開発から運用まで、IT部門のお役に立つ情報をお届けするサイトです

運用管理は変わらない変えるのは”やりかた”だ次世代型ITサービスマネジメント変革ソリューション『縁(ENISHI)』
  • 全般

DXをもたらす開発、運用へアップデート! 面倒くさいをなくす変革アプローチとは?

  • #コラム
  • #CI/CD
  • #サービスデスク
  • #運用管理

2022.08.30

DXをもたらす開発、運用へアップデート! 面倒くさいをなくす変革アプローチとは?

執筆者のご紹介

アシスト 加藤 里絵

加藤 里絵
システム基盤技術本部

1998年入社。
1999年よりJP1研修講師、プリセールス、構築支援に従事。 2008年より特定製品によらず幅広い分野でのプリセールス活動の従事。

コロナ禍の影響で急務となったテレワーク、働き方改革、クラウドシフトなどへの対応に加え、企業ではデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが進んでいます。IT部門の現場では、従来の開発・運用業務に加え、コロナ禍への対応、そしてDX関連システムの開発・運用も加わり、これまで以上の効率化が求められています。

時間や人的リソースがますます逼迫する中で、IT部門はどう対応していくべきか。本記事では、この深刻な課題への解となる、アシストが考える「IT部門にDXをもたらす開発&運用への変革アプローチ」についてご紹介します。

IT部門の課題解決の鍵は「トイル」の洗い出しと改善

IT部門が抱える現状の課題

以下は調査会社である株式会社アイ・ティ・アール(ITR)の資料からの抜粋です。各企業における DXの位置付けについては、「全社レベルで取り組むべき最重要事項だと思う」という企業の割合が2019年から2021年の3年で増加傾向にあることが分かります。企業内でのDXの位置づけが高まっていることが見て取れます。

出典:株式会社 アイ・ティ・アール「IT投資動向調査2022」

また、以下は同じくITRの資料からの抜粋になりますが、DXに向けた体制としては「デジタル戦略を専属で担う役員(CDO)が任命されている」、「デジタル戦略を担うスタッフの採用を行っている」という2点により、DXの推進は、IT部門ではなく、専属部門が担当して推進している場合も多いことが分かります。

出典:株式会社 アイ・ティ・アール「IT投資動向調査2022」

IT部門では、コロナ禍の影響により、テレワーク、クラウドシフト、働き方改革への対応が急務であったことに加え、企業においてDXが推進されていく状況下では、従来のシステムの運用や改修だけでなく、DX推進部門が新たに構築するシステムの開発や運用が上乗せされた形となりました。時間や人的リソースがますます逼迫する中で、どう対応していくべきか。この課題が深刻化しています。

以下は、弊社がIT部門の現場担当者の方との打ち合わせで頻繁にお伺いする課題を、運用/ITSMフェーズと開発フェーズに分けて整理したものです。

【運用/ITSMフェーズにおける課題】

●クラウドの導入など、システム構成要素の変化により、管理が煩雑化している
●システムが追加されるたびに、雪だるま式に業務量が増える
●手作業による作業が一向に減らない
●働き方の変化に追いついていない
●運用改善を行いたいが、どこから着手すべきかがわからない

特にクラウドシフト&リストの影響により管理が煩雑化している、手作業が減らない、改善したいがどこから着手すべきかという課題は全体的に優先度が高いと感じています。

【開発フェーズにおける課題】

●ドキュメントがなく、システムがブラックボックス化しているため、機能改修や機能追加時に
 事前調査に時間がかかるだけでなく、影響が見極められない
●リリース後に問題が発覚し、改修作業に想定外のコストがかかっている
●システムのリプレース後に想定していたパフォーマンスが出ない
●求められるリリーススピードとシステム品質の両立が難しい

歴史が長いシステムほどドキュメントがなく改修のたびに苦労すること、また、ビジネススピードに応じてシステムリリースが急務になる中、品質も求められる点については多くの企業での共通課題となっています。

「トイルの改善」でIT部門のDXを実現

この課題解決に向けてアシストが注目しているキーワードが「トイル」です。Google社のSite Reliability Engineeringのトイルの説明によると、「トイルとは、手作業で繰り返し行われ、自動化が可能であり、戦術的で、長期的な価値を持たず、サービスの成長に比例して増加する特徴を持つ作業」と定義されています。

アシストではこのトイルを、いわゆる「やらねばならないが面倒くさいこと」であり、「開発、運用の変革を阻害するもの」であると捉えています。しかし、このトイルを自動化・効率化できれば、IT部門のためのDXを一気に実現し、大きな変革をもたらすことができます。

また、トイルの自動化・効率化は、例えば、クラウドリフト&シフトのような、ビジネスを支えるIT基盤が変化するタイミングに合わせて実践することが現実に即しておりベストだといえます。

以降では、どのようなタイミングでどのような変革手法(アプローチ)を実践すればよいのかについてご紹介していきます。

アシストが考える4つの変革アプローチ

IT部門におけるDX推進は、IT基盤の変化のタイミングが好機

ビジネスを支えるIT基盤には、開発・運用の両面で様々な変化が訪れます。例えば、運用業務の集約や保守コストの削減のために運用見直しや運用改善が必要となった時、また、システムリプレース、クラウドリフト&シフト、CRMなどのユーザーとのつながりを重視するようなシステム(System of Engagement:SoE)の構築やDXへの取り組む時、さらには抜本的な運用改革の必要性が求められる時などです。

ビジネスを支えるIT基盤に訪れる、開発・運用の両面で様々な変化

アシストでは、トイルを改善しIT部門のDXを進めるためには、既存運用やITSMの見直し、システムリプレースやビジネスにおけるDX推進、運用方法の抜本的見直しといった変化のタイミングを捉えアプローチしていくことが最短・最良の方法であると考えています。

変化のタイミング

変化のタイミングを捉えたアプローチには次の4種類があります。

●運用改善アプローチ
既存の運用/ITSMを見直すタイミングで実践します。ここでは、現時点での業務の成熟度を先に可視化した上で、既存運用の自動化や効率化を図っていくことがポイントになります。

●ITモダナイズアプローチ
システムリプレースやビジネスにおけるDX推進のタイミングで実践します。既存運用の自動化・効率化、次世代ジョブ管理、オブザーバビリティがポイントになります。

●開発変革アプローチ
システムリプレースやビジネスにおけるDX推進のタイミングで実践します。開発・テストフェーズにおけるトイルの削減がポイントになります。

●運用DXアプローチ
上記3つのアプローチを経て目指すべき運用自体のDXです。定性/定量のデータ活用、次世代型データドリブン運用がポイントになります。

以降でこれらの4つのアプローチについて解説していきます。各アプローチの詳細については、関連動画がありますのでそちらも併せてご参照ください。

1. 運用改善アプローチ

運用やITSM担当部門において定常的に次のような背景・課題を抱えている場合は、改善の検討が必要です。

●保守コストの削減が求められているものの運用業務が複雑・煩雑でどこから改善に着手すれば
 良いのかわからない。
● システムが追加されるたびに業務量が増えており改善にまで手が回らない。
● 同じ手順による作業や同じ内容の問い合わせ対応が繰り返されている。
● 属人化と現場対応で人的コストがかさんでいる。

これらの改善は、既存の運用/ITSMを見直すタイミングで実践します。具体的なアプローチとして、次の3点を実施します。

(1)現時点での運用・ITSMの成熟度を可視化し、課題と「あるべき姿」を組織内で共通認識化する
「どこから着手すれば良いのか分からない」、「どう進めたらよいか分からない」場合は、現状の可視化と組織内での共通認識化から始めることをお勧めしています。

 ▼詳細記事はこちら
  
(2)保守費用がかさみがちな問い合わせ対応業務を見直す
運用改善で最初に取り組まれる領域として多いのが、この問い合わせ対応業務の見直しです。

 ▼詳細動画はこちら
 ※個人情報入力後、セッションの動画をご視聴いただけます。

(3)業務の自動化と組織全体の業務見直しを推進する自動化基盤を検討する
これは②の「問い合わせ工数を削減」した後に、確保できるようになった余剰時間で自動化を推進するケースが多く見受けられます。

 ▼詳細動画はこちら
 ※個人情報入力後、セッションの動画をご視聴いただけます

以上が既存の運用/ITSMの見直し時に行う運用改善に向けたアプローチです。

2. ITモダナイズアプローチ

ITモダナイズについて変革が求められる背景や課題には次の4点があります。

●システムの構成要素がクラウドやコンテナに変化し、これまでの手法では管理できない
●既存のオンプレミス環境やクラウド環境との連携や管理が必要だが、個別最適で
 開発・構築されるため、運用負荷が高い
●ビジネスが IT システムに依存すればするほど、大規模化や可用性が求められる
●ITシステムの重要性が増す一方で、人の働き方にも変化が求められている

これらの課題は、クラウドリフト&シフト、DX、システムリプレースといったタイミングで、これまでの手法ではなく新たな手法にアップデートすることで対応します。
アップデートのポイントは2つあります。

(1)構成要素や構築手法といったシステムの変化や特性、また新たな働き方に合わせ、モニタリング手法をアップデートする
システムリプレースやクラウドリフト&シフトにより、管理する対象が変わります。また働き方も変化した場合は、それらの変化に合わせ、モニタリングの手法について見直しが必要です。

 ▼詳細動画はこちら
 ※個人情報入力後、セッションの動画をご視聴いただけます。

(2)構成要素や構築手法といったシステムの変化・特性に合わせてジョブ管理の手法をアップデートする
構成要素が変われば、処理を実行する場所や連携先も変わります。それに合わせて、ジョブ管理やシステム間連携の手法についても見直しが必要です。

 ▼詳細動画はこちら
 ※個人情報入力後、セッションの動画をご視聴いただけます。

3. 開発変革アプローチ

開発において変革が求められる背景や課題には、次の3点があります。

●社会情勢の変化に追従するためビジネス変革が求められている
●開発プロセスを変えずに開発スピードを上げると品質が低下する
●開発スピードと品質の両立に向け、DevOpsの考え方を取り入れたり、CI/CD基盤の構築、
 開発プロセスの自動化が必要だが、どう取り入れていくべきかの最適解がない

これを改革できるのは、DXやSoEに取り組むタイミングです。開発スピードと品質を両立させ、アプリケーションをリリースし続ける環境を作るために、開発フェーズごとに整備していきます。具体的な手順は以下の通りです。

(1)開発工程全体を可視化する

 ▼詳細記事はこちら

(2)アプリケーションの調査、コード開発、アプリケーションデリバリー、性能改善の4つのフェーズから、スピードと品質の両立を困難にしているフェーズを洗い出し、その中での課題(トイル)を抽出する

例えば、ドキュメントがなくて調査が困難だというケースは「アプリケーションの調査フェーズ」、開発の手戻りをなくしたいのであれば「コード開発フェーズ」、常にリリースし続ける環境を作りたい場合は「アプリケーションデリバリーフェーズ」、システムリプレース後のパフォーマンスの問題を回避したい場合は「性能改善フェーズ」でそれぞれ要因となるトイルを洗い出します。

 ▼詳細動画はこちら
 ※個人情報入力後、セッションの動画をご視聴いただけます。

4. 運用DXアプローチ

変革が求められる背景や課題には以下の3つがあります。

● システムに関するノウハウの属人化、IT人材不足により将来を見据えた対策が必要
●運用改善が場当たり的で、改善効果が少なく局所的
● ITサービスのビジネス価値を最大化することを目的とした運用刷新が求められているが、
 具体的な評価指標が定まっておらず、継続的な活動にまで至らない

運用DXアプローチについては、ここまで紹介してきた「運用改善」「ITモダナイズ」「開発変革」の3つのアプローチを適切なタイミングで実践した後の姿をイメージしています。アプローチとしては、ベテラン技術者のノウハウや測定可能な指標を運用データとして活用し、継続的な運用評価・改善を推進する環境を整備します。

具体的なポイントとして次の4つがあります。

(1)これまで培ってきた運用ノウハウを継承する
(2)データを用いて運用・ITSMを評価する
(3)新しいやり方を取り入れて運用生産性を向上させる
(4)運用データを起点として継続的な改善に取り組む

上記について、全体像を示しながら少し掘り下げてみます。

アシストが目指す次世代型データドリブン運用ー(1)~(3)

(1)これまで培ってきた運用ノウハウを継承する
これは、ベテラン技術者の運用ノウハウや勘が含まれた定性データ(ナレッジ、FAQ、手順書・設計書、インシデント対応履歴、インフラ構成(CI)、各種台帳)を形式知として継承し、活用するということです。

(2)データを用いて運用・ITSMを評価する
具体的には、運用ツールから取得できる、リソースデータ、メトリクス、アラート件数、インシデント件数、ジョブ実行数などの定量データを整備し、運用評価のための指標を設けるということです。

(3)新しいやり方を取り入れて運用生産性を向上させる
開発と運用のベストプラクティスや最新テクノロジーを取り入れながら、①の定性データについてはサービスデスクを活用して効果的・効率的に運用する、as Codeを利用して自動化するといったことを行います。②の定量データについては、オブザーバビリティで可視化を行います。

アシストが目指す次世代型データドリブン運用-(4)を含む全体像

(4)運用データを起点として継続的な改善に取り組む
定性データ、定量データを元に、継続的な運用評価や改善を推進できる状態が「アシストが考える次世代型データドリブン運用」です。

運用DXアプローチの全体像については、今後のアシストからの情報提供にご期待ください。トレンドのテクノロジーも、お客様の組織における課題も、人の働き方も変化し続けます。 アシストではIT部門の現場の皆様のリアルな声をお伺いしながら次世代のIT基盤、IT運用、開発の形を現場の皆様と一緒に作りあげていきたいと考えています。

最後に

本記事ではアシストが考える4つの変革アプローチについて紹介してきました。ゴールはIT 部門のDX実現です。IT基盤が変化するタイミングで適切なアプローチを実践することで、IT部門のDX実現を支援していきたいと考えています。
より詳細なアプローチ方法についてはリンク先の動画でご確認ください。

執筆者へ聞いてみたいこと、ご依頼はお気軽にお問い合わせください

本コラムの執筆者へのご質問やご依頼は、下記ボタンよりお気軽にお問い合わせください。IT運用に関するあらゆるお困りごとや具体的な課題のご相談などお客様のご希望に応じてご対応します。オンライン・対面などのご希望もお申しつけください。