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開発・運用変革のためにやるべきこと ~アシストの実践的サービスをもとにした最初のステップと手法をご紹介~(運用編)

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2022.09.02

開発・運用変革のためにやるべきこと ~アシストの実践的サービスをもとにした最初のステップと手法をご紹介~(運用編)

執筆者のご紹介

アシスト 本間 裕基

本間 裕基
システム基盤技術本部

2010年入社。
これまで統合運用管理ツール、テストツールのプリセールス、技術支援、サポートを担当。 現在はInftastructure as Code(インフラ構成管理)の啓蒙活動や関連製品のプリセールス、技術支援、サポートに従事。昭和生まれの兎年。

企業の デジタルフォーメーション(DX) 活動に伴い、DX を支える開発や運用管理にもトランスフォーメーション(変革)が必要になってきています。アシストではIT部門にDXをもたらす開発&運用手法として、IT基盤が大きく変化する4つのタイミングを捉えアプローチしていくことをお勧めしています。

弊社がお伺いするお客様企業では、変革の必要性を感じていても「課題が多く何から手をつけたらいいのか分からない」、「漠然とした課題を具体化して捉えられていない」といったことを思慮されるケースが実際のところ非常に多いと感じています。

本記事では、冒頭でアシストが提唱する変革アプローチについて解説し、以降は既存の運用/ITSMを見直すタイミングで変革を推進する「運用改善アプローチ」の中から、最初のステップである、現状の可視化と組織内での共通認識化を中心に、アシストが実際にお客様にご提供しているサービスをベースに手法を解説していきます。実践的な手法ですので、是非、運用改善の取り組みのヒントにしていただきたいと思います。

1. 開発&運用変革のためにやるべきこと

アシストが考える4つの変革アプローチとは、IT部門のDX実現をゴールとし、IT基盤(運用・開発)が変化する4つのタイミングに合わせて実践することをお勧めしている方法です。

アシストが考える4つの変革アプローチ

変化のタイミングはお客様の運用環境、IT環境により実に様々ですが、クラウドシフト&リフト、システムリプレースなど、大きなシステムイベントの波に乗じて開発手法や運用を大きく変革させることが運用改善アプローチの肝となります。

とはいえ、冒頭にも書きましたが、変革の必要性を感じていても、企業やIT環境により以下のような様々な課題があり、その一歩が踏み出せないお客様が非常に多いのが実情です。

 ●IT環境の複雑化、ヘテロ化に伴い、課題も複雑化し、何から着手すれば良いのか分からない
 ●運用業務が複雑・煩雑で目指すべき姿が不明瞭である
 ●改善に向けた現行のやり方、現行のフローが整理されていないためボトルネックが見いだせない
 ●ツールを導入したが組織に浸透・定着せず効果が得られなかった

年間6,000社以上のシステム運用・開発の現場に携わっているアシストでは、このような課題の本質は、以下の3点に集約されると考えています。

 ●組織やチームで課題やゴールを共有できていない
 ●手段=目的(成果)になってしまっている
 ●目先の課題は対処できても以降の改善ストーリーやしっかりとしたシナリオがない

上記を解決するためには「ASIS(現状把握)とTOBE(あるべき姿)」の可視化が先決です。物事には計画が重要ですが、計画を立てる前に、

 (1)現状を振り返る
 (2)整理する
 (3)それを自部門や自チームで組織的に合意する

という3つのプロセスを経なければ変革はなしえません。

課題、ゴールを組織で認識・合意するプロセス

具体的には、課題やボトルネックを可視化し、言語化し、チームメンバーで「ASIS/TOBE」に対する意見や思いを発散して、共有すること。そして、改善の方向性、着手する優先度、排除すべきムリ・ムダがないか組織で合意形成を図ることです。一見当たり前のことのようですが、それがなかなか実践できない、実践する時間がないというのが各社の現状です。

アシストでは、運用業務全体に対する課題を抽出し、運用担当者間で「ASIS/TOBE」の共通認識を形成する現実的な手法として「ENISHI運用改善ワークショップ」を、また、開発プロセスに対する課題を深掘りし、開発担当者間でボトルネックの可視化により改善計画を立案する手法を「アジャイル開発スタートアップソリューション」として提供しています。

対象業務や対象者は異なれど、ASIS/TOBEの可視化、言語化といった手法については、運用業務、開発業務だけでなくあらゆる業務の改善に有効です。以降では、この2つのサービスでの手法を簡単にご紹介し、運用・開発業務それぞれの変革のヒントになればと考えています。

2. 「ENISHI運用改善ワークショップ」で行っている運用改善の具体的手法

ENISHIとは?

ENISHIとは、IT部門に求められる"変わらないもの"(安定した品質の高いサービスの提供)を維持しながら、"変わるもの"(環境や管理手法、求められる期待)に対応し、お客様のITサービスマネジメントの継続的改善をアシストする運用フレームワークやそれに付随するソリューションの総称です。

アシストでは、運用業務全体に対する課題を抽出し、運用担当者間で「ASIS/TOBE」の共通認識を形成する現実的な手法として「ENISHI運用改善ワークショップ」を提供しています。本サービスでは以下のステップ4までのうち、ステップ3の組織での合意形成までを最短で約6週間(1ヵ月半)かけて支援しています。

ENISHI運用改善ワークショップの進め方

ステップ1:「現状診断サービス」で客観的評価を作成
<実施内容>
 (1)アシストからお客様へ現状診断シートを提供
 (2)お客様が設問に回答
 (3)アシストにて現状診断レポート作成
 (4)現状診断レポート報告およびワークショップ事前ワーク提供

ステップ2&ステップ3:運用改善ワークショップの実施
<実施内容>
 (5)アシストから事前ワーク提供(課題の深掘りヒアリング)
 (6)お客様:設問に回答
 (7)ワークショップ1日目(課題の合意形成)
 (8)1日目振り返り
 (9)ワークショップ2日目(運用改善シナリオ策定)
 (10)ワークショップ実施報告レポートをお客様へ提出

ステップ4:改善実行
 ステップ3で合意した改善案に着手するための具体的なフェーズです。

ステップ1:現状診断

現状診断はITSMベストプラクティスに基づく全64問で
現状診断サービスでは、アシストからお客様へ事前に設問シートをお渡しし、お客様に回答いただいた内容をもとに、診断レポートを作成します。現状診断に利用する設問シートはITSMベストプラクティスに沿ったENISHI運用フレーム枠に基づき、全64問で構成されています。

現状診断に利用する設問シート

それぞれの設問に対し、「対象の運用業務に取り組んでいるか」「対象業務の仕組みがあるか」の2つの軸について6段階評価でお客様に回答いただきます(目安として、一人当たり30分程度で回答可能な内容)。

6段階評価での回答

レポートでは自社のIT運用における成熟度合いを確認可能、他社統計値との比較も可能に
回答結果をアシストにて集計し、各運用業務における運用の成熟度についてのスコアリングをレーダーチャートなどで確認できる「現状診断レポート」としてお客様に提示します。また、アシストではこれまで回答いただいているお客様のデータを統計値として活用し、他社統計値と比較した場合の成熟度合いとして可視化します。

現状診断レポート(1)

さらに、上の図のような集計結果や統計比較をベースに、システム監視、構成管理、ジョブ管理といった全16の運用管理業務に対しアシストの客観的な視点での評価結果をレポートとして提示します。

現状診断レポート(2)

最後に、作成したレポートをお客様にご報告しながら、評価結果の内容について認識齟齬がないかどうかチェックします。

ステップ2&3:ワークショップの実施

ステップ1「現状診断サービス」のアウトプットをもとに、1日目は課題設定、2日目はゴール設定を目的としたワークショップを開催します。このステップで「ASIS/TOBE」をしっかり可視化して組織的に合意することが大きな実施効果となります。

事前ワーク
ワークショップの前に、現状診断サービスの結果がお客様の認識とギャップがないかの確認とギャップを埋めるために、顕在化している課題や取り組み中の対策・改善策などをヒアリングします。例えば、現状診断レポートではRPAのスコアは低くなっていても、実情としては企業として不要であるケースや、ジョブ管理の評価は高くても実は課題は山積みであるといったように、レポートからは読み取れないお客様の意図や実情を確認します。

事前ワーク

2日間のワークショップ開催
ワークショップは基本的にステップ1の参加者(運用管理者・実務者)を想定しています。ワークショップの中では、個人ワークの時間を設け、管理者・実務者がそれぞれ抱えている課題や改善に対する考えを発散・参加者間で共有します。議論を有意義なものにするため、アシストはファシリテーションに徹し、意見を促したり整理したり必要に応じて情報提供することで、参加者間の目線を合わせ認識のギャップをなくす、つまり組織的に合意する活動を支援します。

合意形成

ワークショップ実施報告
ワークショップの実施結果(課題・目指す姿)を整理・言語化し、改善策をまとめレポートとしてお客様へ提出・説明します。レポートはお客様の運用改善計画としてそのまま利用することが可能です。また ワークショップで関係者が合意済みの内容であるため、改善着手までの時間削減にもつながります。


ワークショップの実施報告

以上が本サービスの進め方やアウトプットイメージになります。以降で本サービスを採用されたお客様の事例を2つご紹介します。

3. 事例紹介

事例1:システム監視の問題から運用効率化とスキル平準化を目指す

A社では、本サービスを通じて、システム監視やインシデント管理を中心とした課題が洗い出されました。具体的には、

 (1)イベント・メッセージが散在している
 (2)アラート通知件数が肥大化し確認作業に時間がかかる
 (3)アラート対応状況が共有されていないため既知の事象かどうかが判断できない
 (4)初動対応のスキルにばらつきがある

といった様々な状況について担当者から発言されました。

事例1

ワークショップで改善策を協議した結果、洗い出された課題を運用業務における阻害要因であると定義し、「集約」、「可視化」、「分析」の3つのステップで排除していくことになりました。

具体的には、
 (1)各システムのイベントを統合管理
 (2)多数の通知を削減するフィルタリング
 (3) アラートやインシデント対応状況を把握して既知のエラーをナレッジ化
 (4)アラート傾向を分析し、チームで共有できるレポーティング

という4つの改善策で関係者間で共通認識を形成し、イベント集約から着手していこうということになりました。管理者と実務者の認識ギャップがなくスムーズに改善検討に着手できた点が本サービスの具体的な効果だと考えています。

事例2:業務引き継ぎ問題から標準化に取り組む

B社では、運用担当者の業務引継ぎを軸に様々な課題が洗い出されました。具体的には、運用業務の引き継ぎは急務だが各人の業務が属人化している、運用規約がないので円滑な引継ぎができない、複数名で業務を遂行できるようにしたいがリソースがないということです。

事例2

ワークショップには、運用チーム全員が参加しました。課題解消に向けて「運用標準化」をテーマに据え、運用規約を作成・統制してボトムアップで推進体制を築くという結論になりました。そのためには、

 (1)現行業務の洗い出しから始める、
 (2)他者が参照できる/他者に引き継げる規約を作る、
 (3)現状整理のため、文書管理やプロジェクト管理は既存のツールを活用する、
 (4)引き継ぎだけでなく中長期的なスキル定着も視野に入れる

という共通認識ができあがりました。
本サービスを通じて、お客様とアシストが一丸となり改善アクションに取り組んでいます。

実際に本サービスを体験されたお客様の声

実際に本サービスを体験されたお客様の声を一部ご紹介します。

<C社様の声>
「チームでのワークショップのような機会はほとんどなく、有意義な時間にすることができた」

●毎日の運用作業やシステム構築業務に謀殺され、チームでワークショップに取り組むといった活動は
 年間を通じてもほとんど行っていなかったので、参加したメンバーが率直な意見を発散できる
 良い機会だった。
●マネージャー、メンバー問わず、同じ場でディスカッションを行うことで、チームでの共通認識を
 整理できた。
●自社の問題点は認識しているが、普段改善方法やなぜどのような状況に陥ったのかは話し合うことが
 なかったので非常に良い機会だった。


<D社様の声>
「課題に対する整理と担当者間の共通認識を持つことができた」

●各人が集まって意見を出した結果、よりよい意見が出るようになった。
●現在の運用における課題を改めて確認でき、身が引き締まる思いだった。
●議論しながら改善方法を考えることで、今後のあるべき姿について自チームのマネージャーと
 ベクトルを合わせることができ大変有意義だった。

運用改善変革は一足飛びに実現することはなかなか難しいですが、まずは現状診断からといった、地に足がついた手法を用いることが重要です。

4. 「ENISHI運用改善ワークショップ」手法まとめ

ENISHI運用改善ワークショップのまとめ

「ENISHI運用改善ワークショップ」は、運用現場における現状分析、関係者での認識合わせ、目標と手段の設定、実際のアクションにより、目標達成や成果創出を行うものです。やってみると「当たり前のことをきちんとやっていくんですね」という感想をいただくこともありますが、アシストの長年の経験から、また、ASIS・TOBEをしっかり整理するためにも、こういった現実的な手法が結局は最短・最適な解を生み出すと考えています。

また、ここで紹介してきた手法は、運用改善だけでなく、その先の運用改革のための手段としても利用できます。是非運用改善のヒントにしていただきたいと思います。

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