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クラウド時代にジョブ管理はどう変わるべきか?

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2025.03.10

クラウド時代にジョブ管理はどう変わるべきか?

クラウド時代、ジョブ管理の変化とは?

企業のクラウド利用が進む中で、ジョブ管理のあり方にも大きな変化が訪れています。
顧客ニーズに迅速に対応し価値を提供するため、クラウドやSaaSサービスの活用はさらに広がるでしょう。

その一方で、IT運用部門においてはクラウド利用のメリットを最大限に活かしつつ、複雑化するシステム環境に適した「ジョブ管理のあり方」を見つける必要があります。

本記事では、ジョブ管理を取り巻く環境の変化と新たな課題を整理し、課題を解決するための実践的な方法をご紹介します。今後のジョブ管理について考える際の一助となれば幸いです。


従来:オンプレミス環境でのジョブ管理

たとえば、オンプレミス環境下でファイル連携を実装する場合、ストレージサーバーを介する方法が一般的でした。

あるシステムが処理を完了してファイルを生成すると、そのファイルをストレージサーバーに保存し、次の処理を実行する、という流れです。この方法はシンプルでわかりやすく、オンプレミスという閉じた環境で完結するため、安定性やセキュリティの面でも評価されていました。


現在:クラウドやオンプレミス混在環境でのジョブ管理

現在では、クラウドの普及によりストレージサーバー自体がクラウドに移行し、クラウドを介したファイル連携が一般化しています。さらに、後続処理を担うサーバーもクラウドへ移行するケースが増えています。

そこで、異なる環境間でジョブを連携するために、APIを用いた新しい連携方式が必要になります。このように、企業のシステム環境の変化に伴い、ジョブ管理の範囲はオンプレミスの枠を越え、新たな課題が生まれています。


新たに生まれたジョブ管理の課題

課題その1:ジョブ開発におけるシステム間連携

オンプレミスやマルチクラウドが混在するシステム環境下で、ジョブ開発・運用の難易度が高くなっています。

従来はオンプレミスや仮想サーバー内でのジョブ管理で済んでいましたが、現在はプライベートクラウドに加え、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudなどが混在するマルチクラウド環境やSaaSサービスとの連携が必要です。このように、ジョブ管理の対象が広がる中で、管理負担が急激に増加しています。

以下に、システム間連携でよく見られる具体的な課題を整理しました。

① スケジュール管理の複雑化
各環境で使用するジョブ管理ツールが異なるため、設定画面や操作方法が統一されておらず、管理の難易度が増しています。また、複数ツール間でスケジュールの整合性を保つ必要があり、その調整作業が大きな負担となっています。

② リカバリー対応の困難さ
問題発生時、管理ツール側の制約で「ジョブの再実行が希望する箇所から行えない」場合があります。さらに、再実行ポイントを特定するための調査が複数環境にまたがるため、リカバリー対応が煩雑になり、復旧の遅れを招くリスクがあります。

③ ジョブ開発の高度化
各環境で異なるジョブ開発ツールが使われるため、それぞれのツールの操作を学習する必要があります。ツールごとに必要なスキルは異なるため、開発メンバー確保、ノウハウの蓄積も困難です。

④ サービス間連携の課題
これは、運用コストを増加させるだけでなく、開発効率の低下にもつながります。



課題その2:ジョブ実行基盤の運用と高可用性の確保

クラウド環境の活用で、ジョブ実行基盤の運用はこれまで以上に柔軟で便利になりました。その一方で、複数プラットフォームにまたがる管理負荷や、高可用性を確保するための工夫、さらに災害対策の見直しといった新たな課題も出てきています。

①管理ツールや監視体制の整備
クラウド環境では、利用するプラットフォームごとに特有の仕様や要件があり、それに合わせた管理ツールや監視体制を構築する必要があります。このため、運用の手間が増えるだけでなく、異なるプラットフォームのセキュリティポリシーに対応する負担も大きくなっています。

②高可用性の確保
高可用性を実現するには、クラウド特有の機能や制約を考慮しつつ、マルチエージェントの活用、別リージョン間の通信、ロードバランサーの導入などを組み合わせた冗長構成を構築する必要があります。こうした取り組みによりシステムの信頼性は向上しますが、管理の複雑化がコスト増加を招く可能性もあります。そのため、クラウド環境ごとの特性を踏まえた慎重な設計が求められます。

③災害対策の課題
災害時に備えて切り替えや切り戻しの手順を確立しておくことは重要ですが、本番環境への影響を懸念して訓練を実施しない場合があります。この結果、手順が未熟なままとなり、いざというときに対応が遅れたり、慣れない操作によるミスが発生したりするリスクが高まります。



クラウド利用の拡大に伴い、「ジョブ開発におけるシステム間連携」と「ジョブ実行基盤の運用と高可用性の確保」という2つの課題について解説してきました。

ここからは、これらの課題を JP1 を活用してどのように解決できるのかをご紹介します。

JP1によるジョブ開発の課題解決アプローチ

JP1は、クラウドサービスの処理をJP1のジョブとして実行・管理できるオプション 、JP1/Automatic Job Management System 3 for Cloud Service Applications(JP1/AJS3 for CSA) を提供しています。

対応するクラウドサービスには、Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)、AWS Step Functions、Microsoft Azure Blob Storage、Azure Logic Appsなどが含まれ、対象範囲は拡大予定です。

(例)JP1で複数環境をまたぐジョブを開発する

以下のような業務処理を行うジョブフロー作成について見ていきましょう。

月末の報告レポート作成

・Amazon S3上にあるログファイルをリネームしてコピー
・自社のオンプレミスサーバー(Windows)に転送後、ファイルをグラフ化して画像に変換
・再びAmazon S3上にアップロード
・毎月末に実行

AWSが提供するマネージドサービス、AWS Step FunctionsとWindowsのタスクスケジューラを組み合わせたジョブフロー設定方法の一例です。

AWS上で実行する処理は、AWS Lambdaというサービスを使って実装します。具体的には、Pythonなどのプログラミング言語で処理を記述します。各処理の順序や分岐、エラー時の処理はAWS Step Functionsで実装します。


設定 処理内容
AWS Lambda Amazon S3上のファイルのバックアップを取る、変換処理、元データを削除する、というそれぞれの処理をコーディング(Pythonなど)
バッチファイル Amazon S3からデータを取得、画像処理、Amazon S3へアップロードする、というそれぞれの処理をコーディング
※AWS CLIを利用
AWS Step Functions AWS Lambdaで実装した処理は、AWS Step Functionsでジョブフローを設定(コーディングもしくはGUIを利用)
イベントブリッジで、ステートマシンの起動トリガーを設定
(設定例)毎月30日の18:00に実行
Windowsタスクスケジューラ PCジョブで実装した処理は、Windowsタスクスケジューラでジョブフローや起動トリガーを設定

JP1は、クラウド上の処理もJP1ジョブの1つとして、ジョブフローを作成できます。オンプレミスや複数クラウドをまたぐジョブも、JP1のGUI上で一元管理できるため、運用の手間を削減し、効率的な管理が可能です。
また、全体のジョブフローを一元管理できるので、トラブル時の迅速な対応や業務の安定性向上にも貢献します。


設定 処理内容
AWS Lambda Amazon S3上のファイルのバックアップを取る、変換処理、元データを削除する、というそれぞれの処理をコーディング(Pythonなど)
バッチファイル 画像処理をコーディング
JP1 AWS S3上のファイルダウンロードやファイルアップロードは、カスタムジョブが用意されているためローコードで作成可能。
AWS S3とWindows上での一連の処理は、すべてJP1のGUI上のジョブアイコンをドラッグ&ドロップでつなぐだけで、ジョブフローを作成可能。
JP1のスケジューラで、ジョブフローの起動トリガーを設定
※月末と設定しておけば各月の最終日を判断して実行したり、企業独自のスケジュールにも対応。


JP1によるジョブ実行基盤の運用と高可用性の確保

JP1 Cloud Serviceは、高可用性を確保するために、以下の機能を提供しています。

〇クラスタ構成オプション:
 マルチAZのクラスタ構成を利用可能。
〇ディザスタリカバリ構成オプション:
 東京リージョンで運用しながら大阪リージョンにデータを複製し、災害時には自動切り替えが可能。
 加えて、年1回の切り替え訓練で実運用における対応ノウハウを蓄積。



JP1バージョンアップ時のコストやデータ移行工数も削減

オンプレミス版のJP1をバージョンアップするときは、新バージョンのジョブ管理マネージャーを構築し、旧バージョンと並行稼働させながら検証する必要がありました。そのため、新バージョン用のサーバー構築や並行稼働ライセンス購入で費用が発生するうえ、データ移行に多くの工数がかかっていました。

一方、JP1 Cloud Serviceでは、3ヶ月間無償で新バージョンのマネージャー環境を利用でき、データ移行もサービス内で完結します。さらに、新旧環境がクラウド内でシームレスに管理されるため、ジョブ実行命令の切り替えも容易です。



次世代のジョブ管理で運用効率を最大化するために

クラウドサービスの活用は、ジョブ管理の効率化だけでなく、高可用性の確保やコスト削減、さらにはシステム全体の運用改善にもつながります。本コンテンツでご紹介したアプローチを参考に、次世代のジョブ管理基盤を構築し、変化するシステム環境に柔軟に対応する運用体制を実現してください。


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