分科会

ソリューション研究会の「分科会」は、業種も所属企業も、立場も全く違うメンバーが初顔合わせから1年間かけて、一つのテーマについて研究します。よくプロジェクトに例えられますが、意見交換だけでは終わらず「報告書」や「プレゼン資料」などの成果物の提出まで行うところが特徴です。

また、研究プロセスが事前に決まっているものでも、主催者が導いてくれるものでもありません。
「お膳立てされていないところがいい」、「他流試合で腕試しができるなんて最高!」とおっしゃってくださる参加者もいますが、自ら道筋を決めなければ活動が進まないという状況を不安に感じる方もいらっしゃいます。

そこで、2021年度プレゼン最優秀賞を受賞した、西日本「見えないデータ活用」分科会が、ナレッジマネジメントの基礎理論である「SECI(セキ)モデル」(一橋大学大学院教授の野中郁次郎氏らが提唱)を基に、ソリューション研究会の分科会活動の「うまい進め方」をまとめてくれましたのでご紹介します。

「初めての参加で勝手が分からない」、「メンバー全員の知恵を出し合える活動にしたい」、「分科会活動が行き詰っている」などなど、分科会参加中だったり、参加を検討している方は、ぜひこちらをお読みください。分科会活動参加の満足度が上がること、間違いありません。


参加動機はみなそれぞれ

西日本「見えないデータ活用」分科会は、営業職5名、技術職3名、計8名で構成されるチームでした。

メンバー一覧
 株式会社デンソーテン 服部 克征 様 (リーダー)
 SGシステム株式会社 田中 麻璃子 様 (サブリーダー) 
 象印マホービン株式会社 岸良 悠生 様
 ドコモ・システムズ株式会社 澤田 穣 様
 コベルコシステム株式会社 井上 圭 様
 株式会社麻生情報システム 有光 毅 様 
 株式会社アシスト 猪 宏史
 株式会社アシスト 松尾 徹也


8名のうち、過去に分科会参加経験があったのは2人だけ。うち1名はアシストメンバー、もう1名はリーダーの株式会社デンソーテンの服部克征さんでした。
服部さんは、前回参加した際に惜しくも地区代表に選ばれなかったことから、今度こそリベンジしたいという思いで2021年度に参加されました。


株式会社デンソーテン 服部様

株式会社デンソーテン 服部様


その他のメンバーの参加動機を聞くと、実に多岐にわたっています。

技術職メンバーは、オンラインの活動で本当に議論や合意形成が可能か試してみたかった井上圭さん(コベルコシステム株式会社)、他社との研究活動を実体験したかった岸良悠生 さん(象印マホービン株式会社)。

営業職は、自分の力を試してみたかったというサブリーダーの田中麻璃子さん(SGシステム株式会社)、異業種交流の機会と聞いて視野を広げたかった有光毅 さん(株式会社麻生情報システム)、営業活動における経験値を横展開したいと考えた澤田穣さん(ドコモ・システムズ株式会社)、担当地区のお客様にこの活動を紹介するのにまずは自分が体験したかった猪宏史さん(株式会社アシスト)、二度目の参加でどれだけ自分が貢献できるか試してみたかった松尾徹也さん(株式会社アシスト)。


SGシステム株式会社 田中様

SGシステム株式会社 田中様


チームの特徴を聞くと「納得がいかないことがあれば納得するまで徹底的に議論する、またそれが自然とできる」グループだったとのこと。異なる参加動機を持った初対面の参加者が、いったいどのようなプロセスを経て「本音」で話せる仲間に変化していったのでしょうか?


分科会のうまい進め方

SECIモデルをベースに、「ナレッジマネジメント」の実践手法について研究したこの分科会では、分科会を進める上で重要なのは次の四つである、という結論に至りました。


1. メンバー全員の共通した目標を設定すること

一つ目は、メンバー全員の共通した目標を設定することです。
この分科会では「全員の分科会に対する満足度の総和がMAXになること」をメンバー全員の共通目標に設定しました。全員がとことん話し合い、分科会の総意としてこの目標を設定したことが何よりも重要だったと振り返ります。この目標があったからこそ、お互いの考えを聞き入れ議論し、どのような方向性・研究をすれば最善の結果になるかを追求し続けることができたと言います。


活動の目的を明確化するために作ったバリューグラフ(左:分科会への参加目的、右:研究テーマの目的)

バリューグラフ

※バリューグラフとは?
スタンフォード大学の故石井浩介教授らによって開発された価値工学の手法。もともとは、製品やサービスの目的や価値(バリュー)を構造的に可視化し、アイデアの幅を広げるために用いられる手法ですが、事業領域に対する理解を広げることにも適用できます。



また、目標を設定するだけではなく、分科会の打合せ終了時にはGoogle Formのアンケート機能を利用して、参加者に満足度調査(メンバーの意識や要望を確認することが目的)を実施したといいます。その中では「活動をより良くするためのアイデア」も募集し、実際そこで出た提案を取り入れ、毎回宿題を出し、事前準備をきちんとした上で参加することが運営プロセスになりました。

「メンバーのモチベーションを保ち、活動の方向性・進め方を常に是正できるようにするためアンケートを実施し、その結果をメンバー全員で振り返りながら改善するようにしました」とリーダーの服部さんは振り返ります。


「意識・希望調査」のアンケートより抜粋

「意識・希望調査」のアンケートより抜粋


2. 場を創出すること

分科会をうまく進めるコツの二つ目は「場を創出すること」です。これは単に会議の場を設定することではなく、「本音で話すための雰囲気づくり」を徹底したそうです。まずは、「本音で議論する」「会議中の相槌・うなずきの推奨」、さらには「Zoomのリアクション機能で参加者の発言に反応を示す」「心理的距離感を近付けるためニックネームで呼び合う」といったグランドルールを決めました。

しかし、ルールを定めただけで「本音」で話せるようになるとは思えません。
そこで重視したのが「感性・感覚・感情」の共有です。
田中さんが福岡での営業活動の合間に外を歩きながら、あるいは同僚の方が運転される社用車の中から分科会のZoomミーティングに参加するのを見て、この活動に対する本気度が他のメンバーにも伝播したといいます。「本気でボールを投げて来られると、こちらも良い意味で本気でボールを返したくなりますよね」と、有光さんは語ります。


株式会社麻生情報システム 有光様

株式会社麻生情報システム 有光様


また、リーダーの服部さんのリベンジしたいという想いも、メンバーに共有されたようで、最初から「優勝」を狙っていたと言います。「やるからには絶対優勝したい!」といつも口に出し、活動時も特に後半は「優勝するためにはどうすれば良いか」を相談していたそうです。「リーダーにロマン(必ず最優秀賞でリベンジする)があったことが良かった、みんなもそれに応えようと頑張ってましたから」と教えてくれたのは、アシストから分科会に参加した松尾さんです。

さらに、リアルタイムの対話時には、本人が言語化するのが難しい暗黙知を、共有されたメンバーが言語化するのを支援するということを意識して実践しました。
本人が「うまく表現できない」「最適な言葉が出ない」などで困っている場面はよくあることです。
そんな時、他のメンバーが「こういうこと?」と言って補うことで「暗黙知が言語化する」瞬間を実感したそうです。
逆に聞く方も、特に中だるみしたような時には、メンバーとより本音で議論することを意識して、「それってもっと具体的に言うと?」など、より突っ込んだ聞き方を心掛けたとのこと。

こうした様々な取り組みを積み重ねることで、全員参加型の本音で話せるチームが作られたようです。


3. ICTツールを巧みに活用すること

三つ目は活動の全てがオンラインで行われたこともあり、ICTツールをふんだんに活用しました。その一例を分科会の成果報告書からご紹介します。


  • 動画コンテンツ:Zoom/レコーディング機能
    議事録の文章だけでは伝わりづらい議論の雰囲気や熱意を動画で見てもらうことで、欠席者にも議論を追体験してもらった。
  • オンラインホワイトボード:Miro
    直感的に利用でき、コメント機能や付箋などのビジュアルツールにより莫大な情報を一つのボードに集約することができる。発言内容を可視化することで、特にリモート会議において、チームでの共同作業を活性化できた。
  • アンケート:Googleフォーム
    メンバーの満足度向上を図るために、会合終了時に「意識・希望調査」を実施し、メンバーが感じていること、課題視していることを共有し、活動の改善に役立てた。
  • グループウェアツール:Google Workspace
    成果報告書や活動資料などのドキュメントファイルの共有と共同編集に活用した。
  • グループチャット:Slack
    即時性のある遠隔コミュニケーションツールとして、年度途中から利用した。
  • スケジュール調整ツール:調整さん
    年末年始など多忙な時期も、朝一や隙間時間/ピンポイントに集まれた。


ドコモ・システムズ株式会社 澤田様

ドコモ・システムズ株式会社 澤田様


他にも様々なツールがあると思いますが、事務局から全分科会に提供される共通ツール以外にも、活動内容やメンバーが置かれた状況に応じてICTを活用し、作業を効率化することをお勧めします。


4. SECIモデルをプロセスに組み込み実践すること

上記を実践するにあたっては、SECIモデルの概要を理解して、業務プロセス(この場合は分科会活動)を進めるとより効果的です。
SECIモデルとは個人が蓄積した知識や経験(暗黙知)を組織全体で共有して形式知化し、新たな発見を得るためのプロセスのことです。

データ活用分科会では、SECIモデルという、ともするととっつきにくい理論体系を、例示や自分たちが実践したことに置き換えて分かりやすく説明されています。成果報告書、またはプレゼン内容をぜひご覧ください。


2021年度 プレゼンテーション最優秀賞
https://www.ashisuto.co.jp/solution-studygroup/workgroups/reports/2021.html

※成果報告書の閲覧にはパスワードが必要です。
 事務局までお問い合わせください。(sol_web@ashisuto.co.jp


もっとこうすれば良かった

一年間を振り返って、もっとこうすれば良かったということはなかったか、他の分科会向けアドバイスとして追加で伺いました。


  • 各自が分科会で取り組んだ手法を社内で実践・検証し、結果を本分科会での成果として報告できればなお良かったです。
  • リモートでの活動が続くならという前提で、オンライン飲み会(アルコールの飲み会である必要はないですが)は早々に開催した方が良いと思います。オンライン会議は雑談もしづらい環境であるため、気軽に話せる時間を早い段階で作るといいと思います。
  • Slackが活動当初から活用できていたらコミュニケーションはもっと活性化したかもしれません。
  • 全国大会の最終発表日当日まですべてリモートでの活動だった。せっかく、福岡、広島、兵庫、大阪のメンバーが集まったので、本当は出張したり、各社の見学会などリアル開催をしてみたかった。

オンラインだからこその運営を工夫しながらも、リアル開催であればこんなこともできたのに、という想いは皆さん強かったようです。


分科会活動で得たものは?

最後に一年間の活動を終えて何を得たかについて伺いました。


  • リーダーとしてチームをまとめ、成果を上げるためにどう振る舞えば良いかを身をもって学ばせていただきました。仕事を行う上では、正論ばかりではメンバーはついてこず、メンバー全員が共通の目的に向かって進んでいけるよう目標を設定する、そのために個人の意見を尊重する事が非常に重要だと思いました。また、メンバーを信頼する、任せるという基本的な事も改めて学ぶことが出来ました。
  • 営業職の私でも、10人程度のプレゼンの場はあっても、これだけの大人数の前でプレゼンをさせていただける場はそうそうありません。挑戦したことで経験値も高まり、成功体験ができたことで色々なことにも挑戦していきたいと意欲向上に繋がりました。社内報にも掲載され「実際の発表内容も見たよ!今度議論の場でぜひ研究内容を実践してみようと思う」とメッセージをもらい嬉しくなりました。
  • リモートでも分科会活動が行えることを身を持って証明できました。コロナ禍でコミュニケーションが取りづらいことを逆にプラスに変え、西日本各地の参加者によるチーム構成でアウトプットができる経験が得られました。
  • 分科会で学んだ経験を生かして社内のコミュニケーションを図るとともに、こうしたら業務効率化に繋がらないかなど、上司になかなか言えないことなどを見える化し改善提案して、メンバーが少しでも働きやすい環境を提供できるように心がけるようになりました。

そして分科会活動で得たものとして全メンバーが共通して回答されたのが、「最高のメンバーと議論できたこと、この経験は本当に一生ものになった」「普段の仕事では築けない人間関係は財産になった」という点です。

その関係づくりに少しでも貢献できたことを嬉しく思うとともに、その関係が今後も長く継続されることを祈っています。


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