AIで営業提案の質を上げるために、過去の商談履歴・過去案件をどう使うか
提案資料はできたのに、レビューが最初からやり直しになる
提案レビューの直前。資料は仕上がっています。
顧客の課題が整理され、提案するサービスや事例も入っているし、文章も整っています。
生成AIを使えば、ここまで仕上げる時間は以前よりかなり短くできます。
ところが、上司とレビューを始めると、最初にこんな話が出てくることがあります。
「そもそも、このお客様は何を一番変えたいと言っていたんだっけ」
担当者は商談メモや前回の議事録を開き直し、「最初はコスト削減の話だったんですが、途中から現場の負荷の話になって……」
と説明を始めます。
さらに、「この事例を選んだのはなぜ?」「前回、お客様が気にしていた話は入っている?」「お客様側で、誰が意思決定に関わっているんだっけ?」「まだ確認できていないことは何?」と話しているうちに、商談そのものをもう一度組み立て直すことになります。

AIT(アシストAIテラス)でも、AIを使った提案書作成の型をつくる中で、資料ができた後のレビューで何が起きるかを意識するようになりました。
実際、利用している提案書作成の型では、資料の最後に「今日決めること」と「未確定で意思決定に必要な追加質問」を残します。
分からないものは「仮置き」として残します。
商談記録だけでは足りず、営業の「見立て」まで残す
今回の提案を考える材料は、すでに社内に多く残っています。
CRMには商談履歴があり、会議の議事録や文字起こしもある。以前の提案資料やメールが残っていることもあります。
それらは別々の場所に残っていて、今回の提案を考える順番には並んでいません。
商談の中で、顧客から「現場にこれ以上入力作業を増やしたくない」という話が出ていたとします。
その言葉だけを拾えば、入力作業への懸念は分かります。ただ、その場にいた営業担当者は、「新しいシステムが嫌というより、現場の手間が増えることを気にしているんだろう」と受け取っていたかもしれません。
その後の商談で上司や別部門の人が参加すると、今度は「誰が、何を気にして判断するのか」が少しずつ見えてきます。
顧客の発言や営業側の見立てが、議事録、CRM、担当者の記憶に分かれていると、新しく作った提案が本当にそれらを踏まえているのか、レビューの場で初めて確認することになります。

AITが営業ナレッジの残し方を検討した案件では、顧客の発言や課題、自社から返した内容、次のアクションに加えて、営業担当者がその商談をどう見ていたかも分けて残す設計にしました。
顧客の発言と営業側の見立てが混ざると、あとから読んだ人が、それを事実として受け取ってしまうことがあります。確認しきれていないことは、そのまま残します。
「あのお客様は、価格より運用負荷を気にする」
「前回、現場には刺さったけれど、決裁側で止まった」
「この担当者なら、いきなり大きな構想を持っていくより、小さく始める方が通りやすい」
同じ議事録が手元にあっても、そこから「次の提案で何を変えるか」までつなげるのは簡単ではないのです。
特に、その案件を途中から引き継いだ担当者なら、なおさらです。
過去案件から、今回の提案の判断材料を探す
過去案件をAIで検索できるようにすると、
「似た業界の提案書を探して」
「この課題に近い事例を出して」
といったことは、容易になります。
ただ、過去の提案書が見つかっただけでは、今回も同じ提案をすべきかまでは分かりません。
AIT内部でも、過去の成功案件を「勝ちパターン」として再利用できないかを検討したことがあります。
そのときは、提案書に加えて、契約形態や顧客条件、提案体制、価格や値引きの事情、実行後のトラブルまで見ていました。
そこまで見ていくと、「今回もこのやり方が使えそうだ」という判断材料が少しずつ増えてきます。
過去案件を見るときも、業界や提案書の形が似ているかだけではなく、顧客が何を気にしていて、そのとき営業がどこで迷い、誰に何を確認してから提案したのかまで見ています。
AITでは、今回の顧客について過去の商談をAIでたどることもあります。
前回の提案がどこで止まったのかまで戻ってみると、そのとき誰が判断していたのかや、今回あらためて気になる顧客の発言が見えてくることがあります。

たとえばレビューの入り口で、担当者からこんな説明ができると、その後の話が進めやすくなります。
「過去の商談を見返すと、現場の入力負荷については何度か話に出ています。なので今回は、入力作業を新しく増やすような案は避けたほうがよさそうだと考えています。ただ、お客様が新しい仕組みそのものに抵抗があるのかというと、そこまでは言っていません。あと、現場ではこの点をかなり気にしていそうですが、決裁する側も同じなのかは、まだ確認できていません」
ここまで分かっていれば、上司も過去の議事録を一から読み直す必要はありません。
「それなら次は決裁側にも確認しよう」「この事例より、運用負荷を抑えた事例のほうが合いそうだ」と、今回の提案をどうするかという話から始められます。
議事録から拾えるのは、記録に残った範囲で、商談の空気や、まだ言葉になっていない事情は、そのままでは拾えません。
そこまでを材料にして、今回どう提案するかをレビューで詰めます。
担当者が案件の経緯をすべて把握していなくても、レビューに入る前にこうした材料を揃えられる状態を重視しています。
AIで作った資料を開いたあとに、結局また商談メモを探し始める場面が残っているのか。
最近は、そのあたりもレビューで見るようにしています。
AIを使う場所は、提案書作成だけではない
提案書を早く作れるようになっても、その前後で同じ情報を探したり、確認し直したりしていれば、営業全体としてはまだ手間が残っています。
たとえば、レビューのたびに過去の議事録を開き直しているなら、提案書を作るところより先に、商談で何を残すかを見直したほうがいいかもしれません。過去案件がたくさんあるのに、結局いつも同じ人に「あの案件、どうだったっけ」と聞いているなら、案件の残し方や探し方に手を入れる余地があります。

AIを使う場所は、必ずしも提案書の作成とは限りません。
AITでも、「AIで何を作るか」を最初に決めるのではなく、まず今の営業の流れを見ます。レビューで過去の議事録を毎回探しているのか、それとも情報はあるけれど判断に使えていないのか。同じ「提案書作成に時間がかかる」という悩みでも、実際に手を入れる場所は違います。
どこで止まっているのかを見ていくと、提案書を作る前にやることが見つかることもあります。
自社の営業提案で、AIが効く場所を整理したい方へ
提案資料の作成だけでなく、商談情報の残し方やレビュー、過去案件の活用まで含めて、営業提案のどこを変えると前に進みやすくなるのかを整理します。

