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ワークスタイル改革実践企業と有識者による
パネルディスカッション

・フジテック      宮西 様
・Google Cloud      津谷 様
・PwCコンサルティング 草彅 様
・電算システム     相村 様(モデレーター)

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パネリストの自己紹介と会社紹介

相村
モデレーターの電算システムの相村です。
まずは3名のパネリストの方、それぞれ自己紹介をお願いします。

宮西
フジテックの宮西です。ユーザ企業代表として参加しております。フジテックは世界にエレベーターをお届けしている会社でございます。エレベーターとエスカレーターを硬い言い方では昇降機といいますが、フジテックは昇降機の専業メーカーです。設計・開発・保守・改修までの全工程を基本的に自社で行っています。これによって安全安心なエレベーターをお届けできていると覚えていただければと思います。保守をやっている関係で拠点数が国内130拠点以上と多く、海外でも25の国と地域にも事業展開しておりまして、海外売上比率は60%と国内よりも高い比率となっています。
エレベーターはどこでも同じものを使っていると思われがちですが、実は受注生産です。まったく同じ形のビルは無いので、どのエレベーターも少しずつ寸法が異なります。床やボタンの形状など、内装の要望も様々です。これに応えるために一つ一つ設計し、受注生産しています。さらに、工場で組み立てて出荷するのではなく、現場で組み立てるため、現場で仕事をしている社員が数多くいます。そういう社員の働き方の改善をITの部門として支援しています。

津谷
私は G Suite や Google Cloud Platform™ 等のクラウドサービスを提案しています。この場ではグーグル社員がどのように働いているか、といったところをお話したいと思っています。7月24日のテレワークデイにはグーグルも参加していました。グーグルは元からモバイルデバイスがあれば、いつでもどこでも仕事ができる環境でしたから、テレワークデイに限らず普段から家やカフェでも仕事をしています。

私のまわりの同僚でも、1週間に8~10時間テレワークをしている社員もいれば、あまりテレワークをしない社員もいます。グーグルとしては、自分が効率的に心地よく働ける方を選べるように選択肢を用意し、どちらを選ぶかは社員に任せていますが、一番大事にしているのは直接のコミュニケーションです。「コミュニケーション×スピード」によりイノベーションが生まれやすくなっているとも考えています。コミュニケーションの量を増やすことでアイデアの質が高まり、イノベーションが生まれる、このコミュニケーションのスピードを加速させることで、イノベーションが常に起こり続ける、そういう状態を作ろうとしています。

テレビ会議を使ってもコミュニケーションはできますが、会議となると決められたトピックにフォーカスして話しますので、何気ない雑談等をするにはやはり同じ場所にいないと難しいのです。そのため、社員がオフィスに来たくなるような工夫をたくさんしています。例えば食堂のご飯が美味しかったり、自席以外でもバリスタがいるカフェ等のオープンスペースも利用できるようにしています。

草彅
私はPwCコンサルティングの中のテクノロジーコンサルティングという部門で、クラウド関連技術の提供を通じたお客様の働き方の変革促進や、事業運営のコスト削減といったことに取り組んでおります。PwCは150カ国以上に事業展開し、22万人の従業員がおります。日本には5500人がいますが、昨年1年かけてPwC Japan自身が G Suite の導入を行いました際に、導入のPMOとして関わりました。既に前半のセッションで働き方改革、テレワークとセキュリティについては体系的なお話をしていますので、私からは現場の話をさせていただければと考えています。

フジテックの働き方改革のきっかけは1つのカバンの写真

相村
それでは、本題に入りますが、まずはフジテックさんから働き方改革、どのようなことをやられましたか?

宮西
営業、保守、工事など外で仕事する社員が多く、感覚的には6~7割はオフィスにいません。そうなると、フジテックの働き方改革は、いかにして有益な情報を社外に安全に持ち出して現場で有効に使うか、ということに尽きると考えました。
普通の会社であれば、会社でスマホを支給して情報を活用するのでしょうが、フジテックの場合はBYODからスタートしました。なぜこうなったのかというと、この写真を見てください。

これはある営業部員のカバンです。紙の束でパンパンになっています。図面を持ち歩くのは業務上仕方がないのですが、実は紙の半分以上がメールや地図を印刷したものだったのです。メールを外から見る手段がなかったので、お客様との最近のメールやり取りを印刷して持ち歩いていたのです。当然、新着メールも見られないので、会社に電話をして、事務スタッフに自分のメールのIDとパスワードを伝えて見た内容を教えてもらっていました。この写真を経営層に見せた時に「これはアカン」と。すぐに個人スマホで G Suite が使えるようになりました。メール、カレンダー、マップがスマホから使えるようになり、仕事が劇的に改善されました。メールが印刷されることもなくなり、経営層も会社でスマホを支給しても同じ効果が得られるという判断をして、決裁がおりました。働き方改革のきっかけは紙でパンパンの鞄だったのです。

G Suite の ハングアウト でも仕事のやり方が大きく変わりました、 ハングアウト は会社で管理されたコミュニケーションアプリのようなものです。離れた現場やオフィスにいる仲間とグループを作って瞬時に連絡が取れる。例えば、現場で対処方法がわからない事象があれば、写真を取ってグループに共有する、するとベテランがアドバイスをくれる、といったようにコミュニケーションが活性化しました。

自社開発比率が非常に高く、課長ですらコーディングする会社なので、 G Suite を使うだけでなく、自社でスマホ用のアプリの開発も実施しています。最初は勤怠管理のアプリから始まり、現場の写真を社内のサーバにアップして共有するアプリ、Google マップにフジテックの物件情報をプロットし、タップすると連絡先、図面情報が見られるアプリも作り始めています。

現場が納得すればシャドーITはなくなる

相村
まだコンシューマー向けアプリをグループの情報共有に使っている例もあったりしませんか?そういったシャドーITはどうやって潰していっているのですか?

宮西
シャドーITを潰すというよりも、業務として使う、適切に管理するという目的であれば、 ハングアウト を使ったほうが明らかに良いということを現場に出た時に説明するようにしています。例えば、 ハングアウト ならドキュメントのリンクを貼れば共有できますよ、やり取りの内容が画像も含めて Gmail のログに残るし、後から検索できますよ、といったように。セキュリティの観点からも、コンシューマー向けアプリのデータはどこに保存されているかもわかりませんし、退職したからといって個人のアカウントから会社の情報だけを消すこともできません。そういったことを現場に説明すれば自然と G Suite を使うようになっていきます。

相村
なるほど、では津谷さん、グーグルさんの働き方改革の取り組みについてお願いします。

20%ルールやピアボーナス、グーグルのカルチャーを守る会社制度

津谷
グーグル社員は働き方改革を実現したというよりも、元から今のスタイルで働いています。その一方で社員の多くが転職者でバックグラウンドが異なる人が集まってくるため、今の働き方をどうやって維持していけるかが重要視されています。先程お話したようなファシリティ面でコミュニケーションを促進する工夫をしていたり、世界100箇所以上のオフィスと繋がれるように全ての会議室でテレビ会議ができたり、 G Suite 上でコミュニケーションや情報共有ができるようになっています。ただ、ITとファシリティだけでクリエイティブな働き方を維持していけるかというと、そう単純ではなく、会社のカルチャーをどうやって維持するか、さらにそのカルチャーを守るための会社の制度が大事だと考えています。

カルチャーについては会社のミッションや方針を明文化し、社内に浸透させるようにしています。創業者のラリーとサーゲイの二人は、毎週金曜日にTGIF(Thank God, It's Friday.)という社内向けのイベントで、グーグルの進むべき方向や各プロダクトのアップデートについて全社員に向けて話をしています。社員はトップ自らのメッセージを繰り返し聞くことによって、グーグルのカルチャーを理解していきます。

制度面では「20%ルール」が有名になっていますが、これは自分の業務時間の20%分は本来業務以外のことに使って良いというルールです。自分の興味のあるプロジェクトを手伝うだけでなく、ボランティアをする場合もありますが、それで自分がモチベートされて、本来業務に良い影響が出ることを期待しています。他のプロジェクトを手伝ってくれた同僚に「ピアボーナス」を送るという制度もあります。ピアボーナスを送ることで、手伝ってくれたことを社内に認知させるということに役立っています。関係者や上司からも「おめでとう」と言ってもらえ、意義を感じられるという効果があります。

ハイパフォーマンスなチームを作るキーワード「心理的安全性」

最後に人事評価の仕組みですが、必ず四半期に一度、新たな取り組みが目標に加えられます。売上やユーザ数を何%伸ばすとか、新たなサービスを始めるでも良いのですが、そういったことに取り組まないと評価されません。そういったストレッチゴールを達成するためのキーワードとして「心理的安全性」というものがあります。

過去にグーグル社内で調査した結果、パフォーマンスを出しているチームは、仲が良いチームでも、強いリーダーがいるチームでもなく、安心できるチームだとわかりました。新しい取り組みに失敗しても責められことなく、所属することで仕事の意義を感じられるチームです。グーグルのマネージャはどうすれば心理的安全性を与えられるかを考えています。

このようにして、グーグルでは、今の働き方を生み出したカルチャーを維持するためにトップから繰り返しメッセージを出し、クリエイティブな仕事をITとファシリティで支援し、ストレッチゴールを達成するための制度運用とチームマネジメントが行われています。

相村
心理的安全性というのは興味がありますね。電算システムでは働きやすくするために社員旅行や野球大会をやるなどしてきましたが、残念ながらそういうことはパフォーマンスとは直接の関係はない、ということなんですね。。

津谷
やり方は色々あるとは思うのですが、娯楽に限らずチーム同士のコミュニケーションを円滑化することは良いと言われています。過去に私のチームでも実施して面白かったのが、チームメンバー全員の得意なところ、不得意なところを話し合ってあぶり出してみる、ということです。自分では不得意だと思っていたことが、周りから見ると得意だと思われていたということもあったりして、メンバーから評価されていることが分かって居心地がよくなりました。

相村
なるほど。ありがとうございました。
では、PwCさんのほうで取り組まれたことというのを教えていただけますでしょうか。

良いものを提案するには本当に良いものを知る必要がある

草彅
PwCでは、今から20年前、既にフリーアドレスを導入していました。さらに、ノートパソコンとPHSを全員に貸与して、どこでも働ける環境を整えていました。その当時のことは私も知らないのですが、20年前にそれをやったのはすごいなと思います。そして今年になって、オフィスは丸の内に移転したのですが、そこでは G Suite を使って会議室の予約や、オープンスペースの中でも ハングアウト でテレビ会議がし易い小間仕切りを入れたりと、さらに近代的な働き方に対応したファシリティを備えています。
何が言いたいかと言うと、PwCは保守的なイメージで捉えられることもあるかと思いますが、新しい技術や良いものをお客様に提案してく仕事ですので、自分たちで使って理解をしていないと良い提案もできないわけです。

グーグルとはグローバルで業務提携したことをきっかけとして、 G Suite の導入に至りました。昨今、グーグルを始めとしたテクノロジー企業でAIや機械学習に力を入れられているお陰で、将来なくなる職業として会計士が上位にランクインしています。私たちはしっかり危機認識していて、 G Suite で仕事を効率化して新しい価値をどう作るかということを真剣に考えています。

ユーザ5500名規模の G Suite 導入を成功させた3つの工夫

私は1年前に G Suite を東京オフィスに導入するPMOをやっていました。導入を成功させるために私達が工夫したことを3つご紹介します。

1つ目は、G Suite 導入の事務局としては私を含めて5人いましたが、ユーザは5500名もいます。1人あたり1,000人を相手にするのは無理ですから、各部署にグーグルガイドというエバンジェリスト兼ヘルプデスク的な役割の方を総勢200名ほどアサインしていただきました。つまりユーザ部門に味方を作ってから導入するということですね。

2つ目は、パートナー(重役にあたる)のような声の大きな人たち使い方に慣れないがために「これは使えない」と周囲に発言してしまうと利用推進に支障をきたします。そこでパートナーの秘書の方々に G Suite をおぼえてもらって、パートナーが使い方に困っている時にすぐにサポートできるようにしました。

3つ目は、 G Suite は導入後でも続々と新しい機能が勝手に使えるようになっていくのが良いところですが、新機能を積極的に追いかけている人は多くありません。そこで、事務局からニュースレターを出して、 データ探索 や Gmail の自動メール作成等、便利な新機能で何ができるのかを伝えて、社内のWikiにも掲載していっています。そういった活動を通じて私達の働き方を効率化していっています。

建設現場の詰め所で Chromebook が大活躍

相村
ありがとうございました。では、ここで働き方改革のセキュリティについてどう考えられているか聞いていきたいのですが、先程宮西さんからスマホの会社支給はお話がありましたが、 Chromebook もかなり使っていらっしゃるようですね。これはセキュリティを考慮してのことでしょうか?

宮西
Chromebookは150台ぐらい入っています。建設現場の詰め所には現場監督と電気屋さん、塗装屋さんなど様々な職人さん、そしてフジテックの人間が一箇所で仕事をしているのですが、こういう現場では Chromebook が非常にありがたいんです。いろんな会社の人たちがいる環境で、万が一紛失しても Chromebook ならリモートからロック可能です。 また、Chromebook では直接動かせないWindowsアプリケーションはリモートアクセスのソリューションを使ったりして、建設現場ではかなり便利に使えています。多分グーグルの方は Chromebook が建設現場で重宝されるなんて夢にも思っていなかったと思うのですが(笑)。

Windowsパソコンのセキュリティが最も心配な理由

相村
詰め所のお話もセキュリティの大事さがよく分かる例でしたが、半数以上の方が外で仕事をされているということですから、会社として社外で働く人達のセキュリティはどのように守っていこうと考えていますか?

宮西
今日は大阪から新幹線に乗ってきましたが、ノートパソコンに付箋でBIOSパスワードを貼り付けている人を見かけました。こういったWindowsのモバイル端末が一番危ないと思っています。個人的にはモバイル端末はスマホと Chromebook に寄せていきたいと思っています。スマホであればMDMで管理できます。キーボードが必要な人は Chromebook にしてもらいます。憶えておくのはグーグルのアカウントとパスワードだけなので、付箋に貼り付けるようなことにはならないでしょう。紛失時には、社用スマホはフルワイプします。BYODの場合は、会社の Google アカウントだけをワイプするようにしています。Chromebook についてはリモートからロックをかけて使えなくすることができます。

津谷
今日はたまたまMacBookを持ってきていますが、 Chromebook も会社にあります。今日端末が壊れても、なくしても、どの端末からでもグーグルのクラウドサービスにアクセスして仕事が継続できます。今はデータはドライブに必ず保存していて、端末ローカルにデータを置いておくのが怖いという感覚になりました。私達の事業部ではMicrosoft Officeは利用していません。端末に依存しますし、ファイルそのものが誤送信等で漏洩してしまった場合、どこに行ってしまったか分からなくなるリスクがありますが、Googleドライブに保存しておけば、相手にはリンクしか送りませんので、実体はGoogleドライブ上に残り続けます。間違った相手にリンクを送っても、アクセス権がなければアクセスできません。

600人のセキュリティ技術者が守るグーグルのサービス

津谷
グーグルには、600名以上の高い技術を持ったセキュリティエンジニアがいて、彼らが G Suite や Google Cloud Platform のセキュリティを守っています。グーグルのクラウドサービスを使う前のユーザに、クラウドサービスを使う上で一番心配な点をアンケートで聞くと、セキュリティが1位なのですが、導入後にお客様にグーグルのクラウドサービスを導入して何が一番良かったかを聞くと、こちらもセキュリティが1位なのです。

宮西
海外拠点へのグーグルのサービス展開も担当しており、シンガポールとベトナムに先日導入しました。 Gmail を使い始めたら1日に何百通も来ていた迷惑メールとウィルスメールが一切来なくなったということです。つまり導入しただけで業務効率もセキュリティも向上したわけです。そのあたりがグーグルのセキュリティエンジニア、インフラ、機械学習の成せる業なのかなと思います。

草彅
PwC内では Gmail ってコンシューマー向けのサービスでしょ?セキュリティ大丈夫と言われることもありました。後は、オンプレではなくクラウドのほうが安全なのか?といった点で利用に難色を示す人たちがいます。PwCのグローバルとしては、そういった懸念点も含めて全て安全性を確認したうえで展開しているわけですが、セキュリティについては、安全か安全じゃないかというように明確に分けられる性質ではなく、ここまでを担保したから安全だと考えるんだというスタンスで説明するのが大事だと思いました。例えば、 Google Cloud Platform のデータはそのまま保存されているわけではなく、データを短冊切りにして世界中のデータセンターに分散して保存している、だから1つのデータセンターのデータが盗まれたところで情報が漏れるわけではないということ。それに比べて今までのようにオンプレにNotesのサーバを置いて自分たちで運用していくのとどちらが安全ですか?ということを説明しました。また、第三者機関が監査して、安全基準を満たしていると表明していると説明します。

G Suite が安全なのはわかったとして、じゃあ安全なサービスを私たちが安全に使えるかということですが、私は会社配付のThinkPadとiPhoneを持っていますが、この2台からのみVPN接続を前提に G Suite にアクセスできるようにしています。BYODは一般にまだ許可されていません。PwCはグーグルの利用者としては若干保守的なスタンスで臨んでいます。例えばChromeブラウザの便利なエクステンションについても、PwCが認めたエクステンションしか入れられないようにしています。

うまくいくチェンジマネジメントのポイント

相村
では、次に働き方改革をどうやって始めればうまくいくかについてお聞きしていきたいと思います。働き方改革の必要性についてはほとんどの企業が感じていながら、実施できない理由としては役員が本気ではない、という理由が多いようです。役員の巻き込みや、チェンジマネジメントについてはどうやって行けばよいでしょうか。

津谷
今までOfficeやNotesを使ってきた人に対して、これからはグーグルを使ってください、と言われたら誰でも嫌なはずです。私も今使っているスマホを別のものに変えてくださいと言われたら、設定やデータの移行が面倒だなと思います。新しい取り組みに対して抵抗感を感じるのは自然なことという前提に立って、グーグルではチェンジマネジメントの4つのポイントをお伝えしています。

1つ目は役職者から「変化を積極的に受け入れてこう」とアナウンスしてもらうことです。これによって推進しているチームも、後ろ盾があるのでやりやすくなります。

2つ目は組織分析です。何が課題で、何をどう変えれば良くなるのかがわからなければ改革すべき対象がわかりません。そこで社員一人ひとりから、課題は何か、良いものは何か、と考えを聞くことが大事です。やり方はアンケートでも複数人集めてインタビューするでも構いません。

3つ目はコミュニケーションです。人に何かを覚えてもらうためには、少なくとも7回同じことを言わないといけないという調査結果があります。便利な機能だから使ってください、と言われても、一度言われただけでは忘れてしまいます。トイレに張り紙を貼ったり、メールを何回も出したり、何度も目や耳に触れることによって定着しますので、社内マーケティング活動をしっかりやるということです。

4つ目がトレーニングです。実際に触ってみたり、活用できている人の使い方を見ることが最も効果的です。1000人以上従業員がいるような会社で実施する場合に効果的なのは、IT部門や推進事務局の人から教えるのではなく、ユーザ部門に先生を作るということです。グーグルを導入するのであれば、各部門に一人ずつグーグル先生になってもらい、メンバーを教育したり、わからないときの窓口になってもらうというやり方です。若い世代の人は昔からグーグルのサービスを使うことに慣れているので、そういう人に先生になってもらえば、シニアメンバーとのコミュニケーションが生まれるといった面も期待できます。

働き方改革の答えは現場にある。業務を観察しナンセンスを発見する

宮西
一般的にIT部門は事業部からの依頼を受けて仕事をしていることが多いと思います。例えばパソコン入れ替えてとか、ネットワークを早くしてくれ、といったことです。ただし、事業部からの希望を受けてやるということは、事業部側の発想の範疇を超えた結果が出ない、つまりイノベーションは生まれません。受け身にならずにIT部門の人間が現場に足を運んでみると、先程の話のようにホワイトボードに現場名を書いて電話連絡をしているというような本当の課題が見えてくるんです。現場は今の仕事のやり方に問題があるとは思っていませんので、IT部門にこの仕事を良くして欲しいとは絶対に言いません。だから私達IT部門の人間はできるだけ現場に足を運んで、現場のナンセンスを見つけて解決していくということを繰り返しやっていきたいと考えています。

働き方改革は現場に足を運んで、現場と心を通わせ、その結果課題が見つかって、ソリューションの実装という話なんです。この図のサイクルのスタートは、「足を運ぶ」から始めてください。よくある間違いは頭と手を動かすから入ってしまうことで、これが大外れになることが結構あります。先程津谷さんが言ったことと言い方を変えただけで、巻き込み・分析・コミュニケーションをやっているという点で、同じことです。

ソリューションを実装した時点では特定の現場の部門最適にしかなりませんが、そこで評判が良ければ横に広がり、いつの間にか会社全体の効果になっていくと考えています。

現場を助けたい、そんな気持ちを応援する上司がいれば改革は始まる

皆さんの会社のIT部門でも、現場の仲間を助けたいというモチベーションを持っている人がいると思います。そういう人を是非現場に出してあげてください。また、それを皆さんのような役職者の方が「行ってきて現場のナンセンスを見つけてこい、そして助けてやれ」と言って送り出し、後ろ盾になってやってほしいのです。私の上司のCIOの友岡がそういうタイプなので、私は年中現場に出ていくことができているわけですが、必ずしもそういうCIOがいる会社ばかりではないと思います。そこで、現場の営業部門でも技術部門でもよいのですが、部門長クラスのいいおっちゃん、おばちゃんがいると思うんです。その人たちに「ええやん、うちの部門に来てしばらく見てみいや」と言わせる、これで働き方改革の活動が初められます。そこで成果を出してこのプロセスが回っていく、ということをやってみて欲しいと思います。

相村
現場のナンセンスというのはどこの会社でもありそうで、面白い考え方ですね。

宮西
そうです。ナンセンスを発見する際によくある間違いをお伝えすると、現場に出た時に「何か困っていることありますか?」と聞いてしまうことです。そうすると相手は「困っていません」と答えます。先程も話をした通り、現場はホワイトボードで管理するのが問題だと思っていません。必要なことは皆さんの仕事の仕方を勉強させてくださいとお願いして「仕事を観察」することです。

百聞は一見にしかず。新しいツールは体験させるのが近道

草彅
PwCでMicrosoft Officeから G Suite に変わった時に、ツールが変わっただけで使い方は変わらないと思っていた人が多かったのですが、 スプレッドシート の同時編集で、実際に複数人のカーソルが同時に動いているのを見て、初めてすごいと感じてくれます。 ハングアウト の使いやすさも実際に体験してみて初めて理解できます。本当にITに明るい人であっても、話を聞くのと実際に見てみるでは理解の程度が違います。なので、ツールを導入する時は、体験してもらうことが大事だなと思います。それと、働き方変革というのは一過性のものではなく、継続的な取り組みをしていかないと効果がでないと思います。 G Suite の中には管理コンソールがあって、 G Suite をユーザがどのように使っているのかを細かく記録がとれます。私も各部門の活用の進み具合を確認するためデータをレポーティングツールに流し込んで見ると、活用が進んでいる部門、停滞している部門、使っていない部門が見えてきました。そのレポートをベースにヒアリングをかけてみると、一部のシステムでNotesのメールと連携しているところがあり、システムを使い続けるにはNotesのメールを使い続けるしかなかったという問題を発見できました。メール連携部分を Gmail に連携するように変更した後は、徐々に G Suite の利用率が上がってきました。そういう利用状況のモニタリングツールも使うこともツールの利用促進のきっかけを見つけることができますので、是非やってもらいたいと思います。

相村
そろそろ時間となりますので、最後に皆さんから一言ずつお願い致します。

働き方改革の目的とゴールを決めれば、ツールは揃っている

草彅
そもそも働き方改革と一口に言っても、会社や部門によって残業を減らしたいのか、付加価値を高めたいのか、ワークライフバランスの改善をしたいのか、目的は様々だと思います。しっかりとゴールを決めさえすれば、良いツールが世の中に揃っているので、後は使いこなして成功していただけると思います。

残業削減は業務改善では不可能。既存のやり方を捨てるレベルの変革を

津谷
最後に、社会的にも課題になっている残業削減を実現するにはどうすればよいかについてお話します。効率化をいくら進めても、限界はあります。例えば、資料作成という仕事を考えた時、一般的には誰かが起案して、資料作成の担当割をしてメールで依頼し、メールで送り返された資料を編集して、メールでレビューに回す、修正の指示があれば修正して再度レビューする、という文書作成のワークフローを一つ取ってみても、個々のプロセスをいくら習熟して効率化できたとしても残業が大きく減るほどの効果は期待できません。グーグルはそれであれば文書作成のワークフロー自体を無くせないか、という考え方をします。G Suite でドキュメントの共同編集ができれば、その中でディスカッションも編集もマージも承認も全て一度にリアルタイムにできて、資料作成時間は大幅に削減できます。残業削減や生産性向上に取り組むなら、個々の業務の効率改善を積み重ねるのではなく、ワークフローを変えるレベルの変革を起こす必要があると思います。

役職者の方は現場に出ていく人の後ろ盾になってほしい

宮西
今日のセミナーでは各社で働き方改革の推進者をやられている方、IT部門長、人事部門、様々なところから参加されていて、それぞれの取り組みがあると思います。繰り返しになりますが、取り組みを応援してくれる部門を見つけて、そこでまず成功させる、その活動が継続し、成功体験が横に広がることで大きな効果を実現できます。ここにいらっしゃる役職者の方は現場に出ていく方の後ろ盾になってあげてください。

相村
セミナーの終了予定時間を大きくオーバーしてしまいましたが、本当に貴重なお話をいただけました。パネリストの方々、ご来場の方々、長時間おつきあいくださり、ありがとうございました。

  • Google、Gmail、Google カレンダー、Google ドライブ、Google フォト、Google マップ、Google Play、Android、Google Cloud Platform、Chromebook および Chrome OS は、Google Inc. の登録商標または商標です。

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