AIプログラミング分科会は企業課題を機械学習でどう解決するかというテーマで活動しましたが、この分科会が採用した集団学習のアプローチやその手法は、人材育成に取り組む企業だけでなく、今後当研究会の分科会活動やその他のプロジェクト型学習に取り組む方に非常に参考になる内容です。
新しいことにチャンレンジするには、一人あるいは一社でやるよりも、仲間を見つけて、しかも企業の枠を超えて実施する方が互いに切磋琢磨したり、先行学習者によるヘルプが得られたりと極めて有効であることが、このAIプログラミング分科会の実体験から明らかです。ぜひ複数メンバーによる研究活動やプロジェクト型学習に取り組む方は、最初にこの内容を参考にされることをお勧めします。
どんな点が評価されたのか
「AIプログラミング分科会」の成果報告書が全国第一位に選ばれたのは、どんな点が高く評価されたのでしょうか。審査員からは、次のようなコメントが寄せられています。
- 世を席巻しているAIだが自社で取り組むにはハードルが高いという企業もまだまだ多い。それに対するアプローチとしてとても興味深い。人がいない、知見がない、どう取り組めばよいか分からない、という状況に対するひとつの答えを具体的に示している。
- AI知識の取得という目的は元より、学習プロセスを客観的に評価し、研究成果とした点は非常に良かった。東京、名古屋、福岡と各地に散らばる参加者がオンラインでしか活動できないという制約がある中、メンバー各自が習得に取り組んだ結果、スキルレベルを向上させたことは明確な成果である。
課題
集団学習の提言に至った理由
Pythonのスキルレベル推移
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機械学習のスキルレベル推移
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集団学習の内容
最初の「スキルレベルアンケート」実施後、分科会内のプログラミングスキル,機械学習に関する知識の差を埋め,共通テーマ「機械学習で企業課題をどう解決するか」について議論するために、段階を追って基礎学習を進めていくことにしました。そこでライブラリを活用して「Pythonのプログラム(PG)をマスターするチーム」(4名のプログラミング未経験者対象)と、活動終了までに高度なデータ分析レベルを目指す「AI分析チーム」(5名)に分かれて学習を進めました。
学習プロセス1 Pythonによるプログラミングを学ぶ
学習プロセス2 Pythonを利用した機械学習を学ぶ
全員がコンペティションを通して機械学習プログラミングの知識やスキルを向上させ、結果、機械学習による予測の精度を高めるための議論ができるところまでこぎつけました。一方で、Pythonのコーディングができるという基礎スキルだけでは、高度なデータ分析・加工技術が追いつかず、コーディングで手がとまってしまいコンペティションに投稿できなかったメンバーも出たとのことです。データ分析の知識を個人で積極的に習得する必要があったのはもちろんですが、チームとしての連携や役割分担、フォローがもう少しできたのではないかという反省点が残りました。
学習プロセス3 機械学習で企業課題を解決する
学習プロセス1と2を経ることで、ようやく企業課題を機械学習でどう解決するかについてメンバー全員で議論ができる素地ができました。企業課題は「Web通販サイト」を選択し様々な仮説をたて、それをもとに機械学習を用いたデータ分析導入時に確認すべき事項の検証を行い、AI導入検討シートにまとめました。
★AI導入検討シートDL先URL
機械学習の導入 6ステップ
- 1.導入目的とステークホルダーを明らかにする
- 2.課題を整理する
- 3.機械学習に適した課題を選択する
- 4.課題解決によるメリットを調査する
- 5.データ(量・質)を揃えられるか確認する
- 6.自社で行うべき役割を決定する
学習手法の考察
分科会のメンバーには、個人学習として30時間、分科会の集団学習として100時間、合計130時間の学習を行った方もいました。同メンバーは全76回の活動のうち、2~3時間の定例活動に14回、作業や質問相談が可能なもくもく会や勉強会に49回、合計63回参加しました。
同じ時間に集まって全員で実施する「同期型集団学習」、共通の学習単元を個人で学習していく「非同期型集団学習」、完全に個人で実施する「単独学習」と学習方法を3種類に分類した場合、この分科会では、以下7種類の勉強方法を活用しました。
同期型集団学習
- 1.メンバーが講師となりPython・機械学習について講義学習を行った。
- 2.一人が画面を映しながらプログラミングをし、他メンバーが指摘をするモブプログラミング
非同期型集団学習
- 1.メンバー全員で1冊の本やチュートリアルコードなど、内容と期限を決めて勉強する宿題学習
- 2.チームで機械学習コンペティションに参加してノウハウを共有しあう競技参加
単独学習
- 1.機械学習検定(E検定)の資格受験
- 2.YouTube動画やe-Learningサイトの受講(e-Learning・動画受講)
- 3.Pythonアプリケーションの実装
講義学習は、リアルタイムに質問ができたり、その場で不明点が解決でき、学習に行き詰ることがないものの、講師役の負担が大きいなど、それぞれのメリットとデメリットも、実際にやってみたメンバーの実体験として考察されています。詳細は、成果報告書や発表内容をご参照ください。
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結論
2023年度「分科会」メンバーを絶賛募集しています。
https://www.ashisuto.co.jp/solution-studygroup/workgroups-apply/