彼らと共に私も育ってきました。これがよく言われる「共育」(共に育つ)です。

外食産業では学歴や学業成績は問われません。その代わり問われるのは人間性や人柄です。ある高級料亭の創業者が、二代目、三代目に言い続けた言葉があります。それは「商売ってな、人柄やで」ということ。これはあらゆる商売や人間関係に言えることだと思います。企業は人なり、人育てに始まり、人育てに終わる、ということです。

「根はみえねんだなあ」


「創業者や年寄りは昔のことばかり言うが、昔のことばかり言っている人に未来はない」と言う人がいます。確かに時代と共に変わっていくもの、変えなければならないものはあります。しかし、いくら時代が変わろうとも、絶対に変えてはならないものもたくさんあります。

1910年に文部省から初版が発行された『尋常小学校修身書』を読み、感動しました。どんなことが教えられていたか。小学1年生の内容を読んでみます。「良く学べ良く遊べ、時刻を守れ、怠けるな、友達は助け合え、喧嘩をするな、元気良くあれ、食べ物に気をつけよ、行儀を良くせよ、始末を良くせよ、物を粗末に扱うな、親の恩、親を大切にせよ、親の言いつけを守れ、兄弟仲良くせよ、家庭、忠義、過ちを隠すな、嘘を言うな、自分のものと人のもの、近所の人、思いやり、生き物を苦しめるな、人に迷惑をかけるな、良い子供」

1年生と2年生の修身書の内容を徹底的に叩き込むだけで、立派な日本人になります。子供はもちろんのこと、大人も原点に帰らなければならない、と改めて思います。

相田みつをさんの詩に、「花を支える枝。枝を支える幹。幹を支える根。根はみえねんだなあ」(『にんげんだもの』から)というのがあります。ここで言う根とは、考え方、人間性、価値観等を指します。これらは目に見えないものと思われがちですが、考え方や価値観は、幹や効能となって表れます。根から幹や枝が伸び、花が開き、実が実る。これは言ってみたら結果です。

私たちの命の元は誰でしょうか。両親です。親を敬い、感謝しない人は成功しません。文句や愚痴ばかりで、人の悪口ばっかり言っている人も、大成しません。根が腐っているのだから花が開くわけがありません。当たり前です。おじいちゃん、おばあちゃん、そして創業者の方々は、荒れ地を耕して肥やしをまいて、苗木を大事に植えて育ててきました。二代目、三代目は、とかく枝ぶりばかりを見てしまう。こんな時代だからこそ、もう一度、足元、原点を見直すことが、何よりも大事だと感じます。

担保は金銭出納帳


千房創業時に、預金が80万円しかない私に、総投下資本3,000万円を無担保で融資してくださった信用組合があります。千房が軌道に乗り出した時に、その信用組合の理事長から、創業当時のことを覚えているかと聞かれ、「担保もなしに多額の融資をしていただきました」と述べると、大きな担保があったのだと教えてくれました。中学卒業後、丁稚奉公を始めた時からつけ始めた金銭出納帳を、私の妻から見せてもらったと言うのです。道で5円拾ったことまで克明につけてあるのを見て、この人だったら大丈夫だと思った、ということでした。続けることの重要さを痛感しました。

私は、612人の従業員に、毎月、毛筆で書いたメッセージを送っており、2010年7月で282号になりました。給料袋にそのメッセージを入れています。「毎月大変ですね」と言われますが、みなさん、朝、顔を洗って歯を磨くのが大変だと感じますか。幼稚園の時は大変だったかもしれませんが、今では何でもないことになっているはずです。

トイレ掃除を40年間続けていらっしゃるイエローハットの創業者もおっしゃっています。「10年続けば偉大なり。20年は歴史となり、文化となる」。どんなに些細なことでも、会社で20年間続けているものがあれば、それは企業文化になります。「30年続ければ恐るべし、50年は神のごとし」ともおっしゃっていますが、まさにその通りだと思います。

知らないより知っている方が良い。でも知っている人とやっている人だったら、絶対やっている人が勝ちます。やっている人とやり続けている人。これは言うまでもありません。良いことは続けなさない。続けたら本物になります。

挨拶は心のしぐさ


創業当初は人手が足りなかったために、女房も2人の子供を連れて店に出ていました。当時の店は千日前の5階建てビルの2階にあり、ビルの手すりが子供たちの遊び場でした。ある寒い日に「いらっしゃいませ」と扉を開けると、お袋が泣きながら、2人の子の手を引いて階段を上ってきました。なんで子供を店の中に入れないのかとすごい剣幕で怒られました。子供たちがお客様の食べ物に手を出すので、やむなく外に出していたのですが、お袋があまりに懇願するので一旦は引き取り、お袋が帰るなり、子供たちをまた階段に放り出しました。

私たちだって、子供が可愛いのは当たり前です。女房を店に出さないで済むように、従業員を増やしたくても人が来てくれなかったのです。1日が終わると、5人の従業員が帰っていきます。帰すのが怖いんです。1日の仕事が終わると「お疲れ様」と言いますが、単なるお疲れ様ではなく、「1日ご苦労様でした。明日も出勤してね」と祈る気持ちでした。浮かぬ顔の従業員がいれば、明日は大丈夫かと確認しながら「お疲れ様でした」と言い、翌朝一番早く出社し皆の出社を「おはようございます」で迎えました。皆出社すると、「無事、営業ができる、ありがたい」と思ったものです。

挨拶は心のしぐさ、言葉は言霊とも言われます。「おはようございます」という9文字の中に、どれだけ心がこもっているか。たった一言言葉を交わしただけで、何を考えているか瞬時にわかります。このことを教えてくれたのは、非行少年たちでした。彼らと面接すると無表情で、全くしゃべりません。一緒に来た先生や保護者に出て行ってもらい、2~3時間、一対一で対応しました。私が何か言った拍子に、顔の表情が変わります。これが何を意味するのか。私達の言葉がどれだけ影響力を持つか、ということです。

戦術や戦略の前に重要なこと


立教大学のある研究結果がそれを裏付けています。2班に分かれ、一方のグループには山登りをしてもらいます。もう一方には、500メートル間隔で立ち、登ってきたメンバーとすれ違う際に、「顔色が悪いですね、休まれたらいかがですか」などといった言葉をかけてもらいます。気の弱い人は1人とすれ違っただけでダウンするそうです。どれだけ根性のある人でも、頂上まで到達しなかったそうです。このことは、人は人の言葉に惑わされることを意味します。私も、疲れた社員を見ると、「大丈夫か、病院に行ったか」等と声をかけていたのですが、この話を聞いてから、そういうことは言ってはいけないと思いました。

ある飲食店の店長に、「お宅は挨拶ができていますか」と聞いたところ、85%との回答だったのですが、お客様に確認するために行った出口調査の結果は20%でした。そしてよく観察してみると、確かに言葉は発しているものの、よそ見をしながら声を出しているだけで「挨拶」になっていなかったのです。お客様と目を合わせながら挨拶をし、出口調査の結果を60%以上にしたいということで、挨拶の大キャンペーンを行ったところ、それだけで売上が20%アップしたと聞いています。戦略とか戦術とか言いますが、その前に基本ができているのかどうかを確認すべきです。基本ができていないのに、戦略も戦術もありません。

原因は自分にある


千房では、ある時、社長命令で茶髪を禁止にしました。するとある店長が飛んできました。「よく働く、お客の受けも良い茶髪の学生がいるのですが、なぜ茶髪がだめなのですか」。「私にもわからない。ただ一流レストランに茶髪はいないだろう」。

また、店長の指示に従わなければ組織として成り立ちません。そこで「おまえが茶髪がダメだと言えなければ、言える人と店長を交替する」と伝えました。同様に、店長から相談が来ると「相談にのってやるから辞表持参で来い」と言うこともあります。店長なのですから、そのぐらいのことは自分で考えろ、と思わずにはいられません。

千房の中でも、同じ味、立地条件で、よく売れている店と売れない店が出ます。何が違うのか。売れている店は、店長が元気です。店長が元気なために、従業員が生き生きしています。お客様がにこにこして召し上がっています。売上が落ち込んでいる店は、店長も従業員も元気がありません。心配して店長に、休みをとっているかと聞くと、「週に2日休ませてもらっています」と言います。元気の良い店長は、月に3回しか休んでいません。元気のない店長に、思わず言いました。「お前、休みすぎと違うか」。私は、不況なんて関係ない。この店長が不況だと思いました。

花には蝶々が飛んできます。もし「なんで自分のところには、ハエしか来ないんだろう」と部下のことを思っている幹部がいれば、答えは簡単です。その幹部が悪いのです。元から断たなければなりません。部下のことを悪く言えば言う程、自分自身に責任があることに気付くべきなのです。

未来と自分は変えられる


月刊『致知』に、小学校5年生の時の担任の先生との出会いが、その子の一生を変えたエピソードが載っていました。ある小学校の先生が身なりが不潔でだらしない教え子について、1年生からの記録を読み、その変化に目を向けたのです。1年生の記録には、「朗らかで、友達が好きで、人に親切、勉強もよくでき、将来が楽しみ」とあり、それが2~3年生になると、母親が病気で亡くなり、また4年生の記録には、アルコール依存症になった父親が暴力を振るう、と記載されていました。この状況に深い痛みを感じた先生は、放課後教室で一緒に勉強しようと、その子に声をかけます。それがきっかけで子供は心を開き、医大に進み、医者になった、というのです。

千房では、官民一体で経営されている刑務所から、2人の従業員を採用しました。90分面接して気付かされたのですが、罪を犯したのは本人が悪いものの、100%本人を咎められないと思いました。「こんな私に誰がした」という歌詞がありましたが、罪を犯すようになるには、それなりの理由があるのだと。

私は千房の社長をやらせてもらっていますが、皆さんからの引き立てがなければ、こうなってはいなかったと思っています。今度は、自分が手を差し伸べてあげたい。その1つが、不幸にも罪を犯してしまった人の採用です。ただし、犯した罪は忘れてはならないのだと、謙虚に生きなさいと言い聞かせています。

過去は変えられないが、未来は変えられます。微力ながら、少しでもそれを手助けしていきたいと思っています。

中井 政嗣(なかい まさつぐ)様 プロフィール

昭和20年
  奈良県に生まれる。
昭和36年
  奈良県當麻町立白鳳中学校卒業。卒業と同時に乾物屋に丁稚奉公。
昭和48年
  大阪ミナミ千日前に、お好み焼き専門店「千房」を開店。大阪の味を独特の感性で国内はもちろん、
  海外にも広める。その間、昭和61年、40歳にして大阪府立桃谷高等学校を卒業。
現在
  社会問題化している青少年の教育に対し、経験を踏まえた独特の持論が社会教育家として注目を
  集め、全国各地の教育委員会、PTA、経営者団体、企業での講演は多くの人々に感動を呼び起こ
  している。平成20年6月テレビ東京系「カンブリア宮殿」、8月NHK「ルソンの壺」に出演。

主な著書:『できるやんか!』( 潮出版)

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