
生成AIに質問するとき、「自分の担当業務は何か」「どのくらい詳しく説明してほしいか」「どんな形式で回答してほしいか」を、毎回伝えていないでしょうか。前提を丁寧に伝えるほど回答は自分向けになりますが、その分だけ、質問する前の準備に手間がかかります。
Glean Memoryは、ユーザーの役割や仕事上の関心、回答の好みなどを記憶し、会話をまたいでGleanの応答に反映する機能です。毎回同じことを説明しなくても、仕事の前提を引き継いだ状態で会話を始めやすくなります。
本記事では、Glean Memoryがどのような情報を扱うのか、通常のチャット履歴と何が違うのか、利用者がどのように確認・削除できるのかを、初めて読む方にも分かるようにご紹介します。
「検索できるAI」から「仕事の前提を理解するAI」へ

企業で使われるAIには、社内の情報を検索して回答する役割が期待されています。必要な資料を探し、内容を要約し、質問に答えてくれることは、日々の調査や情報整理に役立ちます。
一方で、同じ情報を見ても、必要な答え方は人によって異なります。新しく担当になった人には背景から説明した方がよいかもしれません。経験のある人には結論を先に示した方が読みやすいかもしれません。文章で使いたい人もいれば、表で整理したい人もいます。
Glean Memoryは、このような「その人の仕事の進め方」に関する前提を、個人単位で扱う仕組みです。
何を知っているかだけでなく、どのように働いているか、どのような回答を使いやすいと感じるかを、Gleanの応答に反映しやすくします。
ここで重要なのは、Glean Memoryが社内文書そのものを保存して、利用できる文書を増やす機能ではないという点です。Glean Memoryは、ユーザーの役割、好み、進行中のテーマなどの情報を扱います。また、Glean Memoryがあるからといって、利用者が本来アクセスできない文書を見られるようになるわけではありません。
Glean Memoryが扱う2種類の記憶

Glean Memoryには、大きく分けて2種類の記憶があります。
違いを知っておくと、どの情報がどのように扱われるのかを理解しやすくなります。
自分で伝えて保存する「保存した記憶」
一つ目は、利用者がGleanに明示的に伝えて保存する記憶です。たとえば、「回答は簡潔にしてください」「私は営業部門で働いています」「表形式で整理してください」といった情報です。
この方法のよいところは、覚えてほしいことを自分で指定できることです。
Gleanのチャットで「覚えておいてください」と自然な言葉で伝えられます。保存されたことをGleanが確認してくれるため、意図した内容が記憶されたかを確認しながら使えます。
回答の長さ、文体、説明の順番、普段担当している領域など、繰り返し伝えている前提があれば、保存した記憶として登録する候補になります。ただし、会社の機密情報や、長期間変わる可能性がある情報を登録するかどうかは、組織のルールに従って判断してください。
会話や業務活動から整理される「抽出された記憶」
二つ目は、チャットや業務上の活動から、Gleanが仕事に関する傾向や文脈を整理した記憶です。たとえば、最近取り組んでいるプロジェクト、担当している役割、よく扱っているテーマ、回答形式の好みなどが対象になります。
利用者が毎回「この前提を覚えて」と伝えなくても、繰り返し現れる仕事上の文脈をもとに、回答を個人向けに調整しやすくなる点が特徴です。もちろん、抽出された内容が常に正しいとは限りません。担当が変わったり、プロジェクトが終了したりした場合には、現在の状況と合っているかを確認することが大切です。
保存した記憶と抽出された記憶は、役割が少し異なります。自分で明示したい前提は保存した記憶、日々の利用から整理される傾向や最近の文脈は抽出された記憶、と考えると分かりやすいでしょう。
チャット履歴とは何が違うのか

Gleanには、過去の会話を後から探せるチャット履歴があります。チャット履歴は、以前の会話を読み返したり、同じスレッドの続きを行ったりするためのものです。
一方、Glean Memoryは、特定のスレッドだけに限定されない、比較的長く使う仕事上の前提を扱います。たとえば、チャット履歴には「ある会議について相談した会話」が残ります。Glean Memoryには、その会話などを通じて分かった「回答は要点から知りたい」「現在このテーマを担当している」といった個人の文脈が反映される場合があります。
つまり、チャット履歴が「過去の会話を参照する場所」だとすれば、Glean Memoryは「次の会話にも活かしたい前提を引き継ぐ仕組み」です。どちらか一方だけが必要なのではなく、過去の具体的なやり取りを探すときは履歴、普段の回答を自分向けに整えたいときはGlean Memoryと使い分けるイメージです。
Before/Afterで見る利用イメージ

ここでは、機能の考え方を具体的にイメージできるように、会議後の情報整理を例に見てみます。
以下は説明用の例であり、特定の環境での出力や効果を保証するものではありません。
Before:毎回、同じ前提を説明する
「会議メモを要約してください」と依頼しただけでは、どの程度の詳しさが必要なのか、誰に共有する文章なのか、どの項目を優先したいのかが分かりません。
そのため、利用者は次のような指示を毎回追加します。
指示の例(サンプル)
最初に結論を書いてください
決定事項と未決事項を分けてください
次のアクションは担当者と期限を表にしてください
社内向けなので、専門用語には補足を付けてください
このように具体的な指示を加えることで、目的に合った回答へ近づけられます。ただし、同じ説明を繰り返すことは、質問を作る側の負担になります。
After:普段の仕事の進め方を前提にする
あらかじめ「会議メモは結論を先に整理したい」「決定事項、未決事項、アクションを分けたい」といった好みをGlean Memoryに保存しておくと、その前提を踏まえた依頼をしやすくなります。
利用者は、毎回すべての形式を指定するのではなく、「この会議メモから、関係者向けの共有文を作ってください」と依頼できます。Gleanは、保存された好みや、利用者がアクセスできる情報をもとに、回答の形を調整します。
ここでのポイントは、指示を短くできることだけではありません。自分が普段どのように仕事を進めたいのかを一度言葉にすることで、AIとのやり取りの土台を整えられることです。回答の形式をそろえたい人、担当領域を毎回説明したくない人、継続中のテーマを前提に相談したい人にとって、活用を検討しやすい機能です。
どのような情報を覚えさせるとよいか

最初から多くの情報を登録する必要はありません。
まずは、何度も同じ説明をしている内容から始めると、Glean Memoryの役割を体験しやすくなります。
回答の好み
「結論を先に知りたい」「簡潔な説明がよい」「比較するときは表にしてほしい」など、回答の形式や文体に関する好みです。これらは、さまざまな相談で共通して使えるため、保存する候補になりやすい情報です。
役割や担当領域
「どの部門で、どのような業務を担当しているか」といった仕事上の立場です。役割が伝わっていると、専門用語の説明量や、関係しそうな観点を調整しやすくなります。
現在取り組んでいるテーマ
「今期はこのプロジェクトを担当している」「最近はこの分野の情報を調べている」など、現在の仕事に関する文脈です。ただし、プロジェクトや担当は変わることがあります。古くなった情報が回答に影響しないよう、定期的に見直すことが重要です。
反対に、一時的な依頼の詳細や、特定の文書にしか関係しない情報は、そのチャットの中で伝える方が適している場合があります。何でもGlean Memoryに保存するのではなく、「今後も繰り返し使う前提か」を基準に考えるとよいでしょう。
利用者が確認・削除できる仕組み

AIが自分について何を覚えているのか分からないと、不安に感じる方もいるかもしれません。Gleanでは、設定画面からパーソナライズの項目を開き、Glean Memoryをカテゴリごとに確認できます。保存されている内容を見直し、不要になった記憶を削除することもできます。
チャットから「自分について何を覚えていますか」「保存した記憶を表示してください」と尋ねることもできます。特定の記憶を忘れるように指示する方法もあります。利用中にGlean Memoryを使いたくない場合は、そのチャットでは使わないよう自然な言葉で伝えることもできます。
ただし、抽出された記憶は、業務活動から再び整理される場合があります。削除した内容が、以後一切作られないことを意味するとは限りません。
小さく始めて、自分に合う使い方を見つける

Glean Memoryを使い始めるときは、回答の好みを一つ保存するところから始められます。たとえば、「回答は結論を先に、箇条書きで整理してください」と伝え、その後の回答が自分の期待に合うかを確認します。
次に、役割や担当領域など、継続的に使う可能性のある前提を追加します。しばらく使ったら、設定画面でGlean Memoryの内容を見直し、古い情報や意図と異なる情報がないか確認します。
このように、保存、利用、確認、見直しを繰り返すことで、Glean Memoryを自分の仕事に合わせて整えられます。最初から完璧なプロフィールを作る必要はありません。普段の会話で何度も説明していることを見つけたら、「これは今後も覚えておくと便利か」と考えてみることが、始めるきっかけになります。
まとめ
Glean Memoryは、ユーザーの役割、回答の好み、進行中のテーマなど、仕事上の文脈を会話に活かすための機能です。自分で伝えて保存する記憶と、会話や業務活動から整理される記憶があり、普段の相談を自分向けに調整しやすくします。
チャット履歴が過去の会話を探すためのものだとすれば、Glean Memoryは次の会話にも引き継ぎたい前提を扱うものです。文書へのアクセス権を広げる機能ではなく、利用者が自分のGlean Memoryを確認・削除できる点も押さえておきたいポイントです。
まずは、回答の長さや形式など、変わりにくい好みを一つ伝えてみてください。そのうえで、何を覚えさせるか、いつ見直すかを意識すると、Glean Memoryをより安心して活用しやすくなります。
執筆者情報

市川 慎二
CX本部 サポートサービス技術統括部
2007年中途入社。BIツールの製品検証に従事し、その後、WebFOCUS製品、Qlik製品などBIツールのフィールド技術、サポート担当を経て、Gleanのサポート技術活動に従事。