アシストのブログ

  • 特集
2019.10.11

変わりゆく社会のニーズにあわせ、ITで健康と安心を支える

対談×トップインタビュー:株式会社麻生情報システム 瀧中 秀敏 様


麻生グループのユーザー系ソフトウェア企業として、グループ内の情報化とともに、ソリューションプロバイダー事業を手掛けるなど、外部に向けたネットワーク化にも積極的に取り組む株式会社麻生情報システム。医療・健康・福祉分野において、現場に強いシステム会社として、ITを活用した高度で質の高いサービスを追求し続け、安心して暮らせる社会づくりへの貢献を使命としています。

瀧中 秀敏 様 プロフィール

株式会社麻生情報システム 代表取締役社長

北九州出身。高校、大学と野球一筋の青春を送る。麻生セメントに入社し、様々な新規事業立ち上げに携わった後、病院コンサルティングなどを経て平成24年より現職。


人々の暮らしに欠かせないソリューションプロバイダー


大塚(以下色文字):麻生グループ様には多くの製品をお使いいただき、たいへんお世話になっております。まずは麻生情報システム様についてお聞かせください。

瀧中様(以下略):麻生は石炭から始まり、戦後セメント事業に転換して社会資本の基盤づくりを使命に事業展開してきました。現在は社会の重要なテーマが「環境」や「健康・医療・福祉・教育・人材」であることから、麻生グループとして医療、教育、ファシリティという三つのユニットで事業展開しています。

麻生情報システムは、昭和37年、麻生の事務合理化を目的にコンピュータを導入して電算化したのが始まりです。グループの飯塚病院をフィールドとした高度医療情報システムの開発、救急総合支援システムの開発や小中学校向けのICT 環境構築、地域に密着した情報サービスの提供、企業や官公庁向けの健康管理・メンタルヘルスチェックを中心としたシステム開発などを行っています。

──瀧中様のご経歴を教えてください。

大学卒業後、麻生セメント(現(株)麻生)に入社し、すぐに長崎に転勤になり、1年10ヵ月、セメント事業に関することを学びました。その後福岡に戻り、様々な新規事業立ち上げに参加した後、平成9年に麻生医療研究所へ異動となり、同年12月、麻生メディカルサービスの社長を拝命しました。医療ビジネスに携わるようになったのはこの時からです。介護保険制度が始まるということで、訪問看護・介護ステーションや介護用品のレンタル事業を立ち上げ、平成23年に(株)麻生の病院コンサルティング事業部長になりました。病院経営のコンサルティングの経験もなくいきなりの事業部長で、業績が思うように上がらず、どうすれば事業部を黒字に転換させられるか夢にうなされるまで、精神的に人生で一番きつい時代でした。

──どうやって乗り切られたのですか。

とにかく経営にフォーカスし、いかに収益を伸ばすかではなく、委託費、購入薬品・材料費の適正化に取り組みました。またセメント事業で原価計算は得意としていたので、病院経営にも適切なコスト管理と部門別原価計算システムを導入しました。赤字の原因を把握するために、部門別、科別損益を把握するという企業経営のノウハウをシステム化し、病院経営に取り入れたのです。おかげで、メンバーの努力もあり4年目で予算達成できるまでにV字回復しました。

医療の質を高める安定経営


──多くの病院が助成金などを除くと赤字経営ともいわれています。良い医療の提供には安定した病院経営、そのためのIT活用であり、飯塚病院が高い評価を得ているのは※1、そうした背景があるのですね。

飯塚病院

※1 飯塚病院

平成31年3月に発表された米国情報誌『Newsweek』の記事「World's Best Hospitals 2019」で飯塚病院は日本国内110病院中21番目、九州内では九州大学病院に次ぐ2番目にランキングされた。


病院の先生方は医療関係においてはとても優秀ですが、経営の専門家ではありません。したがって医療はお任せして経営は事務方で、という「医経分離」です。そしてITは、医療の質、サービスの質、経営の質の全てにおいて必要不可欠です。病院の現場が必要とすることを素早く実現するために内製にこだわり、医事会計ソフトは購入しましたが、データを取りやすいようにコードを書き換えるなど、飯塚病院は早くからITの積極活用を行っています。オーダリングシステム※2、患者の待ち時間の短縮など、品質改善、サービス向上にIT化は必然でした。

※2 オーダリングシステム
医師や看護師が行う検査や処方などの指示(オーダー)を電子的に管理する医療情報システム。


Newsweek誌での高評価はありがたかったですが、もっと嬉しかったのは、飯塚病院が「研修医が行きたい民間病院(日経メディカル平成23年実施)」として全国で5番目に選ばれたことです。飯塚病院では、国公立の病院などで研修制度が始まる前の平成元年から、地域の医療機関としてどうしたら良い医師を集め、その価値を高められるかを模索して医師臨床研修を開始していました。その指導体制や教育環境などが評価されたのだと思います。こうした評判も病院の経営改善に大きく寄与しています。

──飯塚病院では、医師情報可視化システム※3など、アシストも技術面でご支援させていただいています。これらも瀧中様の肝入りで始められたプロジェクトと伺っています。

医師情報可視化システム

※3 医師情報可視化システム

QlikViewを用いたシステムで、重症度、医療・看護必要度分析、診療状況照会、レセプトデータ可視化などを提供している。


経営の一環で、医療現場の「見える化」が必須だと感じていました。経営ではダッシュボードで情報を深掘りし、数字を見て行動に移します。同様に、医療の現場でもこのシステムを使うことで、数値根拠に基づいた看護要員の適正配置や、患者さんへの退院支援などに関する適切なタイミングの判断が可能になります。少子高齢化で労働人口が減少する中、ITによる効率化はますます重要になってきます。今飯塚病院では、都築電気と共同でAIの開発を積極的に行っています。また、RPAを事務系の作業に組み込む、いわゆる働き方改革も鋭意進めているところです。こうしたことができるのもグループ内に病院という現場を持っている強みであり、看護師さんたちから色々な話を聞いて、ネタもたくさん出てきます。

誰もが満足する「働き方改革」


──医師や看護師といった職種はとてもハードワークだと思いますが、医療の現場における「働き方改革」への取り組みはいかがですか。

ドクターは本当にハードワークです。特に救急医は、ノー残業などと言っていたら救急ができなくなってしまうのが現状です。ただ病院に医師がいればいいわけではなく、救急外来に来る患者さんはやけどや交通外傷など、救急の専門医にしか対応はできないのです。一方、看護師はシフト制で、定時で交代ができています。飯塚病院では製造における「セル生産方式」※4をまねた「セル看護提供方式®」を採っています。

※4 セル生産方式
ライン生産と違い、作業者一人が周囲に工具や部品をつけた作業台で、製品の組み立て工程を完成まで行う方式。


これまで看護師は、患者さんの処置が済むとスタッフステーションに戻り看護記録や情報交換、ケアに必要な物品の準備に追われていました。セル看護では、必要な物品をカートに搭載して移動するので、患者さんのそばで仕事ができます※5。患者さんの病状の変化に看護師がいち早く気付くことができ、早期のケア介入につながりますし、看護の情報はデータ化され、すぐに共有されているので引き継ぎ書を書くために残業する必要もありません。看護師が本来やるべき仕事である「患者さんのケア」に集中できる環境を作る、これこそが「働き方改革」だと思います。また、セル看護で患者さんに寄り添えるようになったことで、患者さんが喜んでくれ、満足度が高まることは働く側のモチベーションアップにつながります。アシストも「超サポ」「愉快」といったキーワードを使われていますが、医療現場もより良いサービスの提供で患者さんも看護師もより幸せになる、と目指すところは同じです。患者さんの近くで「まごころケア」を提供するようになり、残業時間の削減など、ストレスが減少しました。病院は儲からなくてもいいという時代から、サービス業と認識されるまでに大きく変わりました。患者さんにも、働くスタッフにも選ばれる病院になるような努力をし続けていくことは重要だと思います。

セル看護提供方式®の様子

※5 セル看護提供方式®の様子

セル看護提供方式®は(株)麻生の登録商標です。


──現状で、医療業界のITについての課題にはどんなものがあると思われますか。

医療関係のデータは重要な個人情報であり、匿名加工の規定など、取り扱いがとても複雑です。ブロックチェーンを活用した医療事例なども世界では行われ始めているようですが、実用化には至っていないのが現実です。近年児童虐待の事件などが多発しています。医療機関はその対応拠点で、明らかに虐待とわかっていても、匿名化しなければ情報は送れないので警察や児童相談所との連携が結果として遅れます。虐待されている子どもたちは、死には至らなくとも将来のことがとても心配です。非常に胸の痛む問題であり、こうした情報の共有をIT 化によって進めていけたらと切に思います。

──現場にいるからこそ様々な問題が見え、解決につなげられている。アシストももっと現場でお客様の声を聴いてまいります。本日はどうもありがとうございました。

(対談日:2019年7月)

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