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2024.12.17

Oracle Cloud VMware SolutionでVMware HCXを利用するための準備

前回の記事「Oracle Cloud VMware SolutionにおけるVMware HCXとは?」では、VMware HCX(以下、HCX)の概要をお伝えしました。

今回は、Oracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)で提供されているソリューション「Oracle Cloud VMware Solution(以下、OCVS)」でHCXを利用するための検討ポイントや前提事項を説明します!


OCVSでHCXを利用するための2つのポイント

1) HCXライセンス

OCVSでHCXを利用するためには、ライセンスを考慮する必要があります。

ここでは、ライセンスの種類や機能概要、検討ポイントをお伝えします。

HCXライセンスの種類、機能概要

HCXライセンスには以下の2種類があります。

・HCX Advanced
・HCX Enterprise

HCX AdvancedライセンスはHCX Enterpriseよりも安価ですが、その分利用できる機能に制限があります。

それぞれのライセンスで利用できる機能は、以下の表をご確認ください。
※Advancedの機能は全てEnterpriseでも利用可能です。

 
HCXライセンスで利用できる機能
                                                                                                                                                                                             
ライセンス機能機能概要
AdvancedHybrid interconnectオンプレミスとクラウドを接続し、セキュアな通信を可能にする。
WAN oOptimizationデータ圧縮やプロトコル最適化により、ネットワークパフォーマンスを向上させる。
Legacy vSphere to modern mobility旧バージョンのvSphere環境から一度に最新のクラウド環境への移行を可能にする。
Bulk migration複数仮想マシンの同時移行を可能にする。その際にHCXにより仮想マシンの再起動が実施される。
Live migration 仮想マシンを1台ごとに移行する。その際にHCXによる仮想マシンの再起動は実施されない。
Cloud-to-cloud migration 異なるクラウド間での仮想マシンやワークロードの移行を可能にする。
Disaster protection災害発生時に迅速に復旧させる。
EnterpriseHCX Replication Assitsted vMotion(RAV)複数仮想マシンの同時移行を可能にする。その際にHCXによる仮想マシンの再起動は実施されない。
Migration from KVM and Hyper-V to vSphere非vSphere環境から直接vSphere環境への移行を可能にする。
Traffic engineeringトラフィックのルーティングや帯域幅を調整し、トラフィックの効率化を可能にする。
Mobility groups異なるデータセンタやクラウドにある仮想マシンをグループ化し、複数仮想マシンの一括移行やプロジェクト単位でワークロードを管理可能にする。
Mobility optimized networking(MON)オンプレミスを経由せずにクラウド内で通信を完結し、トロンボーン現象を回避可能にする。

参考:VMware HCX Licensing and Packaging Overview(※Broadcom社のサイトに移動します)


HCXライセンス選定時の検討ポイント

現在のオンプレミスの構成や移行する規模等に応じて、必要なライセンスを検討ください。

特に、RAVやMONといった利便性の高い機能を利用するためにはEnterpriseライセンスが必要です。

RAVやMONの概要については、前回の記事を参照ください。

また、HCXのライセンス価格も併せて説明します。

以下の表のとおり、HCXのライセンス利用価格はESXiのシェイプによって異なります。

DenseIOシェイプはESXi1台から構成可能ですが、デフォルトではEnterpriseライセンスは含まれていません。

そのため、DenseIOシェイプでEnterpriseライセンスの利用を検討している方は、別途ライセンス費用が発生する点にご注意ください。

ESXiのシェイプとデフォルトで利用可能なHCXライセンス
                                       
シェイプデフォルトで利用可能なHCXライセンス
StandardAdvanced,Enterprise
DenseIOAdvanced
GPUAdvanced, Enterprise

例えば、DenseIO.E4.32シェイプのシングルホストでHourly Commitで744時間利用する場合、Enterpriseライセンスの利用有無で1か月あたり46,000円ほど利用料が異なります。

OCVSでのライセンス費用を試算するにはには、以下の図のとおりOCI Cost Estimeter(※オラクル社サイトに移動します)をご利用ください。

Cost Estimeter画面(HCX Enterprise無し)

Cost Estimeter画面(HCX Enterpriseあり)

  • 上記の金額は本記事執筆時点のものです。最新情報は本文中に記載のオラクル社提供OCI Cost Estimator でご確認ください。

2) オンプレミスからOCVS接続時のネットワーク構成

HCXを利用してオンプレミスからOCVSへ仮想マシンを移行するには、ネットワーク構成も事前に考慮しておく必要があります。

その際のポイントを、オンプレミスとOCVSのそれぞれの観点で説明します。

オンプレミスのネットワーク構成の前提

仮想マシンの移行のために、オンプレミス側で事前に確認しておくポイントは以下です。

・オンプレミスVMwareとHCXとの互換性
・VLAN、dvPortGroup(分散ポートグループ)
・サイト間接続
・ファイアウォール
・DNS

それぞれ説明します。


・オンプレミスVMwareとHCXとの互換性

利用するHCXとオンプレミスVMwareのバージョンは互換性が必要です。

以下のマトリクスを利用し、互換性があるか確認ください。

互換性が無い場合には、事前のバージョンアップを検討ください。

Product Interoperability Matrix (※Broadcom社のサイトに移動します)


・VLAN、dvPortGroup(分散ポートグループ)

オンプレミスからOCVSへの仮想マシンの移行時には、他のネットワークに影響が出ないようにするために複数のVLAN、ポートグループが必要です。

オンプレミスのvCenterに、Management用、HCX用、vMotion用、Replication用のVLAN、ポートグループが作成されていることを確認します。


・サイト間接続

パフォーマンスを最大化するため、1Gbpsまたは10GbpsのFastConnectを利用してOCVSと接続されている必要があります。


・ファイアウォール

OCVSのHCXコンポーネントとオンプレミスのHCXコンポーネント間の通信や、オンプレミスのvCenterとHCXコンポーネント間の通信などが通信できるようにファイアウォールを設定しておく必要があります。

HCXのポート要件は以下サイトに記載があります。Select Productsに「VMware HCX」を選択し、ポートを確認ください。

VMware Ports and Protocols (※Broadcom社のサイトに移動します)


・DNS

オンプレミスのVMware環境、及びOCVS環境の各コンポーネントをFQDNで名前解決(正引き・逆引き)ができるように、DNSのレコードや転送設定を実施する必要があります。

オンプレミスのDNSサーバにもOCVSのHCXコンポーネントやvCenterのレコードを追加します。


OCVS側のネットワーク構成の前提

続いて、HCXの利用のためにOCVS側で確認しておくポイントは以下です。

・ルーティング
・ファイアウォール
・ゲートウェイ
・DNS

それぞれ説明します。


・ルーティング

OCIでは、どの通信がどのゲートウェイへ向かうのかといったルーティングを明示的に設定する必要があります。

基本的にはOCVSの構築時に自動でルーティングルールが設定されますが、HCXなどオンプレミスとの通信を実施する際には手動で設定します。


・ファイアウォール

オンプレミスからの通信がOCVS内へ入ってくること(インバウンド通信)を許可するように、ファイアウォールルールを設定する必要があります。

OCIでは、ファイアウォールはセキュリティリストやネットワークセキュリティグループ(NSG)を利用して設定します。

ファイアウォールもOCVS構築時に自動で設定されますが、オンプレミスからの通信を許可する設定は手動で設定します。


・ゲートウェイ

ゲートウェイはOCIネットワークと外部ネットワークとの通信の出入り口を示しますが、ゲートウェイもOCVS構築時に自動で設定可能です。

オンプレミスとの通信時には、動的ルーティングゲートウェイ(以下、DRG)を利用する必要があり、DRGは手動で作成する必要があります。


・DNS

OCIでは、DNS機能を提供するサービスとしてプライベートDNSがあります。

OCVSにおいても、オンプレミスVMware環境とFQDNで名前解決ができる必要がありますが、デフォルトではOCVSのコンポーネントのレコードのみ作成されている状況です。

そのため、別途オンプレミスVMwareの各レコードやオンプレミスDNSサーバへの転送ルールなどを設定する必要があります。


まとめ

OCVSでHCXを利用するための検討ポイントや前提事項を説明しました。

OCVS構築時も同様ですが、事前にコストや機能等を十分に考慮した上で、利用し始める必要があることがお分かりいただけたかと思います。


次回はお待ちかねのHCXのセットアップ・仮想マシンの移行手順をご紹介予定です。

どうぞお楽しみに!



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執筆者情報

うるしざか ゆうご プロフィール画像

2024年アシストに参画。以前はオンプレミスのVMware HorizonやvSphereのサポート業務に従事。
現在はOCIのポストセールス業務を担当する傍ら、OCVSのサポートに関連する業務も担当している。
趣味は居酒屋巡りとテニス。



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