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クラウドコストを管理できるツールの選択肢と選び方

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#システム運用
#クラウド

この記事でわかること

  • クラウドコストを管理できるツールは、クラウドプロバイダーのネイティブ機能、IT投資全体を管理するツール、クラウドやSaaS、AIのコストに軸を置いたFinOpsプラットフォームなどがあり、カバーする範囲が異なる

  • ツールを選ぶときの観点として、コストを管理したい対象範囲、取り組みの重心、導入までのリードタイムなどが挙げられる

  • 部門を横断してクラウドコストを見る役割がなければ、検討スピードや改善の進み方に影響が出てしまうため、体制づくりが重要である



なぜ今、クラウドコスト管理ツールが必要なのか

クラウドコストは、管理コンソールから請求データをCSVでダウンロードし、Excelで集計するという方法で把握できます。しかし、複数のクラウドを利用するようになり、さらにDatadogやSnowflakeといった従量課金型のSaaSまで対象に入ってくると、人手に頼ったコスト管理は難しくなります。

例えば、集計作業が特定の担当者に依存する、全体像を確認できるのは年に数回程度にとどまりコストの異常値にタイムリーに気づけない、「部門Aでいくらかかっているのか」という問いにすぐ答えられない、といった状態を引き起こします。

そこで、クラウドコスト管理ツールの検討を進めるケースもありますが、数多くあるツールのなかから、何を基準に選べば良いのでしょうか。本記事では、クラウドコスト管理がどのように発展してきたかを整理したうえで、種類や選び方の観点、そしてツール導入前に知っておきたいことについて解説します。


クラウドコスト管理はどう発展してきたか

クラウドが普及し始めた当初は、請求データをExcelに転記し、集計や部門・プロジェクト単位での按分を行うケースが一般的でした。当時は、クラウドプロバイダーが提供するコスト管理機能も現在ほど充実しておらず、請求データをどのように整理・分析するかは、利用者側の工夫に委ねられていました。

一方、クラウドプロバイダー自身がコスト管理機能を提供する動きも進み、AWSがCost Explorerを提供開始したのは2014年です。Microsoft AzureやGoogle Cloudも同様のコスト管理機能を備えており、その後も予算管理や異常検知など、着実に機能を拡充しています。

その後、クラウドコスト管理を組織的な取り組みとして捉えるために広がったのが「FinOps」という考え方です。FinOpsは「Finance」と「DevOps」を組み合わせた造語で、財務・事業部門・エンジニアが同じコストデータをもとに、コストとビジネス上の価値を結びつけて投資判断をしていく取り組みを指します。この考え方を推進する団体として、FinOps Foundationが2019年に設立され、翌年にLinux Foundation傘下となりました。

以降、クラウドコストの管理は財務部門だけの仕事でもエンジニアだけの仕事でもなく、経営層や事業部門も含めた関係者が同じ枠組みのなかで取り組むものとして語られるようになりました。近年は、SaaSやライセンスなどクラウド以外の支出も同じ枠組みで扱う方向へ、フレームワーク自体が見直されています。なかでも関心が高まっているのがAIコストの管理です。FinOps Foundationの調査「State of FinOps 2026」では、回答者の98%がAI関連の支出を管理していると答えており、今後の優先事項としても上位に挙げられています。


クラウドコストを管理できるツールの選択肢

クラウドコストを管理する手段は、複数の選択肢があります。クラウドプロバイダーが標準で提供する機能のほか、IT投資全体を対象とするツールの機能の1つとしてクラウドコストも扱えるもの、クラウドやSaaS、AIサービスのコストに特化したツールなどです。それぞれカバーする範囲が異なるため、自社が管理したい範囲で絞り込むのが現実的です。

ここでは上述した3つの選択肢について説明していきます。

1.クラウドプロバイダーのネイティブ機能

AWS Cost ExplorerやMicrosoft Cost Managementなど、各クラウドプロバイダーが標準で提供するコスト管理機能です。クラウドの利用料金を管理画面で確認する機能は、多くの場合無償で利用できるため、まずは現状を把握する手段として試しやすい選択肢です。

一方、管理できる対象はそのプロバイダーが提供するクラウド単体にとどまります。より細かい粒度での分析や、複数クラウドを横断した集計を行う場合は、請求データを出力して自社で加工する必要があります。また、DatadogやSnowflakeなどのSaaSコストも対象外です。

費用を抑えながら始められる一方、見たい形に近づけるほど自社で作り込む工数が必要になります。単一クラウド環境でコスト管理を始める出発点として有効なツールといえます。

2.IT投資全体を管理するツール

クラウドだけでなく、オンプレミスのインフラや人件費まで含めたIT投資全体を可視化し、部門やシステムの単位に配賦することを想定して設計された製品群です。サーバーやネットワーク機器、ソフトウェアのライセンス費や保守費、データセンターの費用といったIT関連の支出をまとめて管理でき、クラウドコストはそのなかで扱える対象のひとつという位置づけです。

自社の組織構造や配賦ルールに合わせて設定を作り込む工程が前提となるため、要件定義から本番運用まで一定の期間を要します。運用に専任リソースを置いたり、構築時にコンサルティングや操作習得のトレーニングを伴う場合もあります。

3.クラウド・SaaS・AIのコストに軸を置いたFinOpsプラットフォーム

クラウド、SaaS、AIサービスといったテクノロジーコストを横断的に管理することを想定して設計された製品群です。主要クラウドのコスト管理に対応するほか、製品によってはDatadogやSnowflake、GitHub、OpenAIなどのSaaSやAIサービスの費用も同じ画面で扱えます。

クラウドアカウントとの接続設定を行えば、標準のダッシュボードで短期間に可視化を始められる製品が多くあります。ただし、可視化した先の最適化、例えばそのリソースを止めてよいか、構成を変えてよいかという判断は、管理部門だけでは完結できません。

実際にそのリソースを扱っているのはエンジニアであり、判断を下せるのもエンジニア自身だからです。そのため多くの製品は、担当するシステムのコストをエンジニアが日々の開発・運用のなかで確認しながら、そのまま最適化に取り組めるような設計になっています。

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自社に合う選択肢を絞り込む3つの観点

数多くあるツールから検討を始める際は、まずは次の3点を確認することをおすすめします。

  • 管理したい対象範囲
    クラウドだけで足りるのか、SaaSやAIサービスまで含めるか

  • 取り組みの重心
    管理部門による配賦やガバナンスが中心か、現場での日常的な可視化と最適化が中心か

  • 導入までのリードタイム
    まずは可視化を素早く始めたいか、全社ルールなどを作り込んでから始めたいか

よくある課題・きっかけに当てはめると、選択肢はおおよそ次のように整理できます。

課題・きっかけ

主な選択肢

まずは単一クラウドの可視化から着手したい

ネイティブ機能

複数クラウド・SaaS・AIの請求が分散している/全体の金額は分かっても増減の理由や無駄の所在までは追えない

IT投資全体を管理するツール/FinOpsプラットフォーム

現場のエンジニアが担当システムのコストを把握し、開発・運用のなかで改善まで進めたい

FinOpsプラットフォーム

クラウドに限らずIT投資全体を財務の観点から一元管理し、チャージバックやガバナンスを機能させたい

IT投資全体を管理するツール


支援の現場で見えた、ツール導入前に知っておきたいこと

アシストは、FinOpsプラットフォームVantageを取り扱っており、国内初の販売代理店として、PoCから導入・定着までの技術支援を提供しています。あわせて、自社の一部門でもVantageを利用し、クラウドコスト最適化に取り組んでいます。

ここからは、お客様への提案とアシスト社内でのツール活用の両方を通じて見えてきた「ツール導入前に知っておきたいこと」を紹介します。


タグ設計と責任の整理は、どのツールを選んでも必要

どのツールを選んでも、共通して必要になるのがタグ設計です。タグとは、クラウド上のリソースに部門名やシステム名などの情報を付けておく仕組みで、コストを誰の分として振り分けるか(配賦)の土台になります。タグが整っていなくても、アカウントやサービスなどの切り口で分析できますが、タグを適切に設計・付与することで、部門・システム・環境単位での配賦や管理がしやすくなります。

また、誰がどのコストを管理するのか、責任の所在を整理しておくことも重要です。アシスト社内でも自部門の環境をVantageで可視化していますが、必須タグを決めて棚卸を始めると、値が空のままのタグや、部署ごとに異なる命名ルール、所有者を追えなくなったリソースが次々に出てきました。

手間がかかるのは技術的な設定よりも、コストをどの単位で見るのか、誰がどのリソースに責任を持つのかを決めていく部分です。


推進する組織があるかどうかで、検討の進み方が変わる

タグの整備もそのひとつですが、クラウドコスト最適化検討やツール活用が進むかどうかを大きく左右するのは、全社のクラウドコストの管理・最適化を考える人やチームの存在です。DX推進組織やクラウド推進部門のように、全体最適を担う立場がある企業では、クラウドコストを一元的に可視化する必要性が共有されやすく、検討が前に進みます。

一方、そうした役割がなく、クラウドごと・システムごと・部署ごとに個別に見ている企業では、「自部門の範囲だけならそこまで必要ない」という結論になりやすい傾向があります。

ただし、全体最適を担う立場の部門や人がコストの責任を引き受けるわけではありません。彼らの役割はクラウドコストを最適化する仕組みやプロセスを整えて、実際にクラウドを利用するチームが自分ごととして動けるように支援することです。最適化に向けた具体的な実行は各チームであり、チームの意識や実行力で、最適化の進み具合には差が出ます。


まず範囲を絞って実践し、成果を横に広げる

まず実態を把握したいという段階であれば、先に挙げたFinOpsプラットフォームのように、接続設定だけで標準のダッシュボードから可視化を始められるツールでPoCを行うのもひとつの選択肢です。この場合、期間は1〜2か月程度が目安です。一方、全社の配賦ルールなども含めて設計する場合は、要件定義・基本設計の段階だけで3〜4か月以上かかるケースもあります。

※上記の期間はアシストがVantageの技術支援で想定している目安であり、実際に必要な期間はツールによって異なります。

実際の支援で見えたこととして、体制がまだ整っていない段階でいきなり全社の配賦ルールを含めた要件定義に着手すると、決めるべきことが多すぎて検討が止まりやすい傾向があります。まずは一部のシステムや部署に対象を絞り、可視化から最適化までを実践してみる。そこで得られた成果や進め方の知見をもとに、他のシステムや部署へ広げていくという方法もあります。


自社に必要な管理項目を整理する

管理台帳からツールへの移行を検討するとき、意識が向きやすいのは「何ができるようになるか」です。一方で、移行前には、台帳とツールそれぞれの得意な範囲を整理しておくことも重要です。

例えば台帳は、社内の管理番号やシステム名など、各社の運用に応じた情報を自由に持たせられます。一方、クラウドコスト管理ツールが得意とするのは、どのアカウントのどのサービスにいくらかかっているかという、ITインフラ視点での可視化です。

そのため、ツールを検討する前に、現在の管理台帳で何を見ているのか、本当に必要な切り口はどれかを整理しておきましょう。そのうえで、ツールで管理する情報と、管理台帳で補完する情報を決めることで、それぞれの強みを生かした運用につなげられます。


クラウドコスト管理に関するよくある質問

まとめ

クラウドコストを管理できるツールの選択肢として、クラウドプロバイダーのネイティブ機能、IT投資全体を管理するツール、クラウドやSaaS、AIのコストに軸を置いたFinOpsプラットフォームの3つを取り上げ、選ぶときの観点として、管理したい対象範囲、取り組みの重心、導入までのリードタイムの3つをご紹介しました。

そして、ツール選定と同時に欠かせないのが、部門をまたいで全社のクラウドコストを考える役割です。この役割がなければ、コストを一元的に可視化する必要性そのものが社内で共有されません。ただしその役割は、コストを見る仕組みやプロセスを整え、各チームを支援する立場です。実際に無駄をなくすために動くのは各チームであり、関係者が自分たちのコストとして向き合えるかどうかで成果は変わります。

ツールは、そのための土台です。アシストでは、FinOpsの概念を学べる講習や、FinOps実践に向けたワークショップなども提供しています。クラウドコスト管理の課題やツールの選び方に課題があるお客様はお気軽にご相談ください。

※記載されている会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。


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ビジネスインフラ技術本部 システム基盤技術統括部

吉田 雄希

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