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2022.05.24

IT企画者の方、必見! 不透明な時代、企業価値を創造するために活用してほしいツールとは

IT企画者の方、必見!不透明な時代、企業価値を創造するために活用してほしいツールとは


本記事は、筆者がご訪問する「IT企画を担当される方々」に向けて、ビジネス戦略に沿ったIT企画をどのように立てていくかのヒントにしていただければと思い執筆しました。


はじめに


どの企業においても、自社のビジネス戦略を実現するためにシステム化を行います。企画の段階で投資対象となる業務を決め、ITへの要件定義を行い、実際の設計・構築、運用・保守へと進みますが、企画と一貫性のあるシステム化ができれば、現場の業務を改善しビジネスを支援するものになるはずです。つまり、ビジネス戦略が実現され、IT投資を回収できたことになります。

ビジネス戦略とIT企画

しかし、ビジネス戦略とそれに付随するIT企画(プロジェクト)は、複数が並行稼働し、それぞれシステム化が行われるということが一般的です。それぞれのプロジェクトでIT企画と一貫性のあるシステム化が成されるべきなのは当然のことながら、同じ企業の中で、システム化されたもの同士に一貫性がなければ、重複や矛盾が生じて整合性がとれなくなり、システム間連携が難しくなることが、以下の図からもお分かりいただけるのではないでしょうか。

ビジネス戦略とIT企画(複数)

上記を解消するためには、よりどころとなる青写真が必要です。常に青写真に基づいてシステム化を行えば、一貫性、整合性の問題だけでなく、新たな課題への迅速な対応、これまでにない企業価値の創造ができるようになります。

概念データモデルに沿ったビジネス戦略とIT企画

本記事では、この青写真の作成方法と活用方法についてご紹介します


企業価値創出の源泉はデータにあり


筆者がお会いする大手企業のIT部門の企画担当の方々は、これまでも、ビジネス戦略実現のために「現場の業務改善」を中核に据えて、合理的にシステム化を推し進め、自社の戦略実現をITで支援されてきました。システムという観点では各社充足した状態で、数百におよぶシステムを保持している企業もあります。

しかし、ここ数年で、ビジネスにおけるITの役割が明らかに変化しました。今、IT企画に求められているのは、AI、クラウド、IoTといった最新テクノロジーへの対応はもちろんのこと、個別の業務改善を中核にすえた今の状態から脱却し、これまでとは異なった視座で企業の業務全体を見渡すこと、そして、業務を連携させ一気通貫で提供できるサービスや、他社の業務もうまく組み合わせシナジーを効かせたサービスを迅速に生み出せるようシフトしていくことです。

ITを駆使した新しいビジネスモデルの台頭や、デジタルを核に異業種企業間で業務提携を行う事例などもありますが、これらを支えているのがビジネスで起きた事実を記録した「データ」であることは間違いありません。

企業価値の創出に「データ」が重要であることはもはや常識となっており、どの企業もデータを集め、蓄積し、そのデータを活用して、現状分析から次の手を打つというサイクルを確立することで、強いビジネスモデルを構築しようとしています。データを蓄積するためのデータ活用基盤や、それを管理するデータマネジメントに注目が集まっているのは必然といえるでしょう


IT企画の際に是非一度検討していただきたいこと


データの重要性についてはどの企業の方も認識されていますが、筆者がお会いするIT企画の方々が一番悩まれているのは、どのようなデータを活用するとビジネスに有効なのか、つまり「企業としてどのデータに投資すべきか」というテーマです。

筆者はこれまでお客様企業のデータ活用を中心に支援してきた中で、この「企業としてどのデータに投資すべきか」を決めるためには大きく2つのポイントがあると考えています。


1.IT企画は、機能ではなく、業務と業務で使うデータに着目する


システムを中心に考えると、ビジネス戦略に変化が生じた場合、システムも変更を余儀なくされます。しかし、「業務」は企業の機能(例:計画・製造・販売)に沿って行うものなので、それ自体が変化することはほとんどなく、社内外のビジネス環境の変化も受けにくいという特徴があります。

システム化したものは長く使える道具でなくてはなりません。そのためには、ビジネス環境の変化を受けにくく、変化の少ない「業務」と業務で発生する「データ」に着目します。


2.業務と業務で使っているデータを俯瞰できるようにする


システム化には複数の手段・手法があるため、IT企画はどうしてもシステムの機能から考えがちです。その結果、登録方法や管理方法はシステムごとに異なるが、同じような意味合いのデータが企業内に複数散在し、データの整理・統合をしない限り、データを今すぐ活用したい、何か新規に事業を起こしたいと思ってもすぐにフル活用できません。つまり、冒頭の図版でご紹介した、複数のシステムで矛盾があり整合性がとれない状態になるのです。

しかし、どんなシステムでも突き詰めて考えてみると、「データを登録する」「データを活用する」の2つしかありません。本質的に1つの事実は企業内で1つのハズなので、発生元のデータは1つ、あとはデータの利用先になるはずです。重複のない最小限のデータ範囲に対してシステム化を検討できれば非常に合理的です。

そこで、企業全体の業務と業務間で使われているデータを全て洗い出し、業務とそこで使われるデータを全体的に俯瞰してみることをお勧めします。

俯瞰してみることで、既存のシステムにデータの重複や、発生元が複数あること、業務間でのデータの繋がりがうまくいっていないことなどが分かります。これを整理・統合したうえで、鮮度の高い正確な1つのデータにしておき、必要な人が必要なときに必要な単位ですぐに取り出して使える仕組みを作っておけば、フル活用ができるようになります。また、どのデータに投資して企業価値を創出するかも決められるようになります。

ここまでの説明で、どのデータに投資するかを決めるには「業務とデータの俯瞰図が重要である」ことがお分かりいただけたかと思います。以降ではその手法をご紹介します。


俯瞰図は古くからあるモデリング手法で作れる


昨今、DXの影響もあり、ビジネスの構造を可視化するビジネスモデルキャンパスや、顧客体験を可視化するカスタマージャーニーマップなど様々な業務整理ツールが登場しています。しかし、このような新しいツールを導入・習得しなくても、IT部門の方には馴染みが深く、古くからある手法で、業務とデータの関係を見える化できます。

アシストでは、お客様企業のIT企画を支援するために、データベース設計で広く知られた手法である「データモデリング」をビジネスと絡めて発展させた「概念データモデリングサービス」を提供しています。

実際に「概念データモデリングサービス」を採用いただいた、あるお客様企業では、当初はBIツール導入やデータウェアハウス構築という狭義のデータ活用課題の解決に向けてプロジェクトを進行中でした。この先も続々とシステムリリースを予定されていた矢先に、本サービスをご紹介したところ、「システム化の目的は、会社を良い状態にすることだ。場当たり的に行うのではなく、長期を見据えた計画には、ここで一度概念データモデリングで棚卸することが必要不可欠」とプロジェクトの優先順位を組み換えて、概念データモデリングの実施に踏み切りました。

IT企画の最初の段階から、概念データモデリングを実施できればベストです。しかし、このお客様のように、複数のプロジェクトが並行稼働する中で、一旦業務とデータを棚卸して俯瞰図を作成できれば、以降、長期にわたりその俯瞰図をIT企画の青写真として活用していくことが可能です。

ここからは、IT企画担当者、DX企画担当者の方々に是非知っていただきたく、具体的な概念データモデリングの実施方法と、いかにIT企画に活用していくかについてご紹介していきます。


概念データモデリングの具体的な実施方法


概念データモデリングでは、誰もが一目で俯瞰できるよう、企業全体の活動とデータの関係を図式化します。実際には以下の2つを作成します。

・業務機能階層図
・概念データモデル

作成は以下の3段階で行います。

(1)業務機能階層図を作成する。
(2)業務に付随するデータを大きな単位で洗い出す。
(3)概念データモデルを作成する。

以降で(1)から順に詳細な流れをご紹介していきます。


(1)企業活動を見える化する「業務機能階層図」を作成する


最初の作業が「業務機能階層図」の作成です。ここでは、投資先やIT化の議論のベースとなる業務を、経営計画、経営戦略、商品戦略、販売管理といった大きな括り(階層1)から具体的な活動(階層4)まで、4段階で漏れなく洗い出し、企業全体の活動を見える化します。この業務の洗い出しには、実際に業務を行っている現場の担当者の方の協力が不可欠です。

業務機能階層図

ここで、アシストの経営計画(階層1)を例に、業務機能階層図の作成イメージを簡単にご紹介します。

アシストはパッケージソフトウェアの販売を行っているため、「経営計画」(階層1)の1つに「IT動向調査」(階層2)があります。「IT動向調査」は「製品動向調査」、「他ベンダー動向調査」、「新技術の調査」に細分化され(階層3)、「製品動向調査」だけに着目すると、「取扱製品市場について調査する」「取扱外製品分野の市場を調査する」といった具体的な活動があります(階層4)。

どの業務も上記のように4階層まで分解して洗い出していくと、最終的には企業全体の「業務機能階層図」が完成します。

「業務機能階層図」で企業のビジネス全体を俯瞰できるようになるため、部門をまたがって同じような業務を行っていないか、本来やるべき業務が欠落していないかなどを確認でき、これだけでも組織間での業務改善などに繋げることができます。

また、一度に全部の業務を棚卸するのが大変であれば、最初は投資対象が明確となっている範囲に絞り、段階的に全業務に広げていくといったやり方も可能です。


(2)業務ごとに管理すべき「データの集合」を洗い出す


業務全体を4階層で洗い出したら次はデータの洗い出しです。この作業では、4階層目の具体的な業務内容に着目し、業務に付随して発生するもの全てのデータを洗い出します。

システムに着目してデータを捕捉すると、システムで管理されていないデータはシステム化の対象外とされ易くなります。しかし、概念データモデリングでは、本来管理すべきだがデジタル化されていないデータ、オフィスソフトで管理しているデータ、IoTやSNSなどの外部データ、動画や画像といった非構造化データなど、業務に関係するものは全て捕捉します。

また概念データモデリングでは、企業や組織でビジネス上管理しなければならないデータを細かく洗い出すのではなく、例えば、顧客、従業員、商品といった「データの集合」で洗い出します。このデータの集合を「エンティティ」と呼びます。エンティティには、顧客や商品のように人・モノ・金を表すリソース系と、製造管理、販売管理といった業務活動そのものを表すイベント系の2種類があります。

業務機能階層図とエンティティ


(3)概念データモデルを作成する


ここでは、(1)で作成した業務機能階層図と(2)で捕捉したエンティティを用いて、当該企業が管理対象とした業務(イベント系エンティティ)とモノ・人・お金(リソース系エンティティ)、そしてその関係性(リレーションシップ)を、四角い箱と線を使って図式化します。この図式化されたモデルがER図(※)で、成果物が概念データモデルとなります。
※エンティティのEとリレーションシップのRをとってER図と言います。

この作業はIT部門が主体的に担います。業務とデータの関連性への理解が深まる非常によい機会にもなります。

具体的には、(2)で捕捉したエンティティを四角い箱で図式化し、イベント系エンティティが発生する順に左から配置していきます。そして配置されたエンティティ同士のリレーションシップを線の描き方で細かく表現します。この作業は、データベース設計で一般的に利用されているデータモデリングツールを利用すると便利です。

業務機能階層図と概念データモデル

例えば左側の業務階層図では営業(階層1)の活動計画策定(階層2)に、「エリアを割り振る」という具体的な活動(階層4)があります。この活動には「エリア」というリソ―ス系エンティティと「エリア割り振り」というイベント系エンティティがあります。右側が概念データモデルになりますが、この例では、発生順に並べた「エリアを割り振る」エンティティと「エリア」エンティティとを、リレーションシップ(線)で結び、エリア担当という役割を表現しています。

【コラム】 アシストの概念データモデルをER図で作成してみる

ER図を使って概念データモデルをどう作成するのか。アシストの業務の一部を利用して少し具体的に解説します。

アシストでは、お客様のビジネス課題の解決手段となるソフトウェア群とそれらを使いこなすサービスを提供しています。これを達成するため、アシストの業務機能階層図の4階層目には、「アシストの営業担当がお客様に課題をヒアリングする」という項目があり、その業務で管理対象となるエンティティには「お客様」「営業」「課題ヒアリング」の3つがあります。概念データモデルでは、この3つのエンティティの関係性をリレーションシップ(例:1:1なのか1:多なのかという数の設定、どこがキーとなって関連づけられるのか等)の線の描き方で細かく表現します。

ER図説明

「課題をお客様からヒアリングする」の後には、課題に対する提案を行い、見積もりを作成しますが、商品を見積もる段階で商品データが関連します。そのため、商品エンティティと見積もりエンティティとの関係性をリレーションシップの線で、それぞれの見積もりには何度も同じ商品を選択できると、見積もりに関わるルールを細かく表現します。

ER図説明02


(1)~(3)の作業により、その企業の「業務」と「データとデータの関係」がすべて分かる2つの俯瞰図(「業務機能階層図」と「概念データモデル」)ができあがります。

俯瞰図の完成


IT企画に必ず役立つ、業務機能階層図と概念データモデルの活用方法


ここからは、業務機能階層図と概念データモデルがいかにIT企画に役立つか、いくつかの活用例をご紹介します。


(1)現状の問題・課題を浮き彫りにするツール


業務機能階層図と概念データモデルにより、業務とデータの全体像を俯瞰できるため、現状を正確に認識できるようになります。

見えてくる問題・課題

まず、IT企画に焦点をあてると、以下を確認できます。

1. ビジネス戦略として投資対効果の大きい箇所(業務、データ)が議論できる
2. 複数のIT企画が同時進行している場合、企画間に矛盾がないか、二重投資がないかが分かる(対象業務の重複やデータの重複)

また、次のような現象も確認できます。

3. 業務の流れを上から下まで洗い出していくので、経営やユーザー部門からの要求を業務に当てていくと、複合的な関連性が明確になり、想定の甘さや見落されている業務が分かる(本来一体的な検討が望ましいことが、異なる部門から異なる業務範囲で要望としてあがるケースや、複数の要望を重ねて見ると、見落とされている業務が見つかるなど)

4. システム化されていない業務、管理できていないデータがあるかどうかが分かる
5. 業務間でうまくデータが連携できていない箇所を特定できる
6. 複数のシステムで同じようなデータを扱っており、データに不整合が生じていることが分かる

このように、業務機能階層図と概念データモデルは、現状の問題や課題を浮き彫りにするツールとして活用できます。


(2)ステークホルダーへ明確に説明でき、認識を共有できるツール


システム化には大きな投資が伴い、関係者を大勢巻き込んだプロジェクトを発足させ、システム完成後の業務プロセスを決定することにもなるので、戦略を決めた経営層や実現する業務担当者といったステークホルダーの理解が欠かせません。IT部門が企画について説明する際に、機能面にフォーカスしてしまうと、あいまいさを残した状態でシステム化が進み、後々プロジェクトがとん挫してしまうことにもなりかねません。

ここで業務機能階層図と概念データモデルを利用することで、以下の状態を得られます。

・IT企画担当
 IT企画の対象(投資対象)、その影響範囲(業務面・ビジネス面)とトレードオフについて明確に説明できる

・ステークホルダー
 戦略やビジネス課題の実現イメージが明確になる

ステークホルダーと認識を共有できる道具

また、関係者が同じ課題・問題認識を持つことができるため、プロジェクトの途中で業務改善とIT投資についての議論が再燃しても、立ち返ることを可能にします。


(3)ビジネス戦略とブレないシステム構築を可能にするツール


システム化はビジネス戦略に沿ったものでなければなりません。ここでは概念データモデリングによりビジネス戦略とブレないシステム構築の秘訣についてご紹介します。


経営方針に沿ったシステムだと言い切れる

IT企画はビジネス戦略に合わせることが大前提であり、ビジネス戦略にあわせて、IT投資の対象(IT企画対象)が決まります。概念データモデリングにより、ビジネス戦略に沿ったシステム化であることを証明できます。


優先順位や劣後順位を決められる

ビジネス戦略と業務機能階層図および概念データモデルをマッピングすることで、優先順位(やるべきこと)、劣後順位(やらなくてもよいこと)が明確になります。世の中は不確実性が高くスピード重視となっているため、この劣後順位を判断できることは、企業にとって大きなメリットになります。


「ビジネス戦略」と「業務」と「システム(データ)」の一貫性を検証し説明する

例えば、ある業務を新規に立ち上げたいという場合に、業務機能階層図と概念データモデルから、必要なデータが揃っているかどうかが分かります。なければデータの補填が必要です。また、必要なデータに課題があることが発覚した場合は、業務機能階層図と概念データモデルから、どこの業務でそれが発生し、どの業務に影響が生じているかを特定します。このように、業務機能階層図と概念データモデルを使って、業務とデータが相互連携できている状態にすることができます。

ビジネス戦略、業務、システムの一貫性を検証


(4)全体最適化を実現できるツール


各部門からの要求でIT企画が提案されると、個々の要求が企業全体のどの範囲を対象にしたものなのかが把握できません。そこで、異なる組織、異なる業務それぞれから発生したIT投資要求をまとめ、複数のIT投資要求の整合性や優先順位を検討しなければなりません。

全体最適化を実現できる道具

ここでも業務機能階層図と概念データモデルを使って、その中に、各部門から寄せられたIT投資要求をマッピングすれば、IT投資の観点で全体を調整できます。


(5)中長期のIT企画を立てるためのツール


ビジネス戦略というのは時間の経過とともに変化していくものです。すでに立案していた計画は、常に新たなビジネス戦略やビジネスを取り巻く環境に柔軟に対応していかねばなりません。

業務機能階層図および概念データモデルを利用することで、以下が可能になります。

・中長期にわたり、全体最適・個別最適のバランスをとりながら検証・システム化できる
・全体が俯瞰できるので、優先順位を組み替え、柔軟に計画を変更できる

中長期のIT企画を立てるための道具

また、業務機能階層図および概念データモデルを見直しながら常に最新化していくことで、長期にわたり企業の青写真として利用し続けることができます。


(6)顧客起点で必要データを説明できるツール


これまで、どの企業においても、基幹システムにあるデータなどをベースに、生産計画や顧客分析が行われてきました。ところがインターネットサービスでは、顧客の購買履歴や閲覧履歴をデータとして持つことで、リコメンドなど一歩進んだサービスが提供できるようになりました。さらにIoTでモノからデータがとれるようになったことで、ブレーキを踏む回数でドライバーの運転のくせが分かるといった、非常に細かい分析も可能になってきました。

活用できるデータが増え、顧客の行動を細かく分析できるようになれば、店舗の商品陳列を変えたり、カートの中身から推測し商品をリコメンドしたり、時間帯や集客状況で自動的に値段を変動させたり、運転に合わせて保険を紹介したり、といったように、顧客の好みや行動に応じたきめ細かいサービスをどんどん開発することができるようになります。

また自社にないものは市場データを取り込んだり、店舗に設置したカメラの画像や音声データのような非構造化データからも顧客の行動履歴をさらに細かく分析できるようになったことで、新たなサービス開発の実現性が拡大しています。

自社のビジネス戦略にそって、必要なデータをどうやって見極め、どうやって活用していくか、新たなサービス開発のためにどこから着手すべきはすべて「顧客に関わるデータ」に着目したIT企画が重要です。

顧客起点で必要データを説明できる道具

そのために「業務機能階層図」と「概念データモデル」を使って、今企業内にあるデータ資産と既存の業務を「顧客」という目線で俯瞰します。ここで必要なデータがない場合は取得するための方法を、ある場合は活用するための方法を検討します。また、どこから着手すべきかを誰もが納得した上で決定することができます。


最後に


ここまでご紹介したように、現在は、企業の保有するデータ自体が自社の基幹システムや情報系システムのものだけでなく、市場データ、装置データ、非構造化データへと大きく変革しました。自社の戦略に沿ってこれらのデータを上手く繋げてフル活用できる企業が、今後の市場を制するといっても過言ではないと思います。また自社を越え、業種業態の異なる他社とデータを繋げることができれば、さらに新しい価値をお客様に提供することができます。

IT企画者の方は、ビジネス戦略とITとの一貫性・整合性をとることに日々苦心されていることと思います。また、大きな企業になればなるほど企画対象が定まりにくく、企画のために何らかの道具が必要であると常々感じています。

そこで是非一度、「業務」と「データの関連」を棚卸して、全体を俯瞰できる状態を作ってみてください。2つの俯瞰図「業務機能階層図」と「概念データモデル」があれば、投資額の上限がある中でのIT企画でも、今できることや優先順位付けの決定に有効活用していくことができます。これらの俯瞰図がビジネス戦略を実現するIT企画者の方々に長く使ってもらえる道具になることを願っています。


執筆者のご紹介

アシスト高木 哲

高木 哲
開発技術本部

1994年中途にて入社。 製品保守、フィールドエンジニアを経て2002年より、IT企画・要求定義プロジェクトに参画し、お客様を支援する業務に従事。現在は新サービス立ち上げの社内支援にも注力している。

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