
- 1GAN:全社生成AI実践プロジェクト
もうGleanのない仕事には戻れない!営業向けインタビュー
アシストが全社で導入している生成AI「Glean」。営業部門ではどのようにAIを使って業務に役立てているのでしょうか?営業とインサイドセールスの中堅・若手・キャリアチェンジのメンバーに聞いてみました。
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アシストでは、全社員が生成AIを実務利用できる環境を2023年から導入しています。
導入後の利用トレンドを見てみようと、直近6ヵ月の利用実績を調べたところ、全社スケールでとんでもないことが起こっていたことがわかりました。
この記事では、利用実績をデータで読み解きながら、生成AIを実務で利用しているアシストのリアルな実情をご紹介していきたいと思います。
それではまず、全社でどれくらい生成AIが使われているのか? 数字を見ていきましょう。
アシストが導入している生成AIは「Glean(グリーン)
」になりますので、Gleanの利用ログデータをもとに紐解いていくことにします。
全社員分のログデータから、Gleanの利用実績を積み上げて計算していくと、6ヵ月間の利用回数のトータルは全社で130万回にのぼることがわかりました。
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Gleanでは「横断検索」と「チャット」の2つの機能に生成AIを利用しているので、ここでは両方を足し合わせた回数で130万回となっています。
Gleanを見るのも聞くのも初めて・・・というお客様には、「Gleanは社内版Google」と例えて説明させていただくのですが、アシストでの実際の利用実態を見ても、ドキュメントや情報を見つけ出すのに96万回使われているのは、まさに「検索エンジン」としての使われ方が王道だと言えそうです。
Gleanでは、検索(エンタープライズサーチ)に生成AIが採用されており、ユーザーが検索して知りたいことを理解するためにLLMが使われています。
Retrieverが企業内の文書をベクトル化して知識ベースとして書庫化し、検索クエリに基づいて適切な情報を見つけ出した後、LLMがRetrieverから受け取った情報を基に自然言語での回答を生成して提供します。
一般的に、LLMは答えるために使われていると思われることも多いのですが、Gleanでは私たちが知りたいことを解釈して、その知りたいことに対する答えを作ることの両方で使われるため、「検索による結果生成」と「チャットによる回答生成」をあわせた利用を生成AIの利用としています。
生成AIの全社での利用回数が130万回(6ヵ月間)という数字は果たして多いのか少ないのか・・企業規模によっても見方は異なってきますので、この数字を社員1人当たりの回数で割り出して解像度を上げていきましょう。
余談になりますが、アシストでは生成AIの利用開始にあたって個別具体的な利用方法を推奨したり定めることはしておらず、Gleanの使い方や頻度はすべて社員一人ひとりに委ねられています。(*) いったいどんな数字が表れてくるのでしょうか?
130万回を社員数で割ると、社員1人当たりの平均的な生成AIの利用回数は、6ヵ月で1,000回、1ヵ月で167回、1日で9回となりました。
利用期間 | 6ヵ月 | 1ヵ月 | 1日 |
---|---|---|---|
利用回数(社員1人当たりの平均) | 1,000回 | 167回 | 9回 |
この利用実績は国内企業のなかでもトップレベルの部類・・・と言えるような気もしますが、調査レポートなどと正確に比較したわけではないので、感想として聞き流してください。
ちなみに、社員数については、該当期間中にパパ・ママ育休で休業に入った社員や退職した社員は除き、期間中に在職した1,270名を実数にしています。また1日当たりの利用回数の算出にあたっては、人事部の協力のもと、該当期間に社員が取得した休暇の平均日数を除いてほぼ実働の勤務日数をベースにしていますので、より実態に近い数字として見ていただけるかと思います。
さて、全社での利用実績をもう少し掘り下げて見ていきましょう。
1日の利用回数を頻度別に分類すると、このような分布になりました。
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生成AIを1日に10回以上使っているパワフルな社員は3割で、平均的な9回程の社員とあわせると、6割の社員が1日に5回以上利用しており、生成AIを日常的に使っていることがわかります。
また、アクティブユーザー率は97%で、生成AIが全社にスケールして使われていることを示しています。
ところで、上記のグラフのなかで、1日20回以上使っている猛者が8%もいることにお気づきでしょうか?
続いては、このパワフルなユーザー群にフォーカスしながら、利用実績をイノベーター理論に当てはめて可視化していきたいと思います。
イノベーター理論とは利用率や普及率を5つの層に分けて見る方法で、新製品をイチ早く積極的に取り入れる層をイノベーター、イノベーターほど革新的ではないけれど早期に採用する層をアーリーアダプター、その次にアーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードと順に定義するマーケティング理論です。
Gleanは、生成AIスタートアップのユニコーン企業が開発する最先端のサービスですので、このフレームワークはうってつけかもしれません。アシスト社員の反応は、どのように浮かび上がってくるのでしょうか。
では、レイヤー別に見ていくことにしましょう。
こちらが、イノベーター理論で定義されている割合をベースに、社員を5層に分布したグラフです。
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イノベーター | アーリーアダプター | アーリーマジョリティ | レイトマジョリティ | ラガード | |
---|---|---|---|---|---|
社員数 | 33名 | 173名 | 445名 | 427名 | 192名 |
利用回数(半年) | 4,000回以上 | 1,700-3,999回 | 700-1,699回 | 200-699回 | 199回未満 |
利用平均(1ヵ月) | 866回 | 405回 | 187回 | 72回 | 16回 |
利用平均(1日) | 46回 | 22回 | 10回 | 4回 | 1回 |
一番左のイノベーターが、もっともGleanを使っている集団です。猛者のなかの猛者ですね。
人数にすると33名で、利用回数は半年で4,000回以上、1日に50回ほど使っているので、圧倒的に突き抜けた利用をしている人たちということになります。
ちなみに、イノベーターの中でもっとも利用している社員は、半年で8,000回、1カ月で1,300回、1日あたり75回という利用実績でした。
筆者はといえば、それなりにGleanを使っている自負があったにもかかわらず、三層目のアーリーマジョリティのポジショニングだということがわかり、先頭集団との想像以上の利用差に愕然としています。
さて、生成AIの利用効果として「削減できた業務時間」も指標の一つになり得るかと思います。
しかしながら、生成AIの利用によって削減できた時間はどうやって測定するのがよいのか、新しい領域ということもあってメジャメントの手法に迷います。
たとえば、固定的なルーティン業務に生成AIを利用した場合はビフォー/アフターの正確な測定がしやすいかもしれませんが、Gleanの場合は、わからないことが発生したら聞く、知りたいことについて情報をまとめてもらうというような都度都度の利用法がメインです。
あるいは、戦略プランを立てるにあたって、2時間ずっとGleanと壁打ちしていたら100回のやり取りになりました、ということもあるので、単純に利用回数に何かしらの時間を掛け合わせることで削減できた時間とする、というのも実態とは乖離します。
そこで、社員へのアンケートを実施し、生成AIの導入前後で週あたりに削減できた無駄な時間を教えてもらうことにしました。こちらがその結果になります。
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社員の回答から、週当たりに削減できた無駄な業務時間は、全社平均で1人31分となり、8割の社員が週に15分以上削減できていることがわかります。
全社で合計すると、6ヵ月間で1.8万時間が生成AIによって削減できた時間になります。これは推定値ではなく、社員がリアルに実感している確実な成果だと力説できる数字になりました。
たとえば、全社で1人当たり週31分の時間削減をコスト換算すると、1時間当たり2.5千円とした場合、1年間では9千万円になります。アシストは1,300名の企業規模ですので、生成AIの導入利用コストを差し引いても、初年度から充分な効果がもたらされていると言えます。
さらに、生成AIを利用した効果で興味深いのは、時間やコストの削減にとどまらず、その後に続く業務のパフォーマンスに波及していることです。それでは最後に、定性効果を含めて見ていきましょう。
約1,300名の社員が生成AIで削減できた時間は1.8万時間(6ヵ月)という成果はどう評価できるのか、人事部門のマネージャーと一緒にこの数字をレビューしながら、経営指標とリンクする変化が起きていないか聞いてみました。
すると、アシスト全体として残業時間は減少、1人当たりの労働生産性は上昇しており、これはGleanの利用と一致しているのは確かということです。(ただしGleanを使い始めて初年度ということもあり、Gleanの貢献度合いの立証はまだこれからです。)
また、Gleanの利用と社員の業績パフォーマンスに相関がありそうかを尋ねたところ、上記のイノベーター理論でGleanをよく使っているパワフルなユーザー群は、業績評価が高く残業時間の減少傾向も高いことがわかりました。
Gleanを突き抜けて使っているユーザー群はハイパフォーマーであり得るということが見えてきたわけなのですが、生成AIを積極利用することと業績の相関については、ミスリードを避けるためにももう少し慎重に見ていく必要がありそうです。
ただ、生成AIの積極的な活用は、新しい働き方のモデルとして経営観点からも望まれる働き方になってきているのは間違いなく、期待に対して全社での実践が成果を挙げていると言うことができます。
さて、数字で見るのはここまでにして最後は、生成AIを使っている実践現場のコメントを抜粋してご紹介します。
上記の「新入社員にとってGleanが役立っている」というコメントは、数としても多くの社員から寄せられていました。
実は、ログデータから利用上位者の共通項を探っていった時にも、新卒・中途問わず「新入社員」は際立ったセグメントになっており、入社後は知らないことばかりで困り事が多い・・・という状況を打破するのに、Gleanがいい働きをしていそうだという仮説がありました。
そこで、それぞれのセグメントを代表する社員に、生成AIをどうやって役立てているのかインタビューで聞いてみました。
人材育成、早期戦力化、社員同士のつながり強化、社員エンゲージメントの向上の観点からも、Gleanがオンボーディングに役立っていることがわかります。
社員インタビューと利用実績の紐解きから、生成AIは全社にスケールさせてこそ、社員への還元も、経営観点での変化も高く期待できるという考察が導ける結果となりました。
利用実績を一緒にレビューした人事部門のマネージャーからは、「Gleanはもはや業務インフラで、社員一人ひとりにとって欠かせない存在になっている」という評価があったのですが、まさに今回の利用実態とピタリと一致する見立てとしてこの記事を締めくくりたいと思います。
次回以降の記事では、社員アンケートのコメントを少しずつ取り上げていきますので、どうぞお楽しみに!
アシストでの使い方をもっと聞いてみたい、Gleanについて詳しく知りたい、というお問い合わせ
もお待ちしております。
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古賀 智美
2001年にアシスト入社。AIやBI分野のマーケティングを経て、2023年より「Glean」の日本国内での立ち上げに参加。マーケティングマネージャー。
アシストでの生成AI全社実践プロジェクト「1GAN」のCoE。
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