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Zabbixのダッシュボードはどのくらい『使える』のか?

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2025.09.19

Zabbixのダッシュボードはどのくらい『使える』のか?

Zabbixのダッシュボード、活用していますか?

「Zabbixのダッシュボードって、いろんなグラフが並んでるだけでしょ?」
「なんだか設定が難しそう…」

そんな風に思っていませんか?
Zabbixのダッシュボードを活用していないという方、実は多くのメリットを見落としているかもしれません。

Zabbixのダッシュボードでできること

  • 単純な直近の推移にとどまらず、過去データとの比較分析が可能
  • 個別の監視対象ではなく、全体の中から異常傾向を視覚的にとらえられる
  • 数値をデジタル形式だけでなく、より直感的なゲージで可視化できる
  • 障害発生が多いポイントを定量的に視覚化し、改善につなげられる

今回は、そんな「もったいない」状況を打開すべく、Zabbixダッシュボードの真価と、そのシンプルな活用法をご紹介します。


1. グラフウィジェット

Zabbix 4.0から登場したグラフウィジェットは、クラシックグラフよりも柔軟性が高く、より高度なデータ分析を可能にします。
特に「データセット」と「タイムシフト」の機能は、Zabbixによるグラフ表示の可能性を大きく広げました。

▼グラフウィジェット表示例

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グラフウィジェットの利用シーン

リソース使用率の長期トレンド分析
CPU使用率やメモリ使用率の推移を週単位、月単位で表示し、増加傾向にあるリソースを早期に発見します。

過去との比較分析
タイムシフト機能を使えば、今日のデータと昨日のデータ、または先週の同じ曜日のデータを簡単に比較できます。例えば、Webキャンペーン実施中のトラフィックを前回のキャンペーン時と比較するといった、柔軟な分析が可能です。

グラフウィジェットの作成手順

1.ダッシュボード編集画面で、「タイプ」は「グラフ」を選択します。

2.「名前」にウィジェットのタイトルを設定します。

3.「データセット」で、グラフ化したいホストを指定します。


技術者より一言

特定のホストを指定することもできますが、ここが「データセット」の面白いところです。
「*共通DB*」のようにワイルドカードを使用することで、名前が部分一致する全てのホストがグラフ化の対象になります。

ワイルドカードで指定する場合は、ホスト名のネーミングルールに規則性が必要です。
仮にホスト名に規則性が無い場合は、ホストの「表示名」でネーミングルールを設定することも可能です。

(例)表示名:共通DB#1、共通DB#2、外部DB#1、外部DB#2


4.「データセット」で、グラフ化したいアイテムを指定します。
ホストと同じく、アイテムも「*CPU util*」のようにワイルドカードを使用することで、名前が部分一致する全てのアイテム(例:複数のサーバーのCPU使用率)をまとめてグラフ化できます。

5.「追加」または「適用」をクリックして、ウィジェットを配置します。

▼グラフウィジェットの設定例

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上記の設定例では、ホストに「*共通DB*」、アイテムに「*cpu util*」というワイルドカードを使用しています。
この設定にしておくと、今後「共通DB」という名前を含むホストが追加され、そこに「cpu util」を含むアイテムがあれば、自動的にこのグラフに表示されるようになります。

データセットの「ホスト」と「アイテム」に適切にワイルドカードを指定することで、将来新たなホストが監視対象に追加された場合も、グラフ側の設定変更無しで可視化することができるわけです。


「タイムシフト」機能を使って、過去のデータと比較する

さらに、「タイムシフト」を利用すると、対象アイテムの直近のデータと、過去のデータを相関して表示できます。

例えば、「Host_1」の「CPU utilization」のデータセットの下に、もう一つ「Host_1」の「CPU utilization」のデータセットを作成し、タイムシフトに「-1h」と設定すると、1時間前の値のデータがグラフにプロットされます。
-1dで1日前、-1wで1週間前となります。

「タイムシフト」を利用することで、複雑な設定無しに、過去のデータのトレンドと現時点のトレンドの差異分析が簡単に行えます。

▼「タイムシフト」の設定例

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上記の例では、線グラフは現時点の直近1時間の値、ポイントは過去1時間前を起点とした直近1時間の値となります。


2. ハニカムウィジェット(Zabbix v7.0で新規追加)

ハニカムとは、ハチの巣のような六角形の集合体でデータを表示する、Zabbix 7.0で追加されたユニークな新ウィジェットです。ホストやアイテムのデータはアルファベット順に自動表示され、ウィジェットのサイズに応じてレイアウトも自動調整されます。


 ▼ハニカムウィジェットの表示例
  ※ハニカムの色を変化させるため閾値の数値を小さく設定しています。

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ハニカムウィジェットの利用シーン

大規模環境の概要把握に最適
多数のサーバーやデバイスの健全性・リソース使用率を、点描画のように視覚的に把握できます。個別の詳細ではなく、全体的な傾向をつかむのに役立ちます。

特定アイテムの異常値の素早い発見
六角形の色を閾値に基づいて変更できるため、例えばディスク使用率が80%を超えたホストの六角形を赤く表示することで、視覚的に異常を素早く検知できます。

ハニカムウィジェットの作成手順

1.ダッシュボード編集画面で、「タイプ」は「ハニカム」を選択します。

2.「名前」にウィジェットのタイトルを設定します。

3.「ホスト」または「ホストグループ」で、監視対象となるホストを指定します。

4.「アイテムパターン」で、表示したいアイテムをパターンで指定します。
 (例:*cpu util*)※アイテムパターンの為ここでも、ワイルドカードで指定可能です。

▼ハニカムウィジェットの設定画面

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5.「高度な設定」を展開したあと、「閾値」を設定し、「色補間」にチェックを入れることで、アイテムの値に応じて 六角形の色を変化させることができます。
 (例:緑50、黄70、赤90)

6.「追加」または「適用」をクリックして、ウィジェットを配置します。

▼ハニカムウィジェットの「高度な設定」の設定画面

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3. ゲージウィジェット(Zabbix v7.0で新規追加)

ディスク使用率やメモリ使用率など、使用しているリソースの「割合」をゲージグラフで可視化するのに便利な、Zabbix 7.0で追加されたウィジェットです。180°または270°の表示角度を選択でき、閾値に応じて色が変わります。

▼ゲージウィジェットの表示例

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ゲージウィジェットの利用シーン

視覚的な警告
ゲージの色が緑から黄、赤へと変わることで、閾値に近づいていることを視覚的に警告します。

重要指標の一覧表示
各システムの重要指標の数値(デジタル)を一覧で表示することで、全体の傾向を視覚的につかむことができます。

ゲージウィジェットの作成手順

1.ダッシュボード編集画面で、「タイプ」は「ゲージ」を選択します。

2.「名前」にウィジェットのタイトルを設定します。(例:「CPU使用率」)

3.「アイテム」で、ゲージとして表示したいアイテム(例:「Zabbix server: CPU utilization」)を選択します。

4.「最小値」と「最大値」を設定します。(例:最小0、最大100)

▼ゲージウィジェットの設定画面

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5.「高度な設定」で、「角度」(180°または270°)を設定します。

6.「閾値」を設定し、色(例:黄色50、オレンジ80、赤100)を定義します。

7.「ラベルを表示」にチェックを入れると、現在の値がゲージ上に表示されます。

8.「追加」または「適用」をクリックして、ウィジェットを配置します。

▼ゲージウィジェットの「高度な設定」の設定画面

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4. 動的パラメータ(Zabbix v7.0で新規追加)

Zabbix 7.0のUI改善の目玉が、ウィジェット同士を連携できる「動的パラメータ」機能です。
これにより、単なる静的なグラフの並びではなく、操作可能なアプリケーションのようなインタラクティブなダッシュボードが構築できるようになりました。

「送信(broadcast)」機能を持つウィジェットと、「受信(listen)」機能を持つウィジェットを連結することで、選択したデータに応じて表示内容が変化するダッシュボードを実現できます。


▼動的パラメータを利用したウィジェットの表示例
 (ホスト名「Host_1」の「Available memory」を選択した場合)

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▼動的パラメータを利用したウィジェットの表示例
​ (ホスト名「Host_4」の「Available memory」を選択した場合)

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動的パラメータの利用シーン

ドリルダウン分析
例えば、「ホストナビゲータ」で特定のホストを選択すると、そのホストの「アイテムの値」が自動的に表示されるように設定できます。これにより、気になるホストがあれば、クリック一つで詳細情報を深掘りできるようになります。

動的パラメーターの作成手順

1.「タイプ」はホストナビゲータを選択し、ホストナビゲータ(送信ウィジェット)に「名前」を設定します。この名前(下記例ではhost navi)が、他のウィジェットがデータを受信するための参照点となります。

▼ホストナビゲータウィジェットの設定画面

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2.「タイプ」は「アイテムナビゲータ」を選択し、アイテムナビゲータ(送信ウィジェット)に「名前」を設定します。

ここで設定する名前(下記例ではitem navi)は、他のウィジェットがデータを受信するための参照点となります。
また、「ホスト」に上記のホストナビゲータの名前「host navi」を設定すると、ホストナビゲータとアイテムナビゲータが接続されます。

▼アイテムナビゲータウィジェットの設定画面

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3.受信ウィジェットの「タイプ」は「アイテムの値」を選択し、アイテムナビゲータの「名前」をパラメータとして入力します。

▼受信ウィジェット(アイテムの値)の設定画面

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これで、送信ウィジェットで選択が行われると、受信ウィジェットの表示内容が自動的に更新されるようになります。


5. トップトリガーウィジェット(Zabbix v7.0で追加)

障害発生回数の多いトリガーをランキング形式で表示するウィジェットです。従来の「上位ホスト」ウィジェットに似ていますが、トリガーを対象とする点が異なります。

▼上位トリガーウィジェットの表示例

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トップトリガーウィジェットの利用シーン

問題の「ホットスポット」を特定
頻繁に問題を引き起こしているトリガー(=システム上の根本的な問題)を素早く特定し、改善の優先順位を付けるのに役立ちます。

アラートノイズの削減
繰り返し発生するアラートの原因となっているトリガーを特定し、閾値の調整や根本原因の解決に繋げます。

運用報告
どのトリガーが運用上最も負担になっているかを客観的に示すことができます。

トップトリガーウィジェットの作成手順

1.ダッシュボード編集画面で、「タイプ」に「上位トリガー」を選択します。

2.「名前」にウィジェットのタイトルを設定します。

3.「トリガー制限」で表示するトリガーの数を設定します(1~1000まで指定可能)。

4.「時間期間」を設定し、どの期間での障害発生回数を集計するかを指定します。
(now-1d:直近の1日、now-1w:直近の1週間、now-1m:直近の1カ月、now-1y:直近の1年)

5.「追加」または「更新」をクリックして、ウィジェットを配置します。

▼上位トリガーウィジェットの設定画面

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ここまで様々なウィジェットを見てきましたが、「やっぱりウィジェットがたくさんあって大変そう…」と感じたかもしれません。しかし、Zabbixダッシュボードは、全て使いこなす必要はありません。
是非、見たい情報をダッシュボードで表現できるか、チャレンジしてみてください。


Zabbixの設計や運用なら、プレミアムパートナーのアシストにおまかせください

国内には60社以上のZabbix公式パートナーが存在しますが、アシストはその中でも最上位の「Zabbixプレミアムパートナー」 に認定されています。

今回ご紹介したダッシュボードに限らず、「Zabbixをより安定的に運用したい」「障害発生時のリスクを最小限に抑えたい」「監視設計・運用を最適化し、業務負担を減らしたい」といったニーズに対して、アシストは豊富な導入実績と内製化支援ノウハウを活かし、最適な支援を提供します。Zabbixの運用課題は、アシストにご相談ください!

著者情報

2002年、株式会社 アシスト入社。
入社以来システム運用管理分野のエンジニアとして第一線でお客様サポートに従事。アシストのZabbixサポートビジネスの立ち上げにも携わり、現在はモニタリングツールチームに所属し、広くシステム監視に関する提案活動を行う。

【執筆実績】
日経ネットワーク
「楽々実践!ネットワーク監視」連載記事

【保有資格】
・Zabbix認定スペシャリスト
・FinOps Certified Practitioner