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ソリューション研究会 定例会
「“浪速のカリスマ添乗員”が語る『ほんまもんのサービスはこれや!』」

ソリューション研究会 定例会


あらゆる業界で価格競争が激化しています。では、お客様の1番の望みは低価格でしょうか。テレビでもおなじみ、驚異的な売上げを記録する“浪速のカリスマ添乗員”、日本旅行の平田進也氏は、価格競争で疲弊するのはもったいないと断言します。「あなたから買いたい」を引き出す極意。アシストのユーザ会、ソリューション研究会「定例会」では、平田氏にサービスの秘密をお話しいただきました。

ソリューション研究会とは

平田進也様

平田 進也氏
株式会社日本旅行 西日本営業本部 個人旅行営業部 担当部長 兼 「おもしろ旅企画ヒラタ屋」代表


1957年奈良県生まれ。京都外国語大学卒業後、日本旅行に入社。 営業9年、海外業務11年、販売促進13年で現在に至る。豊富な経験と巧みな話術で、「平田進也と行くツアー」には申し込みが殺到するほどの幅広いファン層を持つ“浪速のカリスマ添乗員”。ファンクラブの会員数は22,000名を超える。平田氏と社内の個性派メンバーを集めた新セクション「おもしろ旅企画ヒラタ屋」では代表を務め、TV出演は600回以上、2013年からは関西のラジオ局で2本の冠番組のパーソナリティも務める。

主な著書:
『出る杭も5億稼げば打たれない!』、『旅行業界のカリスマ 7億稼ぐ企画力』、『カリスマ添乗員が教える 人を虜にする極意』


「商売」は「笑売」


ショウバイは漢字で「商売」と書きますが、大阪では本来は笑いを売る「笑売」だと聞かされました。笑いは心のバリアを解き、財布のヒモも解きます。どこの会社からでも買えるものを「あなたから買いたい」と言っていただくために、私は笑わせて喜ばせる心のキャッチボールから始めます。

相手のことをよく知らない時には壁があります。その壁を瞬時に破らないと商談はできません。例えば玄関先ではすぐに追い返されるような話も、皆が寛ぐリビングや寝室ではふわっとした空気が流れているためか聞いていただけます。商談も同じで、いかに壁を取り除いてふわっとした空気を作り、お客様の目線で懐に入っていけるか。私は大阪で34年間、現場で働いています。お客様に叱られ、喜ばれ、認められ、感謝される、その繰り返しでした。

添乗員として越前岬に行き、食事に冷凍のエビフライを出した時のことです。お客様に「こんなに海が近いのに冷凍ものか!もっと元気のいいエビがおるはずや!」と蹴られました。原価を考えて手配した安いエビフライが、お客様の期待を下回っていたのです。私はすぐさま海水パンツになって海岸に活きのいいエビを捕まえに……、行くフリをして厨房に直行し、大きなエビを手に入れました。それを口にくわえて宴会場に戻り、「こんなんおりました!」と見せるとお客様はおもしろがってくれました。その後、エビは天ぷらにして出しました。お客様は新入社員を褒めるように「よう頑張ったなあ、あんたおもろい。こんな添乗員おらへん。100点やない、130点や。びっくりした」と認めてくれました。

売りたいものを、お客様の欲しいものに変える


1番売れた旅行は『冬のソナタ』の企画です。ヨン様の来日時にホテルやイベントにファンが殺到したというニュースを見て、ドラマが最終回を迎えたらファンは悲しむと思いました。彼女たちを救いたい。すぐに友人の宮根誠司さんに相談し、真夏のソウルにロケに行きました。気温が30℃を超える中、マフラー、セーター、ヨン様のカツラ、ポールスミスのメガネを身に着け汗をタラタラかきながら、「アンニョンハセヨー!イチ、ニ、サン、ヨン様!ドラマが終わって苦しんでいる奥さん、ソウルへ来なさい!」とテレビで呼びかけました。「夏のドナタ」と名付けたその旅行は、79,800円でしたが1日で2,000人の申し込みがありました。成田-ソウル間が19,800円で旅行できる時代に、79,800円の旅行が売れたのです。ツアーとオプションで2億円の売上げになりました。商売とは我々が売りたいものを、お客様の欲しいものに変えて付加価値を付けて売ることだと思いました。

「夏のドナタ」は会社から褒められ、秋にも開催するよう頼まれました。馬鹿の一つ覚えで「秋のアンタ」を企画しました。ところが申し込みは15人、2匹目のドジョウはいませんでした。考え抜いた末の企画がお客様へ響くのであって、2番煎じは通じないということです。

発想力の転換で、今はテレビで旅行を売っています。一生懸命、カメラの前でクルクル回り喉を枯らして死にそうになりながら「奥さん、家で寝てる場合じゃないですよ。一緒に旅行に行きましょう」と言います。これもすぐに1,500~2,000人の申し込みがきます。観光は、光を観ると書きます。光のあるところ、おもしろいところにお客様は集中します。

私がやっているのは、ジャパネットヒラタです。商品を、ふわっとした雰囲気と優しい味に変えてお客様に届けます。良い商品を作る職人と、砕いて砕いてお客様の目線に合わせて寄り添って運ぶ係、両方あわせて初めて商法は完璧になるのではないでしょうか。

平田氏


「やる」ではなく「出し切る」


添乗員は普通、バスの中では必要最低限のことしか喋りませんが、私は普通ではありません。バスに乗ったら目的地まで、何時間でもマイクを持って喋ります。お客様に喜ばれる話題を選びますので、目的地に着いても話が終わるまでお客様はバスを降りようとしません。「観光よりも話の方がおもろい。もっと聞かせてほしい」と言います。動いているバスは私のステージで、お客様の宴会場です。バスが動いている限り私はマイクを持って喋ります。一転、バスを降りてからはお客様と1対1でコミュニケーションをとります。そして宴会場ではウエディングドレスを着て、キャンドルサービスのように鍋の固形燃料に火を点けて回ります。ウエディングケーキにナイフ入刀をした後は、誕生日月のお客様にプレゼントします。お客様は喜んでくれます。バスでのお喋りも宴会場での女装も「やる」のではなく「出し切る」のです。

これと同じ旅行を、ニュース番組の企画で関東で試したことがあります。反応は全く違いました。関東のお客様はバスの中のお喋りには無反応で、宴会場のウエディングドレスとキャンドルサービスでは隣の会場に逃げていきました。それでも私は関西のお客様にするのと同じように尽くし切りました。すると2日目の昼、あるお客様がこう言いました。「平田さん、東京の人はね、おもしろくてもどう受け止めたらいいかわからないの。でもあなたの気持ちは伝わったし、本当は楽しかったのよ」。そのお客様は大阪へリピーターで来てくれました。関東と関西で反応の違いはあっても、最後に残るのはハートであることに変わりはないと実感しました。

あなたの旅行にまた行きたい


モノを買う時には、事前期待と事後満足があります。私は旅行会社で1番大切なのはホドコシだと思います。ホドを超すおもてなし=ホドコシです。だからバスの中で喋り続け、宴会場で女装をしてお客様を楽しませます。モノを売るのではなく、笑わせ続けて気持ちでお客様とつながりたい。お金やモノは後で、ハートが先です。最高に喜んでいただいたお客様はリピーターになり、最高の広告媒体にもなります。一生懸命やっていたらファンクラブを作ることになり、口コミで広まった会員数は今や22,000名です。そしてお客様を大切にし続けていたら、ある日突然社長に呼ばれ「あんたはおもろい。お客様を騙くらかして洗脳して女装して喜ばす。金と人をつけるから事業部を立ち上げんか?」と言われて事業部を立ち上げることになりました。さらに全国のマスコミにも取り上げられ、コラボレーション商品や本の出版、映画出演にまでつながりました。何事もやってみることに意義がありますので、声をかけていただいたら無謀に見えても挑戦します。

1年のうち添乗業務が150日、講演が100本ほどです。仕事がおもしろくて仕方がありません。働く中で1番嬉しいのは「あなたに旅行に連れて行ってもらって良かった。また行きたい」というお客様の声です。しかし世の中すべてのお客様に尽くすことはできません。自分に色があるようにお客様にも色がありますので、たくさんのお客様にお会いして色が一致するお客様に誠心誠意尽くします。私の場合、ターゲットは60代70代の女性です。ご家族に尽くしてこられた奥様方を一時でも家から解放して差し上げて、ローマの休日にお連れしたいと思っています。

平田氏


値打ちがあれば価格競争は存在しない


今の時代、安さを求める人はインターネットでホテルを予約し、LCC(格安航空会社)で旅行に行きます。ところが高齢社会になり、パソコンが使えない、予約の仕方がわからない、昔のやり方が好き、目を見て話したい、という方も大勢いらっしゃいます。私はそのようなお客様に付加価値の付いた旅行を提供します。値打ちがあればお客様も納得されるので価格競争にはなりません。商売は近江商人のように三方よしであるべきです。付加価値をつけて利益率を保ち、夢をもって販売する。安売りで利益を減らすよりも、売り手も買い手も市場も嬉しいを目指します。

隠岐の島「最高の晩餐ツアー」も付加価値を付けて大成功した1つです。夏がトップシーズンである隠岐の島は、冬は飛行機の搭乗率が極端に低くなります。搭乗率の低下は路線の打ち切りにつながるため、島の人にツアーの企画を頼まれました。「平田さん、このままでは島への飛行機が切られてしまう。搭乗率が一番低い時期に来てほしい」。考えるよりも先に「やります」と答えていました。海が荒れて観光が全くできない季節に何があるのか。島の魅力を必至に考えた結果、最高のグルメにたどりつきました。隠岐の島周辺で消費されて全国の市場には出回らない隠岐ガニ、発育が良く大人の顔ほどもある黒アワビ、日本一のイカの刺身、A5ランクの隠岐牛。原価度外視で最高の品質を揃えました。観光なしで1泊2日98,000円です。これをグルメに興味のあるお客様向けに売り出すと、なんと1時間で完売しました。

お食事中、お客様はグルメに夢中でした。私の女装はチラリとも見てくれませんでしたが、嬉しかったです。「この品質のこの組み合わせは大阪でも東京でも食べられない。味を迎えに来るのが旅行だね。これが最後の晩餐になってもいい」と最高の褒め言葉もいただきました。お客様が望む以上を提供し、ホドを超えて夢を増幅させるのが私たちの旅行です。

無欲のギブ・アンド・ギブが次につながる


ある女性のお客様が、車椅子のご主人と旅行に参加してくださった時のことです。私は1泊2日の旅行中、奥様が介護で疲れていく様子を目の当たりにし、奥様を救いたいと考えました。そこで「快GO(かいご)ツアー」を企画しました。介護福祉士に同行してもらい、車椅子を押すのもご主人を露天風呂にお連れするのも介護福祉士と一緒です。この旅行では奥様も最後まで楽しむことができ、とても喜んでくれました。さらに3日後、奥様から連絡がありました。「平田さん、大変やねん。主人が歩いてんねん。次は自分の力で行きたいからと伝い歩きをしてんねん」。お客様に勇気を与えた旅行でした。

大阪で1番ヒットしたのは「仇討ツアー」です。これまで「飲む、打つ、買う」の3拍子で男が遊びほうけている間、家を守っていたのは奥様です。積年の恨みを持って仇を討つ、ご婦人だけで北新地や銀座を豪遊しようというツアーです。4時間で3件を回るので別名「4時間の家出」です。1件目は入店しただけで2~3万円かかる高級クラブ、2件目はフルコースが楽しめる高級レストラン、3件目はニューハーフショーです。これを18,000円で売りました。カラクリは時間設定です。夜に行けば数万円かかる高級クラブに、夕方5時半に行きます。外が明るくてもドアを閉めれば夜と同じです。2件目も3件目も一般のお客様が1番少ない時間に行きます。お店も喜び、価格も安く、ツアーのお客様には貸切のような雰囲気が提供できます。このツアーは泊まりの旅行が難しいご婦人方にも大好評でした。「4時間だけ出かけてくるね」と家を後にし、ツアーで明るさを充電して帰られます。お母さんの明るさが家へのお土産です。お客様から笑顔をいただけると、企画した甲斐があります。

無限にサービスをして本当にこちらの誠意が見えた時、お客様は認めてくれます。これからもお客様が喜ぶことをとことん考えながら、無欲のギブ・アンド・ギブを提供させていただきたいと思います。それが私の考えるサービス業です。私の話が皆さんのご参考になれば幸いです。

ソリューション研究会とは

株式会社アシストでは、お客様主体のユーザ会である「ソリューション研究会」を運営しています。ソリューション研究会は、アシストの提供するソフトウェアおよび各種サービスをご利用いただいているお客様相互の交流を育む場として、日頃お客様が抱えておられる課題や疑問をお客様同士で討議し、意見交換を行っていただくことを目的に活動しています。ソリューション研究会は、定例会・情報交流会・分科会の3つの活動で成り立っています。

<定例会とは・・・>
年に一度、最新のIT戦略や経営、人材育成をテーマに講師をお招きし、全会員を対象とした講演会を開催しています。また、合わせて昨年度の分科会で優秀賞を受賞した分科会より、一年間の研究成果を発表いただきます。最新の情報技術トレンドや、来年度の分科会への参加をご検討している方、ぜひご参加ください。

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