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新バージョンZabbix 7.0 、“あの機能”は使える?実機で試してみたリアルな検証結果
2025.06.11

Zabbix 7.0、何が変わった?話題の新機能を試してみた
2024年6月に正式リリースされたZabbixの新バージョン、Zabbix 7.0。
大規模システムでも対応しやすくなるAPI強化や、セキュリティ機能の強化など、気になるアップデートが揃っています。今回は、主な新機能の紹介とともに、アシストで新機能を検証した結果を踏まえ、活用ポイントなどを紹介します。
ユーザー操作を再現して監視できる「ブラウザアイテム」(テスト段階※)
現在はテスト段階にある本機能ですが、将来的な活用の可能性を見据えて、弊社でも動作確認を行いました。
従来のHTTP監視では取得できなかった、Webシステムの動的な挙動や、ページの実際の表示結果といったユーザー体験レベルのレスポンスまでを可視化できるようになりました。
※正式リリース済ですが、今後の改善が予定されている機能です。
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具体的には、JavaScriptで実行したい操作を記述することで、ブラウザ上でのクリックや入力、遷移といった一連の動作を再現し、それに対する応答時間や挙動の変化を監視できます。
この機能により、
- 画面遷移を伴うWebシステムのパフォーマンス検証
- JavaScriptで構成された動的ページの動作確認
- フロントエンドのUX劣化やエラー検知の自動化
といった、"ユーザーの体感品質"に直結する監視シナリオが実現可能です。
社内システムはもちろん、顧客向けポータルなどビジネス上クリティカルなWebアプリの品質確保に活用できます。
従来のHTTP監視では拾えなかったフロントエンドの細かなエラーを確認でき、ユーザー目線での監視が一歩進んだ印象でした。
JavaScriptに詳しい担当者がいない場合でも、生成AIを活用すればある程度のスクリプト作成は可能です。しかし、生成されたスクリプトの内容を理解し、適宜修正ができる程度の知見が求められるため、柔軟なシナリオを作成できる反面、現時点ではある程度のスキルを持つ人に向いた機能であると感じました。
より多くのシステムと連携ができる「Zabbix API経由でのデータ送信」
Zabbix 7.0では、Zabbix APIのhistory.pushメソッドを使用して監視データを直接Zabbixサーバーに送信できる新機能が追加されました。
これにより、ZabbixエージェントやZabbix senderを使わずとも、外部システムからのメトリクス送信がよりシンプルかつ柔軟、そしてセキュアに実現できます。
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Zabbix API経由でのデータ送信ユースケース
・外部アプリケーションやカスタムスクリプトからのデータ連携
(例)社内業務システムで処理した件数やエラー発生数を、Zabbix APIを使用して送信し、ダッシュボードで可視化し、アラートを設定
・独自システムやクラウドサービス、サーバーレスなシステムとの統合
(例)Google Cloud Functions や AWS Lambda などのサーバーレス環境から、処理時間やエラー件数をZabbix API経由でZabbix Serverに送信する
特に、Zabbixを“監視データの集約ハブ”として活用したい企業にとっては、監視システム連携の自由度が飛躍的に向上します。マルチクラウドやハイブリッド環境における、より統合的な運用監視を実現する強力なアップデートです。
Zabbix senderのようにパッケージを導入することなくデータ送信が可能であり、柔軟に監視データ操作が行える点が魅力と感じました。
また、APIベースの連携方式は、多様化・分散化する現代のシステム運用にフィットする監視アプローチとして、実用性が高まっています。
不正アクセス対策も万全な「多要素認証(MFA)」
ゼロトラストやIDベースのセキュリティが注目される中、Zabbix 7.0から多要素認証(MFA)に対応し、ワンタイムパスワード(TOTP)を用いたログインが可能になりました。これにより、パスワードだけに依存しないより堅牢なアクセス制御を実現できます。
具体的には、Google AuthenticatorやMicrosoft Authenticatorといった一般的なTOTP対応アプリと連携可能です。Zabbixにログインする際、これらのアプリで発行されるワンタイムコードを入力することで、本人確認の精度を高めることができます。
社内外からのアクセスが当たり前となった今、監視基盤そのもののセキュリティ確保は、運用全体の信頼性にも直結します。ZabbixのMFA対応は、これからのセキュアな運用を考えるうえで、とても有益なアップデートとなります。
TOTP認証の設定は非常にスムーズで、既存のアカウント運用にも大きな影響なく導入可能でした。
特に管理者権限を持つユーザーのセキュリティ強化には、シンプルかつ効果的な対策として実運用でも有効だと感じています。一方で、ユーザーグループごとに認証方法を設定するためユーザー数が多い環境では、初回設定や再発行などの運用ルールを事前に整備しておくことが望ましいと感じました。
より直感的に伝えられる「ダッシュボードウィジェットの進化」
Zabbix 7.0では、ダッシュボードに追加できるウィジェットが大幅に増え、これまで以上に視覚的・実用的なモニタリング環境の構築が可能になりました。
ウィジェット名 | 利用シーン(例) |
---|---|
ハニカムウィジェット | 拠点や部署単位のシステム状態を一覧表示。ステータスが色で示されるため、異常をすぐに把握可能。 |
ゲージウィジェット | CPUやメモリ使用率の閾値監視に最適。リソースの逼迫状況をリアルタイムで視覚的に確認。 |
円グラフウィジェット | アラートの内訳や障害種別の比率を集計・共有。障害の傾向分析や対策立案にも活用。 |
ホストナビゲーター | 障害発生時に関連ホストへすばやくアクセスし、トラブルシューティングの初動を短縮。 |
こうしたウィジェットを組み合わせることで、Zabbixのダッシュボードは「見る」から「伝える」へと進化。
エンジニアだけでなく、運用チームやマネジメント層など、さまざまな立場のユーザーが1つの画面を確認しリアルタイムで情報共有ができるダッシュボード設計が可能です。
ウィジェット機能の拡充により、監視システムとしての視認性が向上しました。従来のZabbixでは情報が一覧で並ぶだけで、直感的な把握には限界がありましたが、豊富なウィジェットを適切に使用することで重要項目の強調や優先順位の明確化、各項目の相関関係の把握が可能となりました。
特にホストナビゲーターは有用で、障害発生の初動スピード短縮に大きな効果を発揮し、属人性の排除にもつながります。
▼ハニカムウィジェット ▼ゲージウィジェット
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▼円グラフウィジェット ▼ナビゲータ
▼Zabbix7.0のダッシュボード
結論
今回のバージョンアップではマルチクラウドやSaaSなど多様なシステム構成が一般化した現代のITインフラ動向に対応するための監視機能の強化が目立ちました。これにより、機能面ではZabbixは従来のオンプレミス監視から、クラウド・ハイブリッド構成にまで柔軟に対応できる監視ツールに近づいた印象です。
また、運用の観点ではダッシュボードの進化やウィジェットの充実化によって、リアルタイムな可視化がより直感的かつ操作しやすくなりました。これにより、日々の監視業務における利便性が向上し、Zabbixコンソールを起点として、運用・開発部門間で監視結果やアラートを共有しやすくなり、障害対応や改善活動の連携がよりスムーズになりました。
Zabbixの機能まとめ(V6.0/V7.0)
Zabbix 7.0では、多くの新機能や改良が加えられていますが以下に本記事で記載した機能を整理しました。自社の運用要件に照らし合わせて、バージョンアップの判断材料としてご活用ください。
機能カテゴリ | Zabbix 6.0 LTS(2022年リリース) | Zabbix 7.0 LTS(2024年リリース) |
---|---|---|
リミテッドサポート期間 | 2027年2月まで | 2029年6月まで |
ダッシュボード | UI刷新、マップなど強化 | 新ウィジェット(ゲージ、円グラフなど)追加 |
Web監視 | HTTPベースのシナリオ監視 | ブラウザシナリオ(JavaScriptにて作成)監視追加 ※現時点ではテスト機能です |
プロキシ構成 | 単一プロキシ構成が基本 | プロキシグループによるHA構成・負荷分散 |
データ収集方式 | 同期ポーラー中心 | 非同期ポーラー対応(HTTP/SNMP等)で高並列化 |
ユーザー認証 | 単一認証(パスワード) | 多要素認証(TOTP対応)追加 |
監視テンプレート | AWS, Azure,Kubernetes, Docker | Webブラウザ,クラウドテンプレート拡張 |
Zabbix新バージョンに関するよくあるご質問
Zabbix 7.0のリリースに伴い、機能面だけでなく、バージョンアップに関するご相談やご質問も多く寄せられています。ここでは、新バージョンの概要から移行時の注意点まで、よくあるご質問とその回答をQ&A形式でまとめました。
導入や移行をご検討中の方は、ぜひご参考ください。
Zabbix 7.0にアップグレードする場合、今のデータや設定はそのまま使えますか?
Zabbix 7.0にアップグレードする際も、現在のデータ(監視データ・履歴・トレンド)や設定(ホスト、テンプレート、トリガー、ユーザー設定など)は基本的にそのまま引き継がれます。ただし、アップグレードには以下の点にご注意ください。
・Zabbix公式ドキュメントを参照して正式なアップグレード手順に従う必要があります。
・データベースのスキーマ変更が伴うため、初回起動時に自動的にマイグレーション処理が行われます。
・使用しているカスタムテンプレートや外部連携機能が非互換となる場合もあるため、事前にリリースノートや互換性情報を確認してください。
Zabbix 7.0 の対応DB、OSに変更はありますか?
Zabbix公式ドキュメントに記載がありますので、ご確認ください。
https://www.zabbix.com/documentation/7.0/jp/manual/installation/requirements(新しいタブで外部リンクに遷移します)
Zabbix 6.0を使用しているがバージョンアップすべきでしょうか?
Zabbix 6.0は2027年2月までリミテッドサポート期間があるため引き続き安定してご利用いただけますが、Zabbix 7.0では新機能やパフォーマンス改善、セキュリティ面での強化が多数実装されています。
特に今後の機能拡張や将来的な保守性を考慮すると、バージョンアップを検討される価値は十分にあると考えます。ただし、環境や運用要件によっては移行タイミングを慎重に検討する必要があるため、ご相談いただければ最適な移行計画のご提案も可能です。
Zabbix7.0のサポート期間はいつまでですか?
以下の期間となります。
なおリミテッドサポート期間が終了すると深刻度の高いバグの修正、セキュリティフィックスを含むアップデートが行われないため、リミテッドサポート期間終了までに最新版へのアップグレードすることを弊社では推奨としています。
フルサポート:2027年6月
リミテッドサポート:2029年6月
延長サポート:2031年6月
アップグレードの対応が社内で難しそうです。部分的な支援だけお願いできますか?
はい、可能です。アップグレード作業全体のご支援に限らず、事前の影響調査やバックアップ取得、作業当日の技術サポートなど、ご要望に応じて部分的な支援も承っております。
まずは現在のご状況やお困りの点をお聞かせいただければ、必要な範囲に応じて柔軟にご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。
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