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導入ベンダーから見るアシストの業務(3)
アシストの基幹刷新プロジェクト(NEXIS)について、これまでは社内のプロジェクト関係者へ話を聞いて状況をお伝えしてきました。今回より導入ベンダーであるアイ・ピー・エス様から見てアシストの業務やプロジェクトの推進がどのように映っているのか、話を伺います(第3回)。
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真下:今回の再構築にあたり、新たなERPパッケージの検討は何名で行いましたか。
沖:私を含めた、経営企画本部のNEXISプロジェクトメンバー4名で行いました。
真下:検討はどのようなプロセスで行いましたか。
沖:まずはセミナー参加などで、机上評価を行いました。7製品ほどを対象としました。
このフェーズで、業務に合わせたカスタマイズ可能な領域を持っている国産製品とカスタマイズ領域がほぼなく業務をパッケージに合わせるタイプの製品双方を検討しました。結果、カスタマイズ領域を持つ1製品、カスタマイズ領域がない2製品に絞り込みました。
まず、カスタマイズ領域がない製品群であるSAPともう一つの製品を比較したところ、SAPの方が圧倒的に業務参照モデルが多いということがわかりました。全世界の知見、経験値が反映された業務モデルを参照しながら作り上げていくのがSAPの特長となります。
それと、もう1製品の方は買収を重ねて拡張されてきていることもあり、それぞれのインターフェースの違いなどが気になりました。
真下:半スクラッチ型も含めて検討したというのは、その時点ではスクラッチ開発もあり得るという考えだったのですか。
沖:大きな方向性としてはERPパッケージによる実装でしたが、余地としては残しておこうということで、そちらも検討しました。
駒形:国産のERPパッケージは検討されましたか。
沖:はい、机上フェーズでは検討をしましたが、アーキテクチャーが比較的古いというのと、SAPのように上流から会計までがつながっておらず、業務ごとに分断されているイメージを持ちました。最終的には、SAP社のS/4HANAと半スクラッチ製品の2択となりました。
駒形:2製品について価格面ではどう判断されましたか。
沖:製品自体の費用は半スクラッチ製品の方がかなり安いです。ただ、構築費用、稼働後の保守費用などをトータルで比較した場合、ほぼ変わらないという結果となりました。
真下:最終的にS/4HANAが第一候補となった理由は何ですか。
沖:先ほど挙げた点に加えて、元々今回の再構築の狙いとしては、業務改革によって現行のプロセスを大幅に変えることが前提です。半スクラッチですと、作りこみができる分、やろうと思えば何でもできてしまうので、As-Isに引っ張られてしまい、AMIS(現行のスクラッチ販売管理システム)の焼き直しになってしまうことを危惧しました。業務改革を行うという点からみると得策ではないという判断をしました。
駒形:SAPを第一候補とした後に、最終的に決定するまでにどのような点を検討しましたか。
沖:以下の2点を中心に検討を行いました。
SAPの選定にあたって、アシストの業務領域を確認し、アシストの業務領域に該当するSAPの参照モデルを調査し、SAPの参照モデルの確認を行いました。
アシストの業務領域がカバーされており、SAP参照モデルの業務フローにアシストの業務を合わせていくことが可能ではないかと考え、SAPを選択しました。
沖:決定した後に大きな課題となったのが、実装ベンダーの確保です。当時SAP開発・導入支援ができる人材が枯渇していました。パートナー選定基準として、社内のSAP人材育成に伴走してくれることとスクラムでの開発経験を保有していることでした。アシストが考えるパートナー選定基準に合致したのが株式会社アイ・ピー・エス(以下IPS。次回、詳しく紹介)でした。また、IPS社は、商社用のSAPテンプレートを提供しており、商社モデルに近いアシストのビジネスモデルには有効であると判断しました。
真下:今回の導入ベンダー選定では、RFPを出されなかったと聞きましたが、なぜですか。
沖:一言でいうと、To-Beを目指しているから、ですかね。われわれが要件を作るというより、SAPをベースにアシストの業務を考えて、どのような業務モデルを作るべきかを提案してほしいという伝え方をしました。それに対して納得できる提案をしてくれたのが、IPS社でした。RFPにすると、どうしてもAs-Isがベースになってしまうのですよね。
真下:ありがとうございます。あと、どうしても腹落ちしていない部分があります。SAPというのはアシスト規模の会社にはコスト面含めてオーバースペックではないかという点なのですが、これについてはどうお考えですか。
沖:たしかに、そういった話はありました。繰り返しになりますが、業務改革を行うというのが目的であるので、Fit to Standardの考え方を採用するのがベストであると判断しました。結果として、パッケージはSAPになりました。逆に今回の目的から照らし合わせると、それしか選択肢がなかったとも言えます。
真下:ありがとうございます。今のお話と関連しますが、今回アシストはS/4HANAクラウドのPrivate EditionであるRise With SAPを採用しましたが、Public EditionであるGrow with SAPは検討しましたか。
沖:はい、もちろん検討しました。今回はIPS社の商社向けテンプレートである「EasyOne」を利用したいという意向もあり、Private Editionを採用しました。EasyOneは商社向けのテンプレートがあり、システム構築において有効であると判断したためEasyOneが使えるPrivate Editionになりました。
真下:ありがとうございました。私自身もSAPはオーバースペックでは?という思いを若干持っていましたが、目的を達成するためにはSAPであることが必要な理由がよくわかりました。
(本記事は2024年11月に行ったインタビューをもとに執筆しています)
※記載されている会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
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真下 悦拡(ましも よしひろ)
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駒形 美鈴(こまがた みすず)
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