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2012.07.01

「データベースのアシスト」を目指して
~企業ユーザが安心して使えるDBMS環境を提供~

「データベースのアシスト」を目指して~企業ユーザが安心して使えるDBMS環境を提供~

アシストでは設立当初より企業システムの中核であるデータベース管理システム(DBMS)の重要性を深く認識してきました。メインフレーム全盛の頃よりいち早く次の「オープン・システム市場」を見据え、1987年には後にDBMSのデファクト・スタンダードとなる「Oracle Database」の取り扱いを開始、また、ここ数年はオープンソースDBMSの支援サービスやDWH専用DBMSの提供など、お客様のニーズの移り変わりにいち早く対応してきました。今後も企業ユーザの皆様が安心してDBMSを利用できる環境を提供すべく「データベースのアシスト」を目指して活動していきます。

データベース製品の取り扱いの歴史


アシストのデータベース製品の取り扱いは1974年にメインフレーム用データベースであるシンコム・システムズ社の「TOTAL(トータル)」を販売したのが始まりです。

1969年6月30日、IBMが米国司法省との独占禁止法をめぐる裁判に破れ、ソフトウェアとハードウェアを分離して販売する方針であるアンバンドリング政策を発表し、パッケージ・ソフト産業の歴史が始まったばかりの時代でした。国内では依然としてソフトウェアはハードウェアの付属品であるという認識が強く、ソフトウェア購入費用が予算化されにくい時代でした。

また、当時のデータベースは技術力の高いユーザしか使えず、ユーザ企業も情報を1つのシステムに集めることに対してファイルが消失しないか等の不安を抱えていました。例えば、「TOTAL」のような初期のデータベース管理システム(DBMS)では、データ同士が互いに関連付けを示す「チェーン」と呼ばれる情報で結ばれており、コンピュータがダウンすると俗に「チェーンが切れる」状態になったり、端末からの通信が切断したのにデータベースのデータだけが更新されるなど、DBMSの内部メカニズムを完全に理解した技術者でなければ修復することは困難でした。

シンコム・システムズとの代理店契約解消となった1976年以降、アシストではパンソフィック社の「EASYTRIEVE(イージートリーブ)」やインフォメーション・ビルダーズ社の「FOCUS(フォーカス)」などの簡易言語やツールを主に取り扱う時期が続きました。

しかし、当時社長のトッテン(現代表取締役会長)はDBMSはシステム・ソフトの中核であり、DBMSを中心として様々なツールやユーティリティが開発されているため、DBMSを握ることがシステム全体、つまりユーザを握ることに他ならないと考え、1985年にコンピュータ・アソシエイツ社の「IDEAL(アイディアル)」、オープン・システムの時代に向かう1987年にオラクル社の「Oracle Database」の取り扱いを開始しました。

「Oracle Database」は、今でこそオープン・システム向けRDBMSのデファクト・スタンダードとなり、アシストの主力製品となっていますが、当時はメインフレーム全盛期の時代でした。アシストではメインフレームからオープン・システムへの変革を市場に啓蒙するため、1985年の「リレーショナル・データベースの時代だ」に続き、「オープン・システム革命」と題した顧客向けセミナーや、社員向けのメッセージを何度となく発信してきました。当時のアシストの売上はEASYTRIEVEやFOCUSなどメインフレーム向けのソフトウェアで構成されていたため、メインフレーム文化で育った社員の中から「UNIXに今すぐ切り替わるわけではないので、もっと穏やかな形で意見や情報を流すべきではないか」といった反発も起こりました。また、DBMSであるOracle Databaseは、簡便なツールではないため先行投資期間が必要で、利益を上げ始めたのは1990年代になってから、アシストの収益を支える基幹商品となったのは90年代半ばでした。

メインフレームに代わり、急速に発展を遂げたオープン・システムの市場では、システムの構成要素が部品化されて流通するため、ハードウェア、OS、データベース、開発ツールなど各構成要素の開発元が複数にまたがり、ユーザはいわゆるマルチベンダー・システムを構築することになります。特定メーカーの戦略に拘束されない利点がある一方、実装、運用、障害対処が複雑になるという問題が発生しました。

現在、このマルチベンダー・システムの複雑性に対する解決策として、仮想化ソフトウェア、アプライアンス(垂直統合型システム)、クラウド(IaaS、PaaS)の主に3つの方法が提供されています。

仮想化ソフトウェアではOSやデータベース、アプリケーション基盤などのソフトウェアをテンプレートとして保持することができます。このテンプレートを社内ITシステムの標準とすることで、自社設備に機材を設置してソフトウェアを配備/運用するオンプレミスの場合でも、オープンシステムの複雑性に対処できます。

アプライアンス(垂直統合型システム)とは、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた事前構成済み製品です。アプライアンスはハードウェアとソフトウェアをベンダーが1つの事前構成済みの製品として提供することで、オープン・システムの複雑性を解決します。このオープン・システムを利用した垂直統合型システムを、日経コンピュータ2010年10月27日号では「オープン・メインフレーム」と称する記事が掲載されました。アプライアンスを採用した場合、特定メーカーの戦略に拘束されないというオープン・システムの利点よりも、オープン・システムの複雑性の解決を優先した選択となります。なお、アシストでもいち早く2007年に自社ブランドにてハードウェアとOS、Oracle Databaseを組み合わせた準アプライアンス「DODAIスタック」をリリースしています。

クラウド(IaaS、PaaS)の場合、ユーザはITインフラをサービスとして利用することで、特にITインフラの実装時間を短縮し、運用負荷を軽減できます。また、従来のハードウェアとソフトウェアを資産として保持するのではなく、サービスの利用料を支払うという新たな調達の仕組みが提供されています。

ただ、クラウド利用でも特定ベンダーが提供するサービスを継続的に使うことになる可能性が高いこと、トラブル発生時の対応の大半をベンダーに依存することになり、ユーザ側での対処が限定的になるなどの課題はあります。

こうした変化の中、アシストでは、従来のOracle Databaseに加えて、オープンソースのDBMSと、DWH専用のDBMSの取り扱いを開始しました。

図1 アシストにおけるデータベース製品/サービスの取り扱い年表

※本文および表中の社名は当時のものです。

オープンソースのDBMS


2000年以降、消費者が情報を求め、かつ情報を発信するメディアとしてインターネットが急速に発展するにつれ、企業もWebサイト、ブログ、ソーシャル・メディアを利用して、直接、消費者にアプローチするように変化し、インターネット広告、ECサイト、ソーシャル・ゲームに代表されるようにインターネットを前提とするビジネスが拡大を続けています。このような、インターネットを利用した情報発信やサービスの仕組みは、サービスの良し悪しを非常に短い期間で判断できるため、ビジネスのアイデアをいち早く市場に投入して評価し、サービスの撤退も含め、次のアクションにつなげるサイクルを短くすることで、より良いサービスを生んでいます。そのため、サービスの初期コストを低く抑えること、次々と生まれるサービスに利用するソフトウェア資産の管理を簡素化する目的で、オープンソースのDBMSが多く活用されています。一般企業でも、インターネットを通じて外向けに情報を発信するWebサイトなどの仕組みでは、オープンソースのDBMSの活用が始まっているのではないでしょうか。

このような、オープンソースのDBMSを活用することでメリットを得ている先行企業の事例が増えてきたこと、CPUのメニーコア化が進み、CPUコアやCPU数によって算出される商用DBMSのライセンス料がハードウェアと比べて相対的に高くなってきたこと、加えてリーマン・ショック以降続く世界的な不況と円高により、グローバルで活躍する大手製造業を中心に、オープンソースのDBMSを活用するための取り組みが急速に広がってきました。

また、クラウド活用を検討している企業の中でも、クラウドに適したソフトウェアとしてオープンソースの検討が始まっています。

アシストでは2006年に「OpenOffice.org(オープン・オフィス)」を自社導入することでオープンソース・ソフトウェアの取り組みを開始しました。2006年9月にはOracle Databaseのパフォーマンス情報を診断するWebサービスの「パフォーマンス・セラピー」に「PostgreSQL(ポストグレスキュエル)」を採用し、3年の自社運用実績を活かして2009年10月よりPostgreSQLのサポート・サービスを提供、2011年10月にはPostgreSQLをベースとし、利用しやすい管理ツールやユーティリティとOracle Databaseとの互換性機能を有する「Postgres Plus(ポストグレス・プラス)」の取り扱いを開始しました。さらに、Webサービスのシステムにて採用されているDBMSとしてはデファクト・スタンダードとなりつつあるコミュニティ版の「MySQL(マイエスキューエル)」と、MySQLのブランチである「MariaDB(マリアディビー)」のサポートを同年12月から開始しています。

また、オープンソースを活用している先行企業だけでなく、一般企業でも安心してオープンソースのDBMSを利用できる環境を整備すること、先行企業の成功事例を社会に紹介することを目的とした「PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)」の設立に参画しました。PGEConsは、PostgreSQLを利用したシステム・インテグレーションやサービス、サポート、教育などのビジネスを提供している競合各社や実際に利用するユーザ企業がPostgreSQLの普及を目的に組織されており、オープンソースならではの取り組みとなっています。

DWH専用のDBMS


社会の成熟とともに人々の価値観や嗜好が多様化することで、ヒット商品が生まれにくい状況の中、企業は商品の売上分析、在庫分析だけではなく、顧客の商品購入に至る行動分析や、商品購入に至らない行動履歴の分析なども行うことで、未来のアクションにつながる情報を得ようとしています。POS履歴、在庫履歴、顧客の行動履歴など、大量の情報の中から次のアクションにつなげるための情報を素早く分析するためには、従来のRDBMSではビジネスで求められるタイミングで必要な情報を分析することが困難なため、専用に設計されたDBMSが必要となります。現在、各ベンダーは、ソフトウェアとハードウェアの特長を組み合わせることで、非常に大量の情報を素早く分析するDWH専用アプライアンスを提供しています。ただ、DWH専用アプライアンスは非常に高価であり、活用できるのは業界大手企業が中心となります。しかし、中堅/中小規模の企業の多くでも、情報分析を通じて自社の業務を改革するためのニーズが広がっています。

より多くのユーザに対し、自社業務の改革を実現できるシステムを提供するためには、DWH専用に設計されたDBMSをソフトウェアとして広く提供する必要があると考え、アシストでは2012年3 月よりカルポント社の「InfiniDB(インフィニディビー)」の取り扱いを開始しました。

以上のように、現在アシストはOracle Databaseに加えて、2009年以降オープンソースのPostgreSQL、MySQL、MariaDB、オープンソース・ベースのPostgres Plus、DWH専用のInfiniDBと、リレーショナルDBMSの選択肢を広げ、DWH用途のDBMSもラインナップに追加し、Oracle Databaseで培ったミッション・クリティカルなデータベースのサポート・スキルやノウハウをオープンソースのDBMSやDWH専用DBMSに展開しています。

アシストのDBMS分野での顧客提供価値


このようなOracle Database以外のDBMSの取り扱いに向けた取り組みの過程で、社内には、今まで存在しなかったDBMS知識やノウハウを蓄えることができました。特に、1987年より25年の取り扱い実績を誇るOracle Databaseの優位性や、Oracle Databaseでしか実現できない価値を再確認できたことは大きな成果だと考えています。

オープン・システム向けRDBMSのデファクト・スタンダードであるOracle Databaseは、これからも企業の基幹システムでの活用が続いていきますので、Oracle Databaseを徹底的に活用し、適材適所でOracle DatabaseとオープンソースのRDBMSを使い分け、DWH専用DBMSを組み合わせる支援を提供することで、アシストにしか提供できない価値をお客様に届けることができると考えています。

図2 アシストのDBMS分野での顧客提供価値

また、オープン・システムの複雑性を解消する仮想ソフトウェア、アプライアンス、クラウドは、今後も発展することが予想されます。例えば、クラウドでは「OpenStack」など、クラウド基盤をオープンソースで実現することで、特定のクラウド・ベンダーに依存しないクラウド基盤を提供する取り組みが始まっています。そのため、仮想ソフトウェアやクラウド上で利用されるオープンソースのDBMSをITコスト削減の解決策として捉えるのではなく、オープンソースのDBMSを活用する企業に利益貢献できるサポートの仕組みとして、採用数に関わらずサポート費用が一定となる会社契約などのサポート体系を充実させたり、アプライアンス市場にはOracle Database ApplianceのようなOracle Databaseでしか提供できない価値を提供していきます。また、Oracle Database Firewallなど、様々なDBMSに対応したDBセキュリティやDBMS管理のソフトウェアを提供し、DBMS製品の選択/活用支援と、ミッション・クリティカルなDBMS向けのプロアクティブ・サポートである「アシストあんしんサポート」などの独自のDBMS保守サポートを充実させることで、「データベースのアシスト」として、これからも安心してDBMSを使い分けできる環境を提供していきます。

図3 アシストが提供するデータベースのラインナップ


  • Postgres Plus は、EDB Postgres の旧製品名です。

執筆者のご紹介

アシスト岸和田 隆

岸和田 隆
ビジネス推進本部

1995年入社。Oracle Database の研修講師、フィールドサポート、新バージョンの検証を経て、2007年 自社ブランド「DODAI」の準アプライアンス製品の企画・開発、2009年 PostgreSQL、2011年 EDB Postgres、MySQL /MariaDB、2012年 Oracle Database Appliance、2016年 Delphix の事業立上を経験。 現在は「データベースのアシスト」を目指した事業戦略やプロダクトマーケティングを担当している。
趣味:フットサル、ゴルフ、スキー、キャンプ、子供のサッカーチームのカメラマン担当。

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