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「クラウド時代のサービスマネジメント」
アシスト運用フォーラム2014 キーノート講演

クラウド時代のサービスマネジメント

クラウド・ファーストの流れの中で多様化するシステム基盤。運用管理という側面から、コストを含め、自社システムをどう管理、強化していくべきか、お悩みのお客様も多いのではないでしょうか。アシストでは去る11月20日、その解となるべく最新動向ならびに製品情報を提供する場として運用フォーラムを開催しました。

キーノート・セッションでは、クラウド時代のサービスマネジメント・ソフトウェアやストレージ分野の市場分析を専門とするアナリストである株式会社テクノ・システム・リサーチの幕田範之氏にご登壇いただき、「クラウド時代のサービスマネジメント」と題しご講演いただきました。以下はその抄録です。

講演のポイント

1. ITにかける費用は‘コスト’ではなく‘投資’である
2. オンプレ時代⇒クラウド時代へ:それでも変わらぬマネジメントの本質
3. 2014年サービスマネジメント・ソフトウェア市場:そのトレンドを探る
4. IT部門の動向
  ⇒クラウド意識の向上
  ⇒自動化のニーズの高まり
  ⇒ITILの意識の向上
5. 業務/ビジネス部門の動向
  ⇒実は「ITにはお金をかけるべき」と考えている
6. IT部門と業務/ビジネス部門とのギャップを埋めることの重要性
  ⇒業務/ビジネス部門と積極的にコミュニケーションを図ろう など


ITにかける費用は‘コスト’ではなく‘投資’である

「サービスマネジメント」や「ITIL」という概念は1990年代に登場しました。「サービスマネジメント」は「運用管理」とは異なり、その費用は‘コスト’ではなく‘投資’なのだということをまずご認識いただきたいと思います。その上で、「日々の業務が円滑に行われるように運用管理」を行い、「運用プロセスの継続的な見直しを実施しながら継続的改善」を実施して、「利用顧客のニーズに合ったサービスを提供するためのサービス」を考えていくという3つのサイクルを回しながら、最終的な目的である「会社の利益/売上げを向上」させるのが「サービスマネジメント」の考え方です。

サービスマネジメントとは何か


情報システム部門では、ビジネス部門の方々の要望を受けて、メーカーやSIerから調達したITシステムを「ITサービス」として提供しているわけですが、ただ要望を聞くだけでは残念ながら「ITIL」や「ITサービスマネジメント」の範疇を越えられません。そこに問題があります。「サービスマネジメント」はもう少し先のことを見据えるべきであり、どのようなITサービスを提供すれば業務/ビジネス部門に貢献できるのかを考えるだけでなく、サービス提供先となるその先の消費者や企業へのサービスマネジメントの領域へも範囲を拡げていく必要があると考えます。

業務/ビジネス部門に注目しなくてはいけない理由


オンプレ時代⇒クラウド時代へ:それでも変わらぬサービスマネジメントの本質

オンプレミス(以下オンプレ)時代からクラウド時代になると、「サービスマネジメント」はどのように変わっていくのでしょうか。まず顧客が利用するインフラ形態や利用形態が目まぐるしく変化します。例えば、クラウドでインフラ構築や管理が自動化されたり、便利なクラウドを顧客が自由に選択するようになるのです。しかし、クラウドになったからと言ってサービスの本質は変わりません。サービスとは、いかに顧客の事前期待を管理し、どのようにしてその期待を上回るものを提供できるかにかかっています。したがって今後もサービスは重視されていくでしょう。

パブリック・クラウドには「できること」と「できないこと」があります。「できること」は、IaaS/PaaSを使えば、インフラ構築/管理が不要となり、SaaSならばアプリケーション管理まで対応してくれます。ただし、この場合でも状態把握は必要です。トラブルがあった時にエンドユーザからIT部門の皆さんに必ずクレームが入るため、すべてクラウド任せではいけません。一方、パブリック・クラウドを使って「できないこと」はビジネス戦略に関するもので、「顧客に提供すべきサービスの検討~提案」、「業務視点での投資対効果測定」、「運用プロセスの把握/改善」などは皆さんご自身でやらなければならないということを是非ご認識ください。言い換えると、クラウドに移行することで、このビジネスの戦略部分に皆さんの時間を割くことができるようになるのです。

2014年のサービスマネジメント・ソフトウェア市場:そのトレンドを探る

私どもの「サービスマネジメント市場のマーケティング分析」は、ソフトウェア20社、SI/VAR10社、IT部門285件、業務/ビジネス部門321件を調査対象としています。

市場動向について簡単に触れておきましょう。日本国内におけるサービスマネジメント・ソフトウェアの2008年-2012年の「出荷金額と保守金額の年平均成長率」は7.4%でしたが、2013年以降も7%の伸びを示しています。クラウドになったからといって、その成長率にほとんど変わりはありません。メーカーシェアは日立製作所がトップで24%、日本IBM15%、富士通12%と続きます。

今後伸びるカテゴリはサービス分野であり、その中で特に注目されているのが自動化管理です。またPC資産やMDM管理はSaaS型が中心になり、MDMに関しては7-8割がSaaS提供になっています。アシストさんもHPのサービス(ITサービス管理ソリューションのSaaS版:HP Service Anywhere )の提供を開始していますが、「サービスデスク」については、SaaS型のほうが導入しやすく、効果が出なければ、すぐにやめられるというメリットもあります。自社で導入したら「はい、やめます」というわけにはいきません。サービスデスクはやはり重要ですし、NotesやExcelだけでは対応できないところもあります。試しにSaaS型で使えるのは魅力的であり、サービスマネジメントのSaaS型の分野は、これからも益々伸びていくと見ています。

今後伸びるカテゴリ


IT部門の動向について

社員100名以上の規模の企業、製造業や流通業などのIT部門の方々にアンケート調査をしたところ、285件のうちIaaS/PaaSを利用している企業は約半数の43%まで増えています。クラウド利用企業の大半が、システムの10%~30%未満をクラウド化しています。現時点でシステム全体をクラウド化している企業は9%程度にとどまりました。システム全体がIaaS/PaaSに代わるということではないですが、今後間違いなく増えていくでしょう。特に開発系はIaaSに進みます。使用ベンダーでは、やはりAWSがトップで、富士通、IIJがそれに続いています。興味深いのは、その他にも各種多数のクラウドが登場していて、AWSに一極集中している訳ではないという点です。

ではIaaS/PaaSの運用管理には何を利用しているのでしょうか。調査結果は「クラウド事業者が提供するツール:80%」、「IaaS/PaaS上に管理ソフトの管理マネージャを導入:13%」、「IaaS/PaaS上に管理ソフトのエージェントを導入:7%」となっています。単一のクラウドなら問題はないですが、色々なクラウドを複数使うようになると、今後各社のコンソールが並び出すため、一元管理の問題が出てきます。何かしら全体を把握できる仕組みが必要になり、本来の意味でのマルチクラウドへの道のりはかなり険しくなると感じています。

クラウドから離れますが、「今対応している分野と今後対応したい分野」について尋ねてみました。今対応しているもので一番多いのがPC資産管理です。ここは間違いなく市場的にも一番大きい分野です。今後対応したい分野で、多くなったのはIT運用の自動化と障害予兆検知でした。毎年この調査を実施していますが、昨年はモバイル・デバイス管理(MDM)が圧倒的に高く、自動化はほとんどありませんでしたが、今年、それが逆転しました。運用の自動化の傾向が急速に高まってきたことには色々な背景があると思います。「仮想化が進み、ある程度サーバのコスト削減を実現できたので、今度はプロセスの見直し+自動化を」という流れかと思われます。また障害予兆検知への要望は今後もより一層高まるでしょう。

自動化ツールの導入状況をみると、「導入企業27%」となっており、「導入検討中27%」を合わせると増加傾向にあると言えます。実際の効果について調査したところ、管理者の負担軽減や人手のミス削減等、効果が得られているという結果でした。果たして「自動化するとコスト削減できる」のでしょうか。アンケート結果によれば、「コストはかかるが効果がある」という回答が67%でした。「コストは度外視してでもすべて自動化したい」ユーザが多いことがうかがえ、プロセスをすべて自動化するのは大変で手間もかかるが、その施策効果は非常に高いということがこのアンケート結果から読み取れます。

業務/ビジネス部門の動向について

ここからは業務/ビジネス部門を対象にしたアンケート結果です。社員数100名以上の会社を対象とし、情報システム系、開発系など、ITに関係する方々は除外しています。

業務/ビジネス部門の調査結果

「ITにお金をかけてもいいと思っているか」という質問に対し、ビジネス部門は87%がITにもっとお金をかけるべきだと回答しました。驚きの数値です。ITコスト削減ではなく、むしろビジネス部門はもっとお金をかけてさらに便利にして欲しいと望んでいるわけです。どこでどう間違えたのか、ITベンダーもコスト削減ソリューションを提唱し始めたために、なぜかITコストを削減しなければいけないね、という話になってしまいましたが、冒頭で述べたとおり、「ITはコストではなく投資なのだ」と気づいているのは実はIT部門ではなくビジネス部門なのです。問題は何を欲していて、何にお金をかけるべきと言っているのかということですが、彼らが望んでいるのは作業時間短縮であるとか、手間の軽減、資料作成、つまり、「自分たちが楽になるようなことなら何でもやって欲しい」のです。

ではここでIT部門とビジネス部門のギャップを確認しておきましょう。グラフのオレンジの線はIT部門の自己評価です。例えばIT部門は「ITサービスの安定稼働」については95%が大丈夫と評価していますが、青色で示した、ビジネス部門の評価は85%ということで10%の開きがあります。各評価のその差に注目してください。「ITサービスの安定稼働」に関してはほぼ期待どおりと言えるでしょう。ただグラフの右側になっていくにつれて徐々に開きが出てきます。特に「要望をあげてからITサービスとして提供されるまでの時間」については、20%以上の差があります。期待に応えられていないという評価です。このビジネス部門の調査は3年前にも行いましたが、残念ながら当時の彼らの評価も54%程度と非常に低いです。これが3年間変わっていないわけで、これだけプライベート・クラウドだ、プロビジョニングだ、と言いながら、実はサービス部門の評価は全く変わっていないのです。これは非常に残念でなりません。ただ、これから、クラウドの使い方によってはきっと変わってくるだろうと期待しています。

IT部門と業務/ビジネス部門とのギャップ


最後に

最後にお伝えしたいのは、「IT部門」と「業務/ビジネス部門」が十分なコミュニケーションを図れる、例えばポータルサイト的な仕組みをぜひとも作っていただきたいということです。どの世界も同じですが、サービスマネジメントにおいても最終的には事前期待がわからないとだめなのです。ビジネス部門が何を考えているのか把握していただきたいですし、クラウドを使うのは便利でいいのですが、ではどうやって規制していくのか、どうやって対応していくのか、ということも考えなければなりませんし、もっとうまく使うにはどうすればいいのか相互にコミュニケーションをとってください。例えば、こういう使い方をしてください、という形でiPhoneを配っておしまいではいけません。今、コンシューマライゼーションという言葉が流行り始めていますが、実はもっと上手な使い方を彼らは知っているかもしれません。これまでは企業が使っていたITが徐々に価格が落ちて、コンシューマに普及していくというモデルでしたが、すでにコンシューマの方が先に進んでいることもあるからです。実際、Google、Facebookなどを企業よりもコンシューマはいち早く無料で使っています。コンシューマライゼーションということで、うまくその辺を巻き込んで、ビジネス部門からこうしたいんだ、こうした方がもっとうまく使えるよ、といった声をどれだけ多く拾い上げられるかが、今後のサービスマネジメントの‘肝’になってくると思っています。

幕田 範之 氏 プロフィール

2000年に株式会社テクノ・システム・リサーチに入社。サービスマネジメント・ソフトウェアやストレージ分野の市場を中心に調査分析を担当。常に「なぜ?」を意識しながら、メーカー、SI/VAR、ユーザ、業務/ビジネス部門の四方向から調査を行い、その分析結果を基に立体的に市場を捉え、提言およびアドバイスを行う。


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