
この記事でわかること
オープンソースのZabbixは、有償サポートなしでも利用できます。しかし、サポートに入らず使い続けると、運用フェーズで調査・検証・機会損失といった人的コストが少しずつ積み上がるケースもあります。
この記事では、その隠れたコストを整理したうえで、自社運用で十分なケースと、プロのサポートを検討したいケースの両面を通して、自社に合った判断をするための材料を紹介します。
Zabbixの運用フェーズで積みあがる「隠れコスト」
システム監視にかかるコストを抑えられることから、Zabbixを選ぶケースは多くあります。ただ、有償サポートに入らず無償のまま使い続けようとすると、運用フェーズで「隠れたコスト」が発生します。
Zabbixは設定の自由度が高いがゆえに、設計やチューニングにはある程度の知識と手間がかかります。そこに加えて、設計から日々の運用、トラブル対応、バージョンアップまで、すべて自分たちで対応することになります。つまり「もともとZabbixの扱いにそれなりの知識が必要である」ことと「すべて自社で対応する」ことが重なり、隠れたコストとして積みあがっていきます。
自社運用で発生する「隠れコスト」は3種類
自社だけでZabbixを運用する際に発生する隠れコストは、次の3つに分けると整理しやすくなります。
運用・調査コスト
日々の運用とトラブルが起きたときの調査などにかかるコストです。
監視対象の追加や設定変更といった日常のメンテナンスに加え、障害時には「異常か設定の問題か」「仕様か不具合か」の切り分けなどで情報収集や判断が必要になります。
ZabbixはWeb上に公開されている情報が多い分、自社の環境に合う答えにたどり着くまで時間がかかることもあります。
検証コスト
バージョンアップや設定変更を、既存の監視に支障が出ないように進めるための確認・テストにかかるコストです。
Zabbixは、一つの変更がほかの監視項目や設定にどう影響するかを読みにくく、事前の十分な確認が欠かせません。本番に近いテスト環境を用意できればよいのですが、それ自体にも構築・維持のコストがかかります。
機会損失コスト
日々の運用や調査に時間を取られることで、本来やりたかったことに手が回らず失われる機会損失コストです。
Zabbixでいえば、ダッシュボードの整備やアラートの見直しといった改善が後回しになります。それだけでなく、担当者やIT部門が、本来注力すべき攻めの業務や事業に貢献する仕事に工数を割けなくなる、という形でも影響します。これらのコストは小さく見えても、積み重なると無視できない量になります。
コスト削減のために無償で利用しているはずが、実は「社内の人と時間でコストを支払っていないか」という視点が大事です。
隠れコストを知るためのセルフチェックリスト公開
次のリストは、現場でよく問題になるポイントを3つのコスト別に並べたものです。当てはまる数が多いほど、コストが水面下で増えているサインかもしれません。
運用・調査コストのチェック
□ 重要度の低いエラーや障害は原因が明らかにされず放置され、再発する
□ Webで情報を調べても、自社の環境に合わない(情報が古い)ことが多い
□ 公開されている情報だけでは仕様か不具合かが判断できず、調査が長引くことがある
□ ナレッジが個人に依存しているため、担当者の異動・退職があると、運用が回らなくなりそうで不安
□ 監視設定が属人化し、設定した本人しか内容を把握していない
□ バックアップや復旧手順が整っておらず、切り戻しに不安がある
検証コストのチェック
□ バージョンアップの影響範囲が読めず、踏み切れない
□ テスト環境がない、または本番環境と差があり、十分に検証しきれない
機会損失コストのチェック
□ 監視の改善を「やりたいが手が回らない」状態が続いている
□ 担当者が維持作業に時間を取られ、本来の仕事に集中できていない
□ 担当者のスキルアップや学習の時間が、運用対応で削られている
□ 設定がすでにブラックボックス化していて、監視の改善ができない
チェック結果の目安
チェックの合計数で、今の運用状況がおおよそ把握できます。下の表で確認してみてください。
個数 | 状況 |
|---|---|
0〜1個 | 現時点では大きな問題はなさそうです。今のうちに手順やナレッジを文書化しておくと、属人化を防げます。 |
2〜4個 | 隠れコストが見え始めています。どのコストに偏っているかをまず把握し、負荷の高いところから手を打つのがおすすめです。自社だけで判断しづらい場合は、現状を客観的に確認する(アセスメントなどで棚卸しする)ところから始める方法もあります。 |
5個以上 | 運用コストやリスクがかなり高まっています。自社で抱え続けるか、プロのサポートを取り入れるかを一度検討してみてもよいタイミングです。 |
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プロのサポートを検討する「分岐点」とは?
隠れコストの存在が大きくなりはじめたら、次は「いつプロのサポートを検討するか」について考えてみましょう。決まった正解はありませんが、運用の状況が次のラインを超えたら検討どきと考えると判断しやすいかもしれません。
分岐点1:止められないシステムの監視を担っているとき
システム拡張に伴い、当初の想定を超えて、重要なシステムまでZabbixの監視対象に含まれてきた状態です。監視の範囲が広がるほど、障害時に相談できる窓口の有無が復旧時間を左右します。
分岐点2:属人化が進み、運用の標準化が必要になったとき
監視設定の意図やトラブル対応の手順が特定の担当者の頭の中にしかなく、その人が休んだり異動・退職したりすると、誰も対応できなくなる状態です。こうなると、個人の経験に頼るのではなく、チームで運用を回せるように知識を共有・標準化していくことが必要です。そのためには、担当者が体系的にZabbixを学べる環境を用意するのも一つの方法です。
分岐点3:バージョンアップに踏み切れないとき
バージョンアップの作業内容や影響が読めずに先送りしていて、セキュリティ面でのリスクがあったり新機能を活用できていないという状態です。
特にサポートが終了したバージョンでは、脆弱性が見つかっても修正されないため、使い続けるほどリスクが大きくなります。かといって自力で影響範囲を見極めるのは負担が大きく、なかなか踏み切れないというケースは少なくありません。
また、Zabbix 8.0では大幅な機能追加や仕様変更が行われており、5.0や6.0などの旧バージョンから移行する際は、検証コストやトラブル時のリスクが通常の設定変更以上に大きくなります。
上述した3つの分岐点は、どれも「隠れコストが許容できる範囲を超えてくるライン」と言えます。どれか一つでも思い当たる場合は、自力運用のコストやリスクを棚卸しするタイミングです。
自社運用で十分なケースもある
一方で、プロのサポートが必ず必要というわけでもありません。次のような環境なら、自社運用で十分回せます。
監視対象が小規模で、構成がシンプル
社内にZabbixに詳しい担当者や専任の運用担当がいて、ナレッジが共有されている
構成や監視要件があまり変わらず、トラブルやバージョンアップの頻度が低い
障害が起きても事業への影響が小さく、復旧まで時間に余裕がある
ポイントは、「OSSだから自社で十分」とも「重要だから必ず有償」とも決めつけず、自社の状況に合わせて切り分けることです。
隠れコストを把握し、適正な運用を考えましょう
ここまで見てきたように、Zabbixのコストを正しくつかむには、「運用にかかっているコスト」を把握することが出発点です。
特に近年は、人材の確保や育成が年々難しくなっています。Zabbix運用のすべてを社内の属人的なスキルに頼り続けるのか、プロのサポートを使って運用コストを最適化していくのか。IT部門が目指す姿も踏まえて、適切な判断が求められています。
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現状把握や運用の見直しで迷ったらアシストへ
「自社の運用コストが妥当なのか判断できない」「どこから手をつければいいかわからない」と感じたら、専門家に相談してみるのも一つの方法です。
アシストは、Zabbixの国内最上位のプレミアムパートナーとして、長年にわたり多くのZabbix運用を支援してきました。サポートセンターには日々さまざまな相談が寄せられ、その中で蓄積したナレッジや、現場でよく起こる課題への対応力を強みにしています。
たとえば、アシストでは以下のような技術支援・サポートが可能です。
Zabbixサーバーの状態や設定が妥当かを客観的に確認するアセスメント(健康診断)
障害対応やバージョンアップなど、自力では負荷の高い作業を支える保守サポート
運用ノウハウを社内に残していくためのスキルトランスファー型支援
アシストでは、お客様の現状課題や目指す姿を踏まえた伴走型の支援で、運用の最適化をお手伝いいたします。まずはお気軽にご相談ください。
FAQ:Zabbixのコストと保守についてよくある質問
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サポート費用は製品そのものの費用ではなく、障害対応・Q&A対応・ナレッジ提供・最新情報の通知といった「運用を続けるための支援」に対する費用です。この記事で挙げた調査・検証コストを自社で抱えるか、外部に任せるかの違い、と考えるとわかりやすいと思います。
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大きく変わるのは、障害や疑問が出たときに相談できる窓口ができることです。原因の切り分けや仕様確認を自社だけで抱え込まずに済むので、調査コストを抑えられます。あわせて、脆弱性などの重要な情報がタイムリーに確認できるようになり、気づかないうちにリスクを放置する、という事態を防ぎやすくなります。
ほかにも、保守契約には以下の特典も含まれるので、運用改善の一助としてお役立ていただけます。
・Zabbix社が提供しているナレッジの確認
・Zabbix設定バックアップツールの利用
・ショートトレーニング(AWS環境の監視やグラフ・ダッシュボード活用など、実務に役立つテーマを短時間で学べるWebセミナー)の受講権利※スタンダード契約に限る -
Zabbixのサポート費用は、マネージャ機能を保有するZabbixサーバの台数及び構成にのみ依存します。監視規模が大きいほど、台数課金型の製品と比べてコスト面のメリットが出やすくなります。
>アシストの保守サポート紹介ページへ -
この記事のチェックリストで、調査・検証・機会損失のどこに負荷が偏っているかを洗い出すのが第一歩です。そのうえで、Zabbixサーバーの状態やパラメータが妥当かを客観的に見たい場合は、現状把握を目的としたアセスメント(健康診断)を利用する方法もあります。
アシストでは、ブラックボックス化してしまったZabbixの現状を把握・診断するサービスも提供しています。
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この記事を書いたスタッフ
ビジネスインフラ技術本部 システム基盤技術統括部 技術1部
かなはら
ビジネスインフラ技術本部 システム基盤技術統括部 技術1部
かなはら