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2015.03.13

W3C仕様勧告で加速する企業でのHTML5利用

W3C仕様勧告で加速する企業でのHTML5利用

2014年末、ついにHTML5の仕様がW3Cより勧告として公開されました。前バージョンのHTML 4.01から実に15年ぶりの改訂となります。ドラフト発表からHTML5は多くの時間をかけて議論がなされてきました。その間の周辺要素の技術発展や処理速度の向上により、HTML5の適用範囲も単なるWebサイトやモバイル・アプリケーションから拡がりを見せています。今後、エンタープライズ向けの業務アプリケーションなどへ広く適用されていくことも期待されます。

さらに、昨今は、HTML5を利用するWebサイトやモバイル・アプリケーションを以前に比べて多く見かけるようになりました。これにはHTML5のAPIの高機能化、また周辺技術であるWebSocketの実用化等が大きく寄与しています。HTML5により企業のシステムはどのように変わるのでしょうか。今回は、本格的に普及の始まったHTML5の、エンタープライズ分野への発展の可能性について述べたいと思います。


1. HTML5による変化


始めにHTML5について簡単に触れたいと思います。HTML5はこれまでのHTML4.01をベースに以下の点が特に強化されています。

  • 1) ブラウザ互換性の向上
  • 2) APIの高機能化


1) ブラウザ互換性の向上

W3CはHTML5を「1度書けばどこでも展開可能」にすることを目指し、策定作業を進めてきました。従来のHTMLと大きく違うのが、HTML5ではHTML文書を解釈するブラウザ側の挙動についても仕様として定義している点です。これまでは特定のブラウザでしか稼働しないWebアプリケーションが数多く存在していましたが、今後は仕様に則り、急速に互換性が高まることが期待されます。

2) APIの高機能化

特筆すべきはマルチメディア関連のAPIの高機能化です。わかりやすいところではCanvas、Audio、Video等の要素が挙げられます。従来は何らかのプラグインを利用する必要があった音声や動画の再生を、Audio、Video要素等を用いることでプラグインなしで行えます。この他にもStorage APIはローカルのファイル操作を可能にしたり、Geolocation APIによってユーザの位置情報を利用できるようになります。

特にHTML5の発展に大きく関与する中核技術として考えられる技術について、もう少し掘り下げます。

Canvasによる描画


従来のHTMLでは画像を表示する場合、JPEGやGIFなどのイメージ・データをimgタグを用いて配置していました。一方、HTML5ではCanvasタグにより描画領域を設定することで、その名のとおりキャンバスのように任意の画像を描画することができます。ただしCanvasは本当に描画領域を与えるだけであり、そこに描画するためにはスクリプトが必要です。通常はスクリプトとしてJavaScriptが利用されます。スクリプトさえ使いこなせれば、これまでFlashのようなプラグインを必要とした複雑な動作を、HTMLのみで表現することができます。

WebSocketによる高速通信


また、現在はHTML5から独立して仕様策定されていますが、HTML5を語る上で非常に重要な周辺要素と考えられるのがWebSocketです。WebSocketはCanvasに複雑で動きのある描画を行う際に大きく関わります。

従来のHTTP通信は、都度リクエストをクライアントから送り、レスポンスを受け取ります。一方WebSocketは、1度接続を確立すると、その後は切断をするまで接続されたままの状態となり、通信手続きを意識することなくデータのやり取りが可能です。この方式の主な特徴/メリットは次の3点が挙げられます。

  • 通信の度にHTTPヘッダを付与する必要がなく、トラフィックが削減される。
  • 操作(クリック等)とは非同期にメッセージの送受信が可能。
  • 双方向通信が可能。


これまでもXmlHttpRequestにより非同期通信を実現してきましたが、HTTP通信であるが故に、常にクライアント側のリクエストが発信点であり、双方向通信までは実現できませんでした。WebSocketは接続が確立された後は、双方向に通信を行うことができるため、サーバ側からのプッシュ通信に対応している点が従来とは大きく異なるポイントです。またこれらの通信は操作とは非同期に送受信されるため、通信の高速化も併せて実現します。

これらの技術によって、Webの世界で完全な双方向コミュニケーションが成立するということは非常に注目すべき点と考えます。

WebSocketによる接続イメージ

図1. WebSocketによる接続イメージ

2. 期待が先行したHTML5


HTML5を用いることで、開発者は「1度書けばどこでも展開可能」を実現できます。また、利用者はブラウザへのプラグインのインストールや、ブラウザの使い分けといった煩雑さから解放されます。利用するデバイスを気にすることなく、パソコンであれ、モバイル・デバイスであれ、様々なアプリケーションを利用できるようになるメリットは計り知れません。

HTML5は2008年にドラフトが策定されて以来、スマート・デバイスの急速な普及に後押しされる形で、Webアプリケーションのマルチ・デバイス化とマルチ・メディア対応を実現する手段として大きな期待を集めました。

従来、動きのある先進的なWebサイトでは、コンテンツを表示するために様々なプラグインを必要としますが、すべての環境でそのサイトを作成者が意図したとおりに表示できるとは限りませんでした。

一方、HTML5を用いると、プラグインを利用せずに同様の表現が可能です。モバイル・アプリケーションも同様で、従来は異なるプラットフォームごとに、対応するネイティブ・アプリケーションを開発する必要がありましたが、HTML5によって、どのようなプラットフォーム上でも稼働するアプリケーションを開発できるようになりました。

しかし、当時、HTML5に対応するブラウザは増えていたものの、HTML5の仕様にはまだ曖昧な点が多くありました。結果、ブラウザごとの挙動の差異、JavaScriptの処理スピードの遅さ等が問題となり、HTML5は期待されたほどの爆発的な広がりは見せませんでした。プラグインの利用やネイティブ・アプリケーションの開発をする方が優位、という面が色濃く、HTML5の利用は様子見の状態が続きます。一部の先進企業でも自社ホームページでの利用、業務アプリケーションのマルチ・デバイス化等の活用が検討されましたが、既存のものをHTML5化するための技術が確立されておらず、改修工数も嵩むことから、実際に実施された数は多くないように見受けられます。

3. HTML5仕様策定による発展の広がり


企業において、これまでも多くのシステムがクライアント/サーバ方式からWebアプリケーションへと移行されています。これはWeb化によって個々の環境に左右されないシステムの構築を目指す変化でしたが、多くのシステムはブラウザやプラグインの課題により、環境の差異を吸収するにはいたっていません。

企業はクライアントPCやブラウザを固定化することなどで対処してきましたが、モバイル・デバイス等の普及でその対応にも限界が生じてきました。しかし、現在HTML5は先に述べたCanvas要素やWebSocketを始めとして安定したパフォーマンスを発揮するようになりました。今ではほとんどのブラウザがバージョンアップを重ね、WebSocketやHTML5にほぼ準拠した動きをします。

この変化を受けて、今後、これらの企業システムの多くが従来の環境に加え、マルチ・デバイス化までできる可能性を秘めています。それらすべてのブラウザで汎用的に稼働するとなれば、HTML5の採用はさらに増えていくと考えられ、非常に重要な転換点になると言えるでしょう。

4. HTML5の活用シーン


その1つのポイントが一般的な業務アプリケーションを含めた既存システムを、いかに手軽にHTML5に対応させるかという点だと考えます。

弊社ではEricom AccessNow というHTML5を利用したリモート・デスクトップ製品を取り扱っていますが、いち早くHTML5対応ブラウザのみでリモート・デスクトップ・クライアントを実現した製品です。これまではネイティブ・クライアントの利用が常識だったリモート・デスクトップを、Webブラウザだけで完全に利用できるようになります。この製品はデスクトップ全体だけではなく、既存アプリケーションが実行されている画面だけをHTML5で転送することもできます。この機能は先述した既存アプリケーションのスマート・デバイス対応の簡素化にも一役買うことができそうです。

Ericom AccessNowの利用イメージ

図2. Ericom AccessNowの利用イメージ

クライアントとしてHTML5に対応したブラウザがあればすべてのプラットフォームで同じシステムを利用できるということは、開発者にも利用者にも非常に好ましい変化です。ブラウザだけがあれば良いので場所も選びません。まさに、「いつでも」「どこでも」ネットワークに繋がったブラウザさえあれば、ほとんどの企業システムが利用できる日がすぐそこまで来ています。先にご紹介したEricom AccessNow を皮切りにデスクトップ仮想化市場ではこぞってHTML5に対応してきています。この市場では間違いなく今後のスタンダードな接続方式の1つになると考えられます。また、その他の分野でも今回の仕様勧告を契機として、今まで以上にHTML5の利用範囲が拡大していくことは間違いありません。弊社もこの変革の波の最先端に立ち、エンタープライズ分野においてHTML5による利便性を皆様にお届けする活動を続けていきたいと思います。

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執筆者のご紹介

アシスト有田 卓也

有田 卓也
ビジネスインフラ技術本部

2010年入社。仮想化ソフトウェアの技術者として、提案/設計/構築などの業務を担当。現在はフィールド業務の割合が減り、社内での技術検証などに力を入れている。連休に沖縄に行くのが楽しみで毎日の業務をこなす。

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