
はじめに
オンラインバックアップとは、JP1/AJS3-Managerのサービスが動作中(=オンライン)の状態でバックアップを行うことを指しています。
以前のバージョンでもオンラインバックアップは可能でしたが、取得できるデータが限られていたり、運用が複雑になるケースがありました。
JP1/AJS3 V12.1では、JP1/AJS3-Managerで使用している組み込みDBのオンラインバックアップが簡単に取得できるようになりましたので、本記事では実装に際しての検討のポイントや実施手順をご紹介します。
なお、JP1 V12.1で追加されたオンラインバックアップ機能はマニュアル上で「バックアップ強化機能」という名称ですので、本ページでも同様に記載します。
バックアップ強化機能とは
バックアップ強化機能とは、JP1 V12.1で実装された「組み込みDBのデータをサービス起動状態で一括でバックアップできる」という新機能です。
データをリストアすると、組み込みDBに格納されるデータ類(ジョブ定義、スケジュール定義、実行登録情報、実行状態、実行結果など)が一括で復元できるため、システムの復旧を速やかに行えます。
後述の手順にも記載していますが、起動時にはディザスタ―リカバリースタートが行われます。
ジョブは実行抑止状態で起動するので、担当者は起動後に状態を確認し、必要な対処をした上で抑止を解除してジョブ実行を開始できます。
バックアップ強化機能使用の際の考慮点
バックアップ処理中は組み込みDBの更新処理が一時的に停止します。
バックアップ取得中は組み込みDBへの更新処理が一時的に停止するため、以下の処理や操作が一時的に停止します。なお、オンラインバックアップの所要時間は大規模モデルデーターベース環境の実測で数秒~数十秒です。そのため目安として1分程度を見込んでください。実際の所要時間はマシンスペックや他のプログラムの負荷等の影響を受けるため、実機にてご確認ください。
バックアップ対象の組み込みDB上で動作するジョブの開始、状態遷移
バックアップ対象の組み込みDB上に構築しているスケジューラーサービスに対する次の操作
スケジューラーサービスの起動
ユニットを操作するコマンドの実行
組み込みDBを操作するコマンドの実行
リモートジョブネットの実行(実行元ホスト/実行先ホスト)
JP1/AJS3 - ViewまたはJP1/AJS3 - Web Consoleからユニットへの操作
実行エージェントまたは実行エージェントグループの追加、変更、削除
バックアップ対象のデータベースに対して定期的なメンテナンスが必要です。
組み込みDBのデーターベース領域に無効領域が大量に発生していると、バックアップにかかる時間が長くなる恐れがあります。そのため、組み込みDBの定期的なメンテナンスを実施してください。なお、同じくJP1 V12.1から組み込みDBのメンテナンスを自動で行う「自動メンテナンス機能」が実装されています。
詳細は以下のマニュアルを参照してください。
JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編)
6.メンテナンスの検討
上記2つの考慮点から、オンラインバックアップは、
ジョブがなるべく動作していない時間帯(当日の処理終了後 など)
スケジューラーサービスに対して操作を行わない時間帯
組み込みDBのメンテナンス処理後
に、実行することをお勧めします。
組み込みDBのデータ量が増加し、処理性能も低下します。
バックアップ強化機能を有効にする場合、以下の通り必要となるディスク容量が増加します。必要となるディスク容量をマニュアル・リリースノートを参照の上、事前に見積もって構築してください。
必要ディスク容量(単位:メガバイト)
データベースモデル | バックアップ強化機能 | データ領域 |
小規模 | 無効 | 200 |
有効 | 700 | |
中規模 | 無効 | 1,400 |
有効 | 1,900 | |
大規模 | 無効 | 6,700 |
有効 | 7,200 |
※システムファイル領域に必要なディスク容量はバックアップ強化機能の有効/無効と関係なく同じです。
データ量が増加する影響で、ジョブ実行や実行登録操作などの組み込みDBの更新を伴う処理性能が低下します。JP1/AJS3の処理性能が求められるシステムの場合は、実際の環境で性能を検証した上で、バックアップ強化機能の使用を検討してください。
バックアップ対象に実行結果詳細や一時変更情報は含まれていません。
バックアップ強化機能を有効にした場合でも、実行結果詳細や一時変更情報(※)はバックアップ/リストアできません。これらの情報は組み込みDBに格納されていないためです。
一時変更情報対象
計画一時変更(日時変更/即時実行/実行中止/変更解除)
保留属性変更(保留属性設定/保留属性解除)
遅延監視変更(開始遅延監視/終了遅延監視/ジョブネット監視)
優先順位変更
実行順序制御方式の一時変更(同期/非同期)
起動条件の無効化,成立待ち時間の変更,成立待ち回数の変更
待ち合わせ条件の一時変更(待ち合わせ無効化/有効化)
実行予定の追加
世代指定による登録解除
組み込みDBリストア後のサービス起動時点はジョブは実行抑止されています。
組み込みDBをリストアし、JP1/AJS3のサービスを開始した時点では、ジョブの実行はすべて抑止されています。そのため、起動後に実行予定日時が超過したジョブが一斉に動き始めることはありません。
抑止されている間に、目視でジョブの状態を確認し、ジョブの状態を変更したり、再実行したりできます。
事前設定
バックアップ強化機能はデフォルトでは無効の状態でセットアップされています。
オンラインバックアップを取得したい場合、バックアップ強化機能に対応しているスケジューラーサービスと組み込みDBのセットアップが必要です。
既に無効な状態でセットアップ済みの環境の場合は、一度データーベースのデータを削除し再構築が必要です。
設定のタイミング | 必要な作業 |
新規インストール | インストール後にスケジューラーサービスと組み込みDBを設定 |
スケジューラーサービス追加 | スケジューラーサービス追加時に組み込みDBを追加して設定 |
既存の組み込みDBにスケジューラーサービスを追加するときに設定 | |
運用中の設定変更 | データの削除と組み込みDBの再構築 |
各設定のタイミングでのバックアップ強化機能のセットアップ方法は、以下のマニュアルを参照してください。
JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド
21. 運用方法に応じた機能のセットアップ
21.6 JP1/AJS3の運用中に組み込みDBをバックアップ・リカバリーするための設定
オンラインバックアップ/リストアの実行
本章では、物理ホスト環境のオンラインバックアップとリストアおよびリカバリの方法をご説明します。
バックアップ
バックアップ強化機能を使用したバックアップ手順をご説明します。
①バックアップ強化機能でバックアップできない対象のバックアップを取得します。
バックアップ強化機能でバックアップできる対象は組み込みDBに格納されているデータです。
JP1の設定ファイルや、共通定義情報、前提製品のJP1/Baseの情報など、システムのリカバリーに
必要となるファイルや情報は別途バックアップの取得が必要です。
バックアップ対象は以下のマニュアルを参照してください。
JP1/Automatic Job Management System 3 運用ガイド
2. バックアップとリカバリー
2.2 JP1/AJS3を使用するシステムの設定情報のバックアップ
②バックアップ先(バックアップデータ格納ディレクトリ)に必要なディスク容量を確保します。
必要な容量はバックアップを取得する組み込みDBと同等です。必要な容量の目安は以下の通りです。
データベースモデル | 必要な空き容量 |
小規模 | 約700メガバイト |
中規模 | 約1,900メガバイト |
大規模 | 約7,200メガバイト |
※データベース領域を自動拡張している場合や、手動で拡張している場合は拡張した分の容量も必要です。
注意事項
バックアップデータ格納ディレクトリは、ネットワークドライブ上に作成しないでください。
バックアップデータ格納ディレクトリにネットワークドライブを指定した場合の動作は保証
できません。
③組み込みDBが稼働状態になっていることを確認します。
ajsembdbstatusコマンドを実行し、バックアップを取得する組み込みDBが稼働状態になっていること(UNIT-STATがONLINEになっていること)を確認します。
<実行例>
ajsembdbstatus -s ust -id 組み込みDBセットアップ識別子(_JF0 等)
<出力例>
HOSTNAME : 127.0.0.1(103250)
SYSTEMID : ajs2
UNITID : unt1
ENTRYHOST : 127.0.0.1
PAIRHOST :
UNIT-STAT FES-STAT SETUP-STAT
ONLINE ******** SETUP
稼働状態になっていない場合はajsembdbstart -id 組み込みDBセットアップ識別子を指定して稼働状態(ONLINE)にしてください。
④jajs_dbbackupコマンドを実行してバックアップを取得します。
<実行例>
jajs_dbbackup -id 組み込みDBセットアップ識別子 -o バックアップデータ格納ディレクトリ
バックアップデータは、指定したバックアップデータ格納ディレクトリ下に「BK_組み込みDBセットアップ識別子_取得日_取得時間」というディレクトリが作成され、その下に作成されます。
⑤以下の組み込みDBに関する情報を取得してください。
これらはバックアップデータからリカバリーを実施するとき、リカバリーの前提条件を確認するための情報です。
1.JP1/AJS3 - Managerのバージョン情報
製品のバージョン情報を控えておいてください。
2.次のコマンドを実行し、表示される情報を取得してください。
- 組み込みDBのバージョン情報
ajsembdbidlist -v
- 組み込みDBの構成情報
ajsembdbstatus -c
- スケジューラーサービス構成情報
ajsembdbidlist
3.データベース領域の拡張情報
組み込みDBのデータベース領域をajsembdbaddareaコマンドで拡張している場合は、次のフォルダまたはディレクトリを取得してください。
Windowsの場合
組み込みDB運用フォルダ\CONF\embrm
UNIXの場合
組み込みDB運用ディレクトリ/conf/embrm
4.組み込みDBのシステム定義
組み込みDBのシステム定義のオペランドを変更している場合は、設定値を取得してください。
組み込みDBのシステム定義については、以下のマニュアルを参照してください。
JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド
23.1.1 組み込みDB稼働環境と運用方法の検討
リカバリー
組み込みDBをリストアし、システムをリカバリーする方法をご説明します。
①組み込みDBのリストアが可能なシステム環境をセットアップします。
組み込みDBのリストアは組み込みDB以外のリカバリーが行えていることが前提となるため、JP1/Base、JP1/AJS3 - Managerがインストールされており、バックアップを取得した時の設定状態にリカバリーされている必要があります。
ディスク障害などでJP1/AJS3を使用するシステムの環境が壊れた場合、まず組み込みDBのデータ以外をリカバリーします。このとき、システム全体のバックアップがある場合は、システム全体のバックアップを使用して、システム環境をリカバリーしてください。
システム全体のバックアップがない場合は、JP1/BaseとJP1/AJS3の再セットアップ後、以下の
マニュアルを参照してリカバリーしてください。
JP1/Automatic Job Management System 3 運用ガイド
2.バックアップとリカバリー
2.3 JP1/AJS3を使用するシステムの設定情報のリカバリー
②組み込みDBをリストアします。
1.jajs_dbbackupコマンドで取得済みのデータ(ディレクトリ)を任意の場所に配置します。
2.JP1/AJS3 - Managerのサービスを停止します。
組み込みDBが停止しているかどうかを確認します。
3.ajsembdbstatus -s ust -id 組み込みDBセットアップ識別子
<出力例>
HOSTNAME : 127.0.0.1(100019)
SYSTEMID : ajs2
UNITID : unt1
ENTRYHOST : 127.0.0.1
PAIRHOST :
UNIT-STAT FES-STAT SETUP-STAT
STOP ******** UNSETUP
4.組み込みDBが起動している場合は停止し、停止している場合も一度起動してから停止する。
(組み込みDBを正常停止するために必要な手順です。)
Windowsの場合、組み込みDBのサービス(JP1/AJS3 Database _JFx)が停止しているとコマンドが実行できません。サービスが停止している場合はコマンド実行前に手動でサービスを開始してください。
組み込みDBを起動する場合
ajsembdbstart -id 組み込みDBセットアップ識別子
組み込みDBを正常停止する場合
ajsembdbstop -id 組み込みDBセットアップ識別子
5.jajs_dbrestoreコマンドを実行する。
jajs_dbrestore -id 組み込みDBセットアップ識別子 -i バックアップデータ
「-i」には取得したバックアップディレクトリを指定します。
6.JP1/AJS3を起動します。
③組み込みDBのリストア後に必要な作業を実施する。
1.障害発生時のジョブネット、ジョブの状態に応じて、対処する。
jajs_dbrestoreコマンドを使用してリストアをすると、その後の初回起動は「ディザスタ―リカバリースタート」が行われます。ディザスターリカバリースタートでは、ジョブの実行が抑止された状態でJP1/AJS3 - Managerが起動します。
起動後に、ジョブのステータスを目視で確認し、必要に応じて状態変更や再実行してください。
また、バックアップ強化機能によりリストアされるデータには、「一時変更」情報は含まれないため、バックアップ取得前後に行った各種の変更も手動で再設定が必要です。
2.エージェントホストに残っているイベントジョブに関するマネージャーホストの情報を削除する。
次のコマンドをマネージャーホストで実行して、エージェントホストに残っているリカバリー前のマネージャーホストの情報を削除してください。
-aオプションには、対象の実行エージェント名に対応する実行ホスト名を指定してください。
jpomanevreset -F スケジューラーサービス名 -dh マネージャーホスト名 -a 実行ホスト名
3.ジョブの実行抑止を解除する。
次のコマンドを実行してジョブの実行抑止を解除し、業務を再開してください。
ajsalter -s none -F スケジューラーサービス名
以上でリカバリー作業は終了です。
まとめ
今回はJP1 V12.1で実装されたオンラインバックアップ機能についてご紹介しました。事前の設定や運用時の考慮点がいくつかありますが、バックアップとリストア自体はとても簡単に行える機能です。
JP1 V12.1以降をお使いの場合は一度検討してみてはいかがでしょうか。
製品正式名称(略称表記) および機能対象バージョン
JP1/Automatic Job Management System 3 (JP1/AJS3) 12-10以降
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いつもJP1サポート技術者ブログをご覧いただきありがとうございます。
本ブログの執筆を担当しているアシストJP1サポートセンターは、「JP1認定技術者」の資格を持つサポート技術者の対応が支持され、お客様満足度は10年連続90%以上を維持しています。
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