スぺシャル座談会 デジタル・トランスフォーメーション時代の運用管理
2017年07月10日
2017年2月開催のJP1ユーザ会東日本支部会にて、「デジタルトランスフォーメーション時代の運用管理」と題して、2017年に取り組むべき課題をテーマにパネルデイスカッションを実施。
IT運用の課題と対策、運用部門に期待する変革、2017年に取り組むべきテーマについて様々な分野のスペシャリストが議論を交わしました。
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「要員不足」「スキル不足」解消へ向けて
蝦名: 2017年に取り組むべき課題とはどんなことがありますか?
九重: IT運用における課題のなかで、「要員不足」「スキル不足」は当社でも大きな課題です。どんなスキルが必要かという観点では、二面性があると思っています。ひとつは既存システムを如何に効率良く安価に運用するか、もうひとつは如何に新しい価値、ピジネスモデルを生み出すかということです。実際にはそれぞれのスキルをどのように習得すれば良いか明確に定義することは難しいと感じています。
佐藤: 要員不足としては定年退職問題が深刻で、要員不足とスキル低下が同時に起こっています。新たな人材を採用するものの、開発部門や業務部門が優先されて運用部門には配属されず、引き継ぐことができない現状です。そのため現行の担当者に負荷が集中し、ルーティンワークをこなすだけで精一杯になります。これでは運用改善や品質向上まではなかなか着手出来ません。それらの対策として、当社ではデータセンターや業務そのもののアウトソーシングに取り組んでいます。
経営層に対して、運用部門に人が足りないことをアピールしきれていないことも、要員不足の一因だと思います。
九重: 一般的に、運用部門はコストばかりかかる部門だと思われがちです。しかし、最新のIT技術の動向やその活用方法を一番理解しているのは運用部門です。運用部門は新たな価値を生むことが出来る組織であるということを、もっと経営層が認識しても良いと思います。そうすれば運用部門が正当な評価をされるのではないでしょうか。
瀬戸山: ユーザ企業では、システムは動いて当たり前という考えがあり、運用部門の評価は決して高くないという声をよく伺います。利用者、特に経営者が運用部門の価値を理解して然るべき評価をするべきです。
JP1開発元の立場から言いますと、今後は運用部門だけではなく開発者、利用者の声にも耳を傾けた改良が必要だと感じています。そのうえでJP1を「使って」いただくのではなく、「使いこなして」いただくことが、要員不足の解消につながるのではないかと思います。
「受け身型」から「発信型」へ運用部門が提供すべきサービスとは?
蝦名: 運用部門に期待される「変革」や「攻めの運用管理」にはどんなことがありますか?
佐藤: 当社では、開発部門と共同で、IT基盤の整備と刷新を目指した共通情報基盤を構築しました。
プラットフォーム/ミドルウェア/ソフトウェアに至るまで運用面も考慮して標準化された「レディメイド」型の基盤を用意し、システムのオーナーに提供するという仕組みです。基盤を共通化し、運用部門主導の全社共通サービスとして整備したものを提供し、運用部門が開発部門に使い方のレクチャをしています。
この基盤統合により 、運用負担はかなり軽減され、リードタイムも大幅に短縮できたのではないかと思います。
九重: 素晴らしいですね。リードタイムがかかると、業務部門は待ちきれずにシャドウITを利用してしまうことが多く、そのことで頭を悩ませている企業がたくさんあるようです。短期間でのサービス提供に加えて運用部門によるソフトウェア等の精査も終えているのであれば、非常に安心して利用できると思います。
業務部門から多様な要望が上がってくるなか、それぞれのニーズに即して、従来のデザインパターンでよいのか、新たなデザインパターンにするのか、そういった提案をすることも運用部門に期待される役割ではないでしょうか。
佐藤: 運用部門には、業務部門のリクエストに対するITを使った実現方法の提案や、実現後にITに即した部分でアドパイスをするといった動きを求められていると思います。基本は安定稼働の守り重視ですが、人員や工数に関して変えるべきところは変えていく必要があります。
また、開発部門や業務部門とのコミュニケーションを強化することは「攻め」かもしれません。
九重: 私は20年近く運用や構築に従事していましたが、現在はICTコンサルティングに携わっています。そのなかで、最近お客様から当社の運用管理について聞かれることが増えました。そこで運用の仕組みを説明すると、それを是非紹介して欲しいと言われることがあります。
そこで気づかされたのですが、運用部門が誇れる目標を持って日々運用改善に取り組んでいると、営業はその取り組み自体を自社の強みとしてアピールできます。そういうことが「攻めの運用管理」につながると思います。
蝦名: 新たなチャレンジや変革に向かうなかで、どのような課題がありますか?
九重: 新しいデザインパターンを提案する一方で、まだまだレガシーなやり方も残っています。基本路線としては、レガシーを踏襲すべきシステムは手間やコストをかけずに運用し、新しい価値を生み出すシステムには手間もコストもかけるペきだと思います。
また、運用部門の意識改革も必要なのではないでしょうか。運用部門の担当者は非常に真面目な方が多いので、業務部門などに提示された前提条件やセキュリティ要件を、疑うことなくその通りに運用することが多いように感じます。日々IT技術が進化していくなかで、従来のポリシーが果たして正しいのかと本質を見抜く力も必要だと思います 。
佐藤: 確かに、従来の方法に縛られていると新しいチャレンジはできません。より良い方法があれば、思い切って変えてしまっても良いと思います。先ほどの要員不足は、ある意味では従来の方法を見直すチャンスにもなり得ます。
今のIT技術に即してシステムを大幅に改善するきっかけになるのではないでしょうか。
2017年、運用部門がチャレンジすべきテーマと皆様へのメッセージ
蝦名: 最後に、今後チャレンジしたいテーマと運用部門の皆様へメッセージをお願いします。
九重: 運用部門の業務を少しでも楽に出来ないかということを、我々は日々考えています。IT技術の進化に合わせて様々な運用管理ツールを使い分けなければいけない時代に、運用部門の方々はシステムや要件に合わせて取捨選択をしていく必要があります。そのために、感性豊かな若い世代の意見は積極的に取り入れたいと思っています。
皆様も、従来のポリシーを変えることは簡単ではないと思いますが、より良い方向に運用現場を変えていけるよう頑張っていきましょう。
佐藤: 当社はBCPと要員不足対策のために、自社データセンターのアウトソーシングを進めます。データセンター自体も老朽化していますし、機能的にも商用のデータセンターの方が優れています。当社に限らず、今後ユーザ企業は、自社内での保守や運用オペレーションが立ち行かなくなってくると思います。早めにアウトソーシングして、運用部門をオペレーターからコーディネーターという役割に導いていきたいですね。そのためにも、社員にはJP1ユーザ会など外部セミナーにどんどん参加させたいと思っています。
瀬戸山: 今後、障害を発生させない安定した運用管理を実現するためには、過去の事象を分析し是正すべきポイントを明確にすることが重要だと考えています。今後のJP1にご期待ください。
幕田: 当社の調査でもあるように、自動化をスムーズに進める近道は「標準化」です。インフラを統合し、システムを利用するための申請を、電話やFAXではなくシステム上で行うことを徹底する、そうすることでITシステムにおける構成管理データベースができます。そのようにまずは業務を標準化して自動化の道筋を作ることで、自動化ツールが効果的に利用できるのではないでしょうか。皆さん、ユーザ会に参加することも「攻め」の姿勢だと思います。引き続きこういった会に参加されると良いと思います。
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