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ソリューション研究会

スマートデバイスによる現場改革!?
~潜む課題とその解決策~

アシストのユーザ会、ソリューション研究会「定例会」(西日本)では、スマートグリッドの第一人者である、中央コンピューター株式会社、常務取締役の藤井裕三様から、スマートグリッドやスマートコミュニティの可能性についてご講演いただきました。

藤井裕三氏  中央コンピューター株式会社 常務取締役

◆講師略歴◆

1982年 関西電力株式会社入社
2001年 電力流通事業本部 計画グループマネジャー
    (電力の系統計画に従事)
2005年 電力流通事業本部 中央給電指令所長(電力の需給運用業務に従事)
2007年 電気事業連合会出向 電力技術部長
    (スマートグリッド、新エネ関係に従事)
2010年 企画室次世代電力系統戦略プロジェクトチーム部長
    (スマートグリッド/スマートコミュニティ関連業務に従事)
2012年 中央コンピューター株式会社出向


東日本大震災の発生以降、特に電気の効率的利用や安定供給、太陽光発電のように自然界によって補充される再生可能エネルギーの導入拡大など、エネルギー需給の最適化を目指す様々な取り組みが進められており、その1つにスマートコミュニティがある。

とはいえ、スマートコミュニティの定義は一様ではない。政府のエネルギー基本計画では、スマートコミュニティの定義を、電気の有効利用に加えてエネルギーを地域単位で統合的に管理し、交通システムや市民のライフスタイルの転換などを複合的に組み合わせた社会システムとしている。一方でスマートグリッド(次世代送電網)や省エネ型輸送システムなど環境配慮型の先端技術を盛り込んだ(都市)計画をスマートコミュニティの概念として報じているメディアもある。現在様々な実証試験が行われており、あるべき姿の議論はこれから国内外でなされていくところであろう。

スマートコミュニティへの期待


では日本においてスマートコミュニティにどのような期待が寄せられているのかというと、1つは環境問題に対してである。特に原子力の代替として期待される再生可能エネルギーをどのように拡大していくか、またエネルギー消費の抑制や電気自動車の普及拡大も挙げられる。

スマートコミュニティの実現によって、再生可能エネルギーの導入が拡大し、電気自動車、蓄電池、スマートメーターなどが普及するとどのような便益が期待できるのかというと、まず個人においては効率化によりエネルギーコストの低減が挙げられる。そして社会的にはCO2削減のツールとして活用できるのではないか、電力会社にとってはきめ細かな需給制御の実現により設備投資抑制や計画停電の回避に有効なのではないか、という期待が寄せられている。

また、スマートコミュニティを国内企業がビジネスとして海外展開していくため、独立行政法人である新エネルギー産業技術総合開発機構が資金を出してアメリカや中国など海外7箇所でスマートコミュニテ・ィプロジェクトを実施している。これは、国によってライフスタイル(エネルギー消費構造)やエネルギー供給システムが異なるため、現地の実情に沿ったエネルギーマネジメントを行ってその国で成果を見せる必要があるからである。

国内外のスマートコミュニティとその目的


現在、世界各地で100件以上のスマートコミュニティ/スマートグリッド関連プロジェクトが進行している。しかしヨーロッパのように低炭素化社会を目指す国もあれば、アメリカのように自動化や高品質化を目指すなど、目的はその国の事情ごとに異なる。共通しているテーマはスマートコミュニティによっていかに新しいビジネスを創出するかということである。

日本で行われているスマートコミュニティの実証プロジェクトは4箇所、関西文化学術研究都市、横浜市、豊田市、そして北九州市である。2010年に始まり、各地域の特性に応じた内容で2014年まで行われることになっている。これ以外にも経産省主導でスマートコミュニティ導入促進事業が東北の3県、8つの自治体で行われている。
スマートコミュニティ導入の目的は、国内外での取り組み事例を分類することで次の3つに分けられるのではないかと考える。

1.新しく街づくりを行う際に全体最適を念頭にエネルギーや交通システムなどを構築し、効率的に低炭素化した街を実現する。これは中国にある天津のエコシティがその代表例である。この場合、不動産の付加価値を高めて販売することでビジネスとして成立している事例がある。

2.成熟した街では既存のエネルギー供給システムの高度化を図りながら、再生可能エネルギー導入拡大やエネルギーの効率的利用を促す。これによりCO2の排出総量を減らすことを目的とし、実例としてオランダのアムステルダムが挙げられる。

3.アメリカやドイツなどの国においては、系統全体の供給量過不足や送電線の容量不足など電力インフラの脆弱性への対応としてコミュニティレベルで新たな電力供給システムを目指す場合もある。この場合は、需給逼迫時の対応策としてデマンド・レスポンスを実証する。原子力停止に伴う供給力不足が続くなか日本の実証事業でもこれが中心となっており、デマンド・レスポンスとは、電気料金を高くするなどして利用者自ら電気利用のピークカットやシフトを促す料金誘導型と、電力会社が供給を遮断するなどして利用を抑制する負荷抑制型の2種類に大別される。けいはんな実証においてはクリティカルピーク料金を採用し、参加している人にメールを送り抑制してもらうという実証を行っている。

スマートグリッド、その取り組みと課題


スマートグリッドとは電力供給の質の向上、効率化、低炭素化を目的とした取り組みである。日本においては、太陽光発電の大量導入に関わる課題の解決と、スマートメーターの導入、そして東日本大震災を踏まえた課題の解決という3つを特に重点課題としている。

太陽光発電の問題点は3つあり、1つは貯蔵できないため大量導入で余剰電力が発生すること、2つ目は出力が天気任せであるため日射の急激な変化により、出力変動し、需要と供給力がアンバランスとなって周波数が乱れる。そして3つ目は家庭からの余剰電力が電力系統へ逆流し、電圧が上昇するという問題である。太陽光による余剰電力は需要の低くなる年末年始とゴールデンウィークに発生する。そのため蓄電池などで余剰電力を吸収する案と、その時期に太陽光の出力抑制を実施するという2つの対策が考えられる。また出力変動に伴う周波数調整ついては、火力等と蓄電池を組み合わせた需給コントロールシステムの開発が対策として考えられる。電圧上昇の問題については柱上変圧器の増設や電圧調整装置を設置するなど配電網の強化対策を採る必要がある。

スマートグリッドにおいて電力会社が取り組んでいるのがスマートメーターの設置である。これは人出に頼っている検針や電気の開閉操作を自動化すること、そして電力使用量を利用者に情報提供して省エネを推進する。すでに関西電力では、電気使用量のお知らせ照会サービスを行い、Webを通して使用日の翌日には1時間単位で電気使用量をグラフ表示して利用者が閲覧することができるようなサービスを提供しているが、それを継続して活用してもらうにはさらなる試行錯誤が必要のようである。

東日本大震災の際、東北や東京で電力不足になっても、北海道や中部以西の60ヘルツ地域は供給余力が存在していた。これは周波数変換設備など連系線の容量が一杯だったためで、この増強が早急に求められている。また東京では輪番の計画停電が発生した。このため今後は大規模停電の発生を防ぐべく設備形成に取り組み、需給逼迫を回避するためのデマンド・レスポンスの導入といった対応策が求められている。

また、この問題を契機に国が進めているのが電力システム改革である。これは3段階で行われ、まず2015年に電力需給を広域で調整する認可法人を設け、平時から地域をまたぐ供給の計画や設備を整え、地震などで特定地域の電力が不足した場合には全国からの融通を指示する権限を同法人に持たせる。次に2016年には電力小売りの参入を自由化し、家庭向けの電力供給の地域ごとの独占を失くす。送配電事業者にも最終的な供給義務を設け、安定供給を実現する仕組みである。そして最後に電力会社の送配電部門の中立性や独立性を高める発送電分離を実施するというものである。

まとめ


スマートコミュニティへの取り組みについては、社会インフラの整備状況やエネルギー政策、ライフスタイルに伴うエネルギー消費構造によりその目的は異なっていても、スマートコミュニティを形成するためのデータベースやセンサーなどの情報基盤を多目的に活用し新ビジネスを創出することが各国で期待されている。特に日本においては、電力供給システムにおける再生エネルギーとの調和や、需要家側でのエネルギーマネジメントを組み込んだ電力供給システムの高度化、そして、東日本大震災で起きたような停電を避けるためのエネルギーセキュリティ向上が取り組みの中心となっている。ただし、これらの取り組みではエネルギー安定供給(Energy security)、地球環境(Environment)、そして経済性(Economy)という3つのEが相反する事項もあるため、誰が便益を得て投資するのか、今後の電力改革や再生エネルギーの固定価格制度などの政策の動向を見極めながら推進していくことが重要であろう。

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